香川県高松市で訪問看護ステーションなどを展開する株式会社 松は、スタッフ間の連絡手段としてLINE WORKSを導入。患者に関する申し送りなどをスムーズに伝達できるようにするとともに、グループ会社内の多職種連携も進めて、より万全な在宅ケアを提供できる体制を築きました。チャットだけではなく、変更が生じがちな訪問予定をカレンダーで関係者全員が確実に把握できるようにするなど、グループウェアとしても機能させています。
本事例のポイント
- 訪問看護スタッフが申し送り事項を速やかに関係者全員へ伝達
- 緊急訪問時の人員確保が迅速・容易に
- 病状を写真や動画で共有して他の看護師が助言できる
- 多職種連携によって万全のケア体制を提供
御社の事業内容をご紹介ください。
松村さん :
当社は香川県高松市で訪問看護ステーション、訪問介護ステーション、訪問介護事業所、グループホーム、居宅支援事業所、相談支援事業所などを運営しており、関連会社7社とともに「松グループ」を形成しています。介護・福祉事業を通じて高松市を住みやすく働きやすい街にすることが使命だと考えており、2020年には地域の社会人サッカークラブSONIOを支援する株式会社SONIOを創設。引退後のセカンドキャリアの問題と介護事業の人手不足を解消するため、選手が訪問介護のスタッフとして働けるようにするといった取り組みも行っています。
以前はどのような課題を抱えていましたか。
小野さん :
私が勤務する「訪問看護ステーションなごみ」では、訪問看護記録と請求業務を、香川県独自の訪問看護ネットワークシステムで行っています。記録は訪問看護にかかわる全スタッフが患者の状況を把握するために共有していますが、多数の項目を登録する作業は煩雑なので、訪問看護を終えた都度ではなく、その日の業務がすべて完了してから、あるいは後日まとめて記録することになります。
しかしそれでは、患者に関する情報を他のスタッフにリアルタイムに伝えることができないため、次回の訪問看護担当者に申し送りたい事項などは、プライベートのLINEで伝達していました。手軽に伝達できるLINEはとても便利な反面、あくまでもプライベートなコミュニケーションツールなので、業務の連絡をすることに抵抗感を抱くスタッフも少なからずいました。
太田さん :
私は「訪問看護ステーションなごみ」に作業療法士として勤務しています。個人LINEによるやり取りは、患者に関するセンシティブな情報が多数含まれることもあるので、スマホを紛失するなどした際の情報セキュリティも以前から懸念されていました。また、訪問看護の予定は患者のご都合でしばしば変更になりますが、その情報を外出の多い関係スタッフに速やかに共有するツールがなく、連絡に手間取っていました。そういった背景から、LINEのように気軽に活用できるビジネスチャットツールを導入するべきだと社長に伝えました。
松村さん :
訪問看護・介護に携わるスタッフは基本的に事業所外で仕事をするため、業務に関する情報を外で確認できて、素早く行動に移せることはサービスの向上にもつながります。個人LINEの運用にともなう課題について上申を受け、業務で利用するのに適したツールを速やかに導入する必要があると感じました。
課題解決のためにLINE WORKSを選定された理由と、運用開始までの経緯を教えてください。
太田さん :
いくつかのビジネスチャットツールを比較し、トークやカレンダーの使い勝手の良いLINE WORKSは、グループウェアとしての機能性が総合的に高いと思いました。
松村さん :
大半のスタッフがプライベートでも業務でもLINEを使っており、操作性の似ているLINE WORKSならスムーズに定着することが期待されたこともあり、グループ全8社に導入することを決めました。
小野さん :
各スタッフの私有スマホでのBYOD利用とし、セキュリティ保護の観点から利用時に毎回パスワードを入れてログインするルールにして運用を開始しました。
LINE WORKSの具体的な活用シーンと導入効果をお聞かせください。
【LINEとの違い】業務時間外にトークを気にする必要がなくなった
【グループ】患者名のグループをつくり関係者全員で情報を共有
【ビデオ通話】緊急時には患者の様子を共有して遠隔にいるリーダーの意見を仰ぐ
小野さん :
以前は業務時間外でもLINEに業務連絡が入ってくると、気になってしまってつい見たり返信したりしていましたが、LINE WORKSが導入されたことによって私的なコミュニケーションツールと業務用のコミュニケーションツールが分別されて、業務時間外に通知を気にするようなことがなくなりました。
現在の具体的な使い方として、訪問看護をするスタッフは1日の始まりに未読のトークをチェックし、勤務表のPDFを見て自分の訪問先を確認します。また、訪問看護を1件終えるごとに他のスタッフへの申し送りをトークで伝えています。「訪問看護ステーションなごみ」では、患者が約230名います。細かな配慮が必要な患者については、その方のお名前でLINE WORKSのトークグループを作成し、その方の看護に携わるスタッフ全員がいつでも情報を共有できるように工夫しています。
訪問先の患者の様子になんとなく違和感があるというとき、他の看護師の知見や意見を参考にしたい場合は、事務所にいる看護師に撮影した写真を送ったり、動画を送ったりしています。緊急時にはビデオ通話で患部を映して看護リーダーからアドバイスをもらうこともあります。
また、特に状態が思わしくない患者に関しては、当社グループ内の別会社のスタッフも参加するトークグループをつくって多職種連携を図り、より万全なケアをするよう努めています。
これまで、患者宅に緊急訪問する必要が生じたときは、その人員を手配するため勤務表を見て、手が空いていそうなスタッフ一人ひとりに電話をかけていましたが、今ではLINE WORKSのグループトークで一斉に募ることができます。応援要請の手間をかけず、速やかな人員の確保にも役立っています。
コロナ禍では患者宅に直行したスタッフが事務所に戻らずに直帰することが多く、スタッフどうしが対面する機会がほとんどありませんでしたが、トークで手軽にやり取りができたので、コミュニケーションを維持することができました。
太田さん :
LINE WORKSの既読機能はグループトークで便利ですね。既読・未読が個人単位でわかるので、未読の人に個別に電話をするといった対応ができ、連絡業務が大きく効率化しました。
ほかにLINE WORKSのどんな機能を活用されていますか。
【ノート】蓄積しておくべき情報を記録しいつでも確認可能に
【カレンダー】訪問予定の変更情報などをメンバー間で確実に共有
小野さん :
患者の主治医の連絡先や、医師からの特筆すべき伝達事項、ご自宅の鍵や薬の保管場所といったトークで流れては困るような重要な情報はグループノートに記録してメンバー間で共有しています。
太田さん :
カレンダーによってメンバーどうしでお互いのスケジュールが簡単に共有できるので、予定変更も瞬時に周知できます。訪問のスケジュールを紙ベースで管理していた頃は、予定が変更になっていたことを失念して不在の患者宅を訪問することがときどきありましたが、カレンダーを活用するようになってからはそういうミスがなくなりました。
また、最近新しい業務システムを導入したのを機に、その操作マニュアルのリンク先を掲示板にアップしました。迅速かつ確実な情報共有が期待されるので、今後さまざまなナレッジを社内に伝達するのに掲示板を積極的に活用していきたいです。
LINE WORKSの活用を、今後どのように発展させたいとお考えですか。
松村さん :
外部トーク連携でパートタイマーや派遣社員のLINEともつながれるようにすることを考えています。また、地域包括ケア体制を強化するには、地域内の多様な職種の方との円滑なコミュニケーションが不可欠なので、今後は自社グループ以外の関係者と広く外部トーク連携でつながることも検討したいと思っています。
【お話を伺った方】
松村 幸太さん
2012年に会社を設立し、訪問看護ステーションと訪問介護ステーションを開設。介護・福祉事業を通じて地域に貢献するべくグループ8社を展開。
小野 奈都美さん
本部長として訪問看護ステーションの業務全般を管理しながら、LINE WORKS活用の推進役も担う。
太田 恭兵さん
訪問看護ステーションに勤務する作業療法士。社内のITインフラ整備も担当し、LINE WORKSの管理者でもある。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2021年11月当時のものです。