埼玉県を拠点とする総合建設企業の伊田テクノス株式会社は、施工管理ツールPhotoruction(フォトラクション)で施工現場の写真や図面をクラウド上で共有。社員どうしでその写真や図面を引用しながらチャットができる環境の構築と、BPOサービス利用時に書類や連絡をスムーズにやり取りする目的からLINE WORKSを導入。掲示板、アンケートなどの機能も有効に活用することで、業務生産性を大きく向上させています。
本事例のポイント
- 口頭での曖昧なやりとりから画像とテキストでの正確で迅速な情報共有を実現
- 運転前のアルコールチェックの結果の報告を効率的に実施
- 情報周知や意見収集、業務指示にLINE WORKSをフル活用
御社の事業内容をご紹介ください。
守山さん :
1910年創業の当社は、建築工事と土木工事を通じて埼玉県を中心とする地域社会の発展に貢献してきた総合建設企業です。土木事業、建築事業、地盤事業、住宅事業の4事業を柱として、道路・橋梁・公園・公共施設など官公庁の建築・土木事業から住宅建築まで、多様な建設・建築ニーズに応えています。
以前はどのような業務課題に直面していましたか。
守山さん :
2019年に働き方改革法が施行されましたが、建設業界では短期間で労働環境を変えることが難しいため、その適用に5年間の猶予が与えられました。猶予期間が終わる2024年には、従業員の時間外労働が月45時間・年360時間以下に制限され、違反すると罰則を課される可能性もあり、建設業界は「2024年問題」として対応を迫られています。人手不足が解消されない中で時間外労働を抑制するには、労働生産性の向上が不可欠です。IT化やDXの推進がこれまでにも増して急務となり、改めて社内のさまざまな業務を見直すことになりました。
その結果、現場スタッフと管理者の間で施工現場に関する情報共有がスムーズにできないことが、業務効率を阻害していることがわかりました。運用しているグループウェアはモバイル環境では使いづらく、現場スタッフによる上長への工事の進捗状況の報告などはメールで写真を添付して送信していましたが、メールは他の情報等と埋もれがちになり、上長はタイムリーな確認や助言ができませんでした。さらにそのことは、一部の社員が個人LINEを使うなどシャドーITを助長する要因ともなりました。また、ペーパーレス化が進んでいないために持ち歩かなければならない図面や書類が多いことも、現場に出る社員に負担を与えていました。そうした課題の解消に向けて、施工現場の写真や図面類などをクラウド上で一元管理できる施工管理ツールPhotoructionを活用、続いてシャドーITを防ぎながら情報共有や業務連絡の効率化を目的にLINE WORKSを導入しました。
LINE WORKSが導入された背景を教えてください。
田中さん :
まず、Photoructionの導入によって現場で撮った写真を上長にメールで送る手間がなくなり、それだけでも業務の省力化につながっています。Photoructionに取り込まれた画像は建築部員全体で共有されるので上長から速やかに指示が下りてきたり、その現場に直接かかわっていない社員からも気がついた点を指摘してもらえるようになりました。
守山さん :
図面や検査書類などもPhotoructionで一元管理しながら共有できるようになり、建築部の業務効率向上に大きく貢献してくれています。しかし、画像がアップされたあとの連絡や指示は、依然として対面か電話で行われていました。
連絡業務もなんとか効率化できないかと考えていたところ、LINE WORKSと組み合わせて利用すれば、Photoructionに保存された写真や図面を引用しながら、トークを使った連絡や指示出しが容易にできるようになると知りました。
また、対面や電話、メールで行っていた連絡をトークに移行させることで、社員間の意志疎通がスピードアップし、結果として業務効率化が図られると考え、建築部にLINE WORKSを導入することを決めました。
LINE WORKS導入に対する建築部の社員の皆さんの反応はいかがでしたか。
守山さん :
日常で使い慣れているLINEのビジネス版ということで、LINE WORKSに抵抗感を抱く社員はいませんでした。基本的な操作がLINEと似ているので特別なレクチャーは行いませんでしたが、導入の大きな目的の1つがPhotoructionと組み合わせて写真や図面を引用したチャットコミュニケーションをすることだったので、そのノウハウを説明する資料を作成して全部員に配付して利用を開始しました。
LINE WORKSとPhotoructionの組み合わせによる操作手順を、オリジナルのマニュアルで社員に解説
LINE WORKSとPhotoructionを組み合わせた活用について具体的にお聞かせください。
・Photoructionに保存した画像を引用してのスピーディなチャットコミュニケーション
・建設BPOサービス利用時のスムーズなデータの受け渡し
守山さん :
Photoructionとの組み合わせについては、iPadの既存機能である「共有」を活用しています。写真の閲覧画面から共有メニューでシームレスにLINE WORKSのトークを立ち上げ、図面や写真を引用して迅速に連絡事項を伝達し合っています。現場の進捗状況を報告する側も、それを受ける上長の側も業務も確実にスピードアップしています。
Photoructionには建設BPOサービスのオプションもあり、写真、図面、書類などのデータをアップロードするだけで工事写真台帳作成、書類のデータ化、図面からの数量拾いといった業務を代行してくれます。当社では配筋検査野帳の作成に際して検査書類と図面の紐づけまでしてもらうことで、業務を大きく省力化できました。PhotoructionのオペレーターもLINE WORKSを使っており、BPOサービスの利用時は外部トーク連携を使ってグループトークでやり取りをしているので、書類やデータの受け渡しも非常にスピーディです。
社内では、アルコールチェックの検査結果の報告に、LINE WORKSを活用しているそうですね。
守山さん :
社用車を使う事業者のアルコールチェック義務化に伴い、業務で車を運転する社員が、アルコールチェッカーで検査した数値を写真に撮ってアップするためのグループを運用するようになりました。
LINE WORKSによって社内コミュニケーションはどう改善されましたか。
【グループ】部署や現場などの単位で情報を緻密に共有
【掲示板】会社からの重要な通達をアップして周知を徹底
【アンケート】配付と回収を省力化し、匿名による回答で社員の本音を聴取
【タスク】担当者にタスクを送信することで指示忘れを防止
守山さん :
組織図に基づいて用意される部署単位のグループのほか、現場その他のさまざまな単位でもグループをつくり、情報をタイムリーに伝え合えるようにしています。
田中さん :
例えば「配筋検査が無事に完了しました」といった、緊急性はないものの確実に伝えておきたい上長への報告はすべてトークで送るようになりました。応答してもらえないことが多い電話と違って確実に用件を伝えられ、既読が付けば「見てもらえたんだな」と安心できます。言葉だけでは説明しにくい現場の状況を、写真を添付して説明することもよくあります。
守山さん :
建築部では部下が私にメールで用件を伝えてくることがほぼなくなりました。部員全員が、いつどこにいてもパッとやり取りできるLINE WORKSの便利さを実感しています。
また、会社からの通達などはグループウェアの掲示板に掲載していますが、例えばコロナ対策に関する社内規定など特に重要な事項に関しては、より周知を徹底するためLINE WORKSの掲示板にもアップするようにしています。
会合等への参加確認や建築部員からの意見聴取にアンケートも活用しています。部内の意識調査などをしたい場合、旧来の方法では本音を引き出せないこともあったと思いますが、LINE WORKSのアンケートなら匿名で回答を得られるので、社員の正直な声を回収することができるのも利点です。
アンケートで会合への参加の可否や社員の意見を効率的にヒアリング
部下への指示出しにタスク機能を活用するようになりました。部下は口頭で指示された内容をうっかり失念してしまうことがありますが、タスク機能を使えばそれを効果的に防げます。
LINE WORKSの活用を、今後どのように発展させたいとお考えですか。
守山さん :
LINE WORKSには私たちがまだ十分に活用し切れていない機能がたくさんあります。さらなる業務効率化に向けて有効利用し、「2024年問題」という課題を乗り越えたいと思っています。
【お話を伺った方】
守山 明良さん
建築部 副部長とリニューアル課 課長を兼任して建築事業を管理するほか、建設DX推進室 室長として働き方改革に向けた業務のDXを促進。
田中 寛子さん
建築部 リニューアル課が手掛ける案件の現場の工程管理や品質管理に携わる。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2022年6月当時のものです。
* Photoruction …建設・土木業の現場の状況をリアルタイムに共有。写真や図面、工程表、タスク、検査など豊富な機能で、技術者が本質的な仕事に集中できる環境を提供する施工管理アプリ。
https://www.photoruction.com/