インターネットメディアの企画・開発・運営を行う株式会社アシロは、法律事務所の検索ポータルサイト「弁護士ナビ」シリーズを運営しています。同社はこのほど、LINE WORKSのアカウントを、サイトに登録している法律事務所にオプションサービスとして提供し、従来の電話・メールという相談手段に加え、LINEによる相談もできる仕組みを構築しました。同サービスを利用した法律事務所への問い合わせ手法が増えたことで、以前と比べて利便性の向上、問い合わせ率向上を実現しています。同社の大橋さんと、このサービスを利用している弁護士の齋藤さんに、具体的な活用シーンと導入効果をお話しいただきました。
本事例のポイント
-相談者のLINEと弁護士のLINE WORKSをセキュアに連携
-相談用テンプレートテキストをLINEへ自動送信
-法律事務所の営業時間外の対応も可能に
御社の事業内容をご紹介ください。
大橋さん :
当社はインターネットメディアの企画・開発・運営を行うITベンチャー企業です。代表的なメディアが「弁護士ナビ」シリーズで、「離婚弁護士ナビ」「相続弁護士ナビ」「交通事故弁護士ナビ」など法律分野別のポータルサイトを開設。「都道府県別」などの条件に基づいて、近くの法律事務所を瞬時に検索できるようにしています。現在は全国約500の法律事務所が「弁護士ナビ」シリーズにご登録いただいており、法律問題に悩む人と、問題を解決に導いてくれる弁護士をつなぐ役割を果たしています。
以前はどのような課題を抱えておられましたか。
大橋さん :
弁護士ナビにアクセスした相談者から弁護士への主な問い合わせ手段は、電話かメールでした。LINEを使い慣れている世代の相談者にとっては、電話やメールによるコミュニケーションは非日常的なツールになりつつあり、比較的に敷居がやや高くなる傾向にあります。また、コロナ禍の影響でリモートワークが増えたことで、家族がいる自宅からの電話による問い合わせを躊躇する人が増加しています。そのような背景から、法律にまつわる相談をLINEで気軽に相談できるサービスを提供したいと考えるようになりました。
課題解決の手段としてLINE WORKSを選ばれた理由と、運用に至った経緯を教えてください。
大橋さん :
相談者と弁護士の連絡ツールとしてビジネスチャットや、相談者のLINEを正式な連絡ツールとしているサイトはこれまでにありませんでした。そこで当社は、多くの人にとって身近なコミュニケーションツールであるLINEで法律相談ができる仕組みを構築することで、相談者が弁護士にコンタクトするハードルを低くするとともに、競合サイトとの差別化を図りたいと考えました。その仕組みを構築するにあたって条件としたのは、「セキュアであること」と、「使い方が複雑ではないこと」です。それらの条件を満たすツールが、安全な環境でLINEとつながってやりとりができる「外部トーク機能」を備えたLINE WORKSでした。
「弁護士ナビ」シリーズの各サイトに登録している法律事務所へのオプションサービスとして、相談者のLINEとつながるためのLINE WORKSアカウントを用意しています。サイトに掲載されている法律事務所の「友だち追加する」ボタンをクリックすると、相談者のLINEに法律事務所のLINE WORKSが友だち登録され、LINEとLINE WORKSによるやりとりができる仕組みをつくりました。
サービス提供に際しては利用規約をしっかり整備しています。また、相談内容は守秘されなければならないため、当社側では見えないようにするなどのルールも厳格に定めて運用を開始しました。
LINE WORKSの具体的な活用シーンと導入効果をお聞かせください。
大橋さん :
LINEで相談できる手軽さが功を奏して、オプションサービスを利用した法律事務所への問い合わせ率が着実に向上しました。しかしサービス開始当初は、手軽に相談できるあまり、内容が整理されていない雑多な質問が多く寄せられ、弁護士が対応に苦慮することがありました。そこで、相談者が「友だち追加」をすると、相談内容と面談希望日を弁護士に簡潔に伝えるためのテンプレートテキストが自動送信される仕組み「あいさつメッセージ*」を活用しました。その結果、大半の利用者がテンプレートをもとに相談内容をわかりやすくまとめて伝えるようになり、弁護士の側も非常に対応しやすくなりました。ある法律事務所へのヒアリングによると、相談者からの連絡手段が電話かメールのみだった頃は、案件処理を正式に引き受ける受任率が問い合わせ全体の25%でしたが、テンプレートテキストの導入以後は42%にまで高まっているそうです。
このサービスを利用している弁護士は、相談内容を把握して面談を設定するまでのプロセスを相談者とLINEで行い、受任後は連絡手段を電話やメールに切り替えることが多いようです。一方で、外出先でもトークでやりとりできる便利さから、受任後も相談者との主なコミュニケーション手段として利用しているケースもあるそうです。
会社勤めをしている人が相談をしやすいのは、仕事を終えてからの時間帯か土日ですが、一般に法律事務所の営業時間は一般企業の業務時間と重なっています。そのため、夜間や土日には電話がつながらず、相談メールへの返信もすぐにはできないことが多いのですが、LINEでの問い合わせであれば弁護士は即応しやすく、そのことも受任率の向上につながっているのではないかと思います。
また刑事事件などでは、弁護士が相談者と直ちに接見することが望ましいケースもあります。法律事務所に電話がつながらない深夜などでも、LINEからのメッセージを見た弁護士が対応してくれる場合があることも相談者にとってのメリットとなっているようです。
「弁護士ナビ」シリーズに登録している弁護士として、相談者のLINEとつながるオプションサービスをどう捉えていますか。
齋藤さん :
私は以前からWebサイトなどに個人LINEのアカウントを公開し、LINEによる相談に応じていました。相談者は気軽に相談できる反面、内容が未整理なためにこちらから電話をかけるなどして確認しなければならない事項が多かったのですが、「弁護士ナビ」からの相談者の皆さんはテンプレートをベースに相談内容を整理して伝えてもらえるので、お困りの状況がよく把握でき、改めてヒアリングをすることもなくスピーディに対応できることが多いです。
案件によっては相談者の方と対面することなく、LINEとのやりとりだけで受任から解決に至る場合もあります。お互いに手間を省くことができ、結果、スピーディな解決が実現しています。LINE WORKS上では相談者別にやりとりが表示されるので、案件の進行管理をしやすいのも利点です。トークに送ってもらった写真画像が、裁判で証拠として使える場合もあります。また、相談者にアプローチするためのコストとして、ネットなどに出す広告料と比較すると、このオプションサービスはかなり割安だと感じています。
LINE WORKSの活用を、今後どのように発展させたいとお考えですか。
大橋さん :
近年、法的サービスの拡充を目的に進められた司法制度改革によって弁護士の数が増加し、相談者を獲得するための競争が激しくなっています。そのようななか、LINE WORKSを活用して相談者からのLINEによる問い合わせや相談を受けられるようにすることは、法律事務所にとって大きなアドバンテージになると思います。当社としてはこのオプションサービスをさらに普及させ、より多くの相談者が弁護士にスムーズにアクセスできる環境を整えていくつもりです。
齋藤さん :
コロナ禍を背景に、相談者との連絡をオンラインで行いたいと考える法律事務所も増えつつあります。そうした状況を踏まえ、カレンダーと連携して面談予約ができるようになるなど、LINE WORKSの機能を使ったサービスが拡充することに期待しています。将来的には、「オンライン面談」「顧客管理」「受任後の案件管理」「予約スケジュール管理」「オンライン決済」などの法律事務所向け業務支援サービスをLINE WORKSの機能で実現できれば、私たちも積極的に活用したいと思っています。
【お話を伺った方】
大橋 佑紀さん
顧客満足度の向上を担うカスタマーサクセス部を統括する。
齋藤 健博さん
銀座さいとう法律事務所代表。弁護士。離婚問題から企業法務まで幅広い事案を扱う。
*あいさつメッセージ…LINEユーザーがLINE WORKSユーザーを友だちとして追加したタイミングで、管理者が設定したあいさつメッセージが自動でLINEユーザーのトークルームに送信される機能。詳しくは こちら https://works.do/xSNFex
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2021年2月当時のものです。