MCA無線とは|仕組み・サービス終了日・利用者の手続き・代替策を解説

MCA無線とは、中継局のチャンネルを多くの利用者で共用する業務用無線です。MCAアドバンスは2027年3月末、デジタルMCAは2029年5月末に終了します。   MCAアドバンスの利用者は、再免許での有効期間の指定と終了までの廃止届が必要です。

目次

    MCA無線とは|仕組みと2つのサービス

    MCA無線は、中継局の複数のチャンネルを多くの利用者で共用する業務用無線で、移動無線センターが提供しています。利用者が送信ボタンを押すと、中継局が空いているチャンネルを割り当てるため、限られた周波数を多くの利用者で使えます。サービスは800MHz帯デジタルMCAとMCAアドバンスの2つで、どちらも終了日が発表済みです。

    MCAはMulti-Channel Accessの略です。提供元の一般財団法人移動無線センターは1982年にサービスを始めました。全国の中継局を使い、事務所と車両や携帯機の間で通話できます。

    操作はマイクのボタンを押して話すだけで、特定の相手を呼ぶ個別通信、グループ通信、通話中の無線機も引き込む一斉通信を使い分けられます。利用者は電波法に基づいて無線局の免許を受けているため、サービスの終了に伴って免許の手続きも必要です。

    現在提供されているMCA無線は次の2つです(出典: 移動無線センター「mcAccess eとは」、同「MCAアドバンスとは」)。

    項目 800MHz帯デジタルMCA(mcAccess e) MCAアドバンス
    サービス開始 2003年10月 2021年4月
    通信の仕組み 800MHz帯の電波を使う専用のデジタル網 LTE技術を使う専用網に、携帯電話事業者のLTE網を使う回線を加えて二重化
    主な端末 車載型・携帯型・事務所設置型の無線機 スマートフォン型の端末
    主な機能 音声通話、メッセージ、録音 音声通話、映像配信、チャット、GPS
    サービス終了日 2029年5月31日 2027年3月31日

    2つのサービスは電波も端末も異なり、終了日の差は2年あまりです。どちらを使っているかは、契約内容で確かめられます。

    災害に強いとされてきた理由と弱み

    MCA無線は一般の公衆網とつながっていない専用網を使うため、災害で携帯電話の回線が混み合ったときもつながりやすいとされてきました。移動無線センターによると、中継局の局舎は耐震構造で、多くは山頂部にあります。自治体の防災無線や、企業のBCP(事業継続計画)用の通信にも使われてきました。

    一方で、話せるのは中継局の電波が届く範囲だけで、トンネルや山間部、ビルの谷間では届かないことがあります。利用料は端末ごとに毎月定額でかかり、再免許や廃止の手続きも利用者側で必要です。

    MCA無線のサービス終了はいつ?終了日と経緯

    MCAアドバンスは2027年3月31日、800MHz帯デジタルMCAは2029年5月31日でサービスを終了します。終了日は移動無線センターが発表し、総務省の電波利用ポータルにも載っています。終了の理由は、デジタルMCAは端末の供給停止と設備の維持の難しさ、MCAアドバンスは加入局数が想定を大きく下回ったことです。

    発表から終了までの流れは次のとおりです。

    年月日 できごと 出典
    2023年5月24日 800MHz帯デジタルMCAの新規申込の受付を、5月31日で原則終了すると発表 移動無線センター「800MHz帯デジタルMCA 新規の申込受付終了について」
    2023年10月30日 移動無線センターの理事会が、800MHz帯デジタルMCAを2029年5月31日で終了すると決定 移動無線センター「800MHz帯デジタルMCAサービス終了についてのお知らせ」
    2023年11月1日 移動無線センターが、800MHz帯デジタルMCAの終了を利用者に案内 同上
    2024年7月1日 MCAアドバンスを2027年3月31日で終了すると発表し、新規・増設の申込の受付も終了 移動無線センター「MCAアドバンスサービスの終了についてのお知らせ」
    2025年1月1日 総務省の新たな周波数割当計画が施行され、800MHz帯デジタルMCAの周波数の使用期限が2029年5月31日までと決まる 総務省 電波利用ポータル「『MCA無線』サービス終了に伴う再免許等手続について」
    2027年3月31日 MCAアドバンスのサービス終了 同上
    2029年5月31日 800MHz帯デジタルMCAのサービス終了 同上

    終了日は2026年10月1日時点の発表に基づいています。移行の計画を立てる前に、移動無線センターのお知らせで最新の情報をご確認ください。

    800MHz帯デジタルMCAが終わる理由

    システムの導入から20年が経ち、端末の供給はすでに止まり、故障したときの対応も難しくなったため、移動無線センターは設備の維持を続けられないと判断しました。利用者が移行する期間として5年を設け、2023年10月30日の理事会で終了日を決めています。2023年5月の時点で、国や自治体、一般企業の10万局を超える利用があったサービスです。

    MCAアドバンスが終わる理由

    移動無線センターによると、安いIP無線の利用拡大や衛星通信システムの普及で自営の無線を取り巻く環境が大きく変わり、MCAアドバンスの加入局数も当初の想定を大きく下回りました。同センターは、長く安定してサービスを続けるのは難しいと判断しています。全国118か所の中継局のうち、利用がほとんどない一部の局は、サービス終了より前に休止・廃止される予定です。

    MCA無線の利用者に必要な免許の手続き

    MCA無線の利用者は無線局の免許を受けているため、サービスの種類に応じて再免許や廃止届の手続きをします。総務省の案内では、MCAアドバンスはサービスが終わっても免許が有効期間まで残り、廃止届が出ていないと終了後も電波利用料の徴収の対象になります。

    総務省と移動無線センターは、サービスごとの手続きを次のように案内しています(出典: 総務省 電波利用ポータル「『MCA無線』サービス終了に伴う再免許等手続について」、移動無線センター「MCAサービス終了についてのお知らせ(周波数の有効期限及び免許の有効期間について)」2025年7月1日)。

    サービス 免許の扱い 利用者が気をつけること
    800MHz帯デジタルMCA 2025年1月1日以降に再免許を受けた局は、有効期間が2029年5月31日までになり、周波数の使用を同日までに限る附款が付く 有効期間が2029年5月31日以降の日付になっている局は、次の再免許を受けられない
    MCAアドバンス 周波数の使用期限は法令で定められていない。再免許の申請で希望する有効期間を書かないと、有効期間は5年になる 再免許の申請書の「希望する免許の有効期間」欄に「令和9年3月31日まで」と書く。有効期間が2027年3月31日以降の局は、サービス終了までに無線局廃止届を出す(電波法第22条)

    総務省は、サービス終了後の直近の電波利用料の応当日までに廃止届が出ていない場合、終了後も電波利用料の徴収の対象になると案内しています。応当日は、免許を受けた日にあたる毎年の日です。

    サービス終了を待たずに代替手段へ切り替えたときも、使わなくなった無線局の廃止届を出します。関東総合通信局は、廃止届を出さないと免許の有効期間が満了するまで電波利用料の納付が続き、過去にさかのぼって廃止はできないと案内しています(関東総合通信局「無線局を廃止したい」)。廃止届の用紙は、包括免許用とそれ以外で別です。台数の多い組織は、切り替えた端末と届出の状況を一覧にしておくと漏れを防げます。

    MCA無線の代替策|4つの選択肢

    MCA無線の代替の主な選択肢は、IP無線、デジタル簡易無線、衛星通信、スマホのトランシーバーアプリの4つです。日常の連絡と災害時の連絡で候補が変わります。IP無線とアプリは回線の状況に左右されますが、デジタル簡易無線は回線に頼らずに話せ、衛星通信は地上の設備の被災の影響を受けにくいためです。

    届く範囲、費用、災害時の扱いを比べると次のとおりです(IP無線と衛星通信の欄の出典: 移動無線センター「mcAccess eとは」の比較表)。

    選択肢 届く範囲 主な費用 災害時の扱い
    IP無線 携帯電話の回線がつながる範囲 専用の端末と月々の通信料 携帯電話網が混み合うとつながりにくくなる
    デジタル簡易無線 端末どうしの電波が届く範囲。地形や建物で変わる 端末、登録の手数料、毎年の電波利用料 回線に頼らずに話せるが、遠く離れた拠点には届かない
    衛星通信 衛星が見える屋外の広い範囲 端末と、高めの通話料 地上の設備の被災や公衆網の混雑の影響を受けにくいが、屋内では使えない
    スマホのトランシーバーアプリ 携帯電話の回線やWi-Fiがつながる範囲 スマートフォン、アプリの利用料、通信費 IP無線と同じく回線の状況に左右される

    IP無線|車両や拠点間の連絡を置き換えやすい

    IP無線は携帯電話の回線で音声をやりとりする業務用の無線機で、利用者が無線局の免許を受ける必要はありません。回線がつながる場所なら距離に関係なく話せるため、車両の運行管理や拠点間の連絡をMCA無線に近い形で続けられます。

    デジタル簡易無線|回線に頼らない連絡手段を持てる

    デジタル簡易無線の登録局は、最大5Wの電波で端末どうしが直接通話する無線です。携帯電話の回線を使わないので、回線が混み合っても電波が届く範囲なら話せます。届く距離は地形や建物で変わり、遠く離れた拠点とは話せません。

    使うには総合通信局への登録か免許が必要で、登録局の電波利用料は1台あたり年200円(個別登録)または290円(包括登録)です(2025年10月1日改定。出典: 関東総合通信局「デジタル簡易無線局(CR)登録局のページ」)。

    衛星通信|地上の設備が被災しても使える

    衛星電話や衛星通信の無線機は、通信衛星を経由して話します。地上の基地局や中継局が被災しても、空が開けた屋外なら、携帯電話の電波が届かない山間部などとも連絡できます。その代わり、通話料が高めで、屋内では使えません。日常の連絡用に全員へ配るより、災害対策本部や主な拠点に数台を置いて備える使い方が合っています。

    スマホのトランシーバーアプリ|業務用スマートフォンに無線をまとめられる

    スマートフォンにアプリを入れ、画面のボタンを押して話すPTT(Push to Talk)方式の連絡手段です。携帯電話の回線やWi-Fiがつながれば、フロアや拠点が離れていても話せます。業務でスマートフォンを使っている場合は、電話やチャットと無線を1台に集約でき、無線機との2台持ちを解消できる点も利点です。

    スマートフォンをトランシーバーのように使えるアプリには、LINE WORKSラジャーもあります。ボタンを押して話すと音声がグループに届き、トークの履歴が残る仕組みです。アドバンストプランでは、発話を自動でテキストに変換できます。回線がつながらない場所では使えないため、災害時の連絡は別の手段と組み合わせてください。

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    代替策の選び方と移行の進め方

    MCA無線からの移行では、日常の連絡は使い方に合う方式に移し、災害時の連絡は回線に頼らない手段を組み合わせて備えます。回線を使う方式だけでは、携帯電話網が混み合ったときにつながりにくくなるためです。

    MCA無線を何に使っていたかによって、移行先の候補は次のように絞れます。

    MCA無線の主な使い方 移行先の候補
    車両の運行管理・拠点間の連絡 IP無線、スマホのトランシーバーアプリ
    工場や現場など敷地の中の連絡 デジタル簡易無線、スマホのトランシーバーアプリ
    自治体や企業の災害時の連絡 日常に使う方式に、デジタル簡易無線や衛星通信を組み合わせる

    車両や拠点間の連絡をIP無線に移す場合は、候補を絞る段階で専用機とアプリのどちらにするかと費用のかかり方を確かめておくと、試す車両や部署を決めやすくなります。敷地の中の連絡や災害時の予備にデジタル簡易無線を使う場合は、登録か免許を受けるまで使えないため、デジタル簡易無線の登録の手順を切り替えの日程に入れておきましょう。

    災害への備えとしてMCA無線を置いていた組織では、日常の連絡手段と、回線が使えないときの予備の手段を分けておくと安心です。IP無線とデジタル簡易無線を1台で切り替えて使える機種もあり、両方を兼ねたい場合の選択肢になります。運送業で車両との連絡をまとめて見直す場合は、トラックで使える無線機とアプリの種類と選び方も移行先の候補と並べて比べておきましょう。

    車両で使っていた場合は、運転中の使い方にも注意が必要です。走行中にスマートフォンなどを手に持って通話することや画面を注視することは、道路交通法第71条第5号の5で禁止されています(警察庁「やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用」)。携帯型の端末やアプリに移す場合は、停車してから話す・確認するといった運用のルールを決めておきましょう。

    移行の進め方

    1. 使っているサービス(MCAアドバンスか800MHz帯デジタルMCAか)、台数、用途、免許の有効期間を一覧にする
    2. 届いてほしい範囲、同時に話す人数、災害時に必要な連絡を書き出し、移行先の候補を絞る
    3. 一部の部署や車両で試し、通話の品質や操作、運用のルールを確かめる
    4. 切り替えを広げ、使わなくなった無線局の廃止届を出す

    台数が多い組織ほど、試験から全面的な切り替えまでの期間を長めに見込んでおくと安心です。MCAアドバンスは終了日が先に来るので、候補の比較と試験を早めに始めてください。

    よくある質問

    サービス終了後もMCA無線の端末は使えますか?

    使えません。MCA無線は中継局を経由して通話する仕組みなので、サービスが終わると端末が手元にあっても話せなくなります。800MHz帯デジタルMCAは、総務省の周波数割当計画でも周波数の使用期限が2029年5月31日までと定められています。

    MCA無線とIP無線の違いは何ですか?

    使う回線と免許の要否が異なります。MCA無線は移動無線センターの専用網を使い、利用者が無線局の免許を受けます。IP無線は携帯電話の回線を使うため、利用者の免許はいりません。災害時に回線の混雑の影響を受けにくいのはMCA無線で、回線のある場所なら距離に関係なく話せるのはIP無線です。

    これからMCA無線を新しく契約できますか?

    できません。800MHz帯デジタルMCAの新規申込は2023年5月31日で原則終了しました。MCAアドバンスも、2024年7月1日の終了の発表にあわせて新規・増設の受付を終えています。これから業務用無線を入れる場合は、IP無線やデジタル簡易無線など、ほかの方式が候補です。

    まとめ

    MCA無線からの移行で押さえておきたい点は次のとおりです。

    • MCAアドバンスは2027年3月31日、800MHz帯デジタルMCAは2029年5月31日に終了
    • MCAアドバンスは、再免許での有効期間の指定と、終了までの廃止届が必要
    • 途中で切り替えた無線局も廃止届を出し、電波利用料の納付が続かないようにする
    • 代替はIP無線・デジタル簡易無線・衛星通信・スマホのアプリ。災害時の備えは組み合わせで考える

    最初に、使っているサービスと台数、免許の有効期間を確かめてください。終了日から逆算すると、比較と試験にかけられる期間がわかります。移行の相談は、移動無線センターの各地域の窓口でも受け付けています。

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