栃木県の県庁所在地であり人口およそ51万人の北関東最大都市、宇都宮市。住みやすいまちづくりのために日々施策を講じる宇都宮市議会は、議会内のコミュニケーションを発展させるグループウェアを検討するため、ICT推進プロジェクトチームを設置しました。従来の連絡方法であったメールと電話をLINE WORKSに置き換えて、議員と事務局双方の業務効率を向上。さらに災害などの緊急時の連絡網の構築にもLINE WORKSを活用しています。詳しいお話を、宇都宮市議会議員 馬上剛さん、小平美智雄さん、宇都宮市議会事務局総務課 髙橋雅人さんに伺いました。
【本事例のポイント】
- メールと電話ではできなかった速やかで確実な報連相を実現
- 事務局から議員一人ひとりに対してかけていたメールや電話の事務量を軽減
- LINE WORKSで連絡網を整理して災害時の情報伝達訓練を実施。被害状況を各所から的確に集約
事業内容と皆さんの役割を教えてください。
– 馬上議員 :
私は宇都宮市議会議員に当選後、ライフワークの一環として、10年以上前から課題となっている宇都宮市の中心市街地の活性化を推進しています。また、2020年に設置された宇都宮市議会ICT推進プロジェクトチームのチームリーダーに就任し、市議会のICT化に注力しています。
– 小平議員 :
私は宇都宮市議会ICT推進プロジェクトチームの副リーダーを務めています。私自身が30代半ばで議員に就任したことから、若者や子育て世代といった市政に声が届きにくいと言われる中間層の年代の方々へ寄り添い、その声をしっかりと行政に反映していくことを目指しています。
– 髙橋さん :
私は宇都宮市役所の職員として、議会事務局総務課に配属されてから4年目となりました。議長・副議長の秘書業務や、宇都宮市議会ICT推進プロジェクトチームの運営を担当しています。
宇都宮市議会でICT推進プロジェクトチームが発足された背景を教えてください。
– 小平議員 :
私たちが就任した当時、議会からの連絡はすべて自宅へのFAXか電話のみでした。また、議会で使用する資料はすべて紙に印刷され、事務局の職員が議員一人ひとりの机上に配付していました。過去の資料を再確認したいときには、膨大な量のファイリングから探さなければなりませんでした。事務局から議員への情報周知にかかる事務と、印刷される紙の量をどうにか削減できないだろうかと検討がはじまりました。
– 馬上議員 :
2014年から、議会関係の連絡はすべてメールで送信することとし、全議員へのタブレット貸与を提言しました。FAXに慣れている議員からは不安の声もあがりましたが、ペーパーレス化が環境問題の改善に貢献することや、指一本で操作できるタブレットのシンプルな操作性などを改めて説明し、段階的に納得をいただきながら活用をすすめました。これをきっかけにFAXが廃止されたことは、市議会のICT化への重要な一歩となりました。そして2020年、タブレット端末の新しい利活用方法や、より円滑な情報共有ができるグループウェアの導入を検討するため、宇都宮市議会ICT推進プロジェクトチームを設置しました。
議会のコミュニケーションにはどのような課題がありましたか。
– 髙橋さん :
タブレットの導入後は、議会からの連絡手段は「紙と電話」から「メールと電話」に変わりました。しかしメールを送信しても返事がない場合は、そのメールが議員の皆様にご覧いただけたかどうか、事務局側からはわからず、重要なメールについては、改めて既読確認を電話で行うということも多くありました。そのため、お互いの状況が把握できるような機能をもったグループウェアの導入が望まれていました。
– 小平議員 :
議員の中にはタブレットを持ち歩くことが負担となり、自宅や事務所に据え置きしがちになることで、メールを受信してもすぐに気付けないこともあると話す者もいます。タイムリーな情報共有や迅速な判断を求められる議員にとって、タブレットでやりとりするメールだけでは不十分なのではという懸念が残っていました。
課題解決の手段としてLINE WORKSを選択した理由をお聞かせください。
– 馬上議員 :
まず背景として、年代を問わず個人がスマートフォンを所持する時代になったことがありました。LINE WORKSはマルチデバイス(PC、スマートフォン、タブレットなど)対応で、タブレットと併用で個人のスマートフォンにもインストールして使えます。タブレットを携帯していなくても、個人のスマートフォンであれば即時に連絡の確認ができるので、その点が導入の大きな決定打となりました。
– 髙橋さん :
普段から使い慣れているLINEに見た目や操作性が似ているLINE WORKSは、グループウェアに馴染みのない議員の皆様や職員にとって心理的なハードルが低く、導入への安心感につながりました。
また、既読機能があるので、誰が確認したか、していないかが一目でわかります。これにより事務局からの電話やメールの連絡を必要最小限に抑えることができるだろうと思いました。
LINE WORKSはどのように活用され、効果を出していますか。
【トーク】情報が行き届いたかを把握。会派を越えたコミュニケーションを実現
【グループ】フォルダ機能とノート機能の活用で、的確な情報整理が可能に
【アンケート】個々への回答確認が不要になり、集計作業も不要に
– 馬上議員 :
現在、全議員と事務局の職員の分を合わせて54名分のアカウントを付与し運用しています。まずは、各会派内の共有事項、委員会からの連絡、議長・副議長と事務局間の報告など、多様な情報をきちんと仕分けるため、関係するメンバーが入ったトークグループを作成しました。これによって、メール作成の都度メールアドレスと件名を入れる必要もなく、簡単に関係者全員に一斉連絡ができます。既読状況の確認も個人単位でできるので、確実に相手に情報が届いているという安心感が生まれています。
– 小平議員 :
自分とは異なる会派に所属する議員への事務連絡やアポイントなども、トークで手軽に連絡ができるようになり、会派や役職を越えたコミュニケーションが図れていると実感しています。
– 髙橋さん :
ICT推進プロジェクトチームでは、会議の検討結果を議長へ報告していますが、その前にチームメンバーに対して報告書のファイルを、トークグループのフォルダに格納して共有したり、ノート機能で議事録を共有したりして、確認のお願いをしています。LINE WORKSはこうした共有機能が充実しているので、すべての報連相をLINE WORKSで完遂することができます。共有内容に合わせて機能を選べるので、情報整理のスタイルが最適化され、振り返りやすくなったことはありがたいですね。
既読機能で議員の状況を正確に把握。共有機能で明確に情報整理
近年は感染症対策の一環で、会議をオンラインで開催することがあります。LINE WORKSのフリープランではビデオ通話の人数に制限があるため、現在のところは外部のオンライン会議ツールを利用していますが、会議出席に必要となるミーティングIDを、対象者を招待したトークグループに送信するだけで全員に周知できるので、簡易に招集できています。
– 馬上議員 :
式典などの出欠確認や研修の日程調整は、アンケート機能を使って集計しています。今まで一人ひとりに電話をしたり、個々からのメールの返信を待っていたりしていたのですが、アンケート機能を使えば作成者に集計結果がダイレクトに届くので、全体の把握までにかかっていた工程が省略され、とてもスムーズになりました。
議員の出欠確認は、アンケート機能で素早く集計
災害などの緊急時の対策にも、LINE WORKSをご活用いただいているそうですね。
– 髙橋さん :
これからは災害発生時にも迅速な対応ができるようにと、LINE WORKSを活用した情報伝達訓練を実施しましたが、まずは事務局から議員の皆様に対して、議員本人が無事かどうか、アンケート機能を用いて安否確認をしました。
また、災害が発生した際に議員の皆様から寄せられる各地域の災害情報は、議会事務局で一元化を行った後に危機管理を管轄する部局に提供することとしていますが、以前は情報が電話やメールでばらばらに届いていたために、それらの整理・集約に時間がかかっていました。そのため、現在は情報のやりとりをLINE WORKSに一本化することとし、写真や動画などを添付して送信していただくようにしました。これにより多くの情報を効率的に事務局に集約することができるようになるため、それぞれの状況に合わせてより的確な対応が可能になると考えています。
– 馬上議員 :
現在はLINE WORKSのアプリを自分のスマートフォンにインストールしている議員も多くいるため、写真・動画の撮影、送信などの対応がよりスピーディになり、議員の安全面にも配慮できるのではないかと思います。
– 小平議員 :
災害は勤務時間中に起きるとは限らず、今の時期は新型コロナウイルスの感染者数の増減などでも、日々状況が大きく変わってしまいます。そんな環境でも、LINE WORKSがあれば、全員が同じ情報をリアルタイムで共有できます。今回の情報伝達訓練では迅速性や正確性をLINE WORKSで補えることが確認できたので、市議会内の連携がより強化されていくだろうと確信しました。
LINE WORKSの活用を、今後どのように発展させたいとお考えですか。
– 馬上議員 :
今後も議員のICTスキルの向上を目指し、LINE WORKSを通じて議会のICT化を成し遂げていきたいです。また、将来的に行政との連絡ツールもLINE WORKSに統一できれば、宇都宮市とのより強固な連携が図れるのではないかと期待しています。
– 小平議員 :
議員はそれぞれ、個別の事務所や自宅で業務を執り行っていますので、共同で仕事をするという場面がなかなかありません。今後はタスク機能を活用し、離れた場所、異なる時間帯でもお互いの業務の進捗を把握しやすくしたいですね。
– 髙橋さん :
今後も、議員の皆様に対しての連絡手段においてLINE WORKSをより効率的に使う方法を検討していくことで、さらなる業務効率化アップにつながるのではと考えています。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2021年11月当時のものです。