全国各地に店舗を展開する株式会社イオン銀行は、社内コミュニケーション、とくに本社と店舗間の連絡を円滑化するため、LINE WORKSを導入しました。情報セキュリティを十分に担保した上で、本社の部署や店舗ごとにグループを構築し、密に連絡を取り合えるようにしたことで、コミュニケーションの質と速度が向上。業務情報のみならず、自然災害やシステム障害発生時の状況も迅速に共有できるようにしたことで、BCP(事業継続計画)対策も強化されました。電話料金の削減や会議回数の減少など、大きな定量的効果も得られています。
本事例のポイント
- 電話やメールをトークに置き換え情報の伝達速度を大幅に向上
- 銀行に必要なセキュリティを担保しながら社内コミュニケーションを活性化
- 災害やシステム障害時などの危機管理体制を強化
- 通話コストと会議回数の低減を実現
御社の事業概要をご紹介ください。
河津さん:
イオン銀行は、「お買い物ついでに銀行を利用したい」「土曜・日曜、祝日も営業する銀行があったら」というお客さまの声にお応えして誕生したイオングループの銀行です。毎日のお買い物に便利でおトクな電子マネーWAONやクレジットカード、各種預金・ローン・保険に加え、豊富なラインナップから投資信託等の資産形成商品をお選びいただける金融商品仲介等、幅広い金融サービスを提供しています。
最近では、イオン保険サービスが営む保険ショップ事業「イオンのほけん相談」との一体運営を開始しました。これにより、金融商品・サービスをワンストップで提供できる体制を整え、一層の利便性向上を図りました。
LINE WORKSを導入する以前はどのような課題を抱えていましたか。
河津さん:
当社には2,700名以上の従業員がいますが、基本的なコミュニケーション手段が電話とメールだったため、迅速な連絡が難しく、特に本社と店舗間の連携が円滑でない点が課題でした。メールアドレスは全従業員に付与していますが、店舗スタッフはお客さま対応に注力していることからメールを随時確認することは難しく、特定の従業員にすぐに連絡を取ることが困難でした。以前から使っているグループウェアでも、即時伝達は困難でした。
金融機関特有の情報セキュリティやガバナンス意識の高さから、手軽に使えるツールの活用に対して慎重になっていたという側面もありましたが、そのことが業務の生産性向上を妨げ、災害やシステム障害など緊急時の対応の遅れ、組織全体の一体感の欠如を招くおそれがあったことから、ビジネスチャットの利用を考えるようになりました。
課題解決に向けてLINE WORKSを選定された理由を教えてください。
河津さん:
いくつかのサービスを比較検討した結果、目を引いたのは圧倒的多数の人が利用しているLINEと同様の使い勝手を持つLINE WORKSでした。従業員のITリテラシーにはばらつきがありますが、直感的に操作できるよう設計されたLINE WORKSであれば、導入時に特別な研修等を実施しなくても早期に定着すると期待できました。
特にセキュリティ面については本社で厳重に審査し、当社が求める要件を十分に満たしていると判断しました。本格導入当初は約1,000アカウントほどからスタートしましたが、現在では3,000アカウント以上にまで拡大しており、他のツールと比較して導入コストが低く、大規模な運用にも適している点が大きな魅力でした。
導入決定後の展開はどのようにして行われましたか。また、運用に際して独自のルールを定められましたか。
河津さん:
本社の従業員は会社支給のPCとスマホ、各店舗では会社支給の共有PCと共有スマホで利用するほか、希望する個々のメンバーがBYOD(私物端末の業務利用)で利用できるよう、私用スマホにLINE WORKSアプリをインストールして運用を開始しました。※店舗内では、原則会社支給の端末で使用するルールとし、情報管理は徹底しています。
運用ルールについては、秘匿すべきデータが外部に漏れることのないよう、お客さまに関する情報のやり取りを禁止としたほか、画像以外のファイル添付などを制限しました。また、災害発生時など急を要する特別な連絡を除き、勤務時間外の連絡を原則不可とするルールも設け、安全かつ快適に利用できる環境を整えました。
LINE WORKSの具体的な利用シーンと導入効果をお聞かせください。
・電話やメールをトークに置き換えコミュニケーション速度が向上
・全国の店舗・ATMの工事の進捗状況をリアルタイムに把握
・非常時の迅速な情報共有で危機管理体制を強化
河津さん:
各部署や店舗ごとにグループを作り、メンバーが日々の業務情報を共有しています。メールは自発的に見に行かなければ情報にアクセスできませんが、LINE WORKSならプッシュ通知によりすぐに内容をチェックできます。各部署や各店舗によっては、従業員の勤怠に関するグループをつくり、体調不良で突発的に欠勤する場合の報告などにも活用されています。このように、電話やメールで行われていた連絡の大半がトークに置き換わり、あらゆるコミュニケーションが格段にスピードアップしました。
私が所属する総務部では、各営業拠点やセンターのレイアウト変更などに伴う工事の進捗も共有しています。営業拠点やセンターは全国にあるので常にどこかで工事が行われており、各地域の担当者が撮影した写真を共有することで、進捗状況をリアルタイムに把握できるようになりました。
防災対策においてもグループを設け、震度5以上の地震が発生した際に、各地のメンバーが管轄するエリア内の店舗等の被害の有無や状況を投稿・共有する体制を構築しました。また、システム障害などが起きた場合も同様に、対策チームのグループにて迅速に状況を共有できるようにしました。このように、LINE WORKSによって情報を迅速に共有できるようになったことは、危機管理体制を強化することにもつながっています。
トーク/グループ以外によく活用される機能はありますか。
【音声通話】通話したい相手にアドレス帳からダイレクトにアクセス
【ビデオ通話】オンラインミーティングを開催
【アンケート】従業員の意見をスムーズにヒアリング
河津さん:
社内の誰かと電話で話す必要があるときは、部門や店舗の代表番号にかけて呼び出してもらう必要がありましたが、LINE WORKSの音声通話機能を使えば、個々の相手に直接電話をかけられます。全従業員の連絡先がアドレス帳に登録されているので、名前さえ分かればスムーズに連絡が取れるようになりました。また、ビデオ通話機能でテレワークをする従業員も交えてのミーティングを行うこともあります。
また、店舗やATMのレイアウト変更後の使用感に関する感想などをヒアリングするのに、アンケート機能を利用しています。文書での質問や電話での問い合わせの手間を省き、多数の従業員の声を簡単に収集できます。
LINE WORKSは御社の業務に定量・定性の両面でどんな効果をもたらしましたか。
・日頃から密な情報共有ができるようになり会議の数が減少
・ビデオ通話機能を用いてテレワークを活性化
・従業員どうしの距離感を縮めることにも貢献
河津さん:
相手からのレスポンスを素早く得られるLINE WORKSを導入してから、社内コミュニケーションにおけるメールの量が大幅に減りました。メールがトークに置き換わったことで意思疎通の速度が速くなったことは、業務の生産性向上に直結しています。以前は関係するメンバーが進捗状況を報告し合うための会議もよく開かれていましたが、日頃から業務に関する情報をこまめに共有できるようになったことで、そうした会議の数もかなり減りました。また、月間18万件以上のトークや2万4千件を超える音声通話が社内連絡に活用されています。これにより、従来SMSや携帯通話で行っていた社内連絡の大部分がアプリ内で完結するようになり、通信費や対応時間の最適化に貢献しています。
定性的効果としては、全社のコミュニケーション基盤が確立されたことで、従業員や部門間の連携が強化されたことです。スマホならビデオ通話でチーム単位のオンラインミーティングができるので、テレワークもしやすくなりました。
導入当初のトークはテキストのみのやり取りが中心でしたが、最近はスタンプやリアクション機能も頻繁に使われるようになりました。これはLINE WORKSによって従業員どうしの距離が近くなったことの表れと言えます。
LINE WORKSの活用を今後どのように発展させたいとお考えですか。
河津さん:
これまでトークと通話機能を主体に利用してきましたが、掲示板などその他の基本機能も活用していきたいと考えています。例えば、従業員からの問い合わせ対応の自動化です。現在も、よくある問い合わせ内容についてはグループウェアにFAQを公開していますが、総務部の業務が多岐にわたっていることもあり、日々多くの問い合わせ対応が発生しています。AIチャットボットを活用しLINE WORKSで質問への一次回答だけでも可能になれば、問い合わせ対応に要している時間は大きく省力化できると考えています。
また勤怠管理など他のシステムとのAPI連携も、積極的に図っていきたいです。コミュニケーション基盤としてのLINE WORKSの有用さを強く実感したため、将来的にはグループ会社への展開も推進したいと考えています。
【お話を伺った方】
河津 修さん
本社や各拠点の設備、PC・スマホ等のデバイス、入退室カード、契約書原本、会議室予約システムなどを管理する総務部 総務Gの業務を取りまとめる。LINE WORKSの運用管理も担当。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2025年4月当時のものです。