現在、メールや電話よりも手軽なコミュニケーション手段として、ビジネスチャットが注目を集めています。企業ごとに業務効率化やコミュニケーション活性化、シャドーIT対策といったさまざまな理由で導入が進んでおり、導入している企業規模も多岐にわたっています。
ここでは、ビジネスチャットについて知りたい、導入を検討しているという方に向けて、そのメリットや導入効果、ツールの選び方をご紹介します。
ビジネスチャットとは
チャットとは対話型のコミュニケーションツールを指し、個人で利用している人も多いと思います。ビジネスチャットとは、個人用のチャットツールでは不足しているセキュリティや管理機能を強化し、企業向けに最適化されたコミュニケーションツールです。企業での主なコミュニケーション手段であるメールや電話に比べて、手軽にコミュニケーションできるという特徴があります。
既存のコミュニケーション手段との違い
ビジネスの現場でしばしば重視されるのが、効率的な情報共有とコミュニケーションのスピードです。メールは特定のトピックに関してスレッド形式でやり取りしながら関係者に情報共有できる反面、メールならではの挨拶や定型文により、ついつい文章が長くなり、レスポンスが遅れてしまいがちです。電話は状況によってはスピーディにコミュニケーションすることができますが、相手が電話に出られない場合はコミュニケーションが停滞してしまうことに加え、やり取りした内容が文書に残らないというデメリットがあります。また、基本的に1対1の連絡となってしまうため、複数人に情報を共有する必要がある場合、手間が生じてしまいまいます。
一方、ビジネスチャットはテキストベースでスピーディにやり取りすることができ、効率的な情報共有とコミュニケーションスピードの向上に貢献します。もちろんメールや電話にもそれぞれ優れた特徴がありますが、メールや電話のデメリットを補完しながらビジネスにおける日常的なコミュニケーションを加速するツールとしてビジネスチャットが大きな注目を集めています。その具体的な特徴と仕事で使うことのメリットについて次項でご紹介します。
チャットを仕事で使うことのメリット
【メリット1】会話のようにスムーズなコミュニケーション
ビジネスチャットは、会話のようにやり取りできるため、手軽なコミュニケーションを実現します。状況に応じてテンポよく細かい内容をやり取りすることで、臨機応変に物事を進めやすいメリットがあります。グループでやり取りをしていれば、そのグループのメンバーに対して自動的に情報が共有されますし、やり取りに参加しやすい状況が生まれます。また、メールのように「お疲れさまです」や「よろしくお願いします」といった文章が形骸化することもなく、本当に必要なやり取りに集中することができます。
【メリット2】既読確認でムダな待ち時間を削減
メールの送信後、なかなか返信されず、読まれたかどうか不安に感じる場面がありますよね。多くのビジネスチャットには既読確認機能があり、相手が読んだかどうか確認する手間を省き、仕事を円滑に進めることに役立ちます。返信を待つためにパソコンの前から離れられない、頻繁にメールをチェックしなければならない、といった時間やストレスを削減し、他の仕事に集中できます。
【メリット3】画像や動画、ファイルの送受信
多くのビジネスチャットでは、テキストでのコミュニケーションに加え、写真や動画、ファイルの送受信が可能です。パソコンはもちろん、スマートフォンでも簡単にファイルを取り扱うことができ、外出先などパソコンが使用できない場面でも役立ちます。画像や動画を交えたコミュニケーションは、送り手にとっては内容や状況を説明しやすく、読み手にとってもその理解を助けることができ、情報共有の正確性やスピードの向上に貢献します。
【メリット4】履歴が残る
会話のようにスムーズにやり取りができるビジネスチャットですが、通常の会話と異なるのはテキストで履歴が残る点です。電話や対面での会話のように状況に応じてコミュニケーションしながら、その内容をそのまま履歴として残すことができます。電話や対面での会話では、メモをとることがあっても、その場でやり取りをした生の内容が残ることはなく、主観が入ったり断片的な情報になったりしがちです。ビジネスチャットでは、特定のメンバーやトピックに応じたルームごとに履歴が残るため、過去の経緯を振り返る際にまとめて情報を参照できるメリットがあります。
ビジネスチャットの導入効果
仕事において様々なメリットがありそうなビジネスチャットですが、導入することでどのような効果が期待できるのでしょうか?ここでは、期待できる主な導入効果についてご紹介します。
業務効率化
チャットは状況に応じたリアルタイムなコミュニケーションに適しており、電話のようにこちらからの連絡の完了が相手の状況に左右されることがありません。メールや電話といった既存のコミュニケーション方法と相互補完しながら、日々の業務に関するコミュニケーションをより円滑に進めることができます。例えば、メールではなかなか話が進まないからとりあえず会議を招集する、上司への電話が繋がらないから物事が決まらないといった事態に対してビジネスチャットが力を発揮します。
また、会議が減ることはペーパーレスの促進に貢献し、通話機能を備えていればこれまで内線や携帯電話に費やしていた通話料金を節約できることから、コストの最適化という副次的な効果も見込めるかもしれません。
組織間連携の強化
会話のようにやり取りでき、形式的なコミュニケーションが不要なビジネスチャットは、メールと比較してコミュニケーションのハードルを下げることができます。ちょっとした内容だからと、電話や対面でやり取りしていたために組織間で伝わりにくかった日常的に必要な業務連絡が全員で確認できるようになります。さらに、特定のメンバーやトピックごとのチャットルームを活用することで、これまで共有されなかった有用な情報を社員が能動的に共有しやすくなり、組織感の連携やチームワークの強化、社内活性化に貢献します。
情報共有の促進
コミュニケーションのハードルを下げ、コミュニティを醸成するビジネスチャットの特徴は、社内での情報共有の拡大・加速に貢献します。チャットであれば、例えば顧客に関する情報をこまめに情報共有しやすく、これまで当事者に閉じていた特定顧客の情報や対応・接客ノウハウが他の社員にも共有されやすくなります。結果として、顧客接点強化による新規顧客獲得や既存顧客のリテンション強化、サービス品質の向上につながることもあるでしょう。
シャドーIT対策
スマートデバイスの普及に伴い、システム部門の承認を得ずに個人やグループ単位で会社非公認のITツールを利用することが増えており、これは「シャドーIT」問題と言われています。シャドーITには情報漏えいやウイルス感染等をもたらすリスクがあるため、シャドーITへの対策は多くのシステム管理者にとって悩みの種となっています。
なかでも問題視されているのが、個人がプライベートで使用しているSNSを業務連絡用として利用するケースです。その対策として企業向けにセキュリティや管理機能が強化されたビジネスチャットを導入し、仕事における日常のコミュニケーションツールとして活用を進める企業が増えています。
緊急時の状況確認
緊急時だからこそ日常的に使用しているツールが活躍します。普段使用しているツールであれば、使い方を意識することなくすぐに反応することができ、スピーディな初動対応につながります。また、送信されたメッセージを誰が読んだか分かる既読確認機能を備えているビジネスチャットであれば、読まれたかどうか確認する手間を省くことができます。
ビジネスチャットの利用シーン
仕事でのコミュニケーションで様々なメリットが考えられるビジネスチャットですが、オフィス以外に仕事のどのようなシーンで利用できるのでしょうか?具体的な利用シーンをご紹介します。
外出先やサービス業の現場
近年利用が拡大しているビジネスチャットは、そのほとんどがスマートフォンに対応しています。スマートフォンでの利用に最適化されたビジネスチャットであれば、パソコンが使いにくい、外出先やサービス業などの現場での利用に力を発揮します。状況が刻一刻と変わるような現場では、スマートフォンさえあれば同じ店舗・拠点内の人はもちろん、取引先に対して、画像や動画を活用しながら密に連絡をとることができます。また、なかなか返信できないような場面でも既読確認機能があれば、読まれたかどうかを確実に把握できるため安心です。
営業、顧客のアフターフォロー
個人としてはチャットでのコミュニケーションが当たり前になった今、電話はかけてほしくない、メールはなかなか見ないというお客様も多いのが実状です。確認と返信が手軽にできるチャットであれば、お客様の都合にあわせたコミュニケーションが可能で、営業ツールとしても適しています。また、チャットであれば細かなことでもやり取りしやすいため、メールでは聞けなかった話も聞ける可能性があったり、調整ごとを円滑に進めることができたりするメリットがあります。コミュニケーションのハードルが低くなることで、顧客との距離感をグッと縮めることができます。
サポート対応
仕事において専門知識が必要になるシーンは多いですが、各地の現場や質問したい社員の数に対して専門知識を持つ社員は少数である場合が多いと思います。ビジネスチャットであれば、専門社員への問い合わせ専用ルームを作ることで、すばやく手軽に問い合わせることが可能です。電話での問い合わせは迅速である一方、1対1でしかやり取りできない、記録が残らない、電話回線を専有してしまうといったデメリットもあります。チャットであれば1人で複数の問い合わせに並行して対応することができますし、記録に残るので同じ疑問を持つ人への共有も簡単です。
アルバイト、パートスタッフへの連絡
同じ職場で働く以上、アルバイトやパートスタッフとのコミュニケーションが必要になる場面も多いはずですが、コミュニケーションツールが社員にしか導入されていないケースは少なくありません。結果として、プライベートな連絡先を聞くなど、非効率なやり取りを強いられている現場責任者は多いのではないでしょうか。ビジネスチャットであれば、プライバシーを考慮しながら、誰とでも手軽にコミュニケーションできます。職場ごとのチャットルームを作ることで、複数のアルバイトやパートスタッフへの連絡を効率化することも可能です。
リモートワーク・テレワーク
離れた場所にいる相手とコミュニケーションをするシーンで、電話やメールを補完するツールとしてチャットは有効な手段です。離れていてもチームの会話が共有でき、必要に応じて同じ会話に参加できます。メールと比較してちょっとした会話をしやすいため、ひとりで仕事をするような状況で抱きがちな疎外感を防ぐことができます。
内定者・新入社員のフォローアップ
新しい生活と環境の変化に適応する必要のある内定者や新入社員のフォローアップは立ち上がりの支援や長期的な育成といった観点から非常に重要です。また売り手市場の現在は、複数社から内定を獲得する学生が多く、入社までの継続的なコミュニケーションが入社意向を高める上で重要な要素となっています。ビジネスチャットであれば、コミュニケーションのハードルが低いため、人事部門に対してメールや電話をするほどではないことも問い合わせやすく、学生にとって大きなメリットがあります。また企業にとっても、なかなか見てもらえないメールとは異なり、既読確認機能とあわせて重要な連絡事項を伝えるのに有効な手段となります。
仕事をこえた仲間づくり
プライベートなことや業務に直接関係しないことをやり取りしたい、職場の枠をこえたコミュニケーションがしたい場合にもチャットが活躍します。例えば、ワーキングマザーであれば、同じ職場のメンバーや上司には相談しにくいが、仕事と家庭を両立するノウハウや育児に関する悩みを共有したいといったニーズがあるはずです。そのほかにも同期やクラブ活動、研修グループなど横のつながりの醸成に最適です。
ウイルス・マルウェア対策
企業が対策すべきウイルスやマルウェアへの感染経路のひとつとして、外部からのメールがあげられます。社員が日々膨大なメールを受信していると、ウイルスやマルウェアが含まれていても大量のメールに紛れてしまい、判別できないリスクがあります。ビジネスチャットをメールと併用し、社内のコミュニケーションをビジネスチャットで代替しながらメールの総量を減らすことで、不正なメールを判別しやすくなります。
チャットボットによる単純業務の代替
チャットによって様々な作業をプログラムに実行させることができるチャットボットの活用は、ビジネス領域にも広がりつつあります。チャットボットと既存の業務システムを組み合わせ、経費精算や営業日報、ヘルプデスク対応といった日々の単純業務の一部をチャットでの簡単なやり取りのなかで完結させることで、社員の業務負荷を下げることが期待されています。
自社に合ったビジネスチャットの選び方
様々なタイプのビジネスチャットが存在している今、どのような観点から選定すればいいでしょうか。自社に合ったビジネスチャットの選び方をご紹介します。
使いやすさ
どんなに多くの機能を搭載したビジネスチャットでも、現場に浸透しなければ何の意味もありません。現場のユーザーにとって使いやすいかどうかは、現場での利用率はもちろん、その先に見据えた導入効果に直結する重要な判断要素です。
機能はカタログでも把握できますが、使いやすさは実際に使ってみないと分からないところ。そこでトライアルとして、現場での使いやすさを検証することをおすすめします。その際には導入を担当するシステム部門だけでなく、実際のユーザーとなる現場の人に使ってもらい、その声に耳を傾けることが重要です。
スマホ対応
ビジネスチャットのメリットを最大限活かし、仕事の現場でのコミュニケーションで活躍を期待するのであれば、スマホ対応しているかどうかは重要な判断要素となります。アプリが提供されていることはもちろん、使いやすさや安定性に加え、パソコンで利用できる機能と比べて、スマホで利用できる機能に制限がないかどうかも確認しましょう。
機能
ひと口にビジネスチャットといっても、提供している機能はさまざまです。サービスによっては、チャットを中心に音声/ビデオ通話、アドレス帳、掲示板など、多様な機能が提供されています。機能の数ではなく、自社にとって必要な機能が備わっているかを見極める必要があります。
セキュリティと管理機能
サービスによってセキュリティ性や提供されている管理機能は当然異なります。また、同じような管理機能でもサービスによってできることに細かい違いがある場合があります。サービスとしての使いやすさだけでなく、そのサービスが自社のセキュリティポリシーや管理方針に対応できるどうかは、自社のオペレーションを考慮した上で慎重に検証する必要があるでしょう。
拡張性
サービスによってはAPIを公開しています。APIを活用して外部サービスとの連携やプログラム開発を行なうことで、活用の幅を広げることができます。APIを活用してチャットボットの開発が可能なサービスもあります。専門的な情報は一般向けのウェブサイトで公開していないことも多いため、関心があれば技術ドキュメントも含めて確認してみると良いでしょう。
サポート体制
日々のサポート体制や障害発生時の対応は、サービスを長期的に利用するにはとても重要なポイントです。ウェブサイトに記載されている情報はもちろん確認すべきですが、実際にトライアル利用するなかで確認してみるのもいいでしょう。もし検討しているビジネスチャットが海外のサービスであれば、日本で適切なサポートが提供されているかどうかも重要な判断要素になります。
外部機関による認証
サービスの安全性を確認する上で、外部機関による認証の取得状況は重要な評価要素のひとつとなります。なかでも情報セキュリティの国際的な認証であるISO 27001/27017/27018やSOC2/SOC3に対応しているかどうかは、クラウドサービスのセキュリティに関する一定の判断基準になります。
費用
クラウドサービスとして提供されているビジネスチャットは、いくつかのプランごとに月額もしくは年額の単位で料金が設定されるのが一般的です。また、ひとりあたりの料金設定になっていることも多いため、導入段階に応じて購入することで費用の最適化が期待できます。初期設定費用やオプション費用などを含め、サービスの料金体系が自社の導入計画や使い方に適しているかを検討しましょう。単純な費用に加え、費用に対して妥当な導入効果が見込めるか検証することもおすすめします。
おわりに
プライベートのコミュニケーションでチャットが広く普及した今、仕事のコミュニケーションにおいてもチャットツールの必要性が高まるのは当然の流れだといえます。ビジネスチャットは、業務効率化やコミュニケーション活性化に期待できるツールとして今後も各企業で導入が拡大することが予想されます。
また、スマートフォンで手軽にコミュニケーションができるビジネスチャットは、オフィス内にとどまらず外出先や移動中、サービス業などの現場での活躍が期待できます。特に多様な働き方をしている社員がいる企業において、いつでもどこでも誰とでもコミュニケーションできる場が提供されることは非常に重要です。
本記事でご紹介した情報を参考に、ぜひビジネスチャットの導入を検討してみてください。
- ※ 本掲載記事の内容は投稿当時の情報となり、2022年4月1日に改定された新料金プランとは一部異なる内容を含む場合があります。