働き方改革

2017.01.30

近年、日本では長時間労働による過労死や、雇用形態の差異によって発生する処遇の差、活躍の機会や賃金においての男女格差など、働き方に関する社会的問題が多発するようになりました。
上記のような問題を根本から解決するためには、労働者の働く意欲を阻害することなく、多様な価値観を認め、より生産性の高い働き方を考える必要があります。現在、政府を中心に労働環境を改善するため「働き方改革」と呼ばれる計画が推進されていることは、皆さんもよくご存じでしょう。

 

多様な働き方を推進し労働環境を改善することで、生産性の向上、さらには日本経済の再生につなげようと、2017年3月28日に総理を議長とする「働き方改革実現会議」において「働き方改革実行計画」が決定されました。いままさに日本は、働き方改革によって日本の企業文化や風土そのものも含めて変えていこうとしています。

 

働き方改革とは

働き方改革とは、少子高齢化が進む中でも「50年後も人口1億人を維持し、職場・家庭・地域で誰しもが活躍できる社会」を実現するための日本政府としての取り組みです。多様な働き方を可能とすることで、長時間労働を減らし、労働人口を増やすことや、正社員と非正規社員などの格差を解消することを目的としています。
しかし、なぜ働き方改革がこれほどまでに注目されるようになったのでしょうか?その背景について探ってみたいと思います。

 

働き方改革の背景

日本は現在、少子高齢化、生産年齢人口の減少という大きな問題を抱えています。
総務省の人口の推移データでは、2015年の総人口は1億2520万人、そのうち15歳~64歳未満を合わせた生産年齢人口は7592万人で、高齢化率は27%という数値が発表されています。

 

さらに、国立社会保障・人口問題研究所が実施した推計によると、将来的な日本の総人口は、2060年で8674万人にまで減少し高齢化率も40%に到達するとされています。少子高齢化は労働人口の減少を引き起こし、経済成長率を低下させる原因となります。
今後、企業経営を安定化させるためには人口減少時代に対応するための「労働力確保の取り組み」が必要です。

 

http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc143210.html
(出典)2015年までは総務省「国勢調査」(年齢不詳人口を除く)、2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」(出生中位・死亡中位推計)

 

慢性化する長時間労働

人材の確保が困難になった少子高齢化社会で、依然として存在するのが長時間労働問題です。労働力が足りなくなった結果、既存の社員にしわ寄せが発生し長時間労働が慢性化しています。また、日本の高度経済成長期に培われた「頑張れば成果が出る」という価値観から、長時間労働を行うことが美徳とされる考え方も企業には根強く残っています。経済活動が多様化した現代においては、長時間働くことが必ずしも成果に結び付くとは言えない状況です。ですが、上司が帰るまで部下は帰るべきではない、人の何倍も働くことが業績を上げる近道、といった日本特有の価値観が、長時間労働を招く一因と言われています。

 

長時間の労働は心身のバランスを崩し、不調をきたす原因となりえます。社員1人のキャパシティーを超える労働量、精神的プレッシャーを背負うことで結果的に休職、退職となった場合はどうなるでしょうか?会社は有能な社員の労働力を失うばかりでなく、過労による労災などの訴訟リスクを抱えることになったり、「ブラック企業」と世間から名指しされ評判を失ったりすることにもつながります。また長時間労働は、仕事と家庭の両立を困難にし、少子化の原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因となっています。社会的影響度の高い大企業はもちろん、中小企業においても、慢性的な残業や有給休暇取得率の低さなどを「仕方ない」と放置するのではなく、抜本的な雇用環境を見直すことが課題となっています。

 

女性就業率と男女格差の是正

かつての日本では、社会に出た女性は結婚や出産で退職を余儀なくされることが多く、これらのライフイベントを乗り越えて正社員として働き続ける女性はあまり多くはありませんでした。女性の労働人口の割合は、結婚・出産期に当たる年代に一旦低下し、育児が落ち着いた時期に再び上昇するという、いわゆる「M字カーブ」を描くことが知られています。しかし近年では、このM字カーブの谷に当たる部分が浅くなってきています。女性の社会進出が進んだことや、育児休職や短時間勤務制度など、出産後のキャリア継続を支援する制度の普及、共働きによる育児分担などが進んできていると言えます。内閣府男女共同参画局が発表したデータによると、15歳~64歳の女性の就業率は2016年度に過去最高となりました。

 

(出典)男女共同参画白書 平成26年版 http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h26/zentai/html/honpen/b1_s00_02.html

 

女性の就業率が上がり、仕事と育児の両立が当たり前のものとなりつつある一方で、女性のキャリアアップに関する課題も出てきています。女性の管理職雇用については政府が取り組んでいる課題ではありますが、いまだ割合は低く、男女の賃金格差についても解消できているとはいえません。出産から復帰後、負担の少ない補佐的な働き方に変わることによって、出世コースからは縁遠くなるという「マミートラック」の問題や、資質や成果に関わらず女性が組織内で上層部に昇進できない「ガラスの天井」の問題などが取り沙汰されています。これらの原因は一つではありませんが、長時間労働を常態とする旧来型の日本の働き方が、育児と仕事を両立し、さらに組織内でのキャリアアップを目指す上で障壁となっていることは疑いようがないでしょう。結婚や育児をしながら働きつづける将来を見据え、転勤がなく比較的定時に帰りやすい一般職を希望する女性も増えている事実は、現在の日本の働き方を続けながら、女性が仕事と育児の両方を主体的に担うことの難しさを示す一端とも言えます。

 

人材確保が困難な社会で働き方改革を推進する

少子高齢化によって労働力の確保が難しい現代、どんな対策が必要なのでしょうか?これから、ワークライフバランスとダイバーシティに焦点をあてて考えていきたいと思います。

ワークライフバランスの確立

ワークライフバランスは、ワーク(仕事)とライフ(生活)の調和を表すことばです。
仕事において充実感ややりがいを感じながら社会的な義務を全うする一方で、育児や家庭、地域、自己啓発、ボランティアなど、生活のために費やすことのできる時間を創出し、心身ともに健康で豊かな生活を送るための考え方として認識されています。雇用形態を問わず、すべての社員が平等に扱われ個々のライフスタイルに合ったワークバランスを実現できれば、企業としての魅力が増し、優秀な人材がさらに優秀な人材を自然と呼ぶことのできる状況が実現できるでしょう。

 

ダイバーシティの推進

ダイバーシティの推進は多くの日本企業がいま取り組むべき課題です。ダイバーシティとは、幅広く多くのものが存在する様(さま)であり、多様性を表すことばとして利用されています。会社組織においては、多様な人材を柔軟に適材適所で活用していくことを意味します。
あらゆる価値観や性別、国籍、風習など立場の違いを超えて相互理解を深め、ダイバーシティの推進は、さまざまな考え方や意見を取り込むことで、多様化する社会や市場のニーズに即座に適応できる組織を構築・推進していくことを目的としています。

 

ダイバーシティ推進のためには、個人の属性に関わらず優秀な人材を登用し、彼らの働きやすい環境を用意して、パフォーマンスを発揮してもらうことが不可欠です。そして年功序列などの慣習にこだわることなく、成果に応じた評価を行うことで、企業としての価値が高まり、より優秀な人材が企業に集まりやすくなります。

 

ダイバーシティを推進し、多様な人材を社内に抱えておくことは、イノベーションの実現に有利に働くと言われています。消費者のニーズが多様化し、企業間の競争が激しくなった現代においては、均一的な人材だけでは新しいアイデアや革新的な手法を生み出すことが難しくなっています。一例として、「日本人・男性・片働き」といったステレオタイプな人材だけで構成されたチームで、グローバルに通用する生活消費財の新製品を生み出すには限界があるでしょう。異なる属性や背景を持った人材同士が、様々な見地からアイデアを出し、対話を行うことで、組織内からイノベーションを生み出しやすくなるでしょう。

 

スマートワークとは

スマートワークとは、「高い生産性」と「効果的な働き方」を実現する考え方であり、時間や場所にしばられない新しい働き方です。労働生産性の高い働き方として、数多くの企業がスマートワークを導入し、長時間勤務の是正を図っています。
インターネットなどの情報通信サービスが発達した日本では、いつでもどこでも働ける、時間と場所にとらわれない柔軟な働き方として、働き方改革の主要テーマの1つとなっています。

スマートワークはどう実践する? 働き方改革に必要な「効率化」「生産性向上」をどう実現するか

スマートワークという新しい考え方が社会に浸透すれば、どんなことが実現できるのでしょうか?働き方改革における「効率化」「生産性向上」を実現するためにできるアイデアを、具体的な企業の取り組みも交えてご紹介します。

【1】無駄な時間を減らす

会社での1日のスケジュールを見返した時、無駄な時間が発生していないでしょうか?目的なく定例化した会議時間や、メールのチェック時間、報連相の待ち時間、報告のために帰社する時間など、効率化できるポイントが多数見つかるかもしれません。会議や作業時間が本当に必要なのかを見直し、思い切ってやめてみるのも英断です。どうしても必要な場合は、会議時間そのものや待ち時間、メールのチェック時間を短くするために、「会議時間は基本的に30分に設定する」「事前にメールやチャットで意見を出しあってから会議にのぞむ」「外出先からでも報連相ができるツールを導入する」などの方法が取れないか考えてみましょう。

 

【2】情報共有を徹底する

会社全体の生産性を向上させるためには、無駄な時間を減らすだけではなく、業務のスピードそのものを上げる必要があります。スピーディーな業務を実現するには、社員間の情報共有のスピードを上げ、できるだけ早くアクションを取れる体制を整えておくことが大切です。社内で「伝言ゲーム」が発生し、連絡の遅れによる顧客対応の遅れなど、情報の連携ミスによる課題が顕在化している場合は、メールや手書きメモ、電話に加えて、ビジネスチャットや社内SNSなど手軽にすばやくチームメンバーと連絡を取れる手段を用意することが解決策の一つとなります。

 

【3】スキマ時間を活用する

勤務時間の内訳を見てみると、「客先までの移動時間」「電話の待ち時間」「社内会議や次のアポまでの合間」といった細切れの時間が意外と多くを占めていることに気づきます。5〜30分程度の「スキマ時間」では、落ち着いて仕事ができないと思いがちですが、本当にそうでしょうか?スキマ時間にできることは実はたくさんあります。たとえば、メールやチャットの返信や問い合わせ対応、上司への確認や部下への承認など、「他の人が自分の連絡を待っている」状態をできるだけ無くすことで、会社として業務の対応スピードが上がりますし、自分自身の労働時間を短縮することにもつながります。「時間が空いたらコレをやる」とあらかじめ決めておき、ちょっとしたスキマ時間を利用してレスポンススピードを上げることを習慣化できると良いですね。

 

【4】働く場所を広げる

働き方改革の検討を行う際には「制度」「ツール」の他に「場所」を考えることが大切です。オフィスでしか仕事ができない環境であれば、社員は溜まった業務をこなすために外出先から必ずオフィスに戻ってこなければなりませんが、外でも仕事ができるのであれば、移動時間が削減できます。とりわけ現在はICT技術の高まりにより、社外にいても社内と変わらず仕事をするための手段が増えています。オフィス以外の場所で業務を遂行するモバイルワークやテレワーク、本拠点から離れた場所に設置するサテライトオフィスなど、働く場所を拡張して、様々な状況の社員が働きやすくなり、生産性を上げる企業も増えてきました。

 

【5】ユニークな働き方や制度の導入

スマートワークに関する新しい取り組みとして、特定の企業で実施されているユニークな制度をご紹介します。例えば、下記のような取り組みが実際に行われています。

 

  1. テレワーク
    テレワークは、企業におけるICTの活用が進み、働き方改革への意識が高まっている近年、多くの企業で採用されている制度です。テレワークとは、情報通信技術を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を指します。政府が一億総活躍社会実現に向けて策定した「働き方改革実行計画」の中でも、テレワークの普及に向けた導入支援を進めています。具体的には、自宅のパソコンから社内LANに接続し、メールや電話、テレビ会議やチャット、社内SNSなどのICTツールを活用して、オフィスにいるのと変わらない環境で業務を行う在宅勤務制度がこれに当たります。育児や介護などの理由で業務時間に制約がある社員にとって、在宅で勤務できることは、限られた時間・環境下でも成果を発揮出来るという点で大きなメリットがあると言えるでしょう。
  2. 選択型人事制度
    あるソフトウェア開発会社では、2007年より個人のライフサイクルに合わせて働き方が選択できる選択型人事制度を導入しました。現代社会で働く人々は介護や育児、出産、副業などあらゆる事情を抱えています。この会社では、その事情に応じて「時間」と「場所」によって編成された9種類の働き方を選択できるようにしています。この取り組みの結果、人材の獲得数が向上し、離職率が低下したということです。
  3. ダブルアサインメント(1業務2人担当制)
    通常、1つの取引先に対して1人の営業担当者が選任されるところを、2人でペアを組み業務を遂行することをダブルアサインメントといいます。ダブルアサインメントの目的は、ペア同士の知識の共有や組織における連携力の向上、業務における脱属人化、介護や育児と両立できる環境の実現です。1業務2人担当制にすることで、1人の社員が急な用事で休んだとしても同じペアの社員が業務を肩代わりできるため、「自分が休むと、会社全体が困ることになる」といった精神的負担を軽減することができます。まずは、専門性が高くプロフェッショナルな業務からダブルアサインメント化することで、働きやすい組織運営が実現できるでしょう。
  4. がんばるタイム
    ある女性用下着メーカーが始めた取り組みとして、生産性向上を目的とした「がんばるタイム」という制度があります。12時30分~14時30分の2時間は、電話やコピー、立ち歩き、上司や部下への業務確認を全面的に禁止しているため、自分の仕事だけに集中できます。その結果、高いパフォーマンスと集中力を発揮できる環境を作り出すことができ、画期的な新表品の開発にもつながったということです。
  5. 副業許可・支援
    中小企業庁が発表した「平成26年度兼業・副業に係る取組み実態調査事業報告書」では、副業・兼業を容認している企業は全体の14.7%となっています。前述のソフトウェア開発会社ではダイバーシティの実現のため、「副業禁止」を改め「複業」を認めました。また、複数の企業を掛け持ちして働く「複業人材」を開始し、話題を集めました。複業を認めることで、これまでリーチできなかった多様な人材に出会えるようになり、離職率の低下や会社としての成長につながったということです。
    出典:平成26年度 兼業・副業に係る取組み実態調査事業報告書
    http://www.chusho.meti.go.jp/koukai/nyusatsu/2016/161128kengyo1.pdf

 

スマートワークを実現するうえでの懸念と解決策

ここでは、業務の効率化と生産性の向上を目的としてスマートワークを実現するに当たり、従業員や管理者・経営者が感じる可能性がある懸念点と解決策を見ていきましょう。

従業員が抱える懸念とその解決策

【1】プライベートと仕事の線引きがあいまいになる

スマートワークを導入することにより、時間や場所にとらわれることなく業務を遂行できるようになります。そのため、プライベートと仕事の線引きがあいまいになり、自宅にいながら業務のことを考えたり、業務時間外にも上司や顧客からの連絡に対応せざるを得ないのではないか、と心配になったりするかもしれません。
そのような懸念に対して、スマートワークを導入した企業では、業務時間外には連絡をしない、業務時間外の連絡には対応しなくて良いなどのルールを事前に規定することで対応しているケースがあります。また、勤怠報告や業務連絡を社内SNSなどで手軽に行うことができるようにし、個人のツールを使わせないようにすることは、プライベートとの線引きを明確にする効果があります。

 

【2】長時間労働が助長される

スマートワークを推進する場合、むしろ長時間労働が助長されるのではないかという懸念があるかもしれません。労働を効率化するために導入した新しい働き方が長時間労働を招いては本末転倒です。むしろ、これまで職場にいなければできなかった業務が外出先でもできるようになったり、待ち時間がコミュニケーションツールで短縮されたりすることにより、長時間かかっていた業務を、より短時間で効率的に行えるようになることが想定されます。働き方の柔軟性が高まることで、時間外労働をする必要が減り、長時間労働の抑制につながると考えられます。

 

【3】チームワークが低下する

スマートワークを導入することにより、顔を突き合わせてコミュニケーションすることが減り、上司と部下の上下関係や社員同士の信頼関係が希薄になるのではないか、という懸念があるかもしれません。これは本当でしょうか?確かに旧来の日本組織におけるコミュニケーションは対面が基本であり、「顔を合わせて、空気を読みながら会話をする」ことを良しとする文化がありました。一方で、その場にいないと状況がわからず空気を共有できない、その場にいても周囲と異なる意見を言いづらい、といった課題があったことも事実と言えます。スマートワークを導入するということは、全員が同じ場所に集まって会議をする代わりに、テレビ会議を利用してディスカッションを行ったり、チームのチャットルームで外出先や在宅から情報共有や報告・連絡・相談を行ったりするということです。対面に比べると、その場にいないメンバーもディスカッションに参加できる、言いづらい意見もチャットであれば話しやすい、といったメリットがあります。これらのメリットは、メンバー間のつながりを強くし、チームワークの向上に役立つものといえるでしょう。

 

管理者・経営者が抱える懸念とその解決策

【1】労務管理が困難になる

スマートワークを導入することで、社員の業務の様子が把握しにくくなり、労務管理が困難になるという懸念の声があります。確かに、社員がどこで何をしているのか全くわからないという状況であれば問題です。これを避けるためには、各自の業務の透明化と連絡の簡便化が重要になります。グループウェアなどを導入し、カレンダーで日々の業務予定を共有すると、いつ誰がどんな業務を行っているかを透明化することができます。また、メールよりも連絡が手軽なチャットであれば、こまめに状況を報告することができるので、各自の状況が把握しやすくなるでしょう。その他に、メールやチャットなどの送信履歴を記録することと、記録していることを社員に伝えることなども不適切な業務の抑制につながります。

 

【2】情報漏えいリスク

いつでもどこでも働くことができるスマートワークの導入により、機密情報が外部に流出するのではないかという懸念を抱く情報システム担当者は多いものです。クラウドサービスを利用すると、パソコンやスマートフォンなどの端末にデータを置いておくのではなく、安全に管理されたサーバーにデータを置いたまま、必要な時にのみ情報を取得することができます。端末にデータを残さない仕組みや、端末の紛失や盗難時に遠隔操作できる便利な仕組みが提供されていますので、クラウドサービスの導入により、情報漏えいのリスクはむしろ下げることができるといえるでしょう。

 

スマートワークを実現するために

働き方改革としてスマートワークを実現していくためにできる、制度やプロセスの見直し内容をまとめました。

  • 社内規則・ガイドライン…既存の制度やルールの抜本的な見直し。
  • 人材採用・育成…多様な人材の採用・配置や育成方法の検討。
  • 人事評価制度…働き方の多様化に順応した人事評価へのシフト。
  • 勤怠、労務管理…柔軟な労働環境の整備と勤怠管理方法の見直し。
  • 指揮命令系統…離れた場所で行う業務に対応するための新しい指揮命令の仕組みづくり。
  • 意思決定プロセス…全体の意思決定をスピードアップさせるためのプロセスとツールの整備。
  • 組織内での情報共有…グループウェアやビジネスチャットの導入などによる、情報共有方法の整備。
  • 会議体ガイドライン…様々な働き方に応じたテレビ会議、WEB会議の推進や、会議室予約システムの整備などICT技術を利用した、具体的なガイドラインの選定。

 

セキュリティに配慮したBYODの導入

最近のデジタルデバイスは機能性や使い勝手が格段に向上したため、私物の端末のほうが、会社で支給される端末より性能が勝るという場合があるかもしれません。生産性の向上や端末購入におけるコストの削減といった背景もあり、社員が持つ私物の端末を、業務に利用することを許可するBYOD(Bring Your Own Device)という考え方が広まっています。

しかし、BYOD推進においてはセキュリティ面での考慮が必要不可欠です。万が一、社員が業務に使っている私物の端末を紛失・盗難した場合に備え、MDM (Mobile Device Management) などの管理の仕組みを導入することや、端末にデータを残さず遠隔からアプリの利用を禁止させることのできるクラウドサービスの導入を検討すると良いでしょう。

 

コミュニケーションツールの活用・見直し

スマートワークを導入する観点で、コミュニケーションツールの活用は必要不可欠といえます。情報共有のスピード向上や社員間のコミュニケーションの活性化にはビジネスチャットや社内SNSの活用が役に立ちます。また、グループウェアを導入することで、離れた場所から業務の状況を共有し、コラボレーションを行うことができるようになるでしょう。これらのコミュニケーションツールをすでに導入しているという企業も多いですが、使い勝手やアクセス性がきちんと担保されているケースは意外に少ないものです。社内からしかアクセスできない、オンプレミス(企業の自社所有設備)なので外出先からはレスポンスが遅くて使い物にならない、使い方が難しくて一部の社員しか使っていない、という状況に陥っていませんか?会社全体の業務効率を上げるためには、すべてのスタッフがいつでもどこでも簡単に扱うことができることを前提にコミュニケーションツールを整備したいものです。

 

おわりに

労働力不足や長時間労働、男女間の社会進出格差、介護や育児と仕事の両立など、現代の日本社会はさまざまな問題を抱えています。社会がグローバル化・多様化し、旧来の日本の働き方を続けていても成長が望めない時代になったいま、根本的に働き方を見直す必要に迫られています。

 

近年急激に注目を集めている「働き方改革」という言葉には、ともすると自分には関係のない、政府主導の取り組みという印象が付きまとうのもまた事実です。ですが、スマートワークなどの新しい取り組みに着手し、業務の生産性と効率性を上げていかなければ、成長が鈍化した日本市場で競争に勝ち抜くのは難しいと言わざるを得ません。「働き方改革」を実現する上で、グループウェアやビジネスチャットなどのICT技術を活用することは、企業経営の土台を支える重要な役割を果たすといえるでしょう。

  • ※ 本掲載記事の内容は投稿当時の情報となり、2022年4月1日に改定された新料金プランとは一部異なる内容を含む場合があります。