SES(システムエンジニアリングサービス)を提供する株式会社新日本ニーズでは、SEの多くがクライアントに常駐して業務をするため、社内コミュニケーションが希薄になることが課題でした。その解決に向けてLINE WORKSを導入し、グループウェアとして活用することで、あらゆる情報を即座に共有できる環境を構築。社員どうしの交流を促して社内を活気づけることにもつながりました。現在はkintoneで内製したアプリと連携させてトーク画面からデータを入力する仕組みを構築するなど、業務効率化を図っています。
本事例のポイント
- 社内のスムーズな情報共有を促進するグループウェアとして機能
- トーク画面からkintoneで内製したアプリにデータを入力できる仕組みを構築
- コミュニケーションの活性化にともない社員のモチベーションがアップ
御社の事業概要をご紹介ください。
佐藤さん:
2004年に設立された当社は、銀行や証券会社などの金融機関にSES(システムエンジニアリングサービス)を提供しています。社員は全員SEで、基本的に顧客のシステム部門に常駐し、各社システムやアプリケーションの運用・保守、ヘルプデスク業務などを担当しています。また、規模はそれほど大きくありませんが、事務用品・OA機器・ソフトウェア・ハードウェア等の物販事業も行っています。最近は顧客企業のDXやDX人材育成支援サービスを新規事業として手がけ、これから本格的に展開していきます。
LINE WORKSを導入する以前はどのような課題をお持ちでしたか。
管原さん:
社員はそれぞれ常駐先での業務が中心で、同じチーム以外の社員とコミュニケーションを取る機会がほとんどありませんでした。コロナ禍となってからは常駐業務をリモートで行う機会が増えたことで、コミュニケーションがますます希薄になりました。数少ない交流の場として定期的な懇親会がありましたが、それもコロナの影響で開催できなくなり、組織への帰属意識や連帯感がいっそう薄れてしまいました。結果的に、「毎日同じ業務を繰り返しているだけ」という閉塞感にも包まれるようになっていました。
佐藤さん:
私は以前、この会社に業務を委託する側のシステムインテグレーターに勤務していましたが、縁あって当社の前代表から事業を承継することになりました。既知の会社ではありましたが、2022年10月に代表に就任したときは、社内コミュニケーションの量と仕組みともに不足している状況に驚かされました。そうした状況は直ちに改善しなければならないと思いましたが、社内にはグループウェアはおろか社員用のメールアドレスすらなく、私と社員、あるいは社員どうしが円滑に意思疎通を図る手段がありませんでした。
管原さん:
以前は、社内への連絡は電話か個人LINEで行われており、毎月の給与明細も自宅に郵送されていました。現場も業務も異なるメンバーが多く、話をする機会も限られていたので、社内コミュニケーションを促すのはもちろん、デジタル化による業務の効率化も必要だと思っていました。
佐藤さん:
コミュニケーション基盤が存在しないことを深刻な課題だと感じる一方で、私はこの会社の誰もが一生懸命仕事をする、人柄の面でも素晴らしい人たちだということを前職で一緒に仕事をしていた頃からよく知っていただけに、働きやすいと感じてもらえる職場に改革したいという思いを強くしました。
課題解決の手段としてLINE WORKSを選ばれた理由をお聞かせください。
佐藤さん:
1つ目のポイントは、LINEと操作性がほぼ同じで、誰でも使い慣れているため、導入がしやすいこと。2つ目は、カレンダーや掲示板、アンケートなどの機能を備えていて、単なるチャットツールではなくグループウェアとして使えることです。そして3つ目が、無料プランからスタートできることでした。当面は、IT投資や人材教育に資金を優先して割り当てたかったので、まずは無料プランから始めて、活用が進んだら機能やサービス内容がより充実した有料プランに移行することを前提に導入を決めました。私たちにとって無料プランではじめられたことはとても有難かったです。
LINE WORKSの具体的な活用シーンと導入効果をお聞かせください。
・電話連絡をトークに置き換え情報の伝達・共有をスピードアップ
・専用のトークグループで社内コミュニケーションを活性化
・外部トーク連携機能の活用で協力会社のLINEとの連絡も円滑に
・掲示板を通達の周知や意見交換の場として活用
佐藤さん:
会社全体や常駐先の各チームのトークグループをつくり、社内コミュニケーションをLINE WORKSで行うようにしました。これによって情報の伝達速度が格段に速くなり、各種申請書類の提出や会議資料や議事録などの共有もスムーズになっています。また、私が社長に就任した際に思い切ってこれまでのオフィスを解約し、バーチャルオフィスに移行したのですが、物理的なオフィスがない中でも、社員間でつながりを持てるのはLINE WORKSがあるからこそだと思います。

一部の業務は外部の協力会社に委託していますが、そうした連絡も外部トーク連携機能を使って担当者のLINEとできるようにして、あらゆるやり取りをデジタル化していきました。
それと同時に、社内研修(IT研修、農業体験等)やイベント時の写真を掲載したり、嬉しいできごとを共有するための専用のトークグループも設けて、社内コミュニケーションの促進に力を入れました。
管原さん:
資格を取得した人がいれば多くのメンバーから「おめでとう」のメッセージやスタンプが寄せられるなど、以前はなかった社員どうしのつながりが生まれ、社内の雰囲気も明るくなりました。
佐藤さん:
LINE WORKSの導入当初は、全社向けのお知らせをトークグループと掲示板のどちらで発信するかのルールが統一されていませんでしたが、次第に「流れてもよいフロー型の情報はトーク、アーカイブしたいストック型の情報は掲示板で発信」という考え方が社内に定着し、伝えたい情報によって使い分けるようになりました。
管原さん:
現在は健康診断や社内イベントの告知など、会社から発信する案内は掲示板で周知しています。LINE WORKSに続いて業務管理プラットフォームにkintoneを導入し、社員自身が業務日報アプリをはじめ業務を効率化させるためのさまざまなアプリを内製するようになりましたが、kintoneの活用方法や改善案などを議論するスレッドがつくられるなど、掲示板は社員どうしが自由に意見を出し合うための場ともなっています。

ほかにLINE WORKSのどんな機能をよく活用されていますか。
【カレンダー】社員のスケジュールを共有して可視化
【アンケート】日程調整と意見収集をスムーズに
【Drive】全社の共有データをセキュアに保存
佐藤さん:
会議、出張、休暇など個々の社員の予定をカレンダーに登録して共有しています。リマインド通知によって、会議の予定が入っていたことをうっかり忘れるといったことを防げる点も便利です。

管原さん:
社内イベントの出欠確認や日程調整、社内制度についての意見や要望の聴取にはアンケート機能を活用。メンバーからの回答が自動的に集計され、表やグラフとしてひと目で確認することができます。
アンケート機能を使えば質問用紙を配付する手間がかからず、回答の回収もスムーズ。社内行事等などの日程調整やヒアリングを効率化
佐藤さん:
社内規定や業務マニュアルなど全社員が必要に応じて閲覧するデータは当初、トークグループのフォルダに保存していましたが、容量にゆとりがありセキュアな環境でファイルを共有できるDriveを利用するべく有償プランに移行。全社の共有データをDriveで管理するようになりました。また、社内で活用が進んできたkintoneとLINE WORKSをスムーズに連携させてさらに業務生産性を向上させるために、よりスムーズなAPI連携ができることも有償プランに切り替える決め手のひとつでした。
LINE WORKSとkintoneをどのようにして連携させているのですか。
佐藤さん:
ノンプログラミングでLINE WORKSとkintoneを連携させるチャットボットを作成できるJobocoを活用し、トーク画面でBotと対話をしながら入力した内容がkintoneに登録される仕組みを構築しました。これにより、「常駐先勤務表記載外の作業時間申請」をLINE WORKSから簡単に行えるようになりました。
Jobocoで作成したチャットボットでLINE WORKSとkintoneを連携。常駐先での業務以外の作業時間をトーク画面から手軽に入力できるようにした
当社では社員に研鑽してもらうため、社外の勉強会などへの積極的な参加を推奨しており、それも業務の一環とみなして勤務時間の対象としています。kintoneを使ってすでに常駐先での各自の勤務時間を登録するためのアプリを内製していましたが、LINE WORKSでも社外勉強会などに参加した時間を手軽に入力できるようにしました。その内容を承認者である私や管原が確認すると、承認されたことがトークで通知されます。この取り組みはLINE WORKSとkintoneの可能性をさらに探っていくためのステップと位置づけています。社員がノーコードBotの活用を経験することが、お客さまのDXを支援する新規事業に役立つことにも期待しています。
改めてLINE WORKSの導入成果をどう実感されていますか。
佐藤さん:
給与明細など社員に郵送していた書類をデジタル化してLINE WORKSで送信するようになったことで、年間10万円ほどかかっていた郵送費が削減されました。また、紙の書類をコピーしたり郵送したりするための準備に毎月10~15時間ほど要していましたが、その作業時間も大幅に短縮できています。
定性的効果として挙げられるのは、社員間のコミュニケーションが活性化して一体感が醸成されたことで、孤立しがちな常駐SEのメンタルヘルスにも好影響を及ぼしたことです。また、チームの垣根を越えて意見が交換されるようになったことで、社員自身が生産性向上につながるアイデアを創出して素早く共有するようになりました。そうした社員の意識改革やITスキルの獲得を背景にして、お客さまのDX支援という新規事業を立ち上げられたことも大きな収穫です。こうしたことからLINE WORKSは当社にとって、「社員の笑顔と成長を促進するシンボリックな存在」だと私は思っています。
LINE WORKSの活用を今後どのように発展させたいとお考えですか。
管原さん:
定型的な作業依頼をトークで依頼する際に誤記が発生しがちなので、kintoneで申請フォームを作成し、JobocoでLINE WORKSと連携させることで自動化を図れればと思っています。ちょっとしたことでも何か効率化できないかな? と考えるのが好きなので、LINE WORKSを使いこなしながら楽しんでDX化を進めています。
佐藤さん:
LINE WORKSのBotを活用して、kintoneに保存されている社内業務マニュアルやFAQなどを社員が簡単に取得できるようにしたいですね。社員がBotに質問するだけで必要な情報を速やかに得られるようになれば、業務効率がさらに上がるはずです。社内のDX推進は、常駐先での業務が多いメンバーたちが自由に創造性を発揮できる場として昇華しているので、LINE WORKSの活用は社員の成長機会としても機能しています。
【お話を伺った方】
佐藤 良介さん
システムインテグレーターにSEとして勤務したのち、2022年10月に新日本ニーズの代表取締役に就任。
管原 百世さん
SE業務に携わるとともに、社内のDX推進リーダー・IT運用責任者も務める。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2024年11月当時のものです。