新潟県三条市は、市長を含めた職員間のコミュニケーションを活性化するために、LINE WORKSを効果的に活用。グループトークや掲示板を利用することで、職員間でタイムリーに情報共有できる環境が整い、コロナ禍の在宅勤務や災害時の職員の安否確認にも効果を発揮しました。さらに、医療機関とLINE WORKS上で直接やりとりすることで、ワクチン接種の円滑化も実現。住民サービスの向上に大きく寄与しています。
本事例のポイント
- 市長や全職員がチャットで気兼ねなくやりとりできる環境を整備
- 予定の共有や会議室等の予約など、グループウェアとして活用
- 在宅勤務や安否確認、災害対策など多彩な用途で業務を効率化
- ワクチン接種対策として医療機関との密接な連携を実現
新潟県三条市の特長をご紹介ください。
滝沢市長:
三条市は、新潟県のほぼ中央に位置する人口約9万5,000人の都市です。全国的に「ものづくりのまち」として知られ、400年前から金物製造業が盛んです。現在は、アウトドアなど自然志向の産業の振興にも力を入れています。先日、三条市に本社があるアウトドアブランドのスノーピーク社と包括連携協定を締結し、三条市のまちづくりを一緒に進めることになりました。2021年4月には、三条市立大学を開校し、次代を担う若者たちが全国から続々と集まりつつあります。
今回、どのような目的でLINE WORKSを導入されたのでしょうか。
滝沢市長:
縦割り行政の弊害を打ち破ることを主な目的として、市長を含めたすべての職員間でいつでも気兼ねなくやりとりできるツールを導入し、庁内コミュニケーションを円滑にしたいと考えていました。組織の上から下へ、下から上へ伝言ゲームのように情報が伝達される無駄な時間を省き、各課が速やかに連携することで、より良い住民サービスを提供できる環境づくりに着手したのです。
LINE WORKSを選定された理由と経緯をお聞かせください。
石月さん:
三条市では、インターネットの発展やクラウドサービスの普及が業務効率化を促進させることを見越して、従来からLGWAN系ではなくインターネット系にPCを接続して業務を行っています。また、これまで利用していたグループウェアのサポートが終了し、システムリプレイスの必要があったことから、クラウドサービスかつグループウェア機能も備えたチャットツールを検討しました。
複数のチャットツールを比較検討する中で、最終的にLINE WORKSを選定した理由のひとつは、誰でも簡単に利用できることです。新しいシステムを導入すると、職員に操作を習得してもらうために、どうしても負担が生じます。その点、LINE WORKSは、職員がプライベートで使っているLINEと基本的な操作は同じなので、導入時の負担を最小限に抑えることができます。加えて、LINE WORKSはスケジュールや掲示板機能など多彩な機能が用意されているので、グループウェアとして活用すれば、庁内の情報共有ツールを集約でき、費用を抑えることができることも大きな決め手でした。
LINE WORKSはどのようなスケジュールで導入されたのですか。
石月さん:
2020年11月の市長就任直後にツールの検討を始めました。12月には一部の職員間でLINE WORKSのフリープランでテスト運用を行い、グループウェアとしても十分活用できることを確かめました。2021年2月に920アカウントを導入し、庁内のすべての職員や関連施設で利用できる環境を整え、試験的な運用を開始しました。その際、ワークスモバイルジャパンの公式マニュアルを抜粋した資料を作成し、全職員に周知徹底を図りました。コロナ禍だったので人を集めた説明会は実施しなかったのですが、ほとんどの職員がすぐに使い始めるようになり、導入は極めてスムーズでした。
4月から本格運用とし、掲示板やカレンダーなどグループウェア機能も共通ルールのもとで利用を開始しました。
▼三条市では独自で作成した運用ガイドラインを公開している
https://www.city.sanjo.niigata.jp/soshiki/somubu/dxsuishinka/openknowledge/13711.html
LINE WORKSの利用範囲を教えてください。
石月さん:
三条市役所に勤める全職員にアカウントを付与しています。非正規職員でも主に庁内で事務をする職員にはアカウントを付与しています。それから、消防職員約150名にも一人1アカウント、その他では保育所に1アカウントを代表アカウントとして付与し、庁内のお知らせ等を受け取れるようにしています。
また、防災対応の目的で災害時に避難所に設置される公用のスマホでもLINE WORKSを使用できるようにしています。
現在、LINE WORKSは職員間でどのように活用し、効果を実感されていますか。
滝沢市長:
庁内のすべての課で市長を加えたトークグループを作成し、それぞれの職員と直接コミュニケーションが取れるようにしました。例えば、ニュースで気になる話題があったときに、そのURLを記載して今後の住民サービスの参考にしてほしいといったメッセージを発信しています。課長以外に若い職員が即座に反応してくれるなど、風通しがよい組織になったと感じています。
須佐さん:
これまで職員どうしの主な連絡手段は電話でしたが、行き違いになることが多く、伝達事項を相手に伝えるまでに、手間と時間がかかっていました。また、庁内には紙の資料をやり取りするための「庁内便」がありますが、情報が伝わるまでに数日かかっていました。LINE WORKSが導入されたことで、ほかの庁舎にいる職員や他部署の職員と速やかにやりとりできるようになり、大きなメリットを感じています。
昨年からコロナ禍で週に2回くらい在宅勤務を行っていますが、何か分からないことがあったときに、庁内の職員にグループトークで気軽に相談できます。
在宅勤務時も庁内の職員とスムーズに情報共有
トークの内容を別の職員に即座に送って情報共有できる、トークの転送機能もとても便利です。
カレンダー機能で、相手に都合を問い合わせることなく、他の職員のスケジュールも瞬時に確認しながら予定を登録できます。例えば、外部の人と打ち合わせをしている最中に、他の職員との打ち合わせを希望されても、その場で担当職員のスケジュールを確認して予定が組めるようになって、日程調整の手間が省けます。
石月さん:
課ごとに掲示板のカテゴリを作り、全庁に向けたお知らせ等の発信に活用しています。営業戦略室では、「エール飯」という取り組みを掲示板で公開しています。コロナ禍で売上が落ち込んでいる地域の飲食店を応援するものとして、職員がデリバリーで注文したお弁当の写真を撮影して掲示板に投稿するというものです。市長自らが、お弁当の写真を投稿することもあります。庁内職員に向けたお店の宣伝につながり、陰ながら地域の飲食店を応援しています。
最近では、新たに「庁内版らくちん・手抜き掲示板」というものも立ち上げました。職員に「こういうやりかたをすると便利になる」「こういった改善をしてほしい」といった気づきや要望を投稿してもらうことで、ほかの職員に気づきを与え、職員の自発的な業務改善につなげていくことが狙いです。
職員の安否確認や災害時の連絡ツールとしても活用するそうですね。
滝沢市長:
防災に関するやりとりもLINE WORKSの掲示板やトーク機能を使って行っています。例えば、大雨で一部の道路が冠水したときは、現場の写真を撮影して素早くLINE WORKS上で共有しました。
職員の安否確認も、LINE WORKS上で行えるようにしました。これまでの防災マニュアルでは、職員の安否確認として3時間連絡が取れない場合は、個別に電話連絡をするというものでしたが、住民への対応をいち早く求められる職員の安否確認はもっと速やかに行うべきだと考えました。そこで、モバイル利用をしている全職員に安否確認の連絡をLINE WORKSのトークで一斉に行い、5分以内に既読にならない職員にだけ電話で安否確認する体制に変更したのです。これにより、職員の安否確認が瞬時に行えるようになり、本来の業務である防災活動に注力できる環境が整いました。
石月さん:
災害時には、各課に備え付けている公用のスマホは指定の避難所に配布され、本部と避難所の連絡手段として使われます。スマホにはLINE WORKSを付与しており、市長や本部からの指示や確定情報をLINE WORKSの掲示板で一斉周知するという運用ルールに変更しました。救護活動や避難住民の対応を最優先にしている避難所の現場では、電話がつながらなかったり、聞き間違いや聞き漏れなどの可能性もありますが、掲示板での周知は混乱した現場でも情報が正しく伝わると考えています。
医療機関とはどのように連携し、効果を実感されていますか。
石月さん:
市民に新型コロナワクチン接種に協力いただく医療機関とのスムーズな連絡手段としても活用しています。セキュリティの観点から、情報を分離するために庁内職員のLINE WORKSとは別に医療機関専用のLINE WORKSを導入しています。医療機関と連絡をとる担当職員は、市役所用と医療機関用の2つのLINE WORKSアカウントを保有し、PCでは複数のブラウザで使い分けて日々の業務連絡と医療機関との連絡を行うようにしています。
鈴木さん:
2021年5月に三条市のワクチン接種対策本部で医療機関向けの説明会を開き、予めLINE WORKSのアカウントを付与したタブレットを配布しました。ワクチン接種対策本部は3名の担当職員がアカウントを持っており、ワクチンの配送スケジュールの連絡をしたり、医療機関からの質問に回答したりする取り組みを行っています。
鈴木さん:
これまで個別医療機関への連絡手段は電話とFAXでした。しかし、電話だと回答するあいだ保留で相手を待たせたり、個別の連絡ですので、同じ質問をそれぞれの医療機関からいただくことも少なくありませんでした。その点、LINE WORKSであれば、いただいた質問に対して気づいた担当職員が速やかに回答できることと、そのやりとりはグループトークに入っている他の医療機関にも共有されるのでお互いの意思疎通が円滑に行えます。また、あとから見返すこともできるのも便利です。
医療機関からも「些細なことでも、時間を選ばず気軽に質問できるので便利になった」と好評です。簡単にコミュニケーションができるので、例えば、ある医療機関からは「私はこの注射針が使いやすいと思いますよ」といったちょっとした意見や感想を写真付きでグループトークで発信いただけることもあります。
複数人のやりとりではリプライも活用。気軽な質問やコミュニケーションがトークで活発に行われている
新型コロナ用のワクチンを移送するための可搬型冷凍庫の配布希望調査を行った際には、アンケート機能が役立ちました。タブレット上で回答できるため簡単で、ほとんどの個別医療機関から回答を頂けたうえ、集計結果も分かりやすく表示されます。またLINE WORKSを使うことで、FAXでやりとりする手間が省け、庁内のペーパーレス化にも寄与しています。
今後、LINE WORKSをどのように活用していきたいと考えていますか。
石月さん:
防災業務での活用として、今後は水害や地震などの災害時における医療機関や福祉施設とのやり取りもLINE WORKSで行えるよう、できるだけ早く体制を整えていきたいと考えています。また、産休や育休の職員が現場に復帰しやすいように、LINE WORKSでの情報共有も積極的に推進していきます。さらに、市民向けサービスとして、個別の相談要望があったときに専用のLINEWORKSを立ち上げて対応する予定としています。アカウントを市から配布することで市民の負担を減らし、セキュリティにも配慮したうえで相談に応じることができると考えています。
滝沢市長:
市役所の職員には、ITツールを活用して業務をどんどん楽ちん化してほしいと思っています。それによって余裕ができた時間を、市民へのサービス向上を考える時間に充ててほしいのです。それがLINE WORKSを導入した大きな目的のひとつです。今後もLINE WORKSをフル活用しながら、三条市で暮らす住民本位の市政を展開していきます。
【お話を伺った方】
新潟県三条市
市長
滝沢 亮さん
職員とのコミュニケーションを円滑にするためにチャットツールの活用を提案。業務を楽ちん化することで住民サービスの向上に努めています。
総務部 情報管理課
係長
石月 貴さん
ICTを利活用した庁内システムの企画・運用を担当。滝沢市長の指示のもと、LINE WORKSの選定や全庁導入の推進役を担っています。
経済部 営業戦略室
須佐 恋さん
三条市の観光行事の運営や観光情報の発信業務を担当。コロナ禍でイベントが縮小傾向にある中で、市民の3密を回避する取り組みにも従事しています。
福祉保健部 健康づくり課
ワクチン接種対策班
鈴木 智美さん
個別医療機関と密接に連絡を取りながら、市民が新型コロナウイルスのワクチンを円滑に接種できるように日々尽力しています。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2021年7月当時のものです。