愛媛県久万高原町の道の駅「天空の郷さんさん」で農産物直売所やレストランなどを運営する株式会社さんさん久万高原は、パートを含む40名の従業員のコミュニケーションツールとしてLINE WORKSを導入。業務連絡を円滑にするとともに、受注商品の発送までの進捗状況を案件ごとにノートに記録して共有したり、栽培品目ごとにタグ付けした生産者をアドレス帳に登録して、必要な商品をスムーズに手配できる仕組みを整えたりするなど、独創的な活用によって多くの業務を効率化しています。
本事例のポイント
-年配の従業員にも使いやすく直売所の運営に欠かせないツールとして定着
-ネット通販やふるさと納税返礼品の商品発送までの進捗を一元管理
-アンケートやテンプレート、タスクなど多彩な機能を業務効率化に活用
-約300人の生産者管理や社外関係者との連絡もLINE WORKSで実施
-Amazonビジネスとの連携で購買や精算の負担が軽減
御社の事業内容をご紹介ください。
菅(かん)さん :
当社は愛媛県の久万高原町で2014年にオープンした道の駅「天空の郷さんさん」にある農産物などの直売所、レストラン、パン工房、ファストフード店を経営しています。平均標高800mの久万高原町は、西日本最高峰の石鎚山に代表される自然資源に恵まれ、寒暖差の大きい気象条件が高原野菜をはじめとする特産品を育んでいます。
遠部(おんべ)さん :
地域の農家は高齢化が顕著です。直売所は生産量が少なく一般の流通ルートに乗りにくい、そんな農家の生産物を販売する場としても機能しており、米、野菜、果物など豊富な商品を取り揃えています。
以前はどのような課題を抱えていましたか。
菅さん :
従業員に周知・確認すべき事項は日々たくさんあります。例えば、政府が実施する観光需要喚起策の「全国旅行支援」の開始日を通達したり、健康診断の日程を調整するなどです。しかし40名あまりの従業員を結ぶコミュニケーションツールがなく、これまで連絡事項の多くは口頭、紙の書類や事務所のホワイトボードで伝達していて負担がありました。また、把握した記録が残らないために「言った/言わない」のトラブルが発生しがちなのも悩ましい課題でした。
遠部さん :
突発的に発生する勤務変更の調整も不便でした。直売所の営業時間は9時~17時ですが、農家からの生産物の受け入れ業務などは早朝から始まるので、15名ほどのスタッフが3交代制で勤務しています。そのシフトの突発的な変更などを連絡する手段が電話しかありませんでした。
菅さん :
自ずと個人LINEが業務連絡に使われるようになりましたが、一部の従業員が自発的に友だち追加をし合って利用しているだけなので、全社的な連絡ツールとしては機能しませんでした。また、ニックネームで登録されている人が誰なのかわかりにくいといった不都合もあり、会社として正式なコミュニケーションツールを導入する必要性を感じるようになりました。
課題解決の手段としてLINE WORKSを選ばれた理由と、運用までの経緯をお聞かせください。
菅さん :
どんなツールを運用するべきか従業員どうしで意見交換をし、年配のスタッフもいることから「とにかく使いやすいツールがいい」という結論に達しました。そこで目を向けたのが、多くの従業員がプライベートで使い慣れているLINEの操作性を踏襲したLINE WORKSです。約半数を占めるパートスタッフも含め全従業員にアカウントを付与し、BYODで運用をスタート。「業務用LINE」と説明したところ抵抗感なく受け入れてもらえ、導入時の教育も特に必要がなかったことを、導入・運用の管理者としてありがたく感じています。
直売所の運営業務にLINE WORKSのさまざまな機能を活用しているようですね。その具体的な利用シーンと効果をお聞かせください。
【グループ】目的別に情報が整理。タイムリーな情報交換で直売所の業務の質が向上
【アンケート・テンプレート】効率的な情報収集かつペーパーレス化を実現
【タスク】自分やメンバーの仕事が円滑に進むよう進捗を管理
菅さん :
組織全体や部署、プロジェクトや案件ごとのグループトークルームがつくられたことで、以前とは比較にならない速さで情報が伝達されるようになりました。紙の文書は配付後に個々の従業員が読んでくれたかどうかを知る手立てがありませんが、今は既読がつかない従業員に閲覧を促せるので、情報を確実に周知することができます。あらかじめメンバーどうしでアイデアを出し合って共有しておく習慣が定着したことで、ミーティングに要する時間も短縮されました。
紙の文書やホワイトボードで伝えられていた情報がLINE WORKSで共有されるようになり、従業員どうしのコミュニケーションが大きく活性化した
遠部さん :
メモや口頭で行われていた伝達がトークに置き換わり、シフト交替時の申し送りがスムーズになるとともに「言った/言わない」のトラブル発生も防げるようになりました。店頭で販売する農産物の調理レシピを複数の担当者がやり取りしながらブラッシュアップしたり、業務に役立ちそうなニュースを見た従業員が他の従業員に発信したりするなど手軽な情報共有が始まり、直売所の業務の質が全体的に高まったように思います。
また、社長をはじめとする経営層もグループトークのメンバーとして参加してもらい、従業員の日々のやり取りを見てもらうようにしたことで、現場からのさまざまな上申が承認されやすくなったことも感じています。
菅さん :
アンケート機能を従業員全体への意見収集や行事の日程調整などに活用しています。対面や紙文書でのヒアリングと比べてずっとスムーズに回答を得ることができます。
手間をかけることなくアンケート機能で社内の意見を収集
休業申請書など従業員がよく使う書式はLINE WORKSのテンプレートを作成して共有できるようにしました。これまでは申請書をリクエストされるたびに総務営業部で保管している紙の様式を探して渡していましたが、その必要がなくなって業務効率化とペーパーレス化に役立っています。
遠部さん :
カレンダー機能も使っています。大勢のお客様が道の駅に来られる休日は、従業員用の駐車スペースが普段とは違う場所に変更されます。前日のうちに総務営業部が翌日に使える駐車スペースをカレンダーに登録して共有してくれるので、当日になって従業員が迷うことがなくなりました。
私が特に便利だと感じているのはタスク機能です。自分自身の業務も、他の従業員に依頼する業務も、円滑な進捗管理ができるようになりました。
菅さん:
これは全社ではなく私個人が行っていることですが、自身の予定管理に以前から使っていたGoogleカレンダーを連携させて、LINE WORKSのカレンダーで閲覧できるようにするといった活用もしています。
ふるさと納税の返礼品対応にもLINE WORKSを活用しているようですね。
【ノート・カレンダー】ふるさと納税の返礼品などの受注から発送までの進捗状況を管理
遠部さん :
当直売所はネットでの販売や、久万高原町のふるさと納税の返礼品の発送も行っています。シフト勤務ということもあり、受注した商品の手配、受け入れ、発送を担当する従業員は異なるケースが多く、進捗状況の共有がややこしく手違いが起こりがちでした。LINE WORKS導入後は「ネット販売発送管理」のグループトークルームを設け、発送までのプロセスを1案件ずつグループトークルームのノートで管理。処理をした担当者がその都度ノートに記録を投稿しておくことで、誰もがタイムリーに状況を把握できるようになりました。発送を終えたら「予約」から「完了」にステータスを変更することで、確実な発送・販売管理ができています。店頭での販売用に受発注管理システムで仕入れた商品についても、同様にノートで発注状況を共有しています。
ふるさと納税返礼品などの発送までの進捗を1案件ずつノートで管理。担当者が投稿するコメントによっていつどんな処理がなされたかが一目瞭然
遠部さん :
受注したふるさと納税返礼品の発送予定日を登録して直売所の全従業員が共有するのにはカレンダーを共有しています。
生産者情報や社外関係者との連絡を効率化するための工夫を教えてください。
【アドレス帳】農産品生産者の連絡先を品目ごとにタグ付けして登録
【外部トーク連携】地域おこし協力隊とノートを共有
菅さん :
直売所は300名ほどの生産者とお取り引きしており、全員の電話番号をPOSシステムのデータベースからLINE WORKSのアドレス帳に取り込み、従業員全員で共有しています。生産している農産物の種類や年間出荷月など、データに基づいたタグを作成し、アドレス帳に登録する生産者情報にタグ付けしました。例えば急遽ニンジンを仕入れる必要に迫られたとき、「ニンジン」のタグを選択するだけで同じタグ付された生産者がソートされ、直ちに電話で発注することが可能になりました。
生産者に栽培品目のタグ付けをしてアドレス帳に登録。目当ての生産者をアドレス帳で素早く検索できる。右図はイメージ
直売所で販売する商品の企画・開発などを行う地域おこし協力隊にLINE WORKSを導入してもらい、外部トーク連携機能でつながりました。LINEとの外部トーク連携ではノートを共用できませんが、LINE WORKSどうしならそれが可能です。地域おこし協力隊との連絡手段がメールからノートに替わったことで、情報の伝達と共有がよりスピーディになりました。
購買の効率化を目的にAmazonビジネスとLINE WORKSの連携も行われているそうですね。
菅さん :
Amazonビジネスとのアプリ連携サービスを利用し、直売所、パン工房、ファストフード店の各担当者がトークから備品や消耗品を注文しています。地元の資材販売店では扱っていない販促用ののぼりなどを購入するほか、低価格の商品を見つけて注文する場合もあります。以前は各担当者個人に購買してもらい立替金を後日に精算していましたが、今ではその手間がかかりません。管理者へ決済の承認を依頼できる機能もあり、購買業務が省力化しました。
LINE WORKSは御社の業務にどのような変化をもたらしましたか。
菅さん :
導入の目的は従業員間の連絡ツールとすることでしたが、多彩な機能を駆使することで、さまざまな業務をLINE WORKSに集約することができています。
遠部さん :
これまでは個々の従業員がそれぞれに仕事を抱え込んでいる感じで、その人が休むと業務がストップしてしまいましたが、LINE WORKSを通じてあらゆる業務情報が共有されるようになった今は、誰かが休んでも業務が停滞することがありません。また、LINE WORKSはスマホで使えてさまざまな情報にアクセスできるので、PCの前に座らざるをえない時間が減り、機動的に動きながら仕事ができるようになりました。
LINE WORKSの活用を、今後どのように発展させたいとお考えですか。
菅さん :
基本的に、従業員はLINE WORKSをバックヤードで使うようにしています。しかしそれでは業務効率を阻害するので、LINE WORKSとの連携機能があるBONX WORKを導入し、送信されたトークの内容を音声としてインカムで聞くことができる環境を整備することを検討しています。
また、ふるさと納税返礼品の発注があったことはメールで通知されるため、担当者がこまめにPCでメールチェックをしています。その煩雑さを解消するため、メール転送サービスのMail2LinkとLINE WORKSを連携させ、受信したメールをトークルームに自動で転送する仕組みなども構築できればと考えています。
【お話を伺った方】
菅 洋一郎さん
総務営業部 部長として経理、法務、広報など幅広い業務をマネジメントしている。
遠部 早苗さん
農産物等を販売する直売所「物産館さんさん」の業務管理に携わる。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2022年10月当時のものです。