住宅メーカーのパナソニック ホームズ株式会社は、業務の効率化とお客様満足度を高めるための活動として、設計・建築担当者の業務の「見える化」を推進。LINE WORKSのBotを活用して日々の活動登録の記録・集計を自動化させ、業務内容や業務時間を計測・分析し改善に役立てています。また、お客様や施工店様のLINEと連絡を取ることでよりスムーズなやりとりを実現しています。
本事例のポイント
- 設計・建設担当者の作業内容を「見える化」し、業務改善を実現
- Botによる入力・集計業務の負荷軽減
- お客様や施工店様のLINEとつながり、対面できなくても円滑なコミュニケーションが可能に
御社の事業内容をご紹介ください。
水上さん:
パナソニック ホームズ株式会社は、創業者 松下幸之助の「住まいは人が暮らしていくうえで最も大切なもの。それにふさわしい良い家をつくりたい」という強い使命感のもと、1963年に誕生しました。当社は「強さ」と「暮らしやすさ」のNo.1の住まいづくりを目指し、パナソニックならではの提案力と技術力で、末長く快適に安心して暮らせるお客様の「良家づくり」をご提案しています。私は情報企画部に所属し、情報システムの企画・開発・推進を通じて、従業員が働きやすい環境提供や課題解決に取り組んでいます。
以前は、どのような業務上の課題を抱えていたのですか。
水上さん:
当社ではお客様一人ひとりに最適な「良家づくり」をご提案していくうえで、設計担当者がお客様と接する時間をどれだけ増やせるかが重要な課題と捉えています。その解決策のひとつとして、設計部門では各拠点に所属する設計者の日々の活動内容を「見える化」することにしました。各拠点のサーバーにあるExcelの活動登録台帳に案件ごとの活動内容を入力してもらい、月末に各拠点別に集計したものを、さらに設計部門で集計します。
下野さん:
私は広島支社の設計部門で、おもにインテリアの設計を担当していますが、広島支社の活動登録の集計作業も担当していました。Excelの管理台帳は、一度に複数の人が入力できないので、ほかの人の入力が終わるまで待たなくてはならず、時間的なロスが発生していました。
従来の課題を解消するために、LINE WORKSを導入した経緯をお聞かせください。
水上さん:
Excelの台帳管理を省力化するために、さまざまなツールを調べる過程でLINE WORKSのBotの存在を知りました。従来から社内コミュニケーションは別のチャットツールを使っているので、業務改善のために検討しました。LINE WORKSはUIがLINEベースのためユーザーが受け入れやすく、必要な機能に絞って導入が可能なことから、早期導入立ち上げやイニシャル・ランニング両コスト面で他社製品や内部開発と比べて優位性がありました。設計者の活動内容のデータ収集もBotを使えば効率的に行えると考え、アジャイル型開発のしやすさも決め手となり導入を決定しました。
LINE WORKSのBotを活用してどのような仕組みを構築したのですか。
水上さん:
LINE WORKSのトーク画面から会話形式・選択型で日々の活動を入力し、データベースに自動登録させる仕組みです。スマホやタブレットから設計者がトーク画面でBotをクリックすると、「どの仕事を登録しますか?」とメッセージが表示され、リストアップされた各自の担当案件から登録する案件を選択します。あとはBotの質問に答える形で日付や活動内容、活動時間などを順番に入力すれば登録作業が完了します。
トーク画面から会話形式で活動内容を記録。
感覚で項目を選択することができるため、負担なく作業を行える
LINE WORKSから登録した活動内容は、すべてAWSクラウドサービスに収集される仕組みです。そのデータをダウンロードして、本社や支社の担当者が集計を行っています。その際、設計部門で構築したExcelのマクロ機能を使って集計作業を自動化しているので、集計業務の効率化も実現しました。
Botの開発や全社展開する際に苦労したことや工夫したことはありますか。
水上さん:
Botを開発する際には、現場の業務の流れをきちんと理解して置く必要があります。そのため、実際に活動内容の登録者や集計者に事前にヒアリングし、常にユーザーを意識しながらPoC開発を進めていきました。拠点施行を実施しながらユーザーの声を本番環境構築時に反映していったのです。
設計部門で運用を開始する際には、全国の拠点に足を運び、現地で使い方の説明会を開きました。幸いLINE WORKSの仕組みはシンプルで使いやすいので、皆さんその場ですぐに使えるようになりました。その後、建設部門にも水平展開し、建設担当者の業務の「見える化」も実現しています。その際はコロナ禍だったこともあり、オンラインで説明会を実施しましたが、建設部門もすぐに使っていただけるようになりました。
今回のBotの活用によって、どのような効果がありましたか。
下野さん:
まずは、登録・データ収集作業の負担軽減です。Botの導入によって活動登録の入力が月末に集中しがちだった点が大きく改善されました。毎日の入力作業が簡便になったことに加え、集計作業がほぼ自動化されたので、本来のインテリア設計業務に専念できるようになっています。ある分析結果からは、広島支社の設計担当者は他拠点に比べて契約後の設計業務に非常に多くの時間を費やしており、契約前の活動時間とのバランスが異なることが判明しました。そこで、事前のお客様ヒアリングを入念に行い、契約前に対応できる設計業務プロセスを見直すことで、契約後の業務が効率化し、お客様に設計書をお渡しするまでの時間が短縮されました。
蜂谷さん:
私は広島支社で建築部門の責任者として、各施工現場の管理を担当しています。建設部門では、Botを使って安全管理や品質管理、お客様との打ち合わせ時間などを日々入力することで、それぞれの建設担当者がどの仕事にどれだけの時間をかけているかが具体的に見えるようになりました。例えば、Aさんは、お客様との打ち合わせに多くの時間を費やしているが、安全管理にはあまり時間をかけていなかったり、移動時間に多くの時間を費やしていたりするケースがあります。そのデータをもとに、担当者一人ひとりに適切な指導が行えるようになりました。
木下さん:
私は現場で工事管理を担当していますが、事務所に戻らなくても隙間時間にスマホやタブレットを使って、活動登録を気軽に入力できることが大きなメリットです。その日の活動内容の入力作業を、自宅へ帰る前に車の中で入力するように決めています。Botの質問に答えるだけで5分もかからないので、とても便利です。
お客様や施工店様との連絡にもLINE WORKSを活用しているようですね。
岡林さん:
私は営業担当として、住宅展示場でお客様と実際に商談を行っています。住宅展示場で商談が成立したときに、社内担当者がグループトークを立ち上げますので、営業や設計、現場監督など社内の担当者が情報共有に活用しています。住宅の着工後は、外部トーク連携機能を活用して施工店様にもLINEで参加してもらい、関係者が一丸となってお客様が求める理想的な住まいづくりをご支援しています。
木下さん:
グループトークで現場の進捗状況や問題点を一瞬で共有できるので、とても役立っています。例えば、施工店様がスマホで問題個所の写真を撮影し、「ここはどうしましょうか?」とグループトークで相談します。すると、その情報が関係者に即座に伝わり、最善の解決策を導き出せるので、品質や作業効率が格段にアップします。事務所に戻ってから連絡する手間が省けるので便利になったと好評です。
案件ごとにグループトークを立ち上げ、外部も含めた関係者全員でやり取り
岡林さん:
現在は、住宅展示場でお客様とLINEのID交換を行い、外部トーク連携を使って直接やりとりするケースが増えています。お客様は普段からLINEを使い慣れていらっしゃいますので、私たちとのコミュニケーションが円滑に行えるようになりました。メールでは遠慮してしまうような細やかな要望も気軽に伝えていただけますし、それにお応えすることでお客様満足度の向上に少なからず寄与していると感じています。
今後、LINE WORKSをどのように活用していきたいと考えていますか。
水上さん:
LINE WORKSはBotを活用した短期間・低コストに導入可能なデータ収集ツールとして、他の業務展開が考えられます。今後は、設計部門と建設部門の活動データを組み合わせた部門を横断した分析など、より全体的な課題を洗い出し、お客様満足度の向上に寄与したいと考えています。さらに、LINE WORKSをベースにしたさまざまな仕組みを構築し、全国の成功事例を共有して活用するなど、会社全体の業務改善や効率化に努めていきたいです。
【お話を伺った方】
情報企画部
水上 大介さん
社内の情報システムの企画・開発を担当。職場の困りごとをITツールで解決することで、従業員が働きやすい環境づくりに努めています。
広島支社 建築技術部 部長
蜂谷 一秀さん
建築部門の責任者として、各施工現場の管理を担当。現地で円滑に工事が行えるようにすることが主な業務。その一環としてITツールの活用支援も行っています。
広島支社 広島工事センター
木下 翔さん
現場監督。設計者が作った図面をもとに、施工業者とコミュニケーションを取りながら、お客様の要望を実現する「良家づくり」を実践しています。
広島支社 広島設計センター
下野 幸子さん
施主と打ち合わせをしながらインテリア設計業務を担当。広島支社における設計者の活動内容の集計作業も行っています。
広島支社 東広島営業所
岡林 紗耶さん
住宅展示場の営業担当。LINE WORKSをフル活用し、社内の情報共有やお客様との円滑なコミュニケーションに努めています。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2021年7月当時のものです。