鹿児島県鹿屋市に本所を置き、垂水市や肝属郡の2市4町の農家を総合的にサポートしているJA鹿児島きもつき(鹿児島きもつき農業協同組合)。代表理事組合長が推し進めるイノベーションとデジタル化の一環でLINE WORKSを導入しました。LINE WORKS導入により、迅速な情報伝達の実現のほか、各種会議資料、通知、回覧文書等の紙資料をLINE WORKSを利用して共有するようになり、ペーパーレス化が進展。今後は組合員とのコミュニケーションツールとしての活用が期待されます。
本事例のポイント
-代表理事組合長が掲げるイノベーション創出・デジタル化の基盤ツールにLINE WORKSを活用
-他部署の活動報告をグループで共有し、接点の少ない部署どうしの相互理解を促進
-定例役員会議で使用していた400枚以上の紙資料をデジタル化
-組合員のLINEとつながり生産農家を巻き込んだ直売所運営を展望
JA鹿児島きもつき様の事業内容をお聞かせください。
福元さん:
JA鹿児島きもつきは鹿児島県鹿屋市と垂水市の2市および肝属郡の4町にて事業を展開している協同組合です。具体的には肥料や農薬などの生産資材を安定供給する「購買事業」や、組合員の営農に関わる「販売事業(園芸畜産)」、財産を守り安心を提供する「信用・共済事業」などの事業を展開しています。
2020年には、農と食と交流のテーマパークとして農畜産物直売所「どっ菜市場」をオープンし、組合員と消費者をつなぐ取り組みをおこなっています。そのほか、管内で未婚の農業従事者さんの出会いのきっかけを作ろうと、出会い応援事業「MEAT(ミート)婚」を開催したり、鹿屋市と同市の霧島ヶ丘公園で農業まつりを開催するなどの活動も行っています。
LINE WORKS導入前はどのような課題に直面していましたか。
福元さん:
「部署間の縦割りの壁」と「コミュニケーションの取りづらさ」です。JA鹿児島きもつきは組織形態上、どうしても部署の縦割りが存在し、隣の部署が何をやっているのか、不透明な部分がありました。この縦割りの壁を打破するためにも、部署を超えたコミュニケーションの必要性を感じていました。
また、JA鹿児島きもつきの管轄地域は2市4町にまたがり、本所−支所間の距離は最も遠い佐多支所で40km以上離れています。かつてはたった1時間の会議のために、往復3時間をかけて出席していたこともありました。このような非効率なコミュニケーションも課題として認識していました。
大﨑さん:
本所ではパソコンが1人1台設置されていますが、支所では端末1台を3人程度で使用しています。こうした事情もあり、主な連絡手段は電話とFAXでした。しかし、電話は相手の手を止めてしまいますし、FAXは相手が確認したかどうか、送り手からは判断が付きません。これらの課題を解決し、効率的なコミュニケーションを取るための、何らかの改善策が必要でした。
福元さん:
主な連絡手段が電話とFAXとなると、必然的にプライベートで使うLINEを業務で使用する職員が出てきます。しかし、LINEは業務とは関係のない友だちへの誤送信といった情報漏えいリスクが払拭できないばかりか、公私の混同を招きかねず、早急な対策が必要でした。
谷﨑さん:
総務人事課に所属する私は、会議資料を含め、各種紙資料の作成および送付業務を行っていました。しかし、これらの業務には多くの手間と時間が掛かっていたため、デジタル化を通してどうにか改善できないか、と考えていました。
福元さん:
JA鹿児島きもつきには紙文化が色濃く残っています。例えば、FAXでのやり取りに加え、他拠点へ送る書類・郵送物は当番制で職員が日々、車で直接送り届けています。特に書類の運搬は、職員の時間的・身体的負担になっているほか、交通事故のリスクも生じてしまうため、ペーパーレス化の推進は必須でした。
数あるツールの中から、なぜLINE WORKSを選定されたのでしょうか。
大﨑さん:
代表理事組合長により、名指しでLINE WORKSの導入指示があったのがきっかけです。LINE WORKSを指定した理由は、普段から職員が使い慣れているLINEと似た操作感のLINE WORKSであれば、デジタルリテラシーの有無に関係なく浸透しやすい、と判断したのでしょう。
福元さん:
組合長は2019年よりJA鹿児島きもつきのホームページで、「イノベーションに挑戦します」と明言しています。これは農業生産、購買・販売事業でイノベーションを起こすことで、農家経済や地域農業などが豊かになる、と考えているためです。このイノベーションへの挑戦を進める中、新型コロナウイルスの影響はもちろんJA鹿児島きもつきにもあり、急速に変化する社会に取り残されないため、また組織内のデジタル化を進めるために、デジタル人財を育成する「デジタル人財センター」も新設されました。LINE WORKSは、そうした組合長が急務として掲げるJA鹿児島きもつきのデジタル化の一環として導入されました。
LINE WORKSを運用するうえで、管理者として気をつけていることはありますか。
福元さん:
全職員に活用を浸透させるためにも厳しいルールは設けず自由に使ってもらい、スマホはBYODで利用してもらっています。管理者として、監査機能はトークのログを確認できるので、いざというときにはハラスメントの防止に有効だと感じています。
LINE WORKSの具体的な活用シーンおよび導入効果をお聞かせください。
【グループ】紙書類の配布をファイルの共有に置き換え、ペーパーレス化を推進
【掲示板】情報が読まれたか判別が難しかった全体周知の徹底が実現
【アンケート】研修の出欠席や農産物の注文などの配布・回収が簡便に
福元さん:
特に活用しているのが、グループトークです。全職員が入ったグループでは、各部署の活動報告が行われています。具体的には、園芸農産課の職員から「今日は大阪で販促活動しています」「東京のフェアに来ました」という気軽な報告などが寄せられます。かつては、園芸農産課を含め、他部署の状況はほとんど把握できませんでしたが、グループトークの活用により、他部署の理解も深まったと思います。なお、最も情報発信しているのは、LINE WORKS導入を率先した代表理事組合長です。
大﨑さん:
私はアンケート機能を多用しています。例えば、研修の出欠席をアンケートで取りまとめたこともあります。配布、回収の時間も手間もかかりませんし、未回答者へは「○日○時までに答えてください」とトークで即座に送れます。
谷﨑さん:
総務人事課は部署間の調整役となることが多いため、トークやカレンダーを使って会議の調整をしています。また、これまで紙の書類で行っていた通知文書や会議資料をLINE WORKSと他システムとを併せて完結させることで、ペーパーレス化を進めました。これまで定例の役員会議では約20枚の会議資料を20人分出力して配布していましたが、現在はLINE WORKSと他システムで運用することで資料を共有し、毎月400枚ほど印刷していた会議資料は、完全ペーパーレスな運用を実現できました。
ちなみに、ペーパーレス化は紙の削減だけでなく、資料作成の手間と時間が大幅に削減されたという効果も生んでいます。例えば、これまでは職員や職員のご家族に不幸があった際には、訃報をお知らせする案内資料を作成・出力し、FAXで各拠点へ送付していました。案内資料の出力・FAXを送るためには出社をする必要がありましたが、現在は自宅からでもLINE WORKS上でスムーズに案内の作成・周知ができています。
大﨑さん:
使い始めではありますが、掲示板も利用中です。トークだけでなく、掲示板の投稿に対してもトークと同様に個人単位で既読・未読が分かる点は便利だと思います。未読者には再通知をしたり、口頭で確認を促したりすることで、以前よりスムーズに全体周知ができるようになりました。
組合員のLINEとつながる取り組みも始めているのですね。
有村さん:
食の創造推進室のLINE WORKSと一部の組合員のLINEと外部トーク連携でつながり、農畜産物直売所「どっ菜市場」で販売する農作物に貼り付ける組合員の顔写真や田畑の写真を、トークグループ上で収集する試みを実施しています。今後より多くの組合員とつながることで、画像の共有だけではなく頻繁に有意義な意見交換やアイデア共有が実現するのではないかと期待しています。
今後、どのようにLINE WORKSの活用の幅を広げていきたいと考えていますか。
福元さん:
現在、JA鹿児島きもつきでの行事・スケジュール管理や施設予約などは、鹿児島県下JA統一で総合情報システムを用いています。しかし、同システムにあるグループウェアの機能は約3年後には廃止されるため、グループウェアとしての機能はLINE WORKSへの置き換えを前向きに検討中です。
大﨑さん:
電話およびFAXでのやり取りはまだまだ残っているのが現状です。全職員にLINE WORKSを利用してもらい、部署の垣根を越えた横軸展開も活発化させることで、JA鹿児島きもつきとしてのイノベーション創出につなげていきたいです。そのほか、アプリ連携やソリューション連携も進めていきたいです。例えば、稟議などワークフローによる決裁通知をLINE WORKS上で受け取る仕組みを整えられれば、より業務効率化を図ることができるでしょう。
有村さん:
より多くの組合員と外部トーク連携でつながり、生産農家とのコミュニケーションを活発化させ、組合員も巻き込んだ直売所運営を推進していきたいと考えています。
【お話を伺った方】
デジタル人財センター 部長
福元 直樹さん
JA鹿児島きもつき内外のデジタル化推進のほか、職員教育に従事している。
デジタル人財センター 係長
大﨑 裕太郎さん
JA鹿児島きもつき内外のデジタル化および職員教育の実務を担っている。
経営企画部 総務人事課 主任
谷﨑 孝基さん
給与や保険などに関わる事務業務や新卒の採用関連業務を担当している。
食の創造推進室
有村 紀亮さん
2020年にオープンした農畜産物直売所「どっ菜市場」の責任者。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2022年12月当時のものです。