神奈川県藤沢市のFujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)は、住人住自治組織・マネジメント会社間の情報伝達をスムーズにする目的で、1000ユーザーまで無償で使えるLINE WORKSの「非営利団体向け特別プラン」を導入しました。それまでのメーリングリストをトークに置き換えることで、タイムラグのない意思疎通を可能にしました。チャットならではの気軽に意見を発信できる雰囲気も手伝って住人どうしのコミュニケーションが円滑になり、まち全体を活性化することにも役立っています。
本事例のポイント
- 「非営利団体向け特別プラン」を活用し費用をかけずにコミュニケーション基盤を整備
- メーリングリストをトークに置き換えることで情報伝達が飛躍的に向上
- 住人どうしの意思疎通を促しまちの活性化に貢献
まずはFujisawa SSTの概要についてご紹介ください。
西島さん:
神奈川県藤沢市のFujisawa SSTは、先進的な取り組みを進めるパートナー企業と藤沢市の官民一体の共同プロジェクトにより2014年に誕生した街です。エネルギー、セキュリティ、モビリティ、ウェルネス、コミュニティなど多角的な視点から快適な生活を実現し、地域課題解決を追求するため、住む人や街に関わるみんなが“まち親”となってアイデアを自由に出し成長に導くことをコンセプトとしており、2025年5月現在566世帯が居住しています。その自治組織がFujisawa SSTコミッティ(以下、コミッティ)です。
熊﨑さん:
私どもFujisawa SSTマネジメントは、タウンマネジメントと共創インキュベーションの中核機能を担い、街を生成・構築期から成長期へ移行させるため、住人と企業の協力関係の拡大や、共創・広域展開の基点となる役目を果たしつつ、コミッティの活動を多角的にご支援しています。
LINE WORKSを導入する以前はどのような課題を抱えていましたか。
西島さん:
私が2021年にコミッティの会長に就任した当時は、コロナ禍の影響で住人どうしの関係性が希薄になっていました。そんな状況をどうにか改善したいと思ったのですが、コミッティの役員間の連絡や住人への情報発信はメーリングリストで行われており、円滑なコミュニケーションを取ることは困難でした。
田中さん:
メーリングリストでは迅速に情報を共有できないだけではなく、文面が堅苦しくなって微妙なニュアンスも伝わりません。誰に発信されたメールなのかもよく分からないため、しっかり目を通さないままコミッティの会議に出て、何が議論されているのかピンとこないこともありました。
熊﨑さん:
私と長島は2021年に着任したのですが、当社の前任者の話では、役員会とFujisawa SSTマネジメントのやり取りにもメーリングリストが使われ、情報伝達が一方通行になりがちでスムーズな意思疎通がしづらいという話でした。
課題解決に向けてLINE WORKSを選定された理由をお聞かせください。
田中さん:
Fujisawa SSTマネジメントの前任者の方から、コミッティのコミュニケーションツールとしてLINE WORKSを利用することを提案されました。たまたま私の勤務先でもLINE WORKSが導入された直後で、使い勝手の良さを知っていたことから「それいいね」という話になりました。
西島さん:
多くの住人が使い慣れているLINEに似たインターフェースだと聞き、容易に定着することが期待できました。プッシュ通知や既読機能もあるため、情報伝達の確実性が高いのも魅力です。また、災害時など緊急時の連絡手段としても活用できそうでした。
まずコミッティの役員を中心とするメンバーで試験的に運用して操作性が申し分ないことを確認したタイミングで、LINE WORKSには「非営利団体向け特別プラン」が用意されており、1000ユーザーまで無償で使えることを知りました。これなら全566世帯に1アカウントずつ付与でき、費用をかけることなくコミュニケーション基盤を整備できると思い、本格的に運用することを決めました。
住人の皆さんにLINE WORKSを展開されるうえで、工夫されたことはありますか。
田中さん:
コミッティから押しつけるかたちにすると反発を招く恐れがあると考え、当初「災害時の緊急連絡用」という名目で、「LINE WORKSなら個人の連絡先を教え合うことなく、アドレス帳から検索して連絡を取れる」と説明して1世帯に1アカウントの登録を勧めました。「よかったら使ってみてください」という姿勢でお願いしたのが功を奏し、ほぼ半数の世帯がすぐに友だち登録をしてくれました。その後も徐々に広がり、4年後の現在では登録率が全世帯の約8割に達しています。

LINE WORKSを活用することでコミュニケーションはどう改善されましたか。
・住人・役員・マネジメント会社間の情報共有がスピードアップ
・絵文字やスタンプの活用で距離感の近いコミュニケーションを実現
・会議の議事録や各種資料をフォルダで共有し、いつでも閲覧できる状態に
西島さん:
「全世帯」のグループに発信することで、コミッティからのお知らせを簡単に周知できるようになりました。トークやグループを適宜使い分けて役員どうし、役員と住人、役員とFujisawa SSTマネジメントがリアルタイムでやり取りでき、連絡や確認にかかる時間が大幅に短縮。既読/未読が分かり、情報が伝わっているかどうか把握できる安心感が得られるのも、メーリングリストにはないメリットです。
メーリングリストを使っていた頃の「バラバラな返信」や「見落とし」といった課題を解消し、共通認識の形成を促進している
田中さん:
コミッティ内の部会単位でグループトークルームを組成し、アドレス帳の整理も効率的に行える組織機能を使うことで、役員間の連絡、住人どうしの連絡、防災連絡、イベント告知などあらゆる活動におけるコミュニケーションが円滑にできています。
役員会、部会、班などからなる自治体の組織図をLINE WORKS上でも再現することで、連絡したい相手をアドレス帳で速やかに検索が可能
熊﨑さん:
メーリングリスト時代はFujisawa SSTマネジメントと役員の方の連絡は事務的な雰囲気だったと聞いていますが、LINE WORKSではチャットならではの気楽さで雑談風のやり取りもなされますし、絵文字やスタンプも使えるので、お互いに距離感の近いコミュニケーションを図れています。
長島さん:
住人の方が思いついたことを「こんなことをやってみたいね」と気軽に発信し、それが実現して新たなイベントの開催に発展したりすることもあります。コミッティには多くの部会がありますが、中でもとくに活発に動いているのがお祭りやスポーツイベントなどを開催する「文化クラブ」で、現在ビーチバレー大会の開催を企画中ですが、大会で使うのに適したボールの検証動画を共有するといった使い方もされています。
他にLINE WORKSのどんな機能をよく活用されていますか。
西島さん:
定例会議の議事録や各種資料の共有・整理にフォルダを活用。議事録は過去3年分を保存し、必要に応じていつでも閲覧できるようにしています。
フォルダとノートで議事録や資料を年度ごとに整理して保管。必要なデータを素早く参照できる環境が整えられた
田中さん:
アンケートや掲示板機能も一部で使われていますが、本格的に活用するのはこれからの課題です。
改めてLINE WORKSの導入効果をどう捉えていますか。
・会議の生産性やイベント準備などの業務効率がアップ
・気軽なやり取りから多彩な活動アイデアが生まれ、まち全体の活性化に貢献
・任期満了後の役員留任率が向上
西島さん:
住人のコミュニケーション基盤となっただけではなく、議事録や資料の一元管理が可能となり、会議の生産性やイベント準備などの業務効率も高まりました。また、住人どうしの気軽なやり取りから多様な活動のアイデアが生まれており、街全体の活性化に貢献してくれていると思います。
田中さん:
コミッティの役員は2年1期の輪番制で、これまでは1期で退任するケースが大半でしたが、2025年は19人名中14名が自発的に留任しました。LINE WORKSによって住人間のコミュニケーションが促進された結果、役員の仕事にやりがいを感じるようになった人が増えたことの表れだと思います。
熊﨑さん:
LINE WORKS導入前の2021年に年間370件あったコミッティの運営に関する弊社への問い合わせ件数は年を追うごとに減り、2024年はわずか50件しかありませんでした。これはLINE WORKSのフォルダに議事録や資料が保管され、いつでもすぐに参照できる環境が整備されたことによるものです。私どもへの問い合わせが減っていることからも、コミッティの運営業務が効率化していることがうかがえます。
コミュニケーションの活性化を模索している他の自治体へのアドバイスをお願いします。
田中さん:
まずは少人数のコアメンバーで試し、下地をつくったうえで展開するとスムーズに運用できると思います。私たちがそうしたように、防災などの導入目的を前面に打ち出して、「よかったら使ってみてください」という“緩いスタンス”で住人の方に登録を促すことも、より多くの人に使ってもらう上で効果的です。
西島さん:
情報伝達のスピードアップ、住人どうしのコミュニケーション促進、資料の共有化など、費用が一切かからない無料プランでこれほど多くの導入効果が得られるものかと驚いています。ビジネスチャットの導入を検討する自治会には、ぜひLINE WORKSの「非営利団体向け特別プラン」をお使いになることをお勧めしたいですね。
LINE WORKSの活用を今後どのように発展させたいとお考えですか。
西島さん:
コミッティでは以前からポータルサイトを運用しており、全住人に共有してほしい情報をLINE WORKSと並行して発信しています。また、役員会のスケジュール管理には別のスケジューラを利用している状況なので、いずれはこれらをLINE WORKSに集約したいです。そのためにも、少しでも多くの世帯に友だち登録をしてもらうことが必要です。
田中さん:
発信した情報がどれだけ周知されるかも重要なので、登録率を高めるだけではなく、コミッティから発信したメッセージの既読率を100%に近づける努力をすることも大切だと思います。
将来的には、Fujisawa SSTに関する住人からの問い合わせにLINE WORKSのチャットボットが自動的に回答するような仕組みも作れればと考えています。
【お話を伺った方】
西島 靖之さん
コロナ禍で停滞した住人どうしのコミュニケーションを活性化させたいのと思いを抱き、2021年にFujisawa SSTコミッティ 会長に就任。
田中 祐介さん
西島さんと同じ思いを抱き、2021年にFujisawa SSTコミッティ 副会長に就任。
熊﨑 貴之さん
Fujisawa SSTコミッティの活動をマネジメント会社の立場でサポートする。
長島 美香さん
熊﨑さんとともにFujisawa SSTコミッティの支援業務に携わる。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2025年5月当時のものです。