鳥取県米子市に本所を構え、県西部の管轄エリアに支所や営農センターなどを置くJA鳥取西部(鳥取西部農業協同組合)は、生産者とのコミュニケーションをスムーズにするため、LINE WORKSを導入。営農指導などにあたる担当者のLINE WORKSと生産者のLINEを連携させ、スピーディに連絡を取り合える体制を築きました。職員どうしの意思疎通も促進され、重要な通達なども素早く周知されるようになったといいます。
本事例のポイント
- 生産農家と職員が円滑に連携できる環境を構築
- 写真や動画で重要な情報をわかりやすく伝達
- 農作物に関する幅広いナレッジを掲示板で共有
JA鳥取西部様の事業内容をご紹介ください。
野口さん :
JA鳥取西部は鳥取県西部の16の農業協同組合が合併してできた事業体で、組合員数は約2万6,000人(准組合員含む)です。「食を通じて、未来を育てる」のスローガンのもと、営農指導や農作物の流通、肥料や農薬の販売、信用事業(銀行業)や共済事業などを行っています。
以前はどのような課題に直面していましたか。
野口さん :
本所の営農部と管内各地の営農センターからなる営農部門では、生産物の品質向上に向けた営農指導や相談業務を個々の生産者様に行っていますが、これまで職員と生産者様、あるいは職員どうしは、主に電話で連絡を取り合っていました。電話は出てもらえない場合が多く、応答されたとしても相手の作業を中断させてしまうことから、チャットツールの導入を検討するようになりました。
谷野さん :
手早く気軽に意思疎通を図るため、職員と生産者様が個人LINEでやり取りする実態が一部で見られ、秘匿すべき業務情報などを含むメッセージを別の友だちへ誤送信してしまうリスクも以前から懸念されていました。
吉持さん :
「LINEで連絡を取り合いたい」という生産者様の希望に応じて個人LINEを使っていた職員の中には、プライベートのLINEアカウントを業務で使うことに抵抗感を抱く者もいて、オフィシャルのコミュニケーションツール導入を望む声があがっていました。
野口さん :
営農部には、農作物の病害被害に関する報告など、生産者様からのさまざまな情報が営農センターを通じて寄せられます。そうした情報は営農部門内で速やかに共有し、各職員が担当する生産者様にお伝えしなければならないのですが、JA鳥取西部では業務のIT化が遅れており、そういった情報を営農部の職員にスピーディに周知する手だてもありませんでした。
これらの課題を解消したいと考えていたところ、職員に貸与しているガラケーをスマホに切り替えることになり、そのタイミングで営農部門にビジネスチャットを導入したいと考えました。
課題解決の手段としてLINE WORKSを選ばれた理由を教えてください。
野口さん :
最近はLINEを利用している生産者様が非常に多いことから、LINEとつながれる唯一のビジネスチャットであるLINE WORKSに注目しました。チャット以外にも掲示板などの機能があり、営農部門の職員どうしがスムーズに情報を共有するためのグループウェアとして活用できるという期待もありました。
LINE WORKSの具体的な活用シーンと導入効果をお聞かせください。
【トーク】生産者からの病害などに関する問い合わせに迅速に対応
【グループ】品目ごとのグループトークルームで相談やナレッジを共有
【掲示板】部門内通達や農作物のニュースを迅速に周知し生産者のサポートに活かす
野口さん :
導入時には、ガラケーに替わるスマホにLINE WORKSアプリをインストールし、組織図に沿った基本的なトークグループを作成して配布しました。運用開始後は電話主体だった連絡手段がトークに置き換わり、以前と比べてスピーディかつ確実な情報伝達がなされるようになったことを感じています。
谷野さん :
私は生産者様とダイレクトに接する機会はあまりありませんが、ブロッコリー部会やねぎ部会など、作物の種類ごとの生産者様で組織されている部会の担当職員などの間で以前よりスムーズに連絡が取れるようになりました。シャドーITに伴う情報セキュリティリスクも低減させることができています。
吉持さん :
入職して3年目の私はまだ経験も知識も浅いのですが、営農指導員として生産者様から作物に関するさまざまな相談を受けています。これまでわからないことは上司や先輩職員に質問していましたが、今は品目ごとのグループトークルームが用意されているので、そこに質問を投稿すれば知識のある先輩職員が即座に対処法を教えてくれます。忙しい上司や先輩にわざわざ対面や電話で質問することは気が引けますが、グループトークで質問を投げかければ対応できる先輩に答えてもらえるのでいつでも気軽に質問できます。
写真だけではなく動画を送って共有できるのもトークの利点です。最近、生産者様の畑で農機メーカーによる新しい機器のデモンストレーションが行われましたが、撮影したその映像を別の地区の担当職員に参考資料として送信して感謝されました。
外部トーク連携の活用によって、生産者とのコミュニケーションはどのように変化しましたか。
谷野さん :
生産者様のLINEとの外部トーク連携は、現時点では試験的に始めたばかりですが、連携した一部の生産者様からは、病害などが疑われる作物の写真が営農センターの職員にトークで送信されることがあります。その職員がわからなければ本所の担当職員に写真を転送して相談し、本所でも解決できなければ、写真を県の機関にメールで送って判断を仰ぎます。生産者様ー営農センターの職員ー本所の職員という3者の連絡が対面・電話からトークに置き替わったことで、問い合わせや返答に要する時間が短縮され、生産者様への対応が非常に早くなりました。
トーク以外にどんな機能を活用されていますか。
野口さん :
営農部門全体で共有すべき通達を掲示板で周知しています。また、「ブロッコリー相談コミュニティ」や「白ねぎ相談コミュニティ」といったスレッドを立て、掲示板でも各品目に関する疑問を解消できるようにしました。職員にはそれぞれの担当分野がありますが、生産者様は複数の品目を生産されていることが多いので、専門外の作物について質問を受けることも少なくありません。掲示板を通じて多品目の情報に触れておくことは、生産者様へのサポート力を高めることにも役立ちます。
吉持さん :
私の所属する営農センターには肥料や農薬などを販売する店舗が併設されており、購買にこられた生産者様と会話をする機会がよくあります。掲示板で多様な情報に接するようになってからは、自分の担当ではない作物や、市場での相場動向などに対してもある程度お答えできるようになりました。使用する農薬の種類と回数に関するレポートなど、他地区の営農センターの職員が作成したさまざまな資料もアップされており、掲示板を閲覧することで有意義な情報が得られるようになっています。
谷野さん :
県が発令する病害虫発生の注意報なども掲示板で共有しています。病害虫の発生が実際に確認されると県の機関に防除対策に関する資料を提供してもらい、営農センターの担当職員を通じて生産者様に配布していますが、職員が早い段階から意識しておくことで、より万全な対応ができるようになりました。
LINE WORKSの活用を、今後どのように発展させたいとお考えですか。
野口さん :
このほど、人事課の採用業務に携わる職員にもLINE WORKSのアカウントを発行しました。これまで選考過程の求職者とはメールで連絡を取っており、既読機能がないことが不便でしたが、今後は求職者のLINEと外部トーク連携でつながり、面接日の案内などの連絡をLINE WORKSで行うようにする予定です。
現在はトークと掲示板の利用が中心ですが、カレンダーやタスクなど、未活用の機能も有効に使えるようにしたいと思います。連絡業務の効率化に向け、将来的には他の部門での導入も進めていきたいと考えています。
【お話を伺った方】
野口 和弘さん
特産園芸課 課長と市場流通課長を兼務し、両部門の業務を管理している。
谷野 一俊さん
各営農センターや行政機関と連携しながら営農事業に携わる。
吉持 良佑さん
野菜や花壇苗などの園芸品目を担当し、農家への営農指導にあたる。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2021年10月当時のものです。