北海道函館市で急性期医療を担う函館五稜郭病院では、多数の会議や委員会で作成が求められる議事録の負担が課題となっていました。重要な会議では発言内容を正確に記録する必要があり、1時間程度の会議でも議事録の完成までに15時間以上を要することもありました。こうした課題を解決するために導入されたのがAI議事録作成ツール「LINE WORKS AiNote」です。高精度な文字起こしにより議事録作業時間を大幅に短縮し、時間外労働の削減や、職員が会議や本来業務に集中できる環境づくりにもつながっています。導入の経緯や活用方法、現場で実感している効果について、企画情報システム課の長利さん、感染情報管理室の山根さん、総務課秘書係の小坂さんに話を伺いました。
本事例のポイント
-最大15〜16時間かかっていた議事録作成時間を約3分の1に短縮
-議事録作成の迅速化により、院内の意思決定や情報共有を効率化
-医療従事者の事務負担を軽減し、患者対応や専門業務に注力
貴院の概要と、デジタル化への取り組みについてお聞かせください。
長利さん:
当院は480床を有し、函館市を中心とする道南地域の急性期医療、特にがん診療を中心に担う中核病院です。医師、看護師、事務職など総勢約1200人の職員が連携し、一丸となって地域医療を提供しています。また、道南地域でもトップクラスの手術件数を誇り、近年は手術支援ロボット「da Vinci(ダヴィンチ)」を活用したロボット手術をはじめ、CT画像の解析にAI技術を活用するなど、最先端の医療技術を積極的に取り入れている点も特徴です。
私の所属する企画情報システム課では、経営改善の提案や広報、サイバーセキュリティ対策に加え、DX推進を重要なミッションとして担っています。電子カルテをはじめとする各種システムの安定運用だけでなく、「LINE WORKS」や「LINE WORKS AiNote」といった新しいツールを活用し、現場の業務効率化や働き方の改善に取り組んでいます。

まず、「LINE WORKS AiNote」の導入以前に「LINE WORKS」を導入された背景と、現場での効果をお聞かせください。
長利さん:
アナログだった連絡業務を効率化するため、当院では2020年にLINE WORKSを導入しました。それ以前は共通のツールがなく、電話やメール、紙でのやり取りが中心だったため、職員間の情報共有には相当な手間と時間がかかっていたのです。
山根さん:
各種会議の開催案内や資料の配布も、導入前はすべて紙でした。資料を袋に入れて院内を巡り、関係者一人ひとりに手渡しで届けていたのですが、地下から7階まで歩き回ることも珍しくなく、多い日には日常業務を含めて1日2万歩近く歩いていたこともあります。
導入後はそうした状況が大きく変わりました。開催案内や資料共有がボタン一つで一斉配信できるようになり、連絡にかかる時間は「100分の1」にまで激減したと感じています。

情報共有の課題が解消された一方で、会議の議事録作成にはどのような課題があったのでしょうか。
長利さん:
病院内には多数の会議や委員会があり、その多くで議事録の作成が求められます。特に病院の意思決定に関わる運営会議や倫理委員会では扱う内容が重要なため、誰がどのような発言をしたのかを正確に書き起こす必要があり、担当者にとっても非常に大きな負担になっていました。
小坂さん:
私は運営会議や倫理委員会の議事録作成を担当していますが、以前は録音データを少し聞いては戻す作業の繰り返しでした。専門用語や聞き慣れない言葉が出てくると、その都度意味を調べながら作業しなければならず、1時間を超える会議だと、作成に15〜16時間ほどかかることもありました。
これらの会議は毎月開催されるため、月2回は必ずこの重い業務が発生します。運営会議の議事録は法人本部へ提出する必要があり、倫理委員会は審議結果をもとに次の手続きが進むため、どちらも後回しにはできません。通常業務の合間や時間外を使いながら少しずつ作業を進めていましたが、正直、会議のたびに気が重くなっていました。

山根さん:
私は看護師として感染情報管理室に所属していますが、院内の会議だけでなく、近隣の医療機関や保健所、診療所との連携会議など、数多くの議事録作成を担当しています。
以前は会議ごとに書記を決め、手書きのメモやICレコーダーの録音をもとに文字起こしをしていました。発言者の声が小さかったり、複数人の発言が重なったりすると聞き取りが難しく、前後の文脈から内容を推測しながら作成する作業には苦労していました。
本業と並行して作業しなければならず、電話応対や患者さんへの対応で何度も作業が中断されるため、「今日こそは議事録を仕上げよう」と思っていてもなかなか予定通りには進みません。結局、完成までに1週間近くかかってしまうことも珍しくありませんでした。
数あるAI議事録作成ツールの中から、「LINE WORKS AiNote」を選ばれた決め手は何だったのでしょうか。
長利さん:
選定において一番重視したのは、文字起こしの精度でした。院内の会議では医療用語が頻繁に飛び交うため、一般的なツールで医療現場の運用に耐えられるのかという不安があったのです。そこでまずはAiNoteのトライアルを試したところ、医療用語も含めてしっかりと文字起こしされており、「これなら現場で十分に運用できる」と確信を持ちました。
また、すでに院内で利用しているLINE WORKS上でそのまま使えるため、新たなアカウント管理や運用ルールの整備が不要だったことも大きかったです。
実際にはどのように活用されていますか。また、導入後に感じている効果についても教えてください。
小坂さん:
私は会議の際にICレコーダーで録音し、その音声データをAiNoteに取り込んで議事録を作成しています。初めて使った時は、文字起こしがここまで簡単にできるのかと驚きました。導入前は長い場合で15〜16時間かかっていた議事録作成が、現在は5時間前後で完了できるようになりました。発言が重なった箇所などは修正が必要ですが、それでも以前と比べれば作業時間はおよそ3分の1です。
以前は日中の業務に追われ、時間外に議事録をまとめて作成することが多かったのですが、現在はそうした残業が少なくなりました。会議に伴う時間的・心理的な負担が大きく軽減されたことは、個人としても本当にうれしい変化です。
また、倫理委員会では議事録が早く完成することで、委員長への確認作業も前倒しで進められるようになりました。審議結果は委員長や院長の承認を経て次の手続きへ進むため、関係各所への通知を迅速に行えるようになったことも大きな効果だと思います。

山根さん:
私は会議の内容に応じてAiNoteを使い分けています。対面会議ではICレコーダーで録音し、オンライン会議では録画データを取り込むほか、ごく短時間の打ち合わせであれば公用のスマートフォンで録音することもあります。どの方法でも使い勝手に大きな違いはなく、状況に応じて柔軟に活用できています。
実際に使い始めたときは、「こんなに便利なんだ」と驚きました。特に助かっているのが話者分離の機能です。30人規模の会議になると発言者も多く、以前は録音を聞き返しながら「今の発言は誰だったのだろう」と確認するだけでも大変でした。AiNoteでは、一度話者を登録すると、その後の発言も自動で判別してくれるため、編集作業がずいぶん楽になりました。
また、これまで議事録担当となった会議への参加時は、発言を聞き漏らさないようメモを取ることに必死でした。今は記録をAiNoteに任せられるので、会議そのものに集中できるようになりました。議事録作成に費やしていた時間や労力が減ったことで、「また会議が来てしまった」という憂鬱な気持ちもなくなり、患者さんへの対応など本来注力すべき業務にしっかり向き合える環境が整ったことは、本当にありがたいですね。
長利さん:
DXというと新しいシステムを導入することに目が向きがちですが、私たちが重視しているのは現場の負担を減らし、本来の業務に集中できる環境をつくることです。AiNoteはまさにその効果を実感できたツールでした。実際に、議事録作成にかかる時間は大きく削減され、会議への向き合い方そのものも変わっています。ここまで分かりやすく効果を実感できたツールは、これまでなかったと感じています。
今後、AiNoteをどのように活用していきたいとお考えですか。
長利さん:
まずは院内での利用者をさらに増やしていきたいと考えています。現在も多くの職員が活用していますが、まだAiNoteを十分に知らない人や、「難しそう」と感じている人もいます。実際には負担なく使えるツールですので、今後も活用方法を周知しながら横展開を進め、より多くの部署で効果を実感してもらいたいですね。

機能面については、現時点で大きな不満はありません。文字起こしの精度も高く、十分に満足しています。一方で、AiNoteの「AI要約」機能については、まだ十分に使いこなせていない部分もあります。会議によっては、一語一句を正確に残す必要がないものもあるため、そうした場面ではAI要約をうまく活用していきたいと考えています。
将来的には、院内のコミュニケーションから議事録作成まで、より多くの業務をLINE WORKS上で完結できるようになることを期待しています。
【お話を伺った方々】
長利 寛樹さん
企画情報システム課長。情報処理安全確保支援士。院内システムの運用管理やDX推進を担当し、AiNote導入を主導。
山根 のぞみさん
感染情報管理室 副室長。感染管理認定看護師。院内外の会議・感染対策研修の運営や議事録作成を担当。
小坂 悠紀さん
総務課秘書係。院長の秘書業務のほか、運営会議や倫理委員会など重要会議の議事録作成を担う。