東京都文京区に拠点をおき、公共・民間工事まで幅広く手がける株式会社ビッグルーフは時間外労働の上限規制、通称2024年問題の解決と部門の垣根を超えたコミュニケーションの効率化を実現するためにLINE WORKSを導入。それまで利用していたメール・電話などと比較し、コミュニケーションにかかっていた時間を約30%削減。また、業績を左右する積算に関するやりとりが密になり、売上・利益の確保を実現。さらに、道路交通法改正により義務化されたアルコールチェック結果の記録保存と社用車の運転日報作成・提出にアンケート機能を活用するなど、さまざまな業務の効率化を実現し、DX推進にも役立てています。
本事例のポイント
- 現場にいない担当者ともタイムリーに連携し、売上・利益に直結する積算がよりスピーディに
- アルコールチェック結果と運転日報の提出・保存にアンケート機能を活用し、道路交通法改正に対応
- 協力会社と共に働きやすい環境を構築するため、LINE WORKSをコミュニケーション基盤とした「パートナーシップ制度」を立ち上げDXを加速化
御社の事業内容をご紹介ください。
直井さん :
防水工事の専門会社として1993年に設立された当社は、お客さまから「雨が漏れてこない建物をつくれないか?」とお問い合わせを受けたのを機に建築工事を手がけるようになりました。現在では「人と建物に寄り添う」をスローガンに、総合建設会社として、民間・公共を問わず幅広く建築工事を行っています。部門の垣根を超え、メンバーが得意分野を活かしながら案件に取り組むのが当社の仕事の進め方の特徴です。
これまでどのような業務課題を抱えていましたか。
直井さん :
2024年4月から、建設業界では労働基準法の改正による時間外労働の上限規制が適用されます。これまでの労働環境のままでは対応しきれない可能性もあり、業界全体で乗り越えなければならない重要な課題です。当社ではその2024年問題の解決に向けて『DX推進プロジェクト管理部』を設置し、以前から業務改革に取り組んでいました。その中でまず行うべきだと考えたのがコミュニケーションの効率化でした。以前は部門間の連絡は主に電話やメールで行われており、情報をスムーズに共有することが困難でした。結局は長電話になってしまった後に、急遽現場へ向かうという無駄もありました。
また、DX推進にあたって社内の各部門が抱える課題を把握する必要があり、工事現場の担当者から役員まで、従業員の声を広く吸い上げるためにもチャットツール導入の必要性を感じていました。
佐藤さん :
私が所属する積算部では、設計図や仕様書に基づいて工事現場ごとに人件費や材料費など工事全体の費用を洗い出し、予算を算定して工事を担当する部門に提出する、積算業務を行っています。根拠を持って積算しないと、想定よりも利益が少なかったり赤字になってしまったりする危険性もあります。同じ材料であっても工法によって必要な量は変わるので、抜け漏れの無いようにしっかりと現場担当者と確認することが大切です。LINE WORKSを導入する前は積算部が作成した予算の根拠や意図を説明したり、相談したりするタイミングがなかなか無く、情報共有に時間がかかっていました。
数あるツールの中からLINE WORKSを選ばれた理由と、運用までの経緯をお聞かせください。
直井さん :
建設業界にはITに不慣れな人が多く、LINEと操作性が近いLINE WORKSであればスムーズに定着することが期待できました。トークの他にアンケート機能も各部門の課題を吸い上げるのに便利そうだと感じましたし、初期費用は0円で、運用コストがリーズナブルなのも選定のポイントでした。
導入後はすぐに全社で活発に利用されるようになり、利用を進めていくなかで徐々に運用ルールを検討して、策定したルールは掲示板で周知しました。
LINE WORKSの導入によって社内の情報共有体制はどう変化しましたか。
・複数部門のメンバーが参加するグループで工事の進捗状況や確認事項をタイムリーに共有
・積算部と建築部の意思疎通が活性化して積算がより正確に
・協力会社のLINE WORKSと連携して見積もりをスムーズに依頼・提出
直井さん :
電話やメールでは伝わりにくいこともトークで分かりやすく報告できるようになり、情報伝達のスピードが格段に上がりました。工事現場ごとにグループを作成し各部門の工事関係者に参加してもらっています。現場の写真をグループにアップすればその場で進捗状況を確認できるので、複数の工事を管理するマネージャーの現場を行き来する負担が減りました。また、現場スタッフからの問い合わせや相談にも迅速に回答できるようになったため、問題をスピーディに解決できるようになりました。
工事現場ごとのグループ以外には、全社員が自由に投稿できる「意見交換グループ」を設けており、例えば建築部の従業員が投稿した建築や工事に関する話題を積算部の担当者が確認することで新たな知識を得るなど、知見を広げるための場としても機能しています。
佐藤さん :
早く確認してほしいメッセージがなかなか既読されないときはその人に直接声をかけたり、1対1のトークを送って確認を促したりできるので、伝えたい情報を迅速かつ確実に届けられるようになったと感じています。
LINEのような感覚で文字だけでは表現できない感情のニュアンスをスタンプで伝えられるのもLINE WORKSのメリットです。以前は堅苦しくなってしまった上司への報告も今ではスタンプで返事をもらえるほど和やかな雰囲気で、ちょっとしたことも連絡しやすくなりました。
さらに、積算部と建築部の意思疎通がしっかりとできるようになって、より正確に工事費を把握・管理できるようになりました。LINE WORKSでのコミュニケーションは売上や利益の確保にもつながっていると思います。工事のグループには積算部も参加するため、工事前、着工後もグループ内のやりとりを確認でき、建築部の従業員どうしが積算に関する疑問をめぐってやりとりしていれば、横から「それは図面のこの特記事項に基づいて算定したものです」といった説明もできるようになりました。
協力会社のLINE WORKSとも連携しているそうですね。
直井さん :
当社では、デジタル化を通じて協力会社と共に働きやすい環境の構築を目指す「PJパートナーシップ制度」という独自の取り組みをしています。両社にとって経営の最適化を実現するために、取引の多い協力会社にはLINE WORKSの操作説明会や相談サポートを行っています。協力会社には「LINEのビジネス版」だと説明すればすぐに活用するメリットを理解してもらえます。ひとり親方をはじめ協力会社の規模はさまざまですが、フリープランで手軽に始めてもらえ、当社の従業員のLINE WORKSアカウントと簡単につながってやりとりできるのは便利だと感じています。
佐藤さん :
協力会社にもトークルームに参加してもらい、主に見積もりにかかわる連絡をしています。メールで連絡をするよりもスピーディに見積もりを送付してもらえることが多くなったほか、過去のやりとりをさかのぼるのも簡単になりました。見積もりを依頼してから届くまでに3~5日はかかっていたのが、LINE WORKSに変えてからは1日で済むようになりました。また、協力会社から見積もりについて質問があった際には図面のスクリーンショットに印を付けて送付しています。分かりやすく、かつ手軽に回答できるようになったので、社外とのやりとりも効率化できるのはLINE WORKSならではの強みです。
トーク以外にLINE WORKSのどんな機能をよく使われていますか。
佐藤さん :
私は個人の業務予定をLINE WORKSのカレンダーに登録しており、業務ごとに好みのカラーにカスタマイズして、毎日の予定を管理しています。業務用のカレンダーアプリはシンプルなデザインだったりするのですが、LINE WORKSは自分好みにできるところがお気に入りです。今後はタスク機能とも連携させながら、さらにうまく活用していきたいです。
直井さん :
DX推進部では、現場スタッフ向けに実施した研修の理解度や満足度を確認するために、アンケート機能を活用しています。匿名回答に設定すると受講者からより率直なコメントを得られ、研修が有意義だったかどうかを正確に把握できます。貴重な意見は関係者に公開するなど情報共有にも役立てており、限られた時間でより教育効果の高い研修にしていくためにも、アンケート機能は非常に有効だと考えています。
紙のアンケートで実施していたころは、参加者は記入することに、主催者は集計することに手間と時間を要していました。アンケート機能ならスマホで簡単に回答できるので手書きだったころとは比べられないほど長文の意見を伝えてくれるようになりました。また、回答結果は自動で集計されるので今後の開催に向けてどう改善するか検討する時間を作れるようになり、有意義な研修を増やせるようになりました。
研修の理解度・満足度をアンケート機能でヒアリング。質問用紙を配付・回収する必要がなく、自動的に集計・結果が表示されるので、時間をかけずに受講者の意見を回収できるようになった
アンケート機能は運転日報の作成・提出とアルコールチェック結果の報告にも活用されているそうですね。
直井さん :
当社では社用車の運転日報が毎月100件ほど提出されています。以前は紙の日報を総務部がデータ入力していましたが、その作業は煩雑ですし、未提出の社員に提出を促すのにも手間がかかっていました。LINE WORKSの担当者から「日報もデジタル化すればその課題を解消できる」とアドバイスを受けて、アンケートで回答用のフォーマットを作成したところ、紙の日報より集計が楽になり、総務部の負担が大幅に軽減されました。
また、2022年4月と2023年12月に白ナンバー事業者に対しても、社用車を運転する際にアルコールチェッカーで酒気帯びの有無を確認し、その結果の記録を1年間保管することが義務付けられました。弊社では、運転日報のフォーマットにアルコール数値の入力欄、確認者、確認日時など必要な項目を追加することで、法改正にも柔軟に対応することができました。
LINE WORKSの活用を今後どのように発展させたいとお考えですか。
直井さん :
「2024年問題」のような建設業界に共通する問題や社内の業務課題はまだまだありますが、それらに向き合いながらLINE WORKSをさらに有効活用して、DXを着実に実現しつつ問題解決に向けた取り組みを進めるつもりです。
【お話を伺った方】
直井 優太さん
DXを推進するプロジェクト管理部で、社内の各部署が抱えるさまざまな課題解決に取り組んでいる。
佐藤 あゆみさん
案件の実行予算作成や利益設定を行う積算部で、入札案件等の積算や協力会社への見積もり依頼を担当する。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2024年1月当時のものです。