令和2年度より「スマート区役所」事業に取り組む大阪府堺市南区役所。ICT等の先端技術の導入とすべての人にとってやさしい空間の創造により、安全・安心で高機能な区民サービスを提供する、未来型区役所の実現の取り組みにおいて、南区内の19小学校区の自治連合会長とのコミュニケーションツールとしてLINE WORKSを導入しました。
本事例のポイント
- FAX、対面で手渡しされていた資料をLINE WORKSでスピーディに配布
- アカウント情報を引き継いで、会長の交代もスムーズに
- 日中仕事で忙しい現役世代が参加しやすく、担い手が増えることを期待
南区役所自治推進課では、どのような業務を担っていますか。
川畑さん:
自治推進課は、主に地域住民のコミュニティ活動を支える役割を担っています。堺市ではおもに小学校区ごとに自治連合会を形成しています。私たちは、南区内小学校区のうち、19名の自治連合会長で構成する南区自治連合協議会と協力しながらまちづくりを進めています。私たちの活動は、主に行政から発信される情報や方針をお伝えしたり、地域からの要望をお聞きしたりするなど、地域と共に歩む取り組みを行っています。また地域の美化活動や、さらには、地震や風水害の発生時には、南区内の被害状況の確認や避難所の統括を行っているのも自治推進課で、各校区の防災訓練や地区防災計画の作成支援なども行っています。
LINE WORKSを導入したきっかけを教えてください。
川畑さん:
令和2年から大阪府堺市では、ICTを活用した住民サービスの利便性を高める施策が進められており、その中で堺市南区役所が「スマート区役所」に指定されました。そこで自治推進課では、地域住民とのコミュニティ活動の中で、コミュニケーションツールを利活用できないかと模索していました。多くの自治会では高齢化が進んでおり、現役世代の若い方は仕事や子育てなどで自治会の活動に参加すること自体が難しいという状況でした。そのような折にコロナ禍になり、人が集まりにくくなったうえ、感染症対策の観点からご自宅での回覧板の受け取りも拒否される方が出てきました。また、私たちが事務局を務める南区自治連合協議会の定例会議や各校区で行う自治連合会の会議も開催が困難となり、市の施策などの情報をどのように自治会へ周知していけばよいのか、大きな課題となったことがコミュニケーションツールを検討するきっかけでした。最終的に普段から使用しているLINEの操作性に近いものが良いのではないかと、LINE WORKSを選びました。
どのように使い方を広めていきましたか。
高橋さん:
南区自治連合協議会を構成する自治連合会長19名のうち5名が役員になっていて、まずはその5名に試験的に使ってみようとお伝えしました。なかにはスマホを持っていない方もいらっしゃり、「どう使うんかなぁ」という少し否定的な意見もありましたが、役員ということもあり前向きに考えてくれる方が大半で、抵抗感というのはさほど大きいものではありませんでした。まずはごく短期間、令和2年12月から令和3年2月で試運転を行いました。使い始めはトークのみを利用し、簡単な情報発信を行いました。この先さまざまな機能を使っていくことを視野に入れていましたから、導入段階で拒否反応を起こさせたくなかったのです。まずはLINEと変わらず簡単に使えることを体感していただきかたったのです。
トーク機能の情報発信によるメリットはどういったところですか。
川畑さん:
情報の鮮度です。地域住民の方々とそれぞれの校区内の自治会との橋渡し役を担うのが、自治連合会長ですので、会長の保持している情報の量や新鮮さが、地域住民との信頼関係にも影響するものと思います。例えば、堺市長の定例記者会見や市のホームページに掲載された行政の情報について、地域の方から「それってどういうこと?」と、自治連合会長のところに直接問い合わせが入ることがあるのですが、リアルタイムに情報をトークで共有しておくだけで、自治連合会長としてはすぐに受け答えができます。すぐに答えられるかどうかが、良好な信頼関係の構築にもつながりますので、我々からのスピーディな情報共有というのは非常に重要なのです。
次のステップではどのような機能を利用されましたか。
川畑さん:
自分が使いたいときにすぐに資料を引き出すことができるフォルダ機能で、資料提供が容易にできることをお伝えしました。それまで会議の資料はEメールで送っていたのですが、行政システムを介したEメールはセキュリティが厳しく、受け手として添付資料を開くのが大変手間だとお叱りを受けていました。その辺りもLINE WORKSであれば容易になることをお伝えしたところ、肯定的な意見も出始め、令和3年度は本格的に使う方向で検討していくことになりました。
高橋さん:
令和3年度の8月から10月頃に、今度は役員5名を含めた15名で再び試運転を行いました。1度目の試運転と同様に、使用した機能はトーク機能での定期的な情報発信とフォルダ機能での情報の共有でしたが、最後はアンケート機能を使ってLINE WORKSの利用に際して意見調査を行いました。
川畑さん:
アンケートによる回答は、「意外とそんなに難しいものじゃない」「使いやすい」といった肯定的な意見ばかりでした。また、スマホだけではなくパソコンやタブレットでも利用できることも好評でした。
高橋さん:
現在はグループを作成して利用しています。自治推進課職員と19名の自治連合会長の全員が入ったグループや、自治連合協議会内の委員会ごとに分けたグループなどがあります。LINE WORKSの利用目的は、自治推進課と自治連合協議会との情報共有であるため、利用範囲はアカウントを持っている人たちのみで、個人LINEなど外部とのやりとりは制限しています。
任期による交替などの場合、アカウントはどうされますか。
高橋さん:
アカウントは個人名ではなく校区名で作成しました。自治連合会長が交替される際に、それまでのやりとりの経緯を新しく就任された方が容易に確認できることを想定しています。交代時はアカウントのパスワードを変更するだけで、これまでのアカウント情報を保持したまま、新しい自治連合会長にLINE WORKSの引き継ぎができます。
2年ほどLINE WORKSを利用して、一番効果を感じる点はどこでしょうか。
高橋さん:
書類のやりとりの早さという面ですごく変化を感じています。例えば、自治推進課から「この書類を出してください」とお願いした際に、トークで自治推進課アカウントに送ってきていただける方もいらっしゃいます。直接紙で受け取っていた頃は、誤りがあった際に差し戻して修正点を直すのにお互い手間でしたが、LINE WORKSを使うことで確認も修正も双方が容易になりました。
川畑さん:
昔からFAXを使われていた方のなかには、情報をもらう時は個別にFAXを送って欲しいという方もいましたが、LINE WORKSに置き換えることで解決しました。現在はメールやFAXのやりとりが完全にLINE WORKSに置き換わっています。
今後はどのような活用を予定されていますか。
高橋さん:
LINE WORKSのビデオ機能を利用したオンライン会議を進めていこうと考えています。あとはスケジュール機能の利用を検討しています。自治会の方から提出していただく資料が非常に多いので、提出期日をカレンダーで確認できるようになれば、もっと事務手続きがスムーズに進められるのではないかと感じています。自治連合会長も会議等のスケジュール管理がしやすくなると思います。
川畑さん:
今回、私たちが目標としたところは、「自治体と市民との間を取り持つためのLINE WORKS等のコミュニケーションツールの活用」です。今後は自治連合会の下部組織の方々もぜひLINE WORKSを導入していただき、「これなら自分たちの自治会の中でも使える」と感じていただきたいです。今回のようにLINE WORKSを使っていただく仕組み作りができれば、各地域の若い世代の方々も、必ずしも集まることができなくても地域活動に参加したり意見を伝えたりすることができますので、今後の担い手も増えてくると思います。
また、災害などの発災時に安否確認などにも使えると思います。自治推進課は災害時の地域情報の収集を行う役割もあるので、在宅避難者や車中泊している方々など、現場の細かな情報を集約していくためには、地域の自治会にまでコミュニケーションツールの裾野を広げていくことが重要だと思っています。それぞれの地域との相互連携に役立てていきたいです。
【お話を伺った方】
川畑さん
堺市南区自治推進課にて自治連合会とのコミュニケーションツールとしてLINE WORKSの導入を推進。
高橋さん
堺市南区自治推進課にてLINE WORKSの導入実務と運用、自治連合会からのLINE WORKSに関する問い合わせやアフターケアなど全般を担っている。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2022年3月当時のものです。