申し送りとは?意味・コツ・看護/介護の例文と効率化の方法まで完全ガイド

夜勤から日勤への交代時間、引き継ぎノートを片手に5分で20名分の状態を伝えなければいけない。口頭で説明したつもりが、後で「聞いていません」と言われて対応が漏れる。シフト制の現場では、こうした場面が日常的に発生します。

申し送りは、シフトをまたいでも利用者・患者の状態やタスクの進行を切れ目なく引き継ぐための業務であり、現場の安全と業務効率を左右する要です。しかし「何を・どのように・どれだけ伝えるか」は現場ごとに運用が異なり、入職して数年経ってもうまくできないと悩む人が少なくありません。


この記事では、申し送りの意味と目的、伝わる申し送りのコツ、看護・介護それぞれの例文とテンプレート、口頭に頼りすぎない効率化の方法までを解説します。初めて申し送りを任された方から、現場の仕組みを見直したい管理者まで、自分の現場に合う形を選ぶための手がかりになります。

目次

    申し送りとは?意味と目的をわかりやすく解説

    申し送りとは、シフトや担当が交代するときに、前任者から後任者へ業務に必要な情報を引き渡す行為を指します。医療・介護の現場では利用者や患者の状態、実施したケア、未完了のタスク、注意事項などを伝達する場面で日常的に使われる用語です。

    語源は「申し上げて送る」からきており、口頭・書面のどちらで行っても申し送りと呼びます。近年は紙のノートから電子カルテやチャット、音声記録まで手段が広がっていますが、目的そのものは変わりません。交代後の担当者が必要な判断と行動を迷いなく取れる状態を作ることです。

    申し送りと引き継ぎの違い

    申し送りと似た言葉に「引き継ぎ」があります。両者は重なる部分も多いのですが、使われ方には次のような傾向があります。

    用語 主な使われ方 時間軸
    申し送り シフト交代や担当変更などで、当日または直近のタスク・状態を伝えるとき 短期(勤務1回〜数日単位)
    引き継ぎ 退職・異動・配置換えなどで、業務全体を中長期的に移管するとき 中長期(数週間〜数か月)

    看護・介護の現場で使うのはほとんどが前者です。一方、産休・退職に伴う業務移管は「引き継ぎ書」として別ドキュメントで整理される場合が多く、両者を同じ流儀で扱うと情報量が過不足になりがちです。

    申し送り事項として含めるべき内容

    申し送り事項とは、交代時に必ず伝えるべき情報の総称です。現場により項目は変わりますが、医療・介護・接客などの対人業務では次の7項目がほぼ共通して必要になります。

    • 利用者・患者・顧客の状態変化(バイタル、症状、行動、気持ちの変化)
    • 前のシフト中に実施したケア・対応・作業の結果
    • 次のシフトで行うべき未完了タスクと期限
    • 医師・家族・外部機関からの指示、連絡事項
    • 新規の入退所、入退院、来客、イベント予定
    • 設備・備品のトラブルや注意点
    • 安全・感染対策・リスクに関する特記事項

    これらを毎回ゼロから思い出して並べると抜けが出ます。後述するテンプレートに沿って整理すると、短時間でも過不足のない申し送りになります。

    申し送りが重要な理由と、現場で起こりがちな課題

    申し送りは「ただの情報共有」ではありません。伝達のミスが患者・利用者の安全や業務の成否に直結するため、単なる連絡以上の重みを持ちます。ここでは、なぜ申し送りが現場の要なのか、そしてどこでつまずきやすいのかを整理します。

    情報が伝わらないと何が起きるのか

    申し送りが機能しないと、現場では次のような連鎖が起こります。服薬を飲ませたかどうかが曖昧になる、処置の優先順位が後任に伝わらない、家族からの連絡を折り返せない、夜間に起きた転倒の経過観察が止まる。いずれも単独では小さな綻びですが、複数重なると事故やクレームに発展します。

    厚生労働省が公表している医療安全関連の資料でも、医療事故の背景要因として情報伝達の不備は繰り返し指摘されている領域です。制度上の義務というより、現場の安全文化を支える基盤として申し送りの質が問われます。

    現場でよくある失敗パターン

    申し送りの失敗には、いくつか定番のパターンがあります。自分の現場で似た状態が起きていないか、表で確認してみてください。

    失敗パターン 内容・対策
    情報が多すぎて重要事項が埋もれる 1人5分の枠内に全員分を詰め込み、どれが最優先かが分からなくなる。対策は優先順位を明示し、既読のカルテ記録に委ねる情報は口頭から外すこと。
    主観と事実が混ざる 「なんとなく調子が悪そう」で終わり、後任が状態を判断できない。対策はバイタル・観察結果・時間など客観的な事実を先に出し、主観は補足として添えること。
    聞き手が記録を取れない 口頭だけで進み、後任は走り書きのメモに頼ることになる。対策は口頭と同時に共有できる記録媒体を併用すること。
    口頭だけで済ませて証跡が残らない 「言った・言わない」の水掛け論が発生し、原因追究も再発防止もできない。対策はテキストや音声で記録を残すこと。
    担当者不在で情報が分断される 受け渡し時間に担当者が出払っており、次シフトが前任者に確認できない。対策はフォーマットを整備して、担当者がいなくても読めばわかる状態にしておくこと。
    新人が質問しにくい雰囲気 分からなかった点をその場で聞けず、後の対応ミスにつながる。対策は申し送り後に質問タイムを設け、フォーマットに沿って確認する運用にすること。

    伝わる申し送りのコツ

    申し送りで悩む人の多くが抱える疑問は「何から話せばいいか」と「どこまで詳しく言うか」です。答えはシンプルで、型に沿って話し、読み手が動ける粒度まで具体化するだけです。ここでは、明日の勤務からそのまま使えるコツを4つ紹介します。

    型を決めて構造化する(5W1HとSBAR)

    申し送りに一番効くのは型の導入です。自由作文にすると話す人ごとに順序や抜け漏れが変わってしまうため、現場で使えるフォーマットを1つ決めておくと品質が安定します。

    汎用的に使えるのは5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)です。ただし医療・看護では、より構造化されたSBARが広く使われています。SBARは米国発祥のコミュニケーションフレームワークで、次の4要素を順番に伝えます。

    • Situation(状況):今、何が起きているか
    • Background(背景):患者・利用者のこれまでの経過と関連情報
    • Assessment(評価):伝える側の判断・アセスメント
    • Recommendation(提案):次にやってほしい行動や確認事項

    特に医師への報告や夜勤帯の急変時には、この順で話すだけで情報の密度と判断の速さが大きく変わります。介護現場でもそのまま応用でき、後任者に「次に何をすればいいか」を明確にできます。

    優先順位をつけて、結論から伝える

    時間は限られます。全てを均等に話すのではなく、重要度が高い順に並べるのが鉄則です。具体的には、急変リスクや未完了タスクなど「次のシフトがすぐ動く必要のある情報」を最初に。次に状態の変化、最後に継続観察事項や日常的な申し送りの順で話します。

    逆に、カルテや介護記録を読めば分かる情報を口頭で繰り返す必要はありません。申し送りは記録の読み上げではなく、記録を読んだだけでは判断できない要素を補う場です。

    客観的事実と主観を分ける

    「落ち着いています」「元気でした」だけで終わると、後任者は状態を把握できません。具体的な数値や観察した事実を先に出し、その上で印象を添えるのが基本です。

    例えば「14時のバイタルは血圧128/78、SpO2 97%、体温36.7度。声かけへの反応も普段どおりで、午前中のリハビリも笑顔で参加していました」と話せば、後任はベースライン情報として使えます。主観だけの申し送りは、後任者が一から状態を確認し直す手間を増やしてしまいます。

    読み手・聞き手が動けるレベルまで具体化する

    申し送りのゴールは「伝える」ことではなく「次のシフトが迷わず動ける状態にすること」です。時間、人、数量、場所、次にやることを具体的に書き込みます。「様子を見てください」ではなく「17時に再度バイタルを測定し、37.5度以上なら主治医に連絡」まで言い切ると、後任者は迷いません。

    看護の申し送り:SBARテンプレートと記載例

    看護の申し送りはSBARが標準的なフレームワークとして使われます。ここでは、病棟でそのまま使えるSBAR形式のテンプレートと記載例を紹介します。

    SBAR形式の申し送りテンプレート

    要素 記載内容の目安
    S:Situation(状況) 患者氏名、病室、主訴、今起きていること、バイタルサイン
    B:Background(背景) 診断名、既往歴、入院経過、最近の検査・処置、直近の状態変化
    A:Assessment(評価) 現状をどう捉えているか、考えられる原因やリスク
    R:Recommendation(提案) 次のシフトに引き継ぐタスク、観察ポイント、医師への報告要否

    看護申し送りの記載例

    下記は、術後2日目の患者について日勤から準夜勤へ申し送る場合の例です。SBARの流れに沿って読むと、短時間でも必要な情報を過不足なく渡せることが分かると思います。

    S:305号室の佐藤様、術後2日目。16時のバイタルは血圧118/72、脈拍82、体温37.2度、SpO2 98%。創部の発赤・腫脹はなし、疼痛はNRSで2から3程度。

    B:大腸ポリープ切除後、術後経過は順調。朝から飲水を開始し、昼から五分粥を半量摂取されています。アレルギー・持病は既往のカルテ記載どおり。

    A:現時点で大きな問題はありませんが、夕方から体温がわずかに上昇しており、術後の軽度な炎症反応と考えられます。本人の訴えは強くありません。

    R:20時に再度バイタル測定をお願いします。38.0度以上または疼痛NRS5以上を訴える場合は当直医に報告してください。明日朝の採血指示あり、点滴は21時に交換予定です。ご家族から面会希望の連絡が入る可能性があります。

    実際の運用では、1人あたり30秒から1分で話す必要があるため、B(背景)はカルテに委ねて要点だけ、A(評価)とR(提案)に時間を割くのが実務的です。

    介護の申し送り:記載例と現場向けテンプレート

    介護の申し送りは、医療のようにSBARそのものを使うより、生活全般に関する情報をまんべんなく拾う形が一般的です。食事・排泄・入浴・服薬・睡眠・気持ち・家族連絡といった生活の軸で整理すると、シフトをまたいでも生活リズムを崩さずにケアを継続できます。

    介護現場の申し送り項目

    • 食事:提供量、摂取量、水分量、むせの有無
    • 排泄:回数、量、性状、介助の程度
    • 入浴・清潔:入浴の可否、皮膚トラブル、清拭の実施
    • 服薬:実施の有無、拒薬・溢薬、頓服の使用
    • 睡眠:入眠時刻、中途覚醒、夜間の様子
    • ADL・気持ち:歩行・移乗の様子、表情、発語、不穏の有無
    • 家族・外部連絡:面会、電話、連絡事項

    介護申し送りの記載例

    下記は、特別養護老人ホームで日勤から夜勤へ申し送る場合の例です。1人分30秒から1分に収まる粒度で書いています。

    102号室の田中様。食事は昼食を主食8割、副食7割、水分は1,200ml。排泄は午後にトイレ介助で2回、便は普通便。14時の入浴は本人の希望で中止し、清拭のみ実施しました。左ふくらはぎに軽度の発赤があり、軟膏を塗布しています。服薬は夕食後分から実施。日中は穏やかで、レクリエーションにも笑顔で参加されています。夜間は転倒歴があるため1時間ごとの巡視をお願いします。

    この粒度で話せると、夜勤者は「何を確認し、どう関われば良いか」が最初の5分でつかめます。

    複数名を短時間で申し送る場合は、全員共通の項目を先に決めておき、読み手が記録しやすい順で話すと抜けが減ります。食事・排泄・服薬・睡眠・気持ちの5項目だけ固定しておくのも、運用としては現実的な選択です。

    申し送りを効率化する方法

    コツを押さえても、口頭の申し送りには物理的な限界があります。人が替われば伝え方のクセが出ますし、後任者が全てをメモし切るのは難しい。ここでは、個人の努力に頼らず現場の仕組みで申し送りの質を底上げする方法を3つに整理します。

    記録フォーマットを統一する

    最も効果が大きいのはフォーマットの統一です。誰が書いても同じ順序・同じ項目で情報が並ぶようにすれば、読み手は短時間で必要な情報にたどり着けます。紙の申し送りノートでも、電子カルテの申し送り欄でも、チャットツールのテンプレートでも考え方は同じです。

    フォーマット化の副次効果として、記入漏れに気づきやすくなる、新人教育がしやすくなる、引き継ぎ時間そのものが短縮される、といった点があります。

    口頭と文書を使い分ける

    全てを口頭でやろうとすると、伝達時間が膨らみ、後任者の記憶負荷も高くなります。逆に文書だけでは温度感やニュアンスが伝わらないことがあります。実務では、以下のように役割を分けるのが現実的です。

    手段 向いている内容
    記録(カルテ・介護ソフト) バイタル、摂取量、処置内容、服薬など客観的な事実の蓄積
    申し送りノート・チャット シフトまたぎのタスク、家族連絡、注意事項
    口頭 急変・転倒など緊急度の高い情報、判断の背景、ニュアンスの共有

    カルテに書いてあることを口頭で読み上げるのをやめるだけで、申し送り時間は体感で短くなるはずです。

    音声を自動でテキスト化して抜け漏れを防ぐ

    口頭の申し送りを後で見返せる形で残せると、聞き逃しや記憶違いの影響を小さくできます。最近は、スマートフォンで使えるインカム・トランシーバー型のコミュニケーションアプリで、音声を自動でテキスト化して記録に残せるものが増えてきました。現場では音声でスピーディに伝えつつ、後から文字で確認できる運用を作りやすくなっています。

    LINE WORKS ラジャーもそうしたツールの一つで、スマートフォンをボタン1つでトランシーバー化できるアプリです。アドバンストプランでは音声メッセージの自動テキスト化に対応しており、申し送りの音声を自動で文字起こしとして残せます。口頭で伝えた内容がそのまま記録に残るため、夜勤帯の聞き逃し対策や、休日明けの情報確認にも使いやすい構成です。

    導入の判断にあたっては、現場のスマートフォン配備状況、通信環境(Wi-Fiが届く範囲)、既存の記録システムとの役割分担を一度整理しておくと、導入後の定着が早くなります。

    よくある質問

    申し送りはどのくらいの時間で終わらせるべきですか?

    現場の規模や担当人数によりますが、看護・介護の病棟・ユニットでは15分から30分程度が一般的な目安です。1人あたりの持ち時間は30秒から1分に収め、詳細はカルテや記録に委ねる運用にすると時間内に収まりやすくなります。時間が延びる場合は、カルテで代替可能な情報が口頭に混ざっていないかを疑ってみてください。

    申し送りと記録(カルテ・介護記録)はどう使い分けますか?

    記録は事実の蓄積、申し送りは次のシフトが動くための情報伝達、と役割を分けて考えると整理しやすいです。記録に書いてあれば読めば分かるため、申し送りでは「記録を読むだけでは判断できないこと」を中心に扱います。具体的には、変化の背景、対応の優先順位、家族からの連絡、観察をお願いしたいポイントなどです。

    新人はどう申し送りを学べば良いですか?

    いきなり完璧を目指すより、先輩の申し送りを書き起こして型をまねるところから始めるのがおすすめです。SBARや現場のフォーマットに当てはめて書いてみると、自分がどの要素を飛ばしがちか見えてきます。最初の数週間は事前にメモを準備してから話しても問題ありません。慣れてくると、メモなしでも重要順に話せるようになります。

    口頭の申し送りを録音するのは問題ありませんか?

    組織の規程や個人情報の取り扱い方針によります。利用者・患者に関する情報を含むため、録音する場合は管理責任者の承認、保存期間、アクセス権、廃棄ルールを事前に定めておく必要があります。専用のツールで記録する場合は、アクセスログや権限管理の機能が備わっているかも確認しておくと安心です。

    申し送りノートが形骸化しています。どう立て直せば良いですか?

    形骸化している場合、記入項目が現場の実態と合っていないか、読み手に届いていないかのどちらかが原因のことが多いです。まずは現行のノートから実際に動くために必要な項目だけを残してフォーマットを見直し、記入と閲覧の時間をシフトの中に明示的に組み込んでください。フォーマットを決め直すだけで、1週間程度で運用が変わる現場もあります。

    まとめ:伝わる申し送りで現場の安全と業務効率を両立する

    申し送りは現場の情報を次のシフトへ切れ目なく渡すための業務であり、シフト制の仕事では業務の質そのものを決める要素です。型に沿って構造化し、客観的事実を優先し、読み手・聞き手が動けるレベルまで具体化することで、短時間でも必要な情報を確実に渡せます。

    この記事で扱った要点を振り返ると、次のとおりです。

    • 申し送りはシフト交代時の短期的な情報伝達。引き継ぎとは目的と時間軸が異なる
    • 申し送り事項は状態変化・実施したケア・未完了タスク・外部連絡など7項目に整理できる
    • 看護ではSBAR、介護では生活項目ベースのテンプレートが実務に合いやすい
    • コツは型の導入・優先順位づけ・事実と主観の分離・動けるレベルまでの具体化の4つ
    • 効率化はフォーマット統一、口頭と文書の使い分け、音声の記録化の3方向で取り組める

    口頭の申し送りを音声のまま記録に残したい現場では、トランシーバー型のアプリで音声を自動テキスト化する運用が有効です。LINE WORKS ラジャーはスマートフォンでそのまま使えるため、既存端末を活用しやすく、30日間の無償トライアルがあります。詳細な料金プランや機能は公式サイトでご確認ください。

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