PHS代替|サービス終了後の移行手段と病院・介護施設の選び方

PHSの代替手段にはsXGPやDECT方式、スマホ内線、インカムアプリがあり、ナースコールを手元で受けるかどうかで候補が変わります。   公衆PHSは終了しましたが、病院や施設の構内PHSは今も使え、全国一律の期限はありません。

目次

    PHSは終了した?公衆PHSと構内PHSの違い

    終了したのは通信会社が提供していた公衆PHSで、病院や工場が自前の設備で使う構内PHSは今も使えます。構内PHSは建物の中に基地局を置いて内線として使う設備で、通信会社のサービスとは別の仕組みのためです。最後まで残っていた公衆PHSのテレメタリングプランも、2023年3月末に終了しました。

    PHSは1.9GHz帯の電波を使う小型の携帯電話の方式で、1995年にサービスが始まりました(総務省「平成27年版 情報通信白書」)。

    総務省や電波環境協議会の資料では、構内PHSを自営PHSと呼んでいます。病院で使われている医療用PHSは、出力を抑えて医療従事者向けに作られた構内PHSの端末です。

    公衆PHS 構内PHS(自営PHS)
    運用する人 通信会社 病院・施設(設置や保守はメーカー・販売会社)
    使える範囲 通信会社のサービスエリア 建物・敷地の中(内線)
    現在の状況 2023年3月末ですべてのサービスが終了 引き続き使える

    最後まで提供されていた公衆PHSのサービスは、2段階に分けて終わっています。まず2021年1月31日に、テレメタリングプラン以外の料金プランが終了しました(ワイモバイル「PHSのサービス終了のご案内」)。残っていたテレメタリングプランも、2023年3月末で終了しています(ソフトバンク「PHSテレメタリングプランの提供終了について」(2019年4月24日))。総務省の電波監理審議会の資料も、公衆PHSは2023年3月末にすべてのサービスを終えたと記しています(総務省 電波監理審議会 審議資料(2023年9月22日))。

    構内PHSはいつまで使える?

    構内PHSに全国一律の使用期限はなく、実際に使える期間は、機器の保守と部品の供給がいつまで続くかで決まります。構内PHSは制度の上でも引き続き使える無線局で、公衆PHSの終了にあわせて止めなければならない決まりはないためです。一方で、端末や基地局の生産と保守が終わると、故障したときに修理や交換ができなくなります。

    総務省の資料によると、1.9GHz帯を使う免許のいらないデジタルコードレス電話には3つの方式があります。自営PHS方式、DECT方式、TD-LTE方式が、同じ帯域の周波数を分け合っています(総務省 電波監理審議会 審議資料(2023年9月22日))。

    旧スプリアス規格は、無線機器が出す不要な電波について、2005年の改正より前に定められていた基準です。この規格で認証を受けた無線機器は、2022年11月30日までしか使えない予定でした。総務省は2021年8月の省令改正でこの使用期限を当分の間延長し、移行期限はあらためて総合的に検討するとしています(総務省 電波利用ポータル「スプリアス発射の強度の許容値に係る技術基準の改正に伴う経過措置」)。旧スプリアス規格で認証を受けた古い構内PHSの機器を使っている場合は、将来この期限が決まる可能性も見込んで更新を計画してください。

    自施設の機種がいつまで保守を受けられるかは、保守契約の内容と、導入したメーカー・販売会社の案内で確かめてください。

    病院の構内PHSについては、電波環境協議会が全国の病院を対象に調査しています。2024年度の調査(2025年6月公表、2,464病院が回答)では、業務用の自営PHSを導入している病院は80.3%でした。導入している1,979病院に今後の予定をたずねた結果をみると、別のシステムに切り替える予定の病院が2020年度より増えています。

    自営PHSを導入している病院の今後の予定 2020年度(954病院) 2024年度(1,979病院)
    今後も継続して利用予定 86.3% 73.9%
    今後別システムに切り替える予定 4.9% 12.1%

    出典: 電波環境協議会「2024年度医療機関における適正な電波利用推進に関する調査の結果」

    使い続ける場合に気をつけたいこと

    • 生産が終わった端末や電池、基地局の部品は手に入りにくくなり、故障時の修理や交換に時間がかかる
    • ナースコールや電話交換機(PBX)を更新するとき、新しい機種がPHSと連携できるかを確かめる必要がある
    • 旧スプリアス規格で認証を受けた機器は、将来使用期限が決まる可能性がある

    保守の期限まで余裕があっても、ナースコールやPBXの更新時期に合わせて移行を計画すると、設備を二度入れ替えずに済みます。

    PHSの代替手段4つ|比較表

    PHSの代替手段は、sXGP、DECT方式のコードレス電話、スマホ内線、インカムアプリの4つに分けられます。sXGPとDECT方式はPHSと同じ1.9GHz帯を使い、スマホ内線とインカムアプリは携帯電話の回線や無線LANを使う方式です。1対1の内線通話を引き継ぐか、グループへの一斉連絡に移すかで、合う方式が変わります。

    代替手段 通信の仕組み 得意な連絡 ナースコール連携 必要な設備
    sXGP 1.9GHz帯のTD-LTE方式(免許不要) 1対1の内線通話、データ通信 対応する組み合わせがある 院内に専用の基地局
    DECT方式のコードレス電話 1.9GHz帯のDECT方式(免許不要) 1対1の内線通話 対応する組み合わせがある 親機や中継機
    スマホ内線(FMC・クラウドPBXなど) 携帯電話の回線、無線LAN 内線・外線の通話、チャット システムによる 院内の電波環境の整備、PBXの設定
    インカムアプリ 携帯電話の回線、無線LAN グループへの一斉連絡 製品による アプリと業務用スマートフォン

    表の内容は方式ごとの一般的な傾向です。ナースコールとつなげられるかは、ナースコールと端末それぞれのメーカーの組み合わせによって変わります。

    sXGP|PHSと同じ1.9GHz帯の後継方式

    sXGPは、1.9GHz帯を使うTD-LTE方式のデジタルコードレス電話の通称です。総務省は2017年にこの方式を免許のいらない無線局として制度化しました。その後、携帯電話の端末を子機として使えるシステム向けに、使える周波数を追加しています。総務省の資料は、この方式が病院などで使われている自営PHSからの置き換え先として期待されていることを、追加の背景に挙げています(総務省「1.9GHz帯TD-LTE方式のデジタルコードレス電話の増波に伴う関係省令等の改正」)。

    院内に専用の基地局を置くため工事と費用がかかりますが、構内PHSと同じように施設の中で内線網を組めます。先の調査で、業務用スマートフォンを導入している1,114病院のうち、通信方式にsXGPを挙げたのは0.4%でした。内線をスマートフォンに移しつつ、通信を院内の設備で完結させたい病院の候補になります。

    DECT方式のコードレス電話|PHSに近い使い方

    DECT方式も1.9GHz帯を使うデジタルコードレス電話の方式で、日本では2010年に導入されました。免許はいりません(総務省 電波監理審議会 審議資料(2023年9月22日))。PHSと同じように内線用の子機で話すため、スタッフの操作を大きく変えずに移行したい施設の選択肢になります。

    子機は通話が中心です。電子カルテの閲覧やチャットまで1台でこなしたい場合は、スマホ内線とあわせて比べてください。

    スマホ内線(FMC・クラウドPBX)|通話もチャットも1台で

    スマホ内線は、業務用スマートフォンを内線電話にする方法です。携帯電話の回線でスマートフォンを内線にするFMCと、クラウドPBXやIP-PBXのアプリを入れて無線LANで使う方式があります。外線の発着信ができ、チャットや業務アプリも同じ端末で使えます。

    先の調査では、業務用スマートフォンを導入している病院は45.2%でした。そのうち全面的に導入している病院は8.3%で、残りは一部のスタッフに限るなど部分的な導入です。一方、院内に携帯電話の電波がつながりにくい場所がある病院は66.9%にのぼります。スマホ内線を選ぶ場合は、病棟の奥や地下まで無線LANや携帯電話の電波が届くかを先に確かめてください。

    インカムアプリ|スマートフォンでグループに一斉に声を届ける

    インカムアプリは、スマートフォンにアプリを入れ、ボタンを押して話すとグループ全員に声が届くPTT(プッシュ・トゥ・トーク)方式の連絡手段です。携帯電話の回線や無線LANを使うので、フロアや棟が離れていても話せます。

    1人を呼び出すPHSの内線とは使い方が異なり、急変時の応援要請やフロア全体への連絡のように、何人かに同時に伝えたい場面で役立ちます。院内に専用の基地局を置く必要はありません。ただし、無線LANや携帯電話の電波が届く範囲で使う点はスマホ内線と同じです。

    スマートフォンをインカムのように使うアプリの一つが、LINE WORKSラジャーです。ボタンを押して話すとグループのメンバーに声が届き、アドバンストプランでは発話を自動でテキストに変換できます。

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    病院と介護施設で変わるPHS代替の選び方

    病院はナースコールの引き継ぎと医療機器への電波、介護施設は操作と管理の手間を先に確かめると、候補を絞りやすくなります。病院でナースコールを手元で受けるには連携できる方式が必要で、手術室やICUでは電波の利用ルールも要るためです。介護施設では、専任のIT担当者がいなくても設定や管理を続けられるかが判断材料になります。

    判断軸 病院 介護施設 候補になりやすい方式
    ナースコールの引き継ぎ 呼び出しを手元で受ける運用なら欠かせない 施設の運用に合わせて判断 ナースコールと連携できるsXGP、DECT方式、スマホ内線
    医療機器への電波 手術室・ICUなど、エリアごとの利用ルールが必要 使っている医療機器に合わせて確認 院内のルールに沿って選ぶ
    一斉連絡・応援要請 急変時の応援要請、部門間の連絡 フロア間の呼びかけ、夜間の連絡 インカムアプリ
    端末の管理と情報の扱い 紛失時の対応、院外への持ち出し、私物端末を使うかどうか 私物スマホを使うかどうか、紛失時の対応 業務用端末と管理のルールを先に決める
    運用・管理の体制 情報システム部門などと連携して進める 専任の担当者がいなければ、設定や管理の手間が少ない方式 DECT方式、インカムアプリ

    病院|ナースコールの引き継ぎと医療機器への電波

    病院では、まずナースコールの呼び出しをどの端末で受けるかを決めます。呼び出しを看護師のスマートフォンや専用の端末に届けるには、ナースコール側が連携に対応していることが前提です。対応する端末や通信方式はナースコールのメーカーによって異なるため、ナースコールの更新時期に合わせて検討してください。今のナースコールが手元の端末に呼び出しを届けられるかは、ナースコールとスマホをつなぐ方式の種類を押さえておくと、メーカーに確かめる点を絞れます。

    用途ごとに手段を組み合わせる方法もあります。たとえば、内線とナースコールはsXGPやスマホ内線に引き継ぎ、病棟をまたぐ応援要請はインカムアプリで補う形です。

    スマートフォンに切り替える場合は、医療機器への電波の影響も確認が必要です。電波環境協議会の指針(2014年8月)は、医療機関が使用ルールを定めるときの目安を示しています。影響が懸念される医用電気機器からは、携帯電話端末を1m程度離すことを目安にできます。院内で行った試験の結果や機器の取扱説明書の情報で安全を確かめていれば、1m程度より短い距離の設定も可能です(電波環境協議会「医療機関における携帯電話等の使用に関する指針」)。

    先の調査では、業務用スマートフォンを導入している病院のうち、医療機器との離隔距離などの影響防止策を決めている病院は4.1%でした。切り替えにあわせて院内のルールを整えておくと安心です。どのエリアで誰が端末を使えるかは、病棟や手術室などエリアごとの使い方の目安をもとに決められます。

    病院|業務用スマートフォンの管理と患者情報

    業務用スマートフォンで患者の情報を扱う場合は、厚生労働省のガイドラインに沿って端末の管理方法を決めます。厚生労働省は「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を2026年6月に見直し、第7.0版としました。そのシステム運用編は、情報機器の紛失や盗難に備えて対応手順を作ることを求めています。モバイル端末の対策の例には、MDM(端末を遠隔で管理する仕組み)による遠隔制御を挙げています(厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版(令和8年6月)」)。職員の私物端末を業務に使う場合も、病院が管理する端末と同じ水準の対策をとる手順が必要です。

    介護施設|操作の簡単さと管理の手間

    介護施設では、フロアをまたいだ呼びかけや夜間の連絡を、少ない人数で受け持つ場面があります。専任のIT担当者がいない施設では、設定や端末の管理に手間がかからないかも判断材料になります。

    ナースコールを手元の端末で受けたい場合は、ナースコールと連携できるDECT方式やスマホ内線が候補です。スタッフ同士の連絡が中心なら、インカムアプリも候補になります。インカムを候補にする場合は、介護施設で使われるインカムの種類と費用、使える補助金も確かめておくと、ほかの方式と費用を比べられます。

    PHSから移行する進め方

    今のPHSの用途を棚卸しし、候補を病棟で試してから段階的に切り替えると、現場の連絡を止めずにPHSから移行できます。1対1の内線、一斉連絡、ナースコールの受信では合う代替手段が異なり、病棟の廊下や地下は電波が弱くなりやすいためです。

    移行の準備では、まず今の設備とPHSの使われ方を洗い出します。確かめたい項目は次のとおりです。

    確認すること 見るポイント
    端末 台数、電池の劣化、故障の頻度
    基地局・PBX 設置場所、保守契約の内容と保守の期限
    ナースコール どの病棟・フロアでPHSと連携しているか、ナースコール自体の更新予定
    電波環境 無線LANの届く範囲、携帯電話がつながりにくい場所
    使われ方 1対1の内線、一斉連絡、ナースコールの受信、外線など用途ごとの頻度

    洗い出しが終わったら、次の順に進めます。

    1. 用途をナースコール、内線、一斉連絡に分け、用途ごとに代替手段の候補を2〜3に絞る
    2. デモ機や試用で、病棟の廊下や地下など電波が弱くなりやすい場所も含めて通話を試す
    3. まず1つの病棟やフロアに導入し、充電や紛失時の対応などの運用ルールを決める
    4. PHSと並行して使いながら導入先を広げ、すべて切り替えてから旧設備を撤去する

    費用は数年分の合計で比べると、方式ごとの差が分かります。基地局やナースコールの工事費に加え、通信費、端末の管理ツール、保守費、端末の買い替えも含めてください。スマホ内線やインカムアプリを候補に残した場合は、FMCやクラウドPBXなど内線にする方式ごとの費用と、インカムアプリの料金相場を確かめてから合計を出すと、sXGPやDECT方式と同じ年数で比べられます。

    ナースコールの更新を待つあいだに一斉連絡だけ先にインカムアプリへ移し、内線は構内PHSを使い続ける進め方もあります。

    よくある質問

    PHSはなぜ終了したのですか?

    公衆PHSの終了を知らせた通信会社のプレスリリースには、理由は書かれていません。総務省の情報通信白書は、携帯電話が急速に広まるなかで、PHSの契約数は1997年がピークだったと説明しています。

    病院で今もPHSが使われているのはなぜですか?

    電波環境協議会の2024年度の調査では、PHSを今後も使い続ける予定の病院の53.1%が、理由に「維持・管理コストが低い」を挙げました。同協議会の指針(2014年8月)も、医療用PHSの端末を原則として医療機関で使えるものとしています。ただし、手術室や集中治療室では、試験結果や取扱説明書の情報で医療機器への影響がないことを確かめる必要があります。

    スマホのインカムアプリだけでPHSを置き換えられますか?

    用途によって変わります。グループへの一斉連絡や応援要請は、インカムアプリに移せます。電話番号を使った内線・外線の発着信やナースコールの受信には、スマホ内線やナースコールと連携できる端末が必要です。

    まとめ

    PHSの代替を考えるときに確かめたい点は、次のとおりです。

    • 公衆PHSは2023年3月末にすべてのサービスを終えたが、病院や施設の構内PHSは今も使える
    • 構内PHSには全国一律の期限がなく、使える期間は保守と部品の供給しだい
    • 代替はsXGP、DECT方式、スマホ内線、インカムアプリの4つ。ナースコールを手元で受けるかどうかで候補が分かれる
    • 移行は今の用途の洗い出しから始め、病棟やフロアごとに試しながら切り替える

    まずは、自施設の構内PHSの保守期限と、ナースコールの更新予定を確かめるところから始めてください。この2つが分かると、いつまでに何を決めればよいかの見通しが立ちます。

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