今回は2019年5月23日に行いました、NPO業務ハック勉強会についてのレポートをお送りしたいと思います。
皆さんは、現場主体で改善と工夫を繰り返し、システム化により業務改善を目指す「業務ハック」という手法をご存知でしょうか?
身近なところから改善を進めることで、人材の不足しがちなバックオフィス業務を効率化できる方法として、現在注目が集まっています。
今回、NPOの現場での業務ハックのノウハウを学ぶ勉強会として、LINE WORKS、freee、Salesforceの3サービスのユーザー事例セッションと、各NPOの中の人+3サービスの企業側の人によるパネルディスカッションを通して、今後のNPO業務のあるべき姿や3つのサービスへの期待などを語っていただく、という勉強会を企画しました!
本勉強会の開催のきっかけは、「LINE WORKSをNPOで使っている他のユーザーの声を聞きたい」「NPOの現場でITをもっと活用して業務改善を行いたい」というユーザーさんの声です。LINE WORKSのユーザーであるNPO法人カタリバ 岩澤様が発起人となり、ベンダーであるLINE WORKS、freee、Salesforceが賛同する形で開催することとなりました。
ユーザーによる3サービス活用事例セッション
メインのセッションとして、クラウド会計ソフト「freee」、ビジネスチャット「LINE WORKS」、CRMツール「Salesforce」を活用しているユーザーによる事例セッションが行われました。
LINE WORKSについては、認定特定非営利活動法人カタリバマネージャー 岩澤 樹さまより活用事例のご紹介がありました。
カタリバ様では、組織の規模が大きくなり、拠点が増えるにつれて、コミュニケーションの課題が増えてきたことがLINE WORKS導入のきっかけとなったそうです。LINEライクで使いやすいユーザーインターフェースのLINE WORKSを導入したところ、コミュニケーション量が激増した、個人の気づきを発信する「日報」が活性化した、学びを創発するコミュニティが社内に大量発生した、などの効果があったとのこと。特に短期型プロジェクトでコミュニケーションの効果が出ているそうです。
その理由の一つとして、LINE WORKSによって「みんな繋がっているから、思いついたらすぐに集まれる」状況になったことが大きいと分析されていました。たとえば、メーリングリストの場合、作るのに1日以上かかるところが、LINE WORKSであればたった30秒でメンバーが自ら簡単に作れるようになったということです。
メンバーによる自主的な学びのコミュニティが増えているというのは、素晴らしいですね!もともとあったカタリバさんの文化を強化するツールとして、LINE WORKSを非常に有効に活用されていらっしゃる様子が印象的でした。
岩澤さんの当日のスライドはこちらです!
また、カタリバ様のLINE WORKS導入事例はこちらです!
被災地の子供達の放課後学習の支援に役立っています。メンバー同士が学び合う「ラーニングコミュニティ」も実現しました。
https://line-works.com/cases/npo-katariba/
認定NPO法人ボルネオ保全トラスト・ジャパン理事/事務局長 青木崇史さまからは、freeeの活用事例のご紹介がありました。
スーパー経理スタッフの退職を機に、人に依存しない仕組みづくりをfreeeで実現されているそうです。
青木さんの当日のスライドはこちらです!
特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール 事務局・システム企画 栗林真由美さまからは、Salesforceの活用事例のご紹介がありました。
栗林さんからは、「NPOの社内情シスは一人でも、一人じゃない」という名言が!会場でも賛同のうなずきが広がっていました。
三者三様、それぞれのツールを利用しているユーザーさんが、サービスの活用方法について熱く語る姿がとても印象的なセッションでした。
栗林さんの当日のスライドはこちらです!
https://www.slideshare.net/secret/giW2Q1qOMdCrwb
パネルセッション
続いては、事例セッションで登壇された3名によるパネルセッションです。ファシリテーターは、認定NPO法人ACEの山下みほこさん。SalesforceのNPO分科会のリーダーもされているそうです。
パネルセッションでは、いくつかのテーマに沿って質問を3名にそれぞれ聞いていく形で進行しました。
業務の課題をどう解決するか?
青木さん:自分はもともとSEをやってたので、知識はそれなりには持っている。なので判断はできる。それが難しいという人は、こういう場で学ぶのも一つの選択肢だと思う。
今は、運用で頑張ればなんとかなってしまう、というところをどう根本的に解決するか?か課題。
岩澤さん:自分は兼任で6割は経理をやっている。ツールを入れると、一気に解決することもある。こういう場で刺激をもらって、試して入れてみるということも一つ。そういうのの積み重ねをしていくと、いつか成果が出る。時間の使い方が重要。
栗林さん:自分も兼任でプログラムなども見ているので、情シスの仕事だけをやっているわけではない。なので、できるだけ自動化するようにしている。ボットなど、問い合わせに人が対応しなくてもいい状態を作りたい。夢は大きく。
いろんなところに人がいると、情報格差が生まれてくるという課題は感じている。
ツールをどう団体内で浸透させるか?
岩澤さん:うちはエクセルすら使えない人もいるので・・・。LINE WORKSくらいわかりやすいものを入れれば、浸透する。マニュアルがいらないものを導入するのがキーだと思っている。
青木さん:うちは私一人でやってるので、自分が入れたいものを入れる!
栗林さん:テクノロジーって面白いぞ、という啓蒙活動を社内でやっている。自然と使いたくなるように。たとえばyammerを最近導入したときにたまたま社内に山田さんという方がいて、ヤマーで山田さんと仲良くなろう!みたいなキャンペーンをやったりした(会場笑)
インプットの方法
どうやって情報を得て、使い方を考えているか?モチベーションどう保つか?
青木さん:たとえば会計ソフトを入れるとなれば、ひととおり並べて試していく。自分には4ヶ月の子供がいて、子どもが優先なので、効率化できてどこでも働けるクラウドは本当に便利。自分の希望する働き方にあったツールを選ぶ。
岩澤さん:うちもLINE WORKSを入れたのは同じ理由。LINEでバンバン連絡くるのは嫌だけど、slackは文化的に違う。
個人でTwitter を始めてから、Twitterで情報収集するようになった。営業されて知るよりは、自分で課題だと思っているのを調べて行く中でツールにたどり着くことのほうが多い。自分の時間はGoogleカレンダーで管理している。
栗林さん:最初どうしたらいいかわからなくて、カタリバさんに聞きに行って、1-2時間くらい教えてもらった。でも、悩んでいることは一緒なんだな、正解はないけど試行錯誤しているんだな、というのがわかって安心した。
個人の時間はOffice365で管理して、作業時間はブロックする。特に朝、オフィスじゃなく家でやるとはかどる。
この先のビジョンについて
青木さん:自動化!今後も200人の請求書とかを、手で作るのは大変なので。
岩澤さん:自動化は同じ。あとは経理。NPOは非財務指標も見るが、財務と別に見なくてはいけないのが不便。何人の子供たちにどんな価値を届けたかなど、活動報告書を一緒に見られるようにしたい。あとはサービスの連携を進めていきたい。LINE WORKSやsalesforce、kintone連携など。
栗林さん:コミュニティを活性化させるためのプラットフォームが大事だと考えている。人も少ないので、テクノロジーでうまくつないでコミュニティを作りたい。また、放課後の社会課題自体がまだ認知されてないので、社会的な課題やインパクトをどう伝えていくか?salesforce などのデータを見ながら、きちんと世の中に伝えていきたい。
SaaSツールへの期待
青木さん:SaaSツールについて勉強する場はたくさんある。人、本、ネットなどなど、色々なものに頼っていけばいいと思う。
岩澤さん:もっとツールの事例が増えてほしい。みなさんそれぞれが持っている専門性とNPOの組み合わせで、いろんな事例が増えると嬉しい。この勉強会も次回以降もやりたいし、全体で盛り上げていきたい。
栗林さん:いつかAIは使いたい。より良い社会にしていくために、テクノロジーも使うし、ほかの団体と繋がるのも大事だと思う。
セッションの後は、懇親会へ。50名に近い参加者のうち多くの方がセッション後も残られ、和気あいあいと情報交換されていらっしゃいました。
NPO特有の課題や、人手が足りない中でのITの活用など、共通の悩みや課題意識がたくさんあったようです。
NPOの課題をITで解決することをテーマに、初の試みとなった今回。
後日実施したアンケートでは、「ツールが実際にどのように使われているのかが分かって良かった」「こういったコミュニティができるといい」「横のつながりができればいい」といったご意見が寄せられました。
NPOの現場の業務課題の解決に関心をお持ちの皆様、今後もNPO業務ハック勉強会にご期待ください!
https://npo-hack-vol1.peatix.com/group/6945238/
- ※ 本掲載記事の内容は投稿当時の情報となり、2022年4月1日に改定された新料金プランとは一部異なる内容を含む場合があります。