伝統のたたら製鉄復興、そして産業化 550年の歴史企業が取り組む地域未来創造プロジェクト

2020.04.14

 

こんにちは。ワークスモバイルジャパン 小寺です。

 

いきなりですが、「たたら」という言葉をご存知ですか?

 

大正時代末期まで行われていた製鉄技術の一つで、古くは縄文時代末から弥生時代のはじめころに大陸から伝わった技術が日本独自の発展を遂げたものだそうです。

 

今回は島根県の550年もの歴史を持つ株式会社田部が進める、伝統(産業)で地域の未来を作るプロジェクトとLINE WORKSを活用した取り組みをご紹介します。

 

550年続く田部家(現:株式会社田部)の歴史

 

株式会社田部は現在、山林事業や外食・特産事業を主な事業としていますがその歴史はとても古く室町時代まで遡ります。

1460年に初代田部家当主の(田辺)彦左衛門が川砂鉄を採取し製鉄をはじめて以来、たたら製鉄を生業とし、江戸時代の1755年には松江藩から鉄師頭取を任命されました。

 

この頃田部家のある奥出雲地方は、たたら製鉄の一大工業地域として全国の鉄流通量の8割を生産していたという記録も残っています。田部家が当時の日本の製鉄事業を大きく支えたと言っても過言ではありませんね。

 

(ちなみに現代でたたらと言えば、刀の原材料である玉鋼を製造する技術として時代劇やアニメによく出てきますが、もともとは農具や工具など生活になくてはならない道具を作るための産業でした。)

 

↑鍛冶仕事の様子

 

江戸時代が終わりを迎えると、開国を機に海外から洋鉄技術が日本へと渡り世の中が大量生産へ移行し、大正末期にたたら製鉄は終焉を迎えました。田部家はそれまで生業としていた製鉄業から、所有していた広大な山を活用した山林事業や、たたら製鉄で培われた木炭製造事業へと転換していきました。

 

当時は事業の大転換を迫られることとなり大変な苦労もありましたが、その後も田部家は地元の経済を支えるべく、新聞社(現:山陰中央新報社)やテレビ局(現:山陰中央テレビ)などのメディアや、外食産業など事業を多角化させていき、1992年に「株式会社田部」へ社名変更、現在に至ります。

 

↑現在も株式会社田部の事業は山林事業や特産事業など多岐にわたる

 

「たたら製鉄」を中心とした経済圏の発展と地域未来の創造

 

先にご紹介した通り、明治時代以降たたら製鉄は近代製鉄に置き換わり姿を消していきました。

 

一度消えた「たたらの火」に地域の未来創造と事業化の大きな可能性を見出したのが、株式会社田部 代表取締役であり田部家25代目当主の田部長右衛門氏です。長右衛門氏はこの歴史ある伝統技術を用いた産業を中心に、地域の未来を作る取り組みをスタートしました。

 

大陸から日本に伝わった製鉄技術は原料に鉄鉱石を使うものだったようですが、もともと日本では鉄鉱石の産出が少なく、代わりに目をつけたのが「砂鉄」だったといいます。砂鉄は山や川から採取するため、たたら事業には広大な山野が、またそれを採取する人出が必要でした。同様に、大量の木炭を作る仕事、砂鉄や木炭・土を運ぶ仕事、牛馬の世話をする仕事など、実際に当時の吉田地域(現在の雲南市吉田町)には1万人以上もの人が暮らし、産業を支えていたそうです。

雄大な山中に形成された企業城下町は、今なおその存在感を示し続けています。

 

田部の新しい取り組み「たたらの里づくりプロジェクト」は、たたら製鉄を再び執り行うことにとどまらず、往時の産業を支えた環境や産品・人・技術といった資源を磨いていくところに狙いがあります。たたら製鉄によるものづくり、地域特産品のブランド化、山の魅力化、町並みの活用など、多岐にわたる事業が平行して進められています。

 

それぞれが活発に進み、それに従事する人や交流人口が増えてくると、地域の消費経済の活性化、伝統事(産)業の継承や町並み保全といった面でも地域を守り、再び地域に活気を呼び戻すことができます。

 

「たたら」という文化を中心に、経済圏の活性化と人口減少問題の解決や、古き良き日本文化の継承、保全という側面から地域の未来創造へ挑んでいます。

 

田部家には代々常に新しいことに挑戦する風土があるそうです。
この地域の未来を見据えた、伝統と新たな要素が融合した新しい取り組みも、田部家に伝わる「教え」から生まれたのかもしれません。

 

 

たたら製鉄 その工程をご紹介

 

昨年10月5日〜6日に、伝統技術である「たたら製鉄」を体験することができるたたら操業ツアーが開催されました。

 

後ほどご紹介しますが、株式会社田部とLINE WORKSはICT活用でこの「たたらの里づくりプロジェクト」を推し進めるべく連携をしており、事業を学ぶ目的も含め本ツアーにLINE WORKSのスタッフも参加、実際のたたら製鉄を体験させていただきました。たたら製鉄の工程を当日の写真でご紹介します。
※たたら製鉄は、一昼夜の連続操業で執り行われます。

 

・事前準備
たたら吹きを実施する前段階の準備として、炭を用いた炉床の準備や内釜形成などの工程があります。(ツアー工程にはありませんでしたので写真資料でご紹介します)

 

↑炉づくり、内釜設置の様子

 

・午前9時 火入れの神事

 

操業前に、たたら操業の無事を祈る神事を、厳かな雰囲気の中で執り行いました。

 

・木炭投入

 

燃料となる木炭を炉にくべ、炉の温度をおよそ1300℃まで上げていきます、物凄い火力です。

 

・午後2時 砂鉄投入開始



翌朝まで1トンを超える木炭と500kg以上の砂鉄を交互に投入していきます。


・ノロ出し

 

溶けたノロ(鉄滓)を炉から出す作業です。砂鉄に含まれる不純物をノロといい、最初に取り出されるノロは初花と呼ばれてます。

 

・翌朝9時 鉧(けら)出し

 

多くの人に見守られながら、炉を上げて完成した鉄の塊(鉧)を取り出します。一昼夜操業に従事した方々にとって感動の瞬間です。

 

今回のツアーで体験させていただいた工程はここまで。出来上がった和鐵(わてつ)は様々な製品へと鍛えられます。

 

LINE WORKSを使った社内事業連携〜支援組織の立ち上げ

 

現在株式会社田部には特産事業部や山林事業部、たたら事業部などいくつかの部門があります。
従来は事業部ごとに独立した業務形態でしたが、このたたら製鉄を中心としたプロジェクトがスタートし事業部間連携の必要性が高まってきたため、コミュニケーションハードルを下げつつ活発な連携を実現する目的で、LINE WORKSの活用を予定しています。

 

たたら事業部と特産事業部や山林部が連携することで、たたら事業に必要不可欠な資材としての山林の活用や、将来的なたたら製鉄のブランディング戦略面での連携促進のような相乗効果の創出を目指しています。

 

またこのプロジェクトに賛同する社外の支援者やステークホルダーを組織化することも検討しており、そのコミュニケーション基盤としてLINE WORKSの活用も視野に入れています。企業と支援者、また支援者間でコミュニケーションが活発になることでさらなるイノベーションが生まれる事を期待しています。

操業ツアーにて、株式会社田部 代表取締役社長であり、田部家二十五代目当主である田部長右衛門氏との記念撮影をさせていただきました。

 

↑左:株式会社田部 代表取締役社長 田部長右衛門氏 右:ワークスモバイルジャパン 廣瀬

 

お知らせ

 

2020年5月22日〜24日の3日間、
たたら製鉄を体験できるイベント
「田部家のたたら吹き 春季操業」が開催されます。
参加者が自分たちで育てた和鐵(わてつ)を使った
包丁やパターなども記念品としてプレゼントされます!
詳しくは下記SNSアカウントやWEBサイトを
ご覧ください。

 

Instagramにて情報発信をしています!
▼詳しくはこちら▼
https://www.instagram.com/okuizumomaewataya/?hl=ja

 

田部家のたたら吹き [春季操業]
開催日程:2020年5月22日〜24日(2泊3日)に予定されておりましたが、現在の情勢を鑑みて延期となりました。詳しい情報に関しては、上記 SNS等で発信してまいります。
催行地:島根県雲南市吉田町
お問い合わせ:https://www.tessen-tatara.jp/shop/contact

 

こちらからたたら製品の購入もできます!

 

https://www.tessen-tatara.jp/lineup.html

  • ※ 本掲載記事の内容は投稿当時の情報となり、2022年4月1日に改定された新料金プランとは一部異なる内容を含む場合があります。