茨城県つくば市で消化器専門の医療機関として1987年に開設された筑波胃腸病院は、2018年に実施した新しい経営体制への移行に合わせ、職員の仕事満足度の向上に着手。その一環としてLINE WORKSを導入し、職員のスムーズな情報共有に成果を挙げています。AmazonビジネスをLINE WORKSと連携して購買業務を効率化し、患者と職員にとって居心地の良い病院づくりを実現しています。
本事例のポイント
- 患者との会話や周辺情報を共有し患者に提供する医療サービスを向上
- 産休・育休後の職場復帰の不安を払拭
- 最も患者を理解している職員に購買権限を与え、より良い病院作りへ
- 外来患者の拡大と職場満足度向上に貢献
筑波胃腸病院についてお聞かせください。
鈴木 隆二さん:
筑波胃腸病院は、約35年前に開設された消化器を専門とした病院です。外来では月間で約4千人近くの患者様に利用いただいており、地域に根付いた専門性を持った病院として運営しています。私は理事長として病院経営全体を統括するほか、副院長として患者さんの診察に携わっています。
田村さん:
私は病院長として、診察や手術を担いながら全職員を率いています。当院は入院ベッド数が60床。年間で460前後の手術を行っています。内視鏡検査も数が多く、上部下部を合わせれば年間6千件以上の検査を行っています。
情報共有において、これまでどんな課題を抱えていましたか。
松浦さん:
私は事務長として病院のバックオフィスを統括し、また毎日の朝礼では経営からの情報を全職員に伝えています。病院は看護師、事務職ともに、常に現場で動き回っていたり、勤務シフトが異なることもあり、情報を共有するのは非常に難しい職場だと感じています。例えば、重要な情報を朝礼で共有しても、勤務が休みの職員には行き渡りません。それを回避する手段として手書きの申し送りノートがあるのですが、読んだかどうかはわからないですし、申し送りノートを見る時間がなく伝わっていないということは日常茶飯事でした。
鈴木 隆二さん:
看護師や職員間の申し送りは漏れなく行っていますが、記録に残さないような患者さんに関するちょっとした日常会話や周辺情報を全員が常に共有できるとは限りません。「あの職員さんは知っているけど、あの看護師さんは知らない」とか、「別の看護師さんに言ったのに」というのは、やはり患者さんの不信感につながります。
診察は病気だけを診るのではなく、人そのものを診ていくべきで、我々の信念です。患者さんの細かな情報を共有するためには、ITを活用することが必要になってくると感じていました。
LINE WORKSに注目した理由、導入の経緯を教えてください。
鈴木 隆二さん:
導入に当たってはさまざまなITツールを比較検討しましたが、利用する現場の職員が慣れているのは、やはりLINE です。「導入スピードファースト」という視点を第一にLINE WORKSを採用し、2019年に導入しました。
また、セキュリティ面で安心ということも導入の理由です。導入実績の中には、大学病院があり、これしかないと思って決めました。
LINE WORKSの具体的な活用と効果についてお聞かせください。
鈴木 隆二さん:
毎日の外来数や入院患者さんの数をトークで日報として発信してもらっています。また、連絡会議の報告にも用います。委員会で決まったことや、周知事項などをLINE WORKSのホームに上げてもらうことで、すべての職員が委員会の活動状況を確認できます。
最近では新型コロナウイルス対策として、アンケート機能を使用して職員の体温や体調管理を行ったり、ワクチン接種の意向確認を行ったりました。
鈴木 さつきさん:
私は手術室看護師をしています。LINE WORKSの導入によって、今までは次の出勤日まで見ることができなかった勤務表が、作成された段階で看護師長から看護部全員にトークで共有されるようになり、次の出勤日を待つことなくシフトを確認できるようになりました。
その他にも日常の業務連絡や提案なども、関連部署に一斉に伝わり瞬時に情報が共有できるという点が便利だと感じています。
永作さん:
現在、私は検診部で看護師として働いていますが、2019年の9月から先日まで産休に入っていました。休暇中は病院の状況がわからなくなるため、休みに入る前は復帰した時に今までのように対応できるかすごく不安でした。しかし、LINE WORKSを導入したタイミングでしたので、自宅にいながら子育ての隙間時間に、病院内の動きや決定事項、変更事項などをトークやホームで確認できたことで、院内の状況を把握することができました。
やはりお休み明けの時点で少しでも病院の状況を知っているのと、ゼロの状態から再スタートするのとでは、不安感がまったく違います。LINE WORKSがあるのは心強いと思います。
鈴木 隆二さん:
職員に会う度に同じことを説明しなくても、全員が同じ情報を把握できる環境があるのはありがたいです。職員どうしちょっと声を掛け合うだけで、お互いに状況を把握していて速やかに行動に移せるというのは、患者さんにとっては安心感につながりますし、職場の風通しも良くなったと感じています。
LINE WORKSによって、病気そのものに直接関わらないような患者さんの周辺情報を共有することが簡単になり、抜け漏れもなくなりました。このことは、患者さんにとって最善の医療につながると考えます。結果的に診察や検査を受ける患者さんの増加につながっているのは間違いないと思います。
田村さん:
患者さんに来院していただけるのは、僕ら医療者・医者だけの力ではありません。受付や事務の職員や外来の看護師が、患者さんに向き合い寄り添うという姿勢が、この病院の強みです。LINE WORKSを使って分け隔てなくすべての職員に一斉に情報を行き渡らせて、職員間のコミュニケーションを良くすることは、この病院の強みをより引き立ててくれると思います。
LINE WORKSと連携できるAmazonビジネスも導入していますね。
導入の狙いと実感している効果について教えてください。
鈴木 隆二さん:
Amazonビジネスを導入してLINE WORKSと連携して購買プロセスが大きく変わりました。狙いは、より患者さんのことを考える病院にし、患者さんに選んで良かったと思ってもらえる病院にしたかったことが理由です。購入の権限は職員全員に持たせ、新型コロナウイルスの感染対策としてお弁当の容器や使い捨ての手袋、事務用品など職員が必要と思ったものをAmazonビジネスで自由に購入できるようにしています。
鈴木 さつきさん:
私は資材購買担当も兼務しており、医療用資材以外の院内で必要な備品の購入はLINE WORKSと連携したAmazonビジネスを利用していますが、利用した実感を一言でいうと、LINE WORKSのトークで行うAmazonビジネスでの買い物は、とにかく時間がかからない。LINE WORKSの一部だと思ってしまうくらい、別のサービスだと意識することなくチャット画面からすぐに買い物ができるところが便利です。
通常のAmazonビジネスでいくつかのカタログを比較しながら必要な物品を探すといった煩わしさから解放されました。患者さんの対応優先で時間を使いながら、商品の検索と購入は隙間時間に行うだけで済むようになりました。時間は限られているので、業務の効率化が図れるようになったと思っています。
鈴木 隆二さん:
LINE WORKSと同時にAmazonビジネスを導入することによって、必要なものがすぐに購入できる。一番患者さんに接している看護師や事務職員が、病院として必要だと思うものを自分の裁量で速やかに購入できるようにすることは、結果的に患者さんのためになると思います。
田村さん:
一定額以上の購買は稟議書を出すという規程はあります。範囲内であっても患者さんにとって本当に必要なものを、職員自らの判断で購買ができることは、職員の満足度向上にもつながると思っています。
LINE WORKSとAmazonビジネスを活用しての
今後の展望をお聞かせください。
松浦さん:
将来的にはAmazonビジネスの購買履歴から、当院の購買傾向や価格の適正といった分析をしていきたいと思います。
田村さん:
病院は患者さんを治療し地域に貢献することが使命ですが、職員も大事です。この病院で働くことに楽しさを感じ、満足度を上げたい。高い水準の医療を提供するためには、医療技術だけでなく、職員が出勤するときに「今日も頑張ろう」と思えるような環境づくりが重要だと考えています。そうした環境を実現するために、LINE WORKSやAmazonビジネスを活用したいと思います。
鈴木 隆二さん:
今後はLINE WORKSのスケジュール機能を用いて、医師の予定を共有し看護師が医師のスケジュールを把握できるようにしたり、手術予定の管理にも活用したいです。
我々は患者さんに実際に触れないと、状態が分かりません。患者さんとの時間を密にするためには、何かを簡略化する必要があります。LINE WORKSは院内のコミュニケーションを効率化する手段としては大変有効でした。患者さんと接する部分は大事にしながら、デジタルツールを使ってもっと病院を発展させていければと思います。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2021年4月当時のものです。
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