複数のリユースショップをチェーン展開する株式会社ベストバイ。電話やメールを主体に行われていた煩雑な社内コミュニケーションを改善しようとLINE WORKSを導入しましたが、旧来のやり方に慣れた多くの社員が反発し、期待したようには浸透しませんでした。導入失敗かと思われた矢先、商品の仕入れ担当者が発したトークをきっかけにその有用性が認識され、全社での活用が進展。掲示板やDriveをはじめとするさまざまな機能が自発的に使われるようになり、業務のDX推進に貢献しています。
本事例のポイント
- アナログな職場におけるツール導入の失敗から浸透までのコツ
- メールや電話によるコミュニケーションから脱却
- 仕入れ情報の共有がスピーディになり在庫管理も効率化
- 重いデータをDriveで社員や関係業者へもスムーズに共有
御社の事業内容をご紹介ください。
鈴木さん :
マルチブランドでリサイクルショップチェーンを運営する当社は、総合リユースショップ「良品買館」、ブランドリユースショップ「キングラム」、プロ工具リユースショップ「ツールマン」、家財整理サービスの「きもちもせいり」などを出店。関西圏を拠点に全国で約100店舗(フランチャイズ含む)を展開するほか、EC事業も手掛けています。近年のリユースアイテムはC to Cの直接売買が活発ですが、ブランド品には真贋判定が必要であり、また大型の家電や家具は送料がかさむことがあるため、フリマアプリの普及にもかかわらず、私たちのような専門業者が必要不可欠であることは変わりません。
メール受信箱は大量の情報に重要メールが埋もれ、制作ファイルの重いデータの送受信に時間がかかり作業効率が悪かった
以前はどのような課題に直面していましたか。
鈴木さん :
社内コミュニケーションの大半は、電話かメールで行われていました。各店舗が買い取りや仕入れた商品は、店頭ではなくECサイトやリユース業者向けのオークションで売れた場合もその店の売上として計上されます。そうした売上報告もメールで行っていたため、重要な情報が埋もれてしまうことやタイムリーに共有できない課題を感じていました。
「良品買館」の仕入れ業務を管理する私は、毎日多くの社員とさまざまな情報を共有しています。
上村さん :
私は、各店舗が使うチラシ、ポスター、看板などの販促ツールやWebサイトの制作をディレクションしています。制作物は、以前は各店舗や外注先の協力会社との間で、制作過程のデザインデータをメールやファイル転送サービスでやり取りしていたため、かなりの手間と時間がかかっていました。また、社員の行動予定が可視化されていなかったため、会議を開きたいときに1人1人に電話をして日時を調整しなければならないのも面倒でした。
社員のITリテラシーに差があっても抵抗感がなく、仕事に必要な機能がオールインワンになっていることが決め手
課題解決の手段としてLINE WORKSを選ばれた理由と展開方法について教えてください。
鈴木さん :
以前にも、グループウェアやビジネスチャットを試験的に導入しましたが、社員のITリテラシーに差があり、広く定着しませんでした。しかし、電話やメールの非効率な連絡手段を使い続けるわけにはいかないと考え、効率的なコミュニケーション手段を模索していました。
チャット・スケジューラー・タスク管理とそれぞれ別のツールを併用するやり方では社員が混乱することが目に見えていました。そこで注目したのが、チャットをはじめ多くの機能がオールインワンになったLINE WORKSです。自社の業務に合わせて使いこなすには専門の部署が必要と考え、新たに導入推進チームを発足し、3ヵ月ほどテスト運用を行い、使い勝手の良さを確認しました。LINEに似たUIもあり、社員に抵抗感なく使ってもらえると感じました。
展開時には、改革意識の高い若手社員をリーダーに任命し、トークや掲示板、カレンダーなどの機能を各現場でどのように活用するかを説明するマニュアルを作成し、全社に配付しました。また、各部署のマネージャークラスに向けて説明会を開くなど、万全の準備をして本格運用を開始しました。
万全に導入準備を整えたが、社員からの反発が大きく全く浸透しなかった
現場への展開はスムーズにすすみましたか。
鈴木さん :
ここまで準備をして説明すれば、あとは現場がどんどん使ってくれると思っていたところ、運用開始の日、現場の多くの社員からクレームがありました。
当時、まずは社員間の情報伝達速度を高めたかったので、「社内の連絡はトーク、社外の取引先との連絡はメール」という基本方針や「フロー情報はトーク、ストック情報は掲示板」といった運用ルールを定めたのですが、その意味や意図を現場の社員によく理解してもらえなかったことが原因でした。私と導入推進担当者は各部署を回って、導入の目的や利用方法を改めて説明しましたが、社員からの不満は収まらず、LINE WORKSを浸透させるには相当な時間がかかると感じていました。
当時の現場の様子について教えてください。
中西さん :
「良品買館」の仕入れ業務を管理する私は、毎日多くの社員とさまざまな情報を共有しています。導入と同時に各店舗スタッフとの連絡手段をメールからトークに切り替えるようにしましたが、多くの店舗スタッフから戸惑いの声が上がり、メールによるコミュニケーションは非効率的だと思っていた私自身でさえも、当初はそれまでのやり方を変えさせられることに抵抗感がありました。
たった1つのトークから、「限定商品を仕入れるにはLINE WORKSをチェック」という店長の意識が芽生えた
その後、あることがきっかけで状況が一変したそうですね。そのきっかけと社内の変化について教えてください。
中西さん :
私の部下である仕入れ担当者の1通のメッセージがきっかけでした。私たちは、個人のお客さまだけではなくメーカーや卸会社からの直接仕入れもしています。注目商品が入荷した際に、「良品買館」の各店長が所属するグループに「欲しい店長は、挙手っ!」と部下がカジュアルに案内しました。すると、店長たちがすぐに「○台ください」と反応し、各店長と仕入れ担当者の間で、メールとは比較にならないほどスピーディなやり取りが行われました。
鈴木さん :
この時、多くの店長が、短いメッセージやスタンプだけでコミュニケーションが取れるトークの優れた点を初めて実感しました。こうした目玉商品の仕入れは頻繁にあり『店長が常にLINE WORKSをチェックしていなければ売れ筋商品を仕入れられない』という状況が生み出されました。
LINE WORKS導入後、社内連絡にメールを使う社員もいましたが、これを機にトークを使う習慣が全社に拡大。社員どうしが接客に関するアイデアや気づきをトークで発信し合ったり、業務データをDriveで共有したりなど、LINE WORKSを有効活用する姿勢がおのずと社員に芽生えてきました。
当時の経験から、LINE WORKSをはじめとしたICTツールの導入を成功させるポイントはどのようなことだと感じていますか。
鈴木さん :
現場の反発を招いた原因は、新しいツールの活用を上から押し付けたことでした。全社に強引に導入するのではなく、最初はDXに前向きな一部のメンバーにスモールスタートをさせて小さな成功事例を積み重ねてもらい、それを足がかりにして横展開するべきでした。また、社員が新しいものを楽しむ空気感を醸成することも重要だと感じています。
全店舗への連絡を迅速に、委託会社から相談される査定結果を即時に伝え業務効率の向上に大きく貢献
現在の仕入れや店舗運営の現場におけるLINE WORKSの具体的な活用シーンをお聞かせください。
中西さん :
社員どうしの日常的な連絡は基本的にトークで行い、流れて欲しくない情報は掲示板に投稿するという使い分けが定着しました。
現場に浸透するきっかけとなった仕入れ担当者からの目玉商品の案内は、商品案内専用のグループを作成し発信しています。グループトークはメールと異なり、全店舗の店長たちの反応が分かるため、より効果的なコミュニケーションができます。例えば、仕入れ担当者が案内した商品に繁盛店の店長が反応するのを見て、他の店長からも仕入れが行われるなど、店舗全体で仕入れが活発になるという良い影響も生まれました。その結果、私たち営業部が仕入れ品の在庫をスムーズに管理し、倉庫を効率的に活用できるようになりました。
メールから脱却したことによる最大の収穫は、定型的な挨拶文を抜きにして、短い言葉やスタンプだけで意思疎通できることです。体感として、トークで1通のメッセージを作成するのにかかる時間は、メールより1分ほど短く済むので、毎日20分ほど効率化ができています。
掲示板では、各種の業務マニュアルや盗難品に関する情報など、全店舗で共有すべき情報を保存して、必要に応じていつでも素早く確認できるようにしています。
ほかにも、出張買取業務を委託している社外の担当者のLINEと外部トーク連携でつながり、商品の写真を送信してもらうと直ちに当社の担当者が査定をして金額を伝えるといった使い方もしています。
バラバラだったコミュニケーション手段がLINE WORKSに統一され、手元のスマホからあらゆるデータにアクセスできる環境が整ったことは、業務効率の向上に大きく貢献しています。
販促物の制作管理の効率化や外部の制作会社とのデータの受け渡しの手間の削減を実現
販促物などを制作する現場ではいかがですか。
上村さん :
私の部署には多数の店舗からポスターやチラシなどの制作依頼が寄せられます。以前は、トークで依頼を受けていたのですが、埋もれてしまうことがあったので、掲示板に制作依頼専用のスレッドを用意しました。全案件が依頼順に可視化されるので、より計画性をもって業務を遂行することができます。また、店舗の社員にも依頼状況が見えるので、「今は依頼が集中しているから制作に時間がかかりそうだな」というように状況を察してもらえるようになりました。
新店舗の立ち上げや販促キャンペーンなど、複数の部門や外部のパートナーが連携しながら進める部門横断プロジェクトも、以前と比べて非常にやりやすくなっています。
チラシ制作などを外注する協力会社ともLINE WORKSで、タイムラグなく連絡ができるようにするとともに、作成されたデザインデータはDriveのリンクで共有しています。メールやファイル転送サービスを使っていた頃と比べて遥かにスムーズにやり取りができるようになりデータの受け渡しに要する時間は半分近くに短縮されました。
ほかにも、会議の日程調整時にはカレンダーを活用しています。メンバーの予定を確認して設定できるようになり、1人ひとりに電話をかけて都合を確認する手間がなくなりました。
リマインドや相場情報の通知にBotも活用しているのですね。
鈴木さん :
各店舗のルーティンワークや書類提出期限などを担当する社員のグループに、Botを使って自動通知することで、タスク管理を効率化しました。また、貴金属の相場情報も、各店舗の買取担当者のグループに毎朝通知しています。これにより、タスク管理や情報共有がスムーズになり、業務効率の向上につながっています。
貴金属相場の共有やルーティンワークの期限のリマインドなどにBotによる自動通知機能を活用している
LINE WORKSの活用を今後どのように発展させたいとお考えですか。
鈴木さん :
各部門が必要に応じてLINE WORKSの機能を有効活用し、多数の機能が使われるようになったことで、オールインワンのグループウェアとして定着させるという目標を達成できました。今後はさらに活用度を高めることを目指し、直近では、総務関連の社員からの問い合わせ対応をトークで自動回答する仕組みを構築し、省力化することを検討しています。
【お話を伺った方】
鈴木 克典さん
経営企画、マーケティング、社内DXなどを幅広く担当。LINE WORKSの導入も推進した。
上村 和歌子さん
クリエイティブ・ディレクターとして、ポスターやチラシなど販促物の制作に携わる。
中西 祐希さん
「良品買館」の営業部 部長として、仕入れ、物流、EC、店舗運営などを管理する。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2023年4月当時のものです。