岐阜県の大垣ガス株式会社は、現場業務にあたるスタッフがコールセンターや他のメンバーとの連絡を取りやすくする目的でLINE WORKSを導入。顧客データを管理するガス事業経営総合支援ソリューションと連携させ、お客様からのガス機器の修理依頼やガス供給設備が発信する異常検知などの緊急通報内容をBotで自動送信することで、速やかに担当者を手配できる体制を構築しました。情報伝達の効率化はコールセンターやサービススタッフの業務負担軽減とともに、お客様への対応をよりスピーディにすることにつながっています。
本事例のポイント
-電話で伝達していた内容がBotに置き換わり、社員間の情報伝達速度が大幅にアップ
-社外にいるサービススタッフの手配と お客様への対応が迅速化
-ガス供給設備からの緊急通知を、Botを介して担当者がより速やかにキャッチ
-現場での対応事例を写真や動画で共有してナレッジを蓄積
御社の事業内容をご紹介ください。
企画・管理統括グループ 遠藤さん:
当社は都市ガス・プロパンガスの供給とガス設備工事事業を手掛け、岐阜県大垣市を中心とする西濃エリア約3万件のエネルギーインフラを支えています。家庭向けのリフォーム工事やガス設備のコンサルティングなども行うほか、電気の小売が全面自由化となった2016年からは電力も販売するようになりました。
LINE WORKSを導入する以前はどのような課題を抱えていましたか。
遠藤さん:
社員間の連絡にはグループウェアを使っていますが、ガス供給設備やガス機器の保守や修理にあたる社員は、お客様宅などの現場に出向いて作業をします。社外にいる社員が会社と連絡する手段は携帯電話とキャリアメールしかなく、迅速なコミュニケーションを図れないことが以前からの課題でした。
ほのりんプラザグループ 大橋さん:
コールセンターではお客様からのガス機器の不具合などに関するご相談を受け付け、お客さまサービスグループのスタッフを手配して当日のうちに対応するようにしています。しかしコールセンターからは、約20名いるサービススタッフの稼働状況が分かりません。そこでサービス部門の事務担当者に比較的早く手がすきそうなスタッフの見当をつけてもらい、都合のつくスタッフが見つかるまで一人ずつ電話をかけるという作業に多くの時間を費やしていました。
お客さまサービスグループ 衣斐(いび)さん:
現場で作業をしていると、コールセンターから電話があっても出られない場合が少なくありません。社外にいるサービススタッフどうしで業務連絡をしたい場合も、電話やメールでは円滑な意思疎通をすることができませんでした。
保安指令グループ 神谷さん:
当社はガス供給設備の異常をリアルタイムで検知するとともに検針業務の負担を軽減するため、プロパンガスメーターにLPWA(Low Power Wide Area。少ない電力消費での長距離通信を可能とする無線通信技術)通信端末を設置しています。異常が発生すると自動的にその通知が会社に送られ、ガス事業者向けのGIOSというガス事業経営総合支援ソリューションを経由して私の所属する保安指令グループの携帯メールに送信されます。この機能は非常に便利な一方で、その情報を受け取る必要のない担当者にもいや応なく届くというように、あらゆる通知が全メンバーに一斉送信されてしまうのが課題でした。
また、私の部署でもコールセンターからガス供給設備の不具合などでお客様宅への至急対応を要請されるケースがありますが、お客さまサービスグループのメンバーと同様に、電話に応答できなかったり、メンバー間で緊密なコミュニケーションが図れなかったりする不便さを感じていました。
遠藤さん:
そうした課題をどうにか解消したいと考えていたところ、全社員に貸与されているガラケーをスマホに切り替えることが決まり、スマホの有効活用にビジネスチャットツールの導入を検討するようになりました。
GIOSでは、コールセンターの受付記録や機器の販売履歴など、お客様に関するあらゆるデータを統合管理しています。そこにチャットツールをAPI連携させ、コールセンターの担当者が受付記録を入力すると、その情報がお客さまサービスグループの全スタッフにBotで自動通知されるようにすれば、サービス要員の手配業務が飛躍的に効率化するのではないかと思いました。
併せて、LPWAからの通知も内容に応じて保安指令グループの担当メンバーだけに送信される仕組みをつくりたいと考えました。
課題解決の手段としてLINE WORKSを選ばれた理由と、運用開始までの流れをお聞かせください。
遠藤さん:
GIOSの開発元である株式会社両毛システムズさんに相談したところ、当社に最適なビジネスチャットツールとしてLINE WORKSを勧められました。ビジネスチャットとしての機能も申し分なく、操作性がLINEと共通するため導入教育を施す必要もないことから、他のツールを検討するまでもなく一択で採用を決めました。
運用に先立ってGIOSとの連携を図り、まずはコールセンターとお客さまサービスグループの連絡業務で試用したところ、期待どおりに迅速な情報伝達がなされるようになったので、全社員にアカウントを配付して本格的な活用を開始しました。
企画・管理統括グループ 碓井さん:
厳密にルール化したわけではないのですが、社内の正式な通達などは既存のグループウェアで行い、社員間の比較的カジュアルな連絡や、社外にいる社員とのやり取りにLINE WORKSを利用するという使い分けがすぐに定着しました。
電話やメールで行われていた連絡がトークに置き換わり、
部門やチームごとのグループトークルームでスピーディな情報共有がなされるようになった
LINE WORKSを活用することで、コールセンターとお客さまサービスグループのコミュニケーションはどう改善されましたか。
・GIOSに登録された顧客情報がそのままグループに送信され、伝達の負担から解消
・訪問する社員の手配や必要な情報の共有が迅速に
・紙の地図から地図アプリに置き換わり、目的地までスムーズに誘導
・社員と会社との確認のための電話が激減
大橋さん:
コールセンターのスタッフが、お客様のお宅に赴ける社員を探す手間が大きく軽減しました。ガス器具の突発的な故障などの相談を受けると、不具合の状況やお客様の住所、その他の追記事項を受付伝票としてGIOSに入力。特定の担当者またはお客さまサービスグループ全体のいずれかを指定すると、BotがGIOSに登録された受付伝票の内容をトークに自動送信してくれます。グループ全体に送った場合は、速やかに対応できるメンバーが名乗り出てくれるので、一人ひとりに電話をかけていた以前とは比べものにならないくらいスムーズに手配できるようになりました。
衣斐さん:
コールセンターからの連絡を電話で受けていたときは、聞き取りにくかったりすることがありましたが、送られてくるトークには必要な情報がすべてそろっているので、情報を見誤ることはありません。コールセンターにリクエストすれば不具合を起こした器具に関するデータや、そのお客様の過去の訪問時の対応履歴なども得られるので、正確な状況を素早く知ることができます。
また、以前は紙の住宅地図を見ながら現場へ向かっていましたが、今はトークに貼られたURLをタップすると地図アプリのナビが開始します。まれに地図アプリでは目的地になかなかたどり着けないことがありますが、GIOS内のマッピングシステム(地図データ)から特定できる場所のスクリーンショットをコールセンターからLINE WORKSに送信してもらうことで対応しています。
碓井さん:
LINE WORKS導入後は、当日対応に向かう社員が会社にさまざまな確認の電話をかける回数が半分以下に減っており、そのことからもお客さまサービスグループとコールセンター双方の業務効率が高まっていることが分かります。
保安指令グループの業務はどのように効率化しましたか。
・LPWAからの通知が必要とするメンバーだけに送信され重要な情報により早く気付ける
・現場の状況を画像や動画で共有しナレッジシェアに活用
神谷さん:
プロパンガスメーターに取り付けられたLPWAからの通知が内容に応じて特定のメンバーにトークで送信されるようになり、無関係な情報を受け取ることがなくなりました。そのおかげで、例えばガス漏れの発生といった重要な情報がほかの通知に埋もれることなく、より早く気づいて速やかに現地に駆けつけられるようになっています。
出先にいるスタッフどうしが、適切な対応の仕方について検討し合うといったことも格段にしやすくなりました。電話やメールでは難しい複数人での意思疎通が、LINE WORKSのグループトークでは簡単にできます。ガス漏れの状況など言葉だけでは説明しにくい情報を、写真や動画でよりリアルに伝えられるのもLINE WORKSのメリットです。
衣斐さん:
ベテラン社員の知見や経験を若手に伝達したり、現場での対応事例を示す画像を用いてナレッジを共有したりといったことは、私の部署でも活発に行われています。これも気軽にコミュニケーションを図れるLINE WORKSの導入成果だと思います。
ガス機器の分解修理の様子や、ガス漏れ対応の状況などを示す写真や動画によって
ナレッジの共有や若手社員の勉強に役立っている
ほかにLINE WORKSのどんな機能を活用されていますか。
碓井さん:
運用管理者としては、トークログが180日まで保存されていつでも監査できることで、ガバナンスが利かせられることを心強く感じています。
神谷さん:
地域で行われる防災訓練の一環として、社員が各所にある都市ガスの配管の状況を無料ビデオ通話で撮影し、会社に設置された災害対策本部で把握するという試みがなされ、万一の場合の備えとなっています。
LINE WORKSの活用を今後どのように発展させたいとお考えですか。
遠藤さん:
これまではトークとBotの活用が主体でしたが、LINE WORKSにはほかにも多くの機能があるので、将来的にグループウェアとしての役割も与えてコミュニケーションツールを一元化することも考えたいと思います。
碓井さん:
現在勤怠管理システムの導入を検討しており、LINE WORKSと連携させることを視野に入れていますが、今後はより多くのアプリと連携させることで、さらなる業務効率化を追求していくつもりです。
【お話を伺った方】
遠藤 彰規さん
総務、経理、ガス料金の管理などを行う企画管理・統括グループのGMを務める。
碓井 康世さん
総務領域のIT化推進を担当し、LINE WORKSの運用管理も担う。
神谷 啓介さん
都市ガス供給設備等の維持管理や緊急保安業務などを行う。
衣斐 祐太さん
ガス器具の修理、販売、リフォームなどに携わる。
大橋 裕子さん
顧客からの修理要請などを受け付けるコールセンター業務に従事。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2023年1月当時のものです。