2008年以来、がん領域の医薬品で国内シェアトップを維持するなど、中外製薬株式会社は医療用医薬品の分野で大きな役割を果たし続けています。コロナ禍でMR(医薬情報担当者)が医療関係者との面会が大きく制限される中、同社は新たなコミュニケーションおよび情報共有ツールとして、2020年7月にLINE WORKSを導入。コロナ禍における医師、薬剤師、看護師のアポイント取得やスムーズな情報共有を実現する上で大きな成果を挙げています。
本事例のポイント
- コロナ禍のスムーズなコミュニケーションに貢献
- オンラインワークショップ運営に活用
- 既読機能による確実な情報提供の実現
御社の事業内容をご紹介ください。
南里さん:
中外製薬は、世界の医療と人々の健康に貢献するというミッションを掲げ、革新的医薬品の開発・製造・継続提供を行っています。私が所属する営業本部 カスタマーソリューション部のデジタルソリューショングループは、医療関係者の皆様にオウンドメディア、ペイドメディアを通じて当社医薬品情報のほか、さまざまな情報をデジタルでお届けする活動を行っています。
これまでどんな業務上の課題を抱えておられましたか。
横山さん:
MRとして、医薬品を適正にご使用いただくため、医師をはじめとする医療関係者の方々に医薬品の情報を伝えると共に、副作用などの情報を収集することが私の役割です。コロナ禍以前は、事前に電話やメールでアポイントを取った上での訪問だけでなく、施設ルールで決まっている曜日・時間帯に訪問することで、直接に先生をお伺いすることも可能でした。コロナ禍で訪問規制が厳しくなり、訪問完全不可・メールや電話を中心としたアポ取得の上でのみ面会可能となった施設が増えているのが現状です。特にお忙しい先生方から、メール返信が期待できないことも少なくありません。
武田先生:
松江市民病院呼吸器内科の外来化学療法室の室長として、抗がん剤治療のお手伝いをしています。これまでは業務終了後に医局の前で待つMRの方々とお話しし、必要に応じて面談の約束などを設定していました。担当MRが別の先生とお話ししているような場合は、「私には用がないんだな」と通り過ぎていたのですが、翌朝「実は先生にも用があったのです」というメッセージと共に資料が投函されているようなことも少なくありませんでした。
コロナ禍以降は、対面での面会ができなくなりました。メールでも連絡はきますが、メールは雑多な情報に埋もれてしまい、チェックしきれないのが実情です。また電話によるやり取りは、こちらが問い合わせしていたことでも診療中は出ることができないため、互いに気を使い合うような状態がしばらく続いていました。
南里さん:
コロナ禍に伴うさまざまな制約は、製薬業界全体で、医療関係者への連絡手段がメールと電話のみという状況を生み出し、先生に連絡が届かなくなるという懸念がありました。感染症予防という観点ではやむを得ないことですが、Web上では得られない自社医薬品の有効性並びに安全性の最新情報提供、そして副作用の情報収集ができない状況は、患者さんのデメリットにも直結します。その改善は、喫緊の課題になっていました。
課題解決のためにLINE WORKSに注目された理由と、導入の経緯を教えてください。
南里さん:
普段からLINEを使っている先生が多いことから、LINEとつながるLINE WORKSであればスムーズな導入が可能であることが第一の理由です。またメールと違い、相手がメッセージを読んだ時点で既読が分かる点も高く評価したポイントの一つです。副作用情報など喫緊の対応が求められる情報を提供する上で、既読が分かることは大きな意味を持つことがその理由です。さらに、管理面ではログが取得できることや、ISO認証による高いセキュリティも重要なポイントでした。導入準備期間は1ヶ月で、研修や社内のQ&Aサイトのほか、イントール、友だち登録など使い方を説明する簡単なアニメーション動画も作成し社内に使用の徹底をいたしました。また活用促進に向け、名刺用にLINEの友だち登録ができるLINE WORKSのQRコードのシールを作成したり、オンライン面談時の背景画像にQRコードを表示する工夫などを試みたりしています。
社内のどういった方々がLINE WORKSを利用していますか
南里さん:
LINE WORKSのアカウント数は約2,400で、MRを中心に医師と情報をやり取りする社員にもアカウントを配付しています。現在はMRを中心に、約1,000名の医師とのコミュニケーションにLINE WORKSを活用しています。アポイント取得やオンライン面談予約、Web講演会の案内などの情報提供、自社医薬品情報の共有がその主な役割です。また当社が力を入れるチーム医療に関するオンラインワークショップの運営にも活用しています。
MRとしてLINE WORKSをどのように医療関係者にご案内していますか
横山さん:
7月にLINE WORKSが導入され、まず私が行ったのは、メールによる連絡がつきにくい先生や電話連絡がいいという先生、そして病院アカウントのメールでやり取りする先生を対象にした個別でのご案内でした。「LINE WORKSでつながることで緊急に必要な情報のリクエストが時間を問わずできます」、「PCを開く手間も省け、場所を選ばず連絡が可能となります」など、あくまで先生にとってのメリットを説明するよう心掛けることで、ほとんどの先生にご登録いただきました。
直接お会いした際や、オンライン面会の最後にQRコードを表示し、それを先生のLINEで読み込んでご登録いただいています。ご登録いただいた後は即座に、「今後のアポはLINEでよろしいでしょうか」「副作用情報をLINEでお聞きしてもよろしいでしょうか」など、質問を投げかけるようにしています。特に患者さんに関する情報は、個人情報との兼ね合いもあり、対面でしか伝えられないというケースも考えられるので、必ずお聞きするようにしています。
医療関係者の方とはLINE WORKSをどのように活用されていますか
横山さん:
いつ既読が付いたかという情報は大きな意味を持ちます。これまでも先生がどの時間なら手が空いているか考えながら連絡を取ってきましたが、なかなか勤務状況が見えにくいのが実情でした。しかし既読になるタイミング、返信の時間を見るとある程度、先生の状況も見えてきます。既読が付いたときや返信が来たタイミングで電話をすると出ていただけることが多く、スムーズに要件に入れることが多くなりました。LINE WORKSと電話をハイブリットに併用しています。
また、個人的には簡単なやり取りでも必ず自分でトークを終えるように心がけています。より近い存在として認識してもらいたいことがその理由です。なにかあったときに、頼ってもらえないことは担当としてなにより悔しいことですからね。
LINE WORKSという新たなコミュニケーション手段は、コロナ禍のアポイント取得に大きな役割を果たしています。電話やメールによる連絡を嫌い、郵送物も基本NGで面会したときしか次のアポイントが取れないという先生にもスムーズに連絡できることはその一例です。また共通の趣味に関連するようなやりとりが気楽にできることで互いの距離が縮められることもLINE WORKSのメリットの一つだと思います。
武田先生:
横山さんから提案があり、私のLINEに横山さんのLINE WORKSを追加しました。電話と違い、時間を問わず内容の確認や返信ができることを知って「それはいいね」と思いました。今はLINE WORKSでやりとりしています。LINEは自分が承認している、知っている人からしか連絡がこないので安心です。
また、私はApple Watchを身につけているので、LINEの通知を手元でさっと確認できることをとても便利に感じています。特に、横山さんはアポイントのリマインドLINEを送ってくれ、忙しい中でも約束の時間を忘れずにすむので、いつも助けられています。
医療関係者と開催するオンラインワークショップでもLINE WORKSは活用されているようですね
岩崎さん:
私が所属するカスタマーソリューション部 チーム医療推進グループは、患者さんに安心安全な医療が届けられるように医療関係者の皆様に価値あるソリューションを提供する取り組みを続けています。そこで私は、チーム医療を推進するための医療関係者同士のワークショップの企画・運営を担当しています。
もともとは全国各地に赴き集合形式で開催していたワークショップでしたが、コロナ禍でいったんすべての開催が中止となりました。オンラインのビデオ会議が再開したのは8月のことです。ワークショップでは、講演の演者やグループワークのファシリテーターとして毎回、4、5名の先生に“役割者”として主催側でご参加いただいていますが、進行が遅れたり欠席者の関係でグループ分けが変更されたりした際には、先生とリアルタイムで情報を共有することが必要になります。オンライン開催においては、参加いただく先生との連絡手段も課題の一つでした。ワークショップ用のWebミーティングツールのチャット機能を使ったり、別ツールを平行して使用することも検討しましたが、そのツールにトラブルが発生した場合や同じデバイスで複数のツールを使うことによる通信への影響が懸念されました。
連絡手段としてスマートフォンが使えないだろうか、と考えていたタイミングで導入されたのがLINE WORKSでした。さっそくトークルームを作成して利用を開始し、スムーズな運営に役立っています。
講演者へのリアルタイムなフォローは重要なポイントです。オンラインワークショップは参加者の反応が見えにくいという問題がありますが、「よかったですよ」などのメッセージをトークで随時送信することは講演者の先生に「心の支えになる」と喜ばれています。長時間の講演でも休憩時間にそういったやりとりができることは、後半の講演のモチベーション維持にもつながります。急遽、欠席者が出たときなど、ワークショップのグループの編成替えも随時LINE WORKSでお伝えできます。スタンプを活用する先生も多く、私自身も先生との距離が一気に近くなり、以前より先生への依頼がしやすくなりました。
また、オンラインのワークショップ運営には別会社のスタッフにもLINE WORKSを利用していただき、外部トークでつながっています。そちらとは随時グループ通話機能を使ってトランシーバーのように進行の状況確認を行なっています。通話をつなぎながら、他のグループトークでやりとりができるので、役割者の先生とのトークや運営スタッフとのトークも並行してやりとりをしています。遠隔にいてもスムーズなワークショップ運営が実現できています。
LINE WORKSの活用を、今後どのように発展させたいとお考えですか。
横山さん:
医療の現場では、医師と看護師の連携がこれまで以上に求められるようになっています。LINE WORKSのトークグループで両者をつなぐことで、その橋渡しができればと考えています。これまで個別に提供してきた情報をグループで共有できるようになれば、伝達がより確実になりますし、ディスカッションもしやすくなるのではと期待しています。
岩崎さん:
コロナ禍の状況が変わり次第、集合形式のワークショップも再開する予定ですが、通常時であってもLINEWORKSによるコミュニケーションは有効です。これまで先生にショートメッセージなどで行ってきた会場までの案内にも、LINE WORKSのグループが役立つと思います。
南里さん:
LINE WORKSはAPI連携もできるため、情報伝達や情報収集の面でいろいろな可能性があります。医療関係者の皆さんを通じて最終的には患者さんの役に立つツールであると確信しており実際の利用状況を分析し、さらなる発展を目指していきたいと考えております。
お話を伺った方
カスタマーソリューション部
デジタルソリューショングループ
グループマネジャー
南里 宜伸さん
医療関係者にオウンドメディア、ペイドメディアを通じて、医薬品情報をデジタルでお届けする活動に従事。
カスタマーソリューション部
チーム医療推進グループ
岩崎 真千子さん
医療関係者に革新的な価値のあるソリューションを提供し、医療の質を上げる取り組みを行なっている。
鳥取 島根支店
島根1室
横山 祐治さん
MRとして地域の医療関係者の方々に医薬品の情報をお届けし、医療現場の情報収集などに従事している。
松江市立病院
呼吸器内科 外来化学療法室
武田 賢一先生
今回、LINE WORKSでMRとのやりとりにご賛同いただいた医師のお一人。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2020年11月当時のものです。
【資料公開】介護・福祉事業者向けLINE WORKS導入事例集
【特別対談レポート:善光会×LINE WORKS】サービス品質・従業員の働きやすさ向上につながるICTの活用-施設経営への活かし方-
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