東京海上グループの総合介護事業会社として設立され、施設介護事業と在宅介護事業、ソリューションサービス事業を手掛ける東京海上日動ベターライフサービス株式会社。災害などの有事の際、本社と各介護施設との連絡・報告が重複する課題を抱えていた同社は、新たな連絡手段としてLINE WORKSを導入。導入直後に発生した地震の際も、スムーズな情報共有を実現しました。独自のBCP対策を構築する同社がLINE WORKSをどのように運用しているのか、お話を伺いました。
本事例のポイント
- 一度に複数人へ情報が発信でき、報告の重複を回避
- 写真や動画を使ったやり取りで情報の「見える化」
- 緊急対応と並行して復旧後のリスク回避ができる
皆様の業務内容を教えてください。
三上さん:
コンプライアンスリスク管理を担当する部署のリーダーをしています。法務やハラスメント対応に加え、災害対策にも力を入れています。具体的には、有事の際にスピーディに対応できるようアクションカードを作ったり、非常用電源や通信機器を問題なく使えるよう訓練を企画する等、体制整備を担当しています。
山田さん:
施設介護事業部門の責任者として、介護付有料老人ホームなど12ヵ所の施設を統括しています。理念である「品質の高い介護サービスを提供し、心豊かに笑顔で暮らせる社会を実現します」を拠り所にして、本物の終の棲家、並びにオンリーワンの介護サービスの提供を目指し、品質向上や人財育成に力を入れています。
岩佐さん:
介護型・自立型合わせて約140人のご入居者がお住まいになる同社最大規模の介護付有料老人ホームの支配人をしています。ご入居者が安心して穏やかに過ごすことができる“家”となることを第一に考えて、スタッフの指導や育成、建物設備の維持等、責任者として全体のマネジメントを担当しています。
LINE WORKSの導入以前はどんな課題がありましたか。
・安否確認ツールは完備しているものの確認後のタイムリーな連絡が取りにくい
・現場の緊急対応に追われている施設と本社部門の電話やPCでの連絡は非効率
三上さん:
当社では、以前からご入居者と社員の安全を守るため、安否確認システムを導入しており、参集基準等のマニュアルを定めていましたが、発災直後の現場被害状況の確認について課題がありました。
回答結果はこのシステムで瞬時に集計されるのですが、現場の被害状況をより正確に把握するためには、追加確認が必要になってきます。まずは既存の安否確認システムを活用できないか検討したのですが、双方向のやり取りが難しく断念せざるを得ませんでした。
また、災害時には本社に災害対策本部が立ち上がりますが、業務時間外や外出中の場合、対策本部の各担当者が施設に連絡を取り、各施設はそれぞれに対して同じような報告を繰り返すという無駄が発生していました。現場は緊急対応を行う必要があるにもかかわらず、重複した報告作業に時間を取られてしまう状況でした。
山田さん:
発生したトラブルの内容によっては、電話で連絡することもあります。私が担当する全12ヵ所の施設で災害等が発生した場合、これまではそれぞれの支配人に電話で連絡していました。電話連絡は手間がかかるうえ、各施設はご入居者の安否確認を行ってからでないと状況を報告することができず、その待ち時間がタイムロスになります。
課題解決のためにLINE WORKSを選定された理由を教えてください。
三上さん:
LINE WORKSはチャット形式で簡単に現場の状況を確認できるうえ、必要なメンバーが迅速に情報を共有することができます。既読機能で誰が見たかまで分かるので、確実に情報が伝わったかを確認できます。施設ごとに個別でやり取りできることも魅力です。
さらに、LINE WORKSは文章だけではなく写真や動画を送ることもできます。問題のある箇所の様子をカメラで撮影しトークで共有することで、メールや電話では伝えきれない視覚的な情報を確実に伝達することができます。
また、2016年の熊本地震において、有効に活用された連絡手段の一つがLINEであることが分かりました。LINEWORKSは、ビジネス用に情報セキュリティの課題がクリアされ、かつ、災害時に強いツールであるということも、BCP対策としてツール選定をしていた当社にとって大きな決め手となりました。
LINE WORKSの具体的な運用方法をお聞かせください。
三上さん:
BCP対策の一環として、災害対策本部と各施設の責任者(支配人)に限定して運用をスタートしました。基本的には、災害や感染症などが発生した際の緊急連絡用として使うことを想定しています。
また、運用に当たっては「重要な情報が埋もれないようにするため、既読機能を活用し、有事においては単なる『承知しました』といった返事はいらない」などのルールを作成しました。利用開始時に社内で説明会を開きましたが、多くの社員がプライベートでLINEを使っているため、すぐに使い方を理解してもらえました。有効性を実感でき、各事業所の管理者やマネージャー、キッチンの責任者にも対象を拡大しているところです。
LINE WORKSの具体的な活用とその成果を教えてください。
・施設内はインカムや館内放送、災害対策本部とはLINE WORKSと使い分け
・深夜の地震発生時には、速やかにすべての施設の状況確認が可能
・離れていてもリアルタイムに情報共有できることで精神的負担が軽減
・状況把握が速くなるほど復旧後の応援内容を検討する余裕がうまれた
岩佐さん:
当社では各施設と本社の災害対策本部を結んで全社災害訓練を行っていますが、その際、各地の被害状況を本部へ報告するためにLINE WORKSを利用します。有事の際は、そのほかのトラブル報告や応援要請もLINE WORKSで連絡する想定になっています。
また、私の担当施設には有事の際に設定するとすべてのスタッフに一斉に連絡できるインカムのチャンネルがあります。非常時にLINE WORKSで得た本社や他施設からの情報は、このチャンネルで連絡することで館内スタッフへ一斉に共有できます。このように既存の設備とLINE WORKSを組み合わせることで、効果的に情報を受発信し、一斉に伝達する準備を整えました。
山田さん:
LINE WORKS導入後の2021年2月に福島県沖で地震が発生しました。当社の施設がある神奈川県でも震度4を計測しましたが、その際の緊急連絡にさっそくLINE WORKSのトークを利用しました。
災害対策本部の自動設置基準は震度5強なので、震度4は基準以下でした。しかし、自宅の揺れも大きく心配になったので、念のためにトークを立上げて被害のある施設だけに情報を書き込むよう指示をしました。岩佐から「自分の担当施設で停電が発生している」と報告を受けたので、対応について相談。幸い停電は数時間で復旧しましたが、その間に岩佐とは翌日の食事をご入居者にどう配膳するかといった、復旧後に応援が必要な施設への対応を相談していました。
以前の緊急時は電話で各施設と連絡を取っていたため対応に時間がかかったうえ、情報が交錯し、重複した連絡に苦労していました。しかし、LINE WORKSは同時に複数人へ連絡できるので、情報共有の作業負担が減りました。また、リアルタイムに情報をシェアできるという感覚が精神面の負担軽減につながっていると感じています。この日の地震でも細かなトラブルが発生していましたが、現状把握や対応指示が速やかになったことで状況を冷静に見極め、緊急対応と並行して翌日以降の対応を考える余裕が持てたことはLINE WORKS導入の大きな効果です。
三上さん:
災害の状況確認にアンケート機能を使っているほか、災害時の対応ルールや手順、外部への連絡先などをホームの掲示板に記載しています。例えば、各事業所が備える非常用電源設備の燃料の注文先電話番号やメールアドレスなどをまとめています。これによって緊急時にPCを立ち上げたり、本社へ確認することなく対応できる体制を整えています。
今後、どのようにLINE WORKSを活用したいですか?
山田さん:
新型コロナウイルスや地震などの経験を通じ、BCP対策としてLINE WORKSを有効に活用する備えはできました。しかし、この先私たちが経験したことのないような「複合災害」に遭遇したときにどう活用できるかが重要です。有事であっても止めることができない介護という事業なので、現場ができるだけ手間を掛けずに困難を乗り切れるよう使い方を工夫していく必要があります。LINE WORKSを用いて、他介護事業者のモデルケースになれるよう今後も活用を進めていきます。
【お話を伺った方】
三上 信さん
同社の管理部 次長 兼 コンプラ・リスク管理グループ グループリーダー。コンプライアンス、法務やハラスメント対応、災害対策を推進している。
山田 真弥さん
同社の常務執行役員。施設介護事業部門の責任者として、介護付有料老人ホームなど12カ所の事業所を統括。本物の終の棲家、並びにオンリーワンの介護サービスの提供を目指し、品質向上や人財育成に力を入れている。
岩佐 茂さん
約140人のご入居者がお住まいになる同社最大規模の介護付有料老人ホームの支配人。ご入居者の“家”となることを第一に考え、スタッフの育成等、運営の責任者として現場のマネジメントを行っている。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2021年3月当時のものです。
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