こんにちは、長橋です。
ワークスモバイルジャパンでカスタマーエクスペリエンスを担当しています。
普段はLINE WORKSの導入事例の取材という形でLINE WORKSを導入していただいたお客様にお話をうかがい、ストーリーを世の中に発信するという仕事をしています。
ケニアの国民の70%が利用するM-PESA
突然ですが、みなさんはケニアで普及している「M-PESA」というモバイル送金サービスをご存知でしょうか?
M-PESAとは、簡単に言うと携帯電話で送金から出金・支払までなんでもできるモバイルマネーサービスです。ケニアでは公共料金や教育費などの支払いから、給料の受け取りまで今やM-PESAで賄われています。
https://gaiax-socialmedialab.jp/post-28328/
ケニア国民の70%が利用し、その貨幣流通量は年間5兆3000億円にものぼります。なんと、ケニアのGDPの4割以上がM-PESAによって取引されているとも言われているほどです。最近ではケニアの国境を越えて南アフリカ、アフガニスタン、インド、最近ではルーマニアへまでその利用が広がっています。
https://www.lifehacker.jp/2016/09/160915m-pesa.html
発展途上国であるケニアでは、PCはもちろん、インターネットすら普及率は高くないのが現状。そんな状況でも、携帯電話だけは使えるという中、PCもインターネットもスマートフォンもすっ飛ばして、国民の7割が携帯電話によるモバイル送金サービスを使っているというのだそうです。モバイル決済に関しては、未だに現金決済が主流の日本のマーケットよりも、はるかに進んでいると言えますね。
M-PESAは2007年にサービスを開始して以来、ケニアでは公共料金や教育費などの支払いから、給料の受け取りまで賄われており、銀行口座を持てない貧困層の救済の手段にもなっているというから、驚きです。
テクノロジーの進化を飛び越して普及するサービス
さて、なぜ私が遠く離れたケニアのモバイル決済サービスの話を始めたかと言うと、電子マネーの話をしたいわけでも、LINE Payの話をしたいわけでもありません。これまでお客様のお話をおうかがいする中で、圧倒的に便利なサービスは、従来のテクノロジーの進化のプロセスを飛び越して普及するのではないか?という仮説を持ち始めたからです。その顕著な例として、M-PESAの話を思い出したので、ご紹介させていただきました。
たとえば、通常であれば、職場でのコミュニケーションツールーは以下のような経過を順々に追って進化していくのが普通かと思います。あくまで私目線ですので、色々な考え方があるかと思いますが、一例として。
1. 紙、FAX、固定電話などアナログなコミュニケーション
2. PCメールでのコミュニケーション
3. ガラケー(フィーチャーフォン)での音声通話、SMS
4. スマートフォンでのリッチ・高速なコミュニケーション
実際にこれまでは、「メールだけでは追いつかなくなってきたので、チャットを導入した」「社内のPCだけしかスケジュールや掲示板が確認できず不便だったので、スマホとLINE WORKSを導入して外出先からでも確認できるようにした」といったケースが主流でした。いずれも、PCメールでのコミュニケーションに限界を感じて移行したという点が共通しています。
ところが最近、LINE WORKSを導入したお客様で、PCやメールを経ず、アナログからいきなりLINE WORKSに移行して成果を上げているお客様というのが増えてきています。
アナログからPCを飛ばしてLINE WORKSヘ移行
その一例が、最近導入事例が公開された「浜の家」様。兵庫県を中心に企業給食の宅配を手がけている企業様です。
当社ではもともとPCは1台しかなく、使用するのは数名でした。業務のほとんどは紙や電話、FAXで行うというアナログな環境でした。本部から配達員へ、または配達員同士が連絡をとる際には、会社が支給している、いわゆるガラケーと呼ばれる普通の携帯電話による通話とショートメールを使用していました。
LINE WORKS導入後は注文票をスマートフォンで撮影して、トーク機能で本部から配達員に画像で共有しています。
以前は午前中だけでも200件ほどの通話があったのですが、LINE WORKS導入後は30件以下に激減しました。これまで電話に要していた時間を大幅に削減できましたし、口頭でのやりとりゆえに発生してしまう納品ミスが減り、顧客満足度向上にもつながっていると思います。(株式会社浜の家様)
午前中だけで200件あった通話が30件以下になったとは、劇的な変化ですよね。それも、従来PCを使っていない人がほとんとだった職場で急速に普及し、生産性向上と成果が上がっているという点に驚きます。
では一体なぜ、こんなにもすんなりLINE WORKSに移行できたのでしょうか?
その背景の一つには、LINEの普及という点がありそうです。日本ではLINEの普及率が高いため、会社内ではアナログな環境でも、プライベートではスマートフォンでLINEを使っているという方も多いと思われます。LINEの操作に慣れていて、「チャットを使うとこうなる」というイメージがもともとあったので、簡単に使い始めることができ、すぐに効果が出たのではないかということは言えそうですね。
ですが、幅位広い年代層の社員がいる会社では、必ずしも全員がLINEを使っていて、操作に明るいわけではありません。もう一つの大きな理由として、「誰でも使いやすくて、便利だから」という点があるのではないかと思います。ケニアでM-PESAが普及した理由も、おそらくこの点が大きいのではないでしょうか。
従来のPCベースのシステム導入に二の足を踏んでいる企業が実は多い
従来のテクノロジーの進化をベースに考えられたシステムは、使い手に高度なリテラシーやスキルを要求することが多く、ユーザーは使いこなすためにITの成熟度を上げる必要があります。そのため、「PCの操作に慣れた人でしか使えないシステム」というものが世の中には多くあり、このハードルの高さがネックとなって導入を踏みとどまっていたために、アナログな連絡手段に頼らざるを得なかった企業というのが、実は意外と多いのではないかと思っています。
(・・・ということを、私も取材をするようになって初めて知りました。余談ですが、よくある「SaaSマーケット規模予測」とかの数値は従来のシステムの置き換えを前提としているので、こういう「もともとITを活用していない・ITにお金を払っていない企業」が新規にサービスを導入することで増えるパイは全然考慮されてないんじゃないかと思います。だから実際は顕在化していないマーケットが国内にはまだまだあるはず。日本のITマーケットはまだまだ成熟してなんかいないですよー多分)
ということをまさに発言してくださっているのが、スーパーマーケットチェーン「三杉屋」を展開されている三杉屋様。他にも似た状況のお話は色々な業種・業態の企業からたくさんお聞きします。
いろいろと模索しましたが、世の中のツールはPCでの操作をメインとするものがほとんど。社員の中にはPCで文字を入力することすら難しいという人もいて、ツールを使える人の「当たり前」が必ずしも全社員の「当たり前」ではないことを感じていたので、使い方に教育の必要なツールの導入に二の足を踏んでいた状況でした。(株式会社三杉屋様)
LINEやLINE WORKSのようなモバイルを前提としたサービスは、技術的には最先端である一方、従来のPCの操作を前提としたシステムではなく、手元での使いやすさを最優先に考えられたスマートフォンでの利用を想定います。そのため、これまで従来のシステムの操作の難しさから導入に二の足を踏んでいた企業が、「これなら」と導入し始めたということなのではないでしょうか。
その結果、「アナログからPCをすっ飛ばしていきなりスマホでLINE WORKSを導入する」ということが起きてくるというわけです。このパターンの導入は、従来ITのメリットを享受していなかった企業にとりわけ多く、これまでIT活用による業務効率化が図られていなかったケースが多いのも事実。それだけに、導入した後の効果の出方が劇的であることも少なくなく、だから前述の浜の家様のような「200件の通話が30件に減った」というような事例が出てくるんですね。
ケニアでPCを持っていない人にもM-PESAが爆発的に普及したように、LINE WORKSも、これまでITの活用に二の足を踏んでいた多くの日本企業に導入されて、アナログからスマホ+チャットへ一足飛びに進化していくのではないかと期待しています。そのために、「圧倒的に便利」を磨き続けられるようにしていきたいものです。
- ※ 本掲載記事の内容は投稿当時の情報となり、2022年4月1日に改定された新料金プランとは一部異なる内容を含む場合があります。