福祉と文化を大切にするみどり豊かな住宅都市杉並区には、年間催事をとおして大勢の人が訪れます。地域の皆様が安心して心豊かに過ごせるまちづくりのために、杉並区議会様はさまざまな取り組みを行っています。区議会の日程調整や開催連絡など、議員と事務局をつなぐコミュニケーションツールとしてLINE WORKSを活用されている杉並区議会議員 渡辺富士雄さん、区議会事務局議事係 高橋知久さんにお話をうかがいました。
事業内容と皆さんの役割を教えてください。
渡辺議員:
平成15年に杉並区議会議員に初当選して以来、4期15年間にわたる議員活動で培った経験とネットワークを活かし、杉並区のまちづくりに取り組んでいます。私は、ライフワークの一環としてICTの利活用や地域情報化を推進しており、平成29年5月にタブレット端末導入等に関する検討会の座長に就任、平成30年5月にICT活用推進検討委員会委員長に就任しました。今回、議会の業務改革の一環として、議員と事務局の円滑なコミュニケーションの実現と作業効率化を目指し、LINE WORKSを導入しました。
高橋さん:
私は、区議会事務局の議事係に配属されて3年になります。議事係は主に議会・委員会などの日程調整、開催連絡、議事運営、会議録の校正・作成を行います。平成28年にICTに関する検討会の担当を任され、LINE WORKSの導入にも携わっています。
杉並区議会でICTを推進している背景を教えてください。
渡辺議員:
杉並区のまちづくりとして、現在Wi-Fi環境等の整備に力を入れています。私には、行政を含め、町会、自治会などすべての情報を一元化することで、時間や場所に関係なく効率的かつ正確に行政サービスを提供できる、杉並区独自の通信インフラを構築したいという構想があります。
若者の担い手がいなく商店街や町内会が衰退していくなか、ネットワーク上の組織づくりは地域活性化に役立つのではないかと考えています。
まちづくりのインフラ整備と並行して、行政や議会のインフラも見直す必要があると考えました。いつまでもアナログな作業では、コストと多大なマンパワーがかかります。例えば、議会では年間約48万枚の紙を使用しており、日々、山積みになった紙の資料のなかから必要な情報を探しているという状況です。一般企業はICTを活用した業務改革を行っているのに対し、行政や議会のICT活用は遅れていると感じます。そのような想いから、ICTに関する検討会を立ち上げました。
私は、コミュニケーションツール、スケジュール管理、アーカイブを”三種の神器”であると考えており、これらを整備することが最低限必要だと思っています。事務局との連絡がシームレスになり、いつでもどこでも仕事ができるユビキタス環境を作る。そのファーストステップとしてタブレット端末の導入を推進し、タブレットでも利用できるコミュニケーションツールを導入しようと思いました。
議会のコミュニケーションにはどのような課題がありましたか。
高橋さん:
議会には、年に4回開催される定例会と必要に応じて招集される委員会があります。議会の日程調整は、会議に関係のある議員一人ひとりに連絡してご都合をうかがい、全員が出席可能な日に開催します。議員の皆様はお忙しいため、電話をかける時間帯も配慮しますし、つながらないことも多く、ご都合をうかがうのに数日かかることが多々ありました。
思うように連絡が取れず、日程調整に膨大な時間と工数がかかっていたのが課題でした。また、メールやFAXだとご覧いただけたかどうかが把握できず、事務局からのお知らせが埋もれてしまうのも悩みでした。
渡辺議員:
杉並区議会には、5つの常任委員会、議会運営委員会、4つの特別委員会の合計10の委員会があり、それぞれ10名前後の議員が所属しています。委員会を横断的に取りまとめているのが事務局です。事務局は秘書的な役割も担ってくれているので我々議員としては非常にありがたい存在です。しかし、会期が迫っているのに議員から回答がこない、1人だけ日程が合わず最初から調整し直さなければならない、といったことの繰り返しで、事務局の心理的負担も大きく、その負担を軽減したいという思いが一番にありました。
LINE WORKSを導入した経緯や決め手を教えてください。
高橋さん:
当初は他社製品を検討し、議員の皆様に試しに使っていただいたのですが、個人の端末にアプリをインストールするところから説明が必要だったり、端末によって動作が不安定になったりと使いづらく導入を見送った経緯があります。議員の皆様が使用しているデバイスはそれぞれ異なりますし、操作に慣れていない方もいます。ただ、ほとんどの方がLINEを使用していたので、同じようなユーザーインターフェース(操作画面)なら無理なく使っていただけるのではないかと思いLINE WORKSを選定しました。事務局からの要望としては、誰が読んだかわかること、議会の日程調整が容易にできること、このふたつは絶対条件でした。LINE WORKSなら既読機能とアンケート機能でこの条件を満たしていますし、災害時の安否確認ができることも選んだ理由のひとつです。
渡辺議員:
議員からすれば1人対1人のやり取りですが、事務局からすれば1人対48人のやり取りになります。議員のITリテラシーには温度差があるため、情報がひと目でわかり、誰にとっても使いやすく簡単に操作ができるツールを求めていました。ストレスなくコミュニケーションを取れるツールとしてLINE WORKSは最適でした。
LINE WORKSの具体的な利用シーンを教えてください。
高橋さん:
ホームで委員会ごとに掲示板を作成し、事務局からの連絡を投稿しています。議会前と議会中は連絡事項が多いので、ホームは頻繁に使います。グループトークの投稿ですと画面上で流れてしまうので、一定期間固定したい大事な情報の掲示にはホームが適しています。日程調整はアンケートを使いますが、ホームに投稿することで閲覧場所を集約させ確認漏れを防いでいます。
連絡が多過ぎても煩わしく、何が自分宛ての大事な情報なのかわからなくなってしまうので、委員会ごとにホームの閲覧制限をかけて、必要な情報だけを見ていただけるように工夫しています。
カレンダー機能では、議会のスケジュールを登録し共有しています。これまで個人任せになっていた予定も確実に把握してもらえますし、アラートを出すことで予定忘れの心配も減りました。事務局内での利用としては、議場で議事進行をサポートする職員と、本部側で待機している職員のタイムリーな連絡手段にも使います。臨機応変な対応が求められるなか、遠隔で瞬時に意思疎通できることは役に立っていると感じています。
LINE WORKS導入後、どのような変化がありましたか?
高橋さん:
議員の皆様へのご連絡なので電話をかけるにしても気を遣いますし、連絡が取れなければ何日もそのことを考えていなければなりませんでした。LINE WORKSを導入してから、皆様の都合を気にせず連絡事項を伝えておくことができますし、既読がつけば情報が届いたと安心できるので、心理的な負担がなくなりました。事務局からの連絡をいつでも振り返って見ることができるので、連絡漏れや確認漏れを防ぐことができ、議員の皆様にも安心して使っていただいています。
渡辺議員:
管理者側として、事務局の心理的負担を軽減したいという思いが一番にありましたので、それを実現できたことは大きな変化だと感じています。利用する議員側としては、電話、FAX、メールなど複数の連絡手段がLINE WORKSに統合されたことで情報が一元管理され、その都度、必要な情報を探す手間とストレスがなくなりました。ホームを見れば議会情報を確認できるので便利ですし、議会資料を保存しているアーカイブともリンクさせ重い紙の資料を持ち運ぶ手間も省けます。議会資料のペーパーレス化に向けた取り組みとしても一翼を担っています。
事務局では、ホームの連絡が既読になっているかを常に確認しており、議員側の利用促進を図っています。自身に不要と判断される情報は閲覧しませんので、100%を求めるものではないですが、10月の段階では既読率は全体で約60%でした。既読がついていない議員への利用を促すことで、12月は約75%に上がりました。
高橋さん:
LINE WORKSを導入することで、電話・FAX・メール連絡は年間約100時間、日程調整は約40時間削減できると考えており、事務局全体の議会の連絡調整にかかるコストは、人件費に算出すると、年間約60万円のコスト削減につながると考えています。
今後の展望についてお話を聞かせてください。
渡辺議員:
LINE WORKSをさらに活用し、議会のICT化や業務改革を進めていきたいと思っています。今は議会と事務局をつなぐコミュニケーションツールとして利用していますが、将来的には行政と連携して行政事務の効率化を図るとともに、地域コミュニケーションの活性化につなげていけるのではないかと期待しています。
※掲載している内容、所属や役職は取材を実施した2018年12月当時のものです。