離職率は、一定期間にどれだけ人が会社を離れたかを示す指標で、厚生労働省の雇用動向調査では常用労働者数に対する離職者数の割合として定義されています。人事担当者・経営者・現場管理職が自社の定着状況を業界平均と比べるときの基本指標です。
業界によって平均値が大きく異なるため、自社の数値を正しく評価するには比較の基準が欠かせません。この記事では、離職率の基本と業界別の実態、離職防止の改善策を整理します。
目次
離職率とは|厚生労働省の定義と計算式
離職率は、企業や業界の人材定着の状況をとらえるための基本的な指標です。まずは厚生労働省の定義と、実務で使う計算式の形を押さえておきます。
離職率の定義
離職率は、厚生労働省の「雇用動向調査」で、常用労働者数に対する離職者数の割合として定義されています。ここでいう離職者には、自己都合退職だけでなく、解雇された人や他社への出向者なども含まれます。一方で、同じ企業内の異動・転出は離職者に含まれません。基準日と分母の取り方が調査のルールで決まっているため、同じ指標で業界間の比較ができる仕組みになっています(出典: 厚生労働省「雇用動向調査」)。
離職率の計算式と具体例
厚生労働省の雇用動向調査で用いられる計算式は、以下の形です。
離職率(%)= 1年間の離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数 × 100
たとえば、1月1日時点の常用労働者数が200人の企業で、1年間に20人が離職した場合、離職率は20÷200×100で10%になります。企業独自の計算では、年度始めや会計期首の在籍人数を分母に置くことも多く、起算日と期間の定義をそろえて他社比較することが前提になります。
離職率と定着率・入職率の違い
離職率と近い言葉に、定着率と入職率があります。混同されやすいため、関係を整理しておきます。
| 指標 | 意味 | 計算式の骨格 |
|---|---|---|
| 離職率 | 一定期間にどれだけ人が辞めたか | 離職者数 ÷ 期首の労働者数 × 100 |
| 入職率 | 一定期間にどれだけ人が入ったか | 入職者数 ÷ 期首の労働者数 × 100 |
| 定着率 | 一定期間に残り続けた人の割合 | 期末在籍者数 ÷ 期首在籍者数 × 100(入社者を含まない計算が多い) |
離職率が同じ15%でも、入職率が離職率を上回っていれば会社全体の人員は増えており、逆に入職率が下回っていれば縮小局面にあるということになります。離職率だけを単独で見ず、入職率や欠員率と合わせて確認する方が実態に近い判断ができます。
離職率の全国平均と業界別の数値
自社の離職率が高いか低いかを判断するときは、まず全国平均と、所属する業界の平均を確認することが出発点になります。厚生労働省が毎年公表している雇用動向調査が最も基準になる一次ソースです。
日本全体の平均離職率
厚生労働省の令和5年雇用動向調査によると、入職率が16.4%、離職率が15.4%となっています。2023年(令和5年)の全国平均でおおむね15%前後という数字が、自社の離職率を評価するときのベンチマークになります(出典: 厚生労働省「令和5年雇用動向調査結果の概況」)。
15.4%という数字を直感的に言い換えると、およそ7人に1人が1年以内に会社を離れているという規模感です。ここから大きく外れている場合は、業界要因なのか、自社固有の要因なのかを分けて考える必要があります。
産業別の離職率と離職者数の参考値
同じ令和5年の調査で、一般労働者の離職率が高い産業と、離職者数が多い産業を分けて見ると傾向がつかみやすくなります。以下は両方の観点をあわせて整理した参考表です。
| 産業(一般労働者) | 指標 | 備考 |
|---|---|---|
| 生活関連サービス業、娯楽業 | 20.8% | 産業別で最も高い |
| サービス業(他に分類されないもの) | 19.3% | 警備・人材派遣などを含む |
| 宿泊業、飲食サービス業 | 離職者数 1,422.7千人 | 離職者数は全産業で最多 |
| 卸売業、小売業 | 離職者数 1,354.6千人 | 離職者数の多さで2番手 |
| 医療、福祉 | 離職者数 1,157.1千人 | 離職者数の多さで3番手 |
産業別の数値は雇用形態(一般労働者かパートタイム労働者か)によって大きく変わる点にも注意が必要です。パートタイム労働者で見ると、生活関連サービス業、娯楽業の離職率は36.9%と大きく跳ね上がります(出典: 厚生労働省「令和5年雇用動向調査結果の概況(PDF)」)。
離職率が高い業界の共通点
離職率が高く出やすい業界には、いくつかの共通点があります。第一に、接客・対人業務の比重が高く、繁忙時間帯のストレスが強い業界です。飲食・宿泊・小売・娯楽がこれにあたります。第二に、夜勤や早朝勤務などの不規則勤務を伴う業界です。医療・介護・宿泊が典型です。第三に、パートタイム・短時間労働者の比率が高く、もともと入職と離職の回転が早い雇用構造を持っている業界です。
これらの業界では、単純に「他社より離職率を下げる」ことを目指すと現実的でない目標になりやすく、まずは産業平均と比べたうえで、自社固有の上乗せ要因があるかを見極める順番が大切です。
新規学卒者の3年以内離職率
離職率の話題では、新卒で入社した人がどれくらいの割合で3年以内に辞めるかという指標もよく取り上げられます。厚生労働省は毎年、学歴別に新規学卒者の離職状況を公表しています。
学歴別の3年以内離職率
令和6年10月に公表された最新データでは、令和3年3月に就職した新規学卒者の3年以内離職率は以下のとおりとなりました。
| 学歴 | 3年以内離職率 | 前年度比 |
|---|---|---|
| 中学卒 | 50.5% | ー |
| 高校卒 | 38.4% | +1.4ポイント |
| 短大等卒 | 44.6% | ー |
| 大学卒 | 34.9% | +2.6ポイント |
大学卒でも約3人に1人が3年以内に離職しており、高校卒ではさらに高い水準となっています(出典: 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」)。
いわゆる七五三現象の現在地
中卒でおおよそ5割、高卒でおおよそ4割、大卒でおおよそ3割という3年以内離職率の構図は、以前から「七五三現象」と呼ばれてきました。近年の数値を見ると、七五三という語感よりもやや低めに推移していた時期もありますが、令和3年3月卒のデータでは高校卒・大学卒とも前年度から上昇しており、七五三の水準に戻りつつある局面にあります。
新卒離職が企業に与える影響
新卒採用にかかるコストには、採用広告費、面接・選考の人件費、内定者フォローの費用、入社後の研修費用などが含まれます。これらが1年目や2年目で離職されると、投資した分がほぼ回収できないまま次年度の採用に戻るという流れになります。さらに、早期離職が続く職場は残った社員のモチベーションにも影響を与え、組織全体の生産性低下や追加的な離職を招くことがあります。新卒離職率は、人件費の問題というだけでなく、組織の持続力を測る指標でもあります。
業種別に見る離職率の実態
業界ごとの離職率は、業界構造と深く結び付いています。ここではボリュームの大きい介護・保育、そして接客業の代表格として宿泊・飲食・小売を取り上げて整理します。
介護業界の離職率
介護労働安定センターの令和5年度介護労働実態調査によると、訪問介護員と介護職員を合わせた2職種の離職率は13.1%でした。職種別では、訪問介護員が11.8%、介護職員が13.6%となっています。2012年度の17.0%をピークに減少傾向が続いており、現時点では全産業平均の15.4%を下回る水準まで落ち着いています(出典: 介護労働安定センター「令和5年度 介護労働実態調査結果について(PDF)」)。
介護業界は離職率が高いという印象を持たれることが多いものの、直近の調査では全産業平均よりむしろ低くなっています。背景には、人間関係の改善を中心とした職場環境の見直しや、ICT・介護テクノロジーの活用を後押しする政策の広がりがあります。とはいえ、業界構造としての人手不足は解消しておらず、定着率をさらに高める取り組みは引き続き重要なテーマです。
保育業界の離職率
保育士の離職率は、厚生労働省の資料「保育士の現状と主な取組」によれば9.3%となっており、公立保育所が8.5%、私立保育所が10.7%と、私立の方が高めに推移しています(出典: 厚生労働省「保育士の現状と主な取組(PDF)」)。
全産業平均と比べれば低い水準ですが、現場が少人数体制で運営されているため、1人の離職が現場のシフト・園児対応・保護者対応に与える負荷は大きく、数字の大小以上に定着の重みが大きい業種です。人間関係、仕事量、労働時間といった退職理由が上位に挙がっており、日常的なコミュニケーションとマネジメントの質が定着を左右する構造になっています。
宿泊・飲食・小売の離職率
宿泊業、飲食サービス業、卸売業・小売業は、離職者数で上位を占める業種です。繁忙期と閑散期の差が大きく、ピーク時間帯の現場負荷が集中する働き方であることが、離職が起きやすい構造につながっています。特に短期・短時間雇用の比率が高い職場では、入職と離職の回転自体が前提化しており、他業界と同じ基準で「離職率が高い」と評価すると実態を見誤ることがあります。
離職率が高くなる主な原因
離職率が高い状態には、多くの場合、単一の理由ではなく複数の要因が重なっています。原因を大きく4つのカテゴリーに分けて整理しておくと、自社のどこから手を付けるべきかを考えやすくなります。
| 要因カテゴリ | 典型的な状態 | 現場で起きやすいこと |
|---|---|---|
| 採用・受け入れ時のミスマッチ | 入社前の説明と実態の乖離、オンボーディング不足 | 入社3か月以内の早期離職、新人が相談相手を持てない |
| 評価・待遇への納得感の不足 | 評価基準の不透明さ、昇給・昇格の見通しが描けない | 中堅層の静かな退職、優秀層の引き抜きリスク上昇 |
| 人間関係と情報共有のすれ違い | 指示が一部にしか伝わらない、ハラスメント的な言動の放置 | 伝達漏れ、責任の押し付け合い、心理的安全性の低下 |
| 業務量と労働時間の偏り | 特定個人・特定部署への業務集中、属人化 | 休みが取れない、体調不良の連鎖、残業の慢性化 |
採用・受け入れ時のミスマッチ
求人票や面接で伝えた内容と、実際の業務・配属先の実態が食い違うと、入社直後から不信感が積み上がります。特に新卒や第二新卒では、配属後の業務内容や働く時間帯が想像と違ったという理由が退職動機の上位に来ることが多く、採用段階の情報発信の精度が定着率に直結します。
評価・待遇への納得感の不足
離職理由として挙がりやすい「給与が安い」は、額面そのものの問題というより、評価基準が不透明で、どう頑張れば昇給・昇格につながるかが見えないという納得感の問題であることが多いです。基準の明文化、評価の運用、フィードバックの質がそろって初めて、給与水準そのものへの不満も和らぎます。
人間関係と情報共有のすれ違い
退職理由の上位に人間関係が並ぶ背景には、実際には意図的な対立よりも、情報共有のすれ違いが積み重なって誤解を生んでいるケースが少なくありません。変更指示が一部のスタッフにしか届いていない、夜勤帯と日勤帯で申し送りが食い違う、本部の通達が現場まで届いていない、といった小さな行き違いが、やがて「自分だけが知らされていなかった」という不信感に変わります。
業務量と労働時間の偏り
業務の属人化が進むと、特定の人にしかできない仕事が生まれ、休みづらさや長時間労働が慢性化します。有給が取りにくく体調不良が連鎖し、結果として一人が抜けたときの現場負荷が極端に上がり、残された人の離職リスクが高まるという連鎖を起こします。
離職防止のために企業ができる改善策
離職防止の取り組みは、制度の面と日常運用の面の両方を動かす必要があります。制度だけを整えても日常が変わらなければ効きませんし、逆に現場努力だけでは構造要因を解消できません。ここでは4つの軸で整理します。
採用・オンボーディングの見直し
入社後3か月から半年の期間は、離職リスクが最も高いフェーズです。この期間を支えるオンボーディングの設計が、その後の定着を大きく左右します。具体的には、以下のような打ち手が有効です。
- 求人段階で業務の実態・配属先・勤務シフトをできる限り具体的に開示
- 入社1か月・3か月・6か月での定期面談の仕組み化
- メンター・バディ制度による相談相手の明示
- 初期研修後のフォローアップ研修の計画
評価制度と待遇の透明化
評価制度は、評価の公平性だけでなく、社員が自分の成長を見通せるかどうかが重要です。昇給・昇格の条件、求められる役割、1年後・3年後のキャリアイメージを言葉にして共有するだけで、納得感は大きく変わります。待遇面の改善余地が限られる場合でも、基準の明確化と説明責任を果たすことが、離職意向を抑える効果を持ちます。
日常的な情報共有とコミュニケーション
制度改定や評価面談は年に数回の出来事ですが、情報共有とコミュニケーションは毎日の出来事です。日常のすれ違いが積み重なると、制度面の改善を帳消しにする勢いで退職理由に浮上します。打ち手としては以下のようなものがあります。
- ミーティングと口頭伝達に偏らせず、文字でも残る情報共有の仕組みを作る
- シフト制の職場では勤務帯をまたぐ申し送りを定型化
- 全員に届くチャンネルと、個別チームのチャンネルを使い分ける
- 現場と本部の情報格差を埋めるための双方向の連絡ルートを用意する
とくに現場仕事の比率が高い業種では、全員がPCの前に座れるわけではないため、スマホ起点の情報共有手段を前提に設計することが現実的です。
管理職への支援とマネジメント強化
離職率の問題は、最終的には直属の管理職のマネジメントで決まる場面が多いものです。プレイングマネジャーとして現場業務を抱えたまま部下育成までを担っている管理職に対し、マネジメント研修、1on1の運用支援、負荷の分散、人事部門からの伴走といった支援が欠かせません。管理職を孤立させない体制こそが、中長期的な離職率低下の鍵になります。
離職率を下げるためにまず取り組むべきこと
改善策を一度にすべて動かすのは現実的ではありません。最初に手を付けるなら、現状を正しくとらえることと、小さく始めて続けることが基本になります。
自社の離職率を正しく計算する
改善の前提は、現状の把握です。厚生労働省方式で計算し直すと、自社が業界平均より高いのか低いのか、数値の実感が変わることがあります。起算日と期間をそろえ、雇用形態別・部署別・勤続年数別にも内訳を見ると、どの層で離職が集中しているかが見えてきます。
離職理由を定性・定量の両面で把握する
定量だけでは、なぜ辞めたのかはわかりません。退職面談の項目を整え、表向きの理由の奥にある背景を聞き取る仕組みが必要です。全員に聞く退職アンケートと、選ばれた対象に対する面談を組み合わせると、定性情報と定量情報の両方を使って原因を検証できます。
小さく始めて改善を続ける
制度改革は合意形成に時間がかかるため、半年から1年先の着地を視野に入れつつ、その間にできる日常運用の改善も同時に走らせます。たとえば情報共有のチャンネル整理や、1on1の頻度見直しは、現場リーダー単位で翌週から始められます。小さな変化を続けることで、制度改定が効くまでの間にも離職リスクを下げていけます。
よくある質問
離職率は何%から高いといえるのですか
厚生労働省 令和5年雇用動向調査での全国平均が15.4%です。これを明確に上回っていれば高め、下回っていれば平均以下と判断できます。ただし業界差が大きいため、必ず同じ業界内の平均と比較してください。宿泊・飲食・生活関連サービスのように構造的に離職率が高い業種では、全国平均を基準にすると評価を誤ります。
自社の離職率はどの期間で計算するのが正しいですか
厚生労働省方式では1月1日時点の常用労働者数を分母に置き、1年間の離職者数を分子に置きます。社内比較や採用広報で使う場合も、起算日と期間の定義をそろえておく必要があります。期中に計算するなら、起算日を明記したうえで四半期単位や半期単位で継続的に出すと、施策の効果が追跡しやすくなります。
新卒3年以内離職率はなぜ高くなりやすいのですか
入社前のイメージと入社後の実態とのギャップ、初配属先のマッチング、1年目のオンボーディング体制の有無、直属上司との関係性など、複数の要因が重なって決まります。特に入社後3か月から1年の間のサポート体制が弱い企業ほど、早期離職が発生しやすくなる傾向があります。
離職率を下げるには何から着手すればよいですか
最初の一歩は、自社の離職率と離職理由を正確にとらえることです。定量は厚労省方式で計算し直し、定性は退職面談と在職者アンケートの両輪で集めます。その後に、オンボーディング・評価の透明化・情報共有・管理職支援の順で優先順位を付けると、現場の負荷に見合った進め方ができます。
離職率の数値目標は掲げるべきですか
数値目標を単独で掲げると、退職手続きを遅らせるなどの副作用が起きることがあります。離職率そのものの目標よりも、新卒1年目定着率、管理職の1on1実施率、退職面談の実施率といったプロセス指標と組み合わせるのが安全です。結果指標と行動指標を並行して追う設計にしておくことで、無理な運用に陥りにくくなります。
まとめ
離職率の数字は、人事部だけでなく経営・現場責任者の共通言語として使える指標です。最後に、この記事で整理した要点を振り返ります。
- 離職率は厚生労働省方式で「離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数 × 100」で計算する
- 令和5年の全国平均は15.4%。生活関連サービス業・飲食・宿泊などは構造的に高めに出る
- 新卒3年以内離職率は、大卒34.9%・高卒38.4%で再び上昇傾向
- 介護業界の離職率は13.1%まで低下し、全産業平均を下回る水準
- 原因は採用ミスマッチ・評価の不透明さ・情報共有のすれ違い・業務量の偏りの4つに整理できる
- 改善策は制度面と日常運用面の両輪で進める
離職率の改善は、単一のツール導入で解決するものではありません。ただし、退職理由の上位に挙がる「人間関係」や「業務量の偏り」の背景には、日常的な情報共有のすれ違いが潜んでいることが多く、ここを埋めるだけでも空気感は変わります。シフト制で働く現場や、拠点が分かれている職場では、スマホを使った音声・テキストの情報共有ツールを取り入れ、現場と本部の情報格差を日々埋めていく取り組みが有効です。LINE WORKS ラジャーは、スマートフォンをトランシーバーのように使える音声コミュニケーションサービスで、音声に加えてテキストでも履歴を追えるため、勤務帯をまたぐ申し送りや本部からの通達を可視化しやすい点が特徴です。フリープランは0円で試せます(会話は40分で一度切断)。有償プランは30日間の無償トライアルがあります。