熊本県菊池郡の社会医療法人令和会 熊本リハビリテーション病院は、院内の連絡ツールとしてLINE WORKSを導入。電話による伝達をLINE WORKSに置き換えることで、情報共有のスピードを大幅に改善させました。患者さんのご家族のLINEとの連携、院外にいる医師とのビデオ通話を活用した遠隔対応など、多彩な機能を有効に活用して提供サービスの質を向上させています。
本事例のポイント
- グループトークで院内のスピーディな情報連携が実現
- 患者さんのご家族のLINEとつながってコミュニケーションが円滑に
- ビデオ通話で医師が患者さんの状態を遠隔で把握できる環境を整備
- プロジェクトやマニュアルをノートでスムーズに情報共有
熊本リハビリテーション病院の概要をご紹介ください。
城ヶ野さん :
当院はリハビリテーション専門病院として高度なリハビリテーションを提供し、患者さんの早期の退院・社会復帰を支援しています。医師・看護師・セラピスト・医療ソーシャルワーカーが協力し、急性期と回復期の患者さんには院内で、介護が必要な患者さんには介護老人保健施設や通所リハビリでも支援を行っています。
リハビリテーション科のほかに内科や脳神経内科、血管外科、泌尿器科などの診療科や、栄養サポート、再生医療などの専門外来も設けており、外部の医療機関と連携しながら地域に密着した医療サービスを拡充しています。さらに「くまりは健康フェスタ」など地域を巻き込んだイベントや地域リハ活動、介護予防活動などのほか、近年は患者さんの情報のデジタル化や分析などによる医療DXにも注力しています。
これまでどのような課題に直面していましたか。
城ヶ野さん :
これまで、院内での情報伝達は、主に電話やメール、PHSを利用していました。例えば医師から休診することになったという電話が事務部に入ると、連絡を受けた職員が他の職員に口頭で伝え、離席している職員にはデスクに紙のメモを置くなどして伝えていました。事務部には総務課や財務課、人事課といった多数の部署があり、それぞれの職員がDXや人材育成など部署横断的なプロジェクト活動を数多く行っています。ただ、プロジェクトの会議に先立って情報交換をする機会がなかなか設けられず、会議のスムーズな進行が課題でした。
佐藤さん :
新型コロナウイルスが流行し始めた2020年、診療時間外に新型コロナウイルス関連の対応が必要になった際、院長や副院長、当直の看護師との情報共有は電話で行うしか方法がなく、タイムリーな情報共有ができませんでした。院長からの指示や報告を院内の関係者に一斉に伝達でき、迅速に確認できる手段が必要と感じていました。
大谷さん :
地域連携部には、地域の医療機関と、患者さんやそのご家族からの連絡や相談で、1日に100件近くの外線電話がかかってきます。別の業務で手を離せなかったり、離席中で電話に出られなかったりすることもあります。後から折り返しても連絡がつながらないことも多く、電話対応がかなりの業務負担になっていました。
課題解決に向けてLINE WORKSを導入された理由と、運用開始までの経緯をお聞かせください。
坂本さん :
LINE WORKSは多くの職員がプライベートで使い慣れているLINEと基本操作が似ていて、導入教育をせずともスムーズに定着することが期待できたので、まずはフリープランで利用することを決めました。他のチャットサービスを利用していたこともありましたが、利用人数や作成できるグループ数に制限があったため、一部の職員の利用にとどまっていました。LINE WORKSはフリープランでも充分なグループ数が作成できるのに加えて、ビデオ通話機能が使える点や連携ツールが多い点も魅力でした。
城ヶ野さん :
最初に、院長・副院長、看護部とリハビリテーション部の各部長、検査部、薬剤師、麻酔科の医師とで新型コロナウイルス対応の情報連携用として運用を始め、その次に訪問看護や訪問リハビリテーションなどを提供する在宅支援部と事務部で利用を開始しました。導入から1年ほど経ったころ、院内の情報共有をさらに円滑にするために、医師全員と各部門の部門長や部署長に加えて、病棟ごとの共用アカウントを付与しています。さらに、患者さんやそのご家族のLINEと外部トーク連携でつながってやりとりしようと、地域連携部でも利用を開始しました。そのタイミングで、患者さんやご家族により安心していただくために有料プランにアップグレードしています。
病棟や地域連携部では、院外に持ち出せない病院支給のPCやタブレットでの利用に限ると運用ルールを定め、時間外に連絡をとりあう可能性がある医師や事務部に限ってBYODでの利用を許可しています。
LINE WORKSの活用シーンをご紹介ください。
・グループトークで医師や関係者とのタイムリーな情報伝達が可能に
・患者さんのご家族のLINEとつながり連絡業務の負担が軽減
佐藤さん :
看護部では各病棟に配布されている端末で、新型コロナウイルス関連の情報連携や診療時間外での連絡にLINE WORKSを利用しています。電話連絡がLINE WORKSのグループトークに置き換わったことで、院長や副院長、関係する各部門長どうしでタイムリーに情報共有ができるようになりました。院長や副院長への報告や指示内容を職員一人ひとりに伝達するといった電話連絡の煩雑さが解消したことで、連絡に要する時間や労力が大幅に削減されました。LINE WORKSを導入した時期は新型コロナウイルスの流行初期でした。感染者が爆発的に増加してからの状況下で、連絡手段が電話のままだったら……とても対応しきれなかったと思います。
新型コロナウイルス関連の情報連携用のグループトークでは、職員が新型コロナウイルスに感染した際などに情報を共有。連絡がタイムリーになり、判断も迅速にできている
坂本さん :
電話やメールで多忙な医師に用件を伝えるのは気が引けることがありましたが、都合のよいときに確認してもらえるトークなら心理的に安心して連絡ができます。事務長や秘書、医師どうしのトークも増え、LINE WORKSが院内に広く浸透してきたことを感じます。
大谷さん :
地域連携部では、外部トーク連携機能を活用して患者さんのご家族のLINEとつながって連絡を取りあっています。地域連携部のLINE WORKSとLINEで連絡が取りあえることを案内する文書をご家族にお渡しして、ご希望者にQRコードで友だち登録をしてもらっています。お互いが都合の良いタイミングでメッセージを確認・送信することができて、以前よりもかなりコミュニケーションが取りやすくなりました。地域連携部にかかってくる外線電話の数も大幅に減少しました。
入院患者さんの面会日の予約などをトークでやりとりすればテキストで残るため、電話や口頭で起こりやすい伝え間違いや聞き違いを防ぐことができます。また、要介護認定の申請に必要な書類のご案内やリハビリの様子、退院後のリハビリ環境を把握するために必要なご自宅の写真も、データで共有できるようになりました。LINE WORKSでつながる前は、ご自宅の写真はご家族に病院まで持ってきてもらって確認していたので、ご家族の負担も軽減したのではないかと感じています。
入院中の患者さんの様子やリハビリ風景の動画、関係書類などトークで共有できるようになった
ビデオ通話機能も積極的に活用されているそうですね。
・医師と病棟をビデオ通話でつなぎ、時間外の遠隔対応が可能に
坂本さん :
以前は、勤務時間外の医師に対して患者さんに関する質問があると、電話で傷口の様子や心電図の説明をしていましたが、実際に確認しないと対応の判断ができない場合は、勤務時間外でも医師に病院に来てもらうことがありました。現在は、病棟に設置している端末にLINE WORKSを設定し、自宅にいる医師とビデオ通話機能で状況を確認できるようになっています。映像を見ながら看護師に必要な指示を出せるようになり、医師が時間外に病院まで行かなくても済むケースが増えています。医師の業務負担軽減とも言えるこのような活用は、医療機器を管理するエンジニアにも適用できると考えています。
ほかにどのようなLINE WORKSの機能をよく利用されていますか。
・プロジェクトの進捗状況やマニュアルの共有にノートを活用
・職員の予定や行事をカレンダーや掲示板で見える化
・アンケートで日程調整や意見収集を効率よく実施
城ヶ野さん :
事務部では、各プロジェクトチームの議事録や取り組み内容の進捗状況の管理に、ノート機能を活用しています。部門横断的なプロジェクトの会議に先立って、議題や関連資料を共有できるので、議論もスムーズになり会議の時間短縮と質の向上を実現しています。また、やりとりの内容もLINE WORKS上に残るので、後から振り返るのにも便利です。
坂本さん :
ほかにもインフルエンザの予防接種の電話受付手順をノートにまとめています。患者さんの年齢や地域によって案内する内容が少しずつ異なるため確認事項が多いのですが、ノートで確認しながらスムーズに電話対応ができています。
発熱外来や外線への対応についての情報を掲載し、折り返しや他の職員へ確認が減少し、電話対応がスムーズになった
坂本さん :
総務課では職員がカレンダーに予定を登録して、お互いのスケジュールを共有しています。今後は、会議室や共用備品の貸出もカレンダーで管理したいと考えています。イベントなど院内全体向けの連絡事項は掲示板で共有しているほか、意見収集や会議日程の調整にはアンケートを利用しています。
LINE WORKSの活用を今後どのように発展させたいとお考えですか。
城ヶ野さん :
今後さらに多くの職員にアカウント付与を行い、アンケートを病院全体で活用するなど、定期的な意見聴取に役立てたいです。また、外部の医療機関のLINE WORKSやLINEとつながることができれば、地域内連携がより強化できると思います。
【お話を伺った方】
城ヶ野 晃久さん
総務、財務、人事、医事などを行う事務部を事務長として統括する。
佐藤 並子さん
看護師、看護補助者、介護士などが所属する看護部を部長として管理する。
大谷 久江さん
地域連携部 部長として近隣の医療機関との連携や、患者さん・患者さんのご家族からの相談業務などを担う。
総務課 主任
坂本 和歌子さん
総務課 主任として主に企画広報や新しいツールの導入・運用などに携わる。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2023年12月当時のものです。