介護付き・住宅型有料老人ホームやグループホームにて介護サービスを提供している株式会社メグラスは、全社のコミュニケーションツールとして、LINE WORKSを有効活用しています。日常の情報伝達の効率化に加え、採用活動でも活用。またコロナ禍のBCP対策やハラスメント対応窓口としても効果を発揮し、施設利用者と現場スタッフ双方の安全を守る重要な役割を果たしています 。
本事例のポイント
- 離れた施設で働く全従業員が正確な情報をリアルタイムに共有
- コロナ禍のBCP対策に活用し、経緯を時系列で公表
- 介護スタッフをハラスメントから守るためにも活用
- 応募から入社後のサポートまで採用活動を1つのトークルームで完結
御社の事業内容をご紹介ください。
飛田さん:
株式会社メグラスは、2010年に愛知県名古屋市に誕生したソーシャルベンチャーです。社名の由来である「よいめぐりを世の中へ」を企業理念に掲げ、医療に強い介護施設を中心としたビジネスを展開しています。現在は、介護施設10カ所と保育室1カ所を運営しています。介護業界の先駆を切って社内SEを有し、DXに積極的に取り組んでいることが特長です。
これまでどんな業務上の課題を抱えていましたか。
飛田さん:
以前の社内業務では、コミュニケーションコストが高いことが一番の課題でした。現場のスタッフは常に動きながら仕事をしているので、プリントを配っても文字が多いと読まない傾向があります。そのため、連絡事項を口頭で伝えることが多かったのです。また中間管理職は、現場に「会社の方針だから」と一方的に伝達するだけで、背景や理由をきちんと説明しなかったので、「急に言われても困る」と困惑するスタッフが少なくありませんでした。そこで、組織の伝達経路の垣根を取り払い、現場のスタッフとリアルタイムに直接コミュニケーションを図るためにはどうしたらよいのか、真剣に考えるようになりました。
コミュニケーションの課題解決のために、LINE WORKSを選定した理由と導入経緯をお聞かせください。
加藤さん:
各社が提供しているチャットツールを複数比較検討しました。導入においての方針は、個人のスマホで、「いつでも、どこでも、誰でも、すぐに情報を共有できる」でした。その中で、システム管理者目線でポイントになったのが、MDM(モバイルデバイス管理)です。万が一スマホを紛失しても、アプリデータを削除したり、デバイスを初期化することができるためです。その機能がチャットツール自体に最初から実装されているのは、LINE WORKSだけでした。管理者側からすべてのログを見ることができ、何かトラブルが起きたときに後追い調査が行えることも決め手になりました。
一方、利用するスタッフ目線では通常のLINEと同じユーザーインターフェースなので、特別な操作教育を行わずに、誰でもすぐに使えることが選定理由として挙げられます。実際、試しに導入してみたところ、高齢のスタッフが面白がってすぐにメッセージを送ってくれ、導入のハードルの低さを実感しました。当社スタッフは20歳から64歳まで幅広い世代が働いていますが、みんな利用しています。
LINE WORKSの活用をどのように社内に浸透させていったのですか。
加藤さん:
まず、本部で試験運用を始めました。当初は1ヵ月間試して問題点を抽出し、対応策を講じる予定でした。しかし、1週間で「これならすぐに使える」と判断。2019年12月にすべての施設、全従業員に一斉導入しました。とはいえ、当初は個人のスマホを利用することに抵抗を感じるスタッフはいました。こちらから強制はしませんでしたが、利便性のよさが抵抗を上回り自発的に個人スマホでの利用者が増えていきました。現在でも一部のスタッフは、事業所内にある共有PCでLINE WORKSにログインして利用しています。
飛田さん:
人事考課などの本社からの告知をLINE WORKSで行うとし、LINE WORKSを見なければならないような方針を打ち出しました。その点も、LINE WORKSが社内で急速に浸透していった要因の一つです。
浅井さん:
当社の現場スタッフはシフト制のため勤務時間がさまざまです。休みの人、勤務の人がいる中でLINE WORKSでの業務連絡は常に行われていますが、それを閲覧・回答する時間は本人の勤務時間にしていただくようお願いしています。個人のスマホに入っているからといって勤務時間外に見る必要はありません。メールと同じで、出勤してからの確認で構わないと会社からも案内しています。
業務においてLINE WORKSをどのように活用されていますか。
飛田さん:
最初に、すべての会議の議事録をLINE WORKSのホーム(掲示板)にアップしました。それを読めば、会社がどのような目的や理由で方針を打ち出しているのか、つぶさに分かります。その結果、上から下へ伝言ゲームのように情報を伝えていくピラミッド型の組織から、誰もが会社の方針に基づいて主体的に行動し、自ら意思決定するフラットな組織形態へ変革することができたのです。
加藤さん:
介護施設では、スタッフがシフト勤務の交代時に、施設利用者様の申し送り事項を伝えることが重要な業務の一つです。そうした中、ある施設では、LINE WORKSで施設利用者様ごとのノートをホーム(掲示板)で作成し、そこにケアカルテや申し送り事項を記載する取り組みを自主的に行っています。これにより、「ムリ、ムダ、ムラ」がないタイムリーな情報共有を実現しています。
ホームを活用して施設入居者様の申し送りを関係者全員へ発信。
情報伝達の抜け漏れを防ぐ
現在は、全社でLINE WORKSのカレンダーも活用しています。新しい施設利用者様が入居する日時や、自分が担当するフロアのメンバーが会議で抜ける時間などが、手元にPCがない仕事中や移動中でも確認できるので、とても便利です。
御社は、BCP対策やハラスメントへの対応でもLINE WORKSを効果的に活用されていますね。
【BCP対策】
加藤さん:
施設利用者様の安心・安全を確保するために、全スタッフが参加するBCP策定プロジェクトを立ち上げて実施しました。その中で、災害時の連絡手段として活用しているのが、LINE WORKSです。スタッフだけでなく、外部トーク連携で薬局などと迅速に情報をやりとりできることが大きな利点です。
浅井さん:
BCP策定の一環として、自社独自の新型コロナ対策マニュアルも作成しました。感染状況に応じた4段階のステージごとに具体的な対応策を明記し、各施設のデジタルサイネージに表示。同時に、LINE WORKSの掲示板にアップして全スタッフに周知徹底を図っています。
その後、実際に当社でも介護施設のスタッフ1名が新型コロナの陽性者と判明した事案が発生しました。しかし、そのスタッフはLINE WORKSのグループトークで全従業員に即座に自身の状況を報告。それを読んだ代表の飛田は「すばやい情報をありがとう」と返信して、新型コロナ対策マニュアルの実施を呼びかけました。結果、クラスターの発生を未然に防ぐことができました。このときの重要なポイントは、LINE WORKSのノートに濃厚接触の疑いがある関係者のPCR検査の実施状況などを、すべて時系列で公表したことです。
スタッフに感染症の陽性が判明したとき、本人から速やかにメグラス全体のトークルームで報告。
対応状況についてのやりとりが全員に共有されるため、
無駄な状況確認もなく、各自が速やかにマニュアルどおりに行動を移すことができた
飛田さん:
経営者が恐れていることは、間違った噂が広まり、スタッフの退職者が相次いで施設を閉鎖せざるを得なくなることです。しかし、正確な情報をリアルタイムに共有できる仕組みがあれば、混乱を招かずに済みます。その意味では、LINE WORKSは最適なコミュニケーションツールです。
【ハラスメント対応】
浅井さん:
当社では施設利用者様やご家族から受けたハラスメントを理由に介護施設内で従事する介護スタッフの退職が相次いでいました。それをきっかけに社内プロジェクトが発足し、様々なハラスメントから守るため「スタッフプロテクション制度」を2021年4月に導入しました。
加藤さん:
施設利用者様は認知症やご病気など様々なご事情を抱えていらっしゃいます。最大限に配慮することは大前提ですし、ハラスメントに該当するかどうかは都度慎重に検討すべきです。しかし、理不尽なハラスメントまで容認する業界の悪しき『当たり前』を変えたい、という思いで社内プロジェクトは発足しました。
浅井さん:
スタッフプロテクション制度では、施設利用者様やご家族の言動を3段階に分類し、ハラスメントに該当するケースなどが生じた場合はホットラインとして設定しているLINE WORKSから本人が報告します。報告はLINE WORKSのAPIを活用した独自開発のBotを経由してすぐに共有されますので、制度の規定に従って速やかに対応します。実際に、制度を開始してから15日間で2件の報告があり、現在対応を進めています。こういった活動がスタッフを守れる仕組みとして定着し、スタッフの定着率向上と持続可能な介護サービスの提供につながることを期待しています。
スタッフの採用活動において、LINE WORKSはどう活用されているのでしょうか。
浅井さん:
採用から定着においてLINE WORKSを採用管理システム(以下、ATS)として活用していることです。当社には毎月50名くらいの求人の応募者がいます。応募がくると、「採用状況」「氏名」「応募職種」「勤務形態」をグループ名としたグループトークを作成し、本社の採用部門、面接を担当する施設のスタッフでやり取りを集約しています。グループトークでは、メンバーで共有できるノートや予定機能を使って職種などの基本情報、面接スケジュールなどを共有しています。内定者の受け入れ準備などが速やかに行えるので、すごく便利です。
また、採用となった際には同じトークルームに入社後にサポートする施設スタッフも招待しています。採用時の情報から人事面談のフィードバックまで一元管理で共有でき、入社後のフォローにまで活用できることは採用業務の効率化にもつながっています。
選考状況をグループ名に表記。
キーワード検索でソートしリスト化できるため、管理が容易
当初は、月10万ほどのATSの導入も検討しました。しかし、ATSでは採用後のフォローまでを一気通貫して行うことはできません。LINE WORKSを日常業務で活用しているうちに、それらと同様なことが実現できることに気づき、余分な導入投資を行わずに済みました。
今後、LINE WORKSの活用をどのように拡げていきたいと考えていますか。
加藤さん:
LINE WORKSのコミュニティを参考にしながら、Botの自社開発を進めています。今後も、多彩なシステムやサービスと連携させながら、LINE WORKSをコミュニケーションのハブとして効果的に活用していきたいです。
浅井さん:
ATSとしての使い方やBCPツールとしての使い方など、さまざまな事例に関して社内にとどめるのではなく、どんどん社会へ発信していきたいと思っています。特に介護業界のデジタル化は他業界に比べて大変遅れています。業界全体によいめぐりをめぐらすきっかけとなれるよう、これからもLINE WORKSとのチャレンジを続けて参ります。
*スタッフプロテクション制度 介護スタッフが利用者や家族からハラスメントを受けた際の言動を3分類に色分けし、それぞれの措置方法をマニュアル化して周知・本人からの申告に基づき対処するメグラス社独自の社内制度。
https://meglus.co.jp/news/detail.html?id=1347
【お話を伺った方】
飛田 拓哉さん
代表取締役。聖路加国際病院にて総合内科・緩和ケア・在宅診療に5年間従事し、米国ミシガン大学に留学してMBAを取得。帰国後、外資系コンサルティングファーム ベイン・アンド・カンパニーを経て、メグラスを設立。
加藤 俊太朗さん
トヨタデジタルクルーズ(現トヨタシステムズ)でSE業務に従事した後、メグラスに介護スタッフとして入社。現在は、社内SEとしてDX推進の原動力を担当。
浅井 有希子さん
リクルート系の求人広告・人材紹介会社で企画営業職に従事した後、飲食業界での人材育成職・秘書職を経て、メグラスに入社。介護スタッフの採用・定着支援、広報・ブランディングを担当。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した当時のものです。
【資料公開】介護・福祉事業者向けLINE WORKS導入事例集
【特別対談レポート:善光会×LINE WORKS】サービス品質・従業員の働きやすさ向上につながるICTの活用-施設経営への活かし方-