千葉県のいすみ市小中学校長会では、臨時休校のお知らせなど学校運営に関する重要な情報を市内全12校の小中学校の校長が集う「校長会」へ発信・指示しています。緊急性の高い連絡もある中で、電話の連絡網では情報が全員に行き渡るまでに時間がかかり、メールやFAXでの連絡は、発信後に一人ひとりへ電話で確認をとるという二度手間が発生していました。LINE WORKSの導入後は、発信から1時間以内には全員の既読が確認できるようになり、さらに会議時間が従来から30%短縮されました。
本事例のポイント
- 電話では1日かかった情報の周知が、LINE WORKSでは1時間で完了
- 校長先生どうしがグループトークでつながることで、緊急時の横の連携が強化
- 電話の連絡網、メール、FAXが廃止され、会議時間が30%短縮
- スマートフォンからの情報発信が可能となり、外出先でも迅速な指示・共有が可能に
いすみ市教育委員会と校長会の間では、日頃からどのようなやりとりがありますか?
太田さん :
主にいすみ市教育委員会から校長先生方へ情報発信をしていますが、校長先生方から意見収集を行うこともあります。急な天候不良による休校の指示や登校時間の調整、不審者情報、県から通達される重要な情報の共有など、緊急性の高い連絡もあります。生徒の健康診断に向けての注意事項や、通知表の新様式への意見収集など、学校運営に関する幅広い情報が日常的に交わされています。
横山さん :
近年ですと、生徒の関係者が新型コロナウイルスに感染した際に、生徒本人の出欠席の取り扱いについて校長先生から問い合わせをいただくこともありました。
LINE WORKS導入以前はどのような課題を抱えられていましたか?
太田さん :
以前までは主に電話、メール、FAXで連絡をしていました。緊急時には「緊急連絡網」にそって電話をかけていましたが、口頭での伝達では時間がかかる上、伝言ゲームのようにだんだんとニュアンスが変わってしまうことが課題の一つでした。
メールとFAXは、校長先生方が確認してもらえたかわからないため、「今、メールを流したので確認してください」とわざわざ電話でも念押しをするという二度手間も起きていました。全員の個人用のメールアドレスをメール配信サービスに登録し発信していましたが、いすみ市教育委員会からの一方的な発信のみで、校長先生どうしのやりとりには活かすことができていませんでした。
校長先生から学校の職員、生徒、保護者へと、校長会の先に伝えるべき相手が大勢いるので、教育委員会とのやりとりに時間をかけられないことがほとんどです。正確で迅速な情報共有ができる連絡ツールの導入が望まれていました。
LINE WORKSを導入された経緯と決め手についてお話しください。
太田さん :
いすみ市内の全12校ある小中学校のうち半数は、校内の職員間の連絡用としてLINE WORKSが導入されています。私は昨年度までこのうちのひとつの小学校の校長を務めていました。LINE WORKS導入のメリットがわかっていたので、校長会で抱えていた課題が解決できると確信し導入を計画しました。
まず大きなメリットとして挙げられるのは、グループトークにメッセージを送信するだけで、グループに属している全員へ一斉に情報を伝えることができる点です。情報のニュアンスが変わることもなく、全員が同時に正確な情報を受け取ることができます。
さらにLINE WORKSには既読機能があり、誰が見て、誰が見ていないのか個人単位でわかります。緊急性の高い連絡に対する返信が欲しいときには、未読者のみに絞って電話連絡ができるようになるので大幅な時短につなげることができるのです。
毎年、年度初めの校長会ではメーリングリスト作成のために個人のメールアドレスと、緊急連絡用に個人の電話番号を収集していたのですが、「LINE WORKSの利用に個人情報は不要です。」というメリットをお伝えしたところLINE WORKS未導入の学校の校長先生方からはとても革新的なツールに感じていただけました。
横山さん :
私も2年前までいすみ市内の小学校に勤務しており、その学校でもLINE WORKSを使用していたので校長会でも導入したいと太田課長に相談しました。LINEと操作性が似ているので、どんな方でもすぐに使いはじめることができて導入もスムーズだろうと思いました。
適切なメンバーでトークルームを自由に作ることもできるので、校長先生どうしの横の連携も強くできます。通話機能もあるので、個人の電話番号の交換も不要です。Wi-Fiの環境下であれば通信料をかけずに済むので、一人ひとりの負担も減らせるという期待もありました。
校長会への導入においてどのような工夫をされましたか。
太田さん :
導入方法やメリットを校長先生方へ説明する際は、LINE WORKSの公式ホームページに掲載されている操作マニュアルを参考にしました。スマートフォン版の「かんたんマニュアル はじめ方編」が一番わかりやすく、そのマニュアルからアプリのインストール方法など必要な部分のみスクリーンショットし、一人ひとりのIDとパスワードを記載したオリジナルの資料を校長会で配布しました。
マニュアルに沿って簡単にレクチャーしながら全員にログインしてもらうことができました。このマニュアルがあったからこそ、丁寧に案内することが可能となり導入に踏み切ることができました。
LINE WORKSの具体的な活用シーンと効果をお聞かせください。
太田さん :
まず全員が参加するグループトークを作成し、全体に関わる連絡はすべてそちらへ発信するようにしました。以前は、全員と連絡が行き届くまで時間がかかり、長くて1日かかることもありました。しかしLINE WORKSなら、発信してから1時間後には全員既読になり、周知までのスピードが格段に早くなりました。普段から使用されているスマートフォンに通知が表示されるので、自然と確認してくれるのだと思います。
以前、予定していた展示会の会場が悪天候により市民の避難所に指定され、展示会を延期することになったことがありました。状況をいち早く知った校長先生どうしで迅速な情報交換がなされていました。いつでもどこでも、校長先生方からも全体への発信ができるようになったことで、電話のときに起こりがちな特定の方に情報が溜まることが解消され、よりオープンな情報交換の場となっています。
県から教育委員会へ送られてくる情報の中で緊急性の高いものについては、正式な施行の前に送付された文書を撮影し校長会のグループトークに共有しておくこともあります。
全員が参加するグループ以外にも、地区ごとや小学校のみ、中学校のみのトークグループがあります。例えば小学校のグループですと、次年度に入学してくる児童が対象の就学児健康診断での注意事項などを共有しました。関係者のみに情報発信できるため、情報の振り返りがしやすくなりました。
横山さん :
先日、私と太田課長が出張していた日に、台風の影響でいすみ市の小中学校の休校が急遽決定しました。以前だったら市役所に戻ってから校長先生方に電話をかけて、お知らせ用の文書を急いで作成、と時間がかかっていましたが、LINE WORKSを導入していたため、出張先でも手元のスマホから校長先生方に周知することができました。いつ、どこにいても連絡が取り合える環境が整い、いざというときの安心感が生まれています。
LINE WORKSの導入効果としてどのようなものがありますか。
太田さん :
1回のメッセージ送信で12名の校長先生へ一斉にかつ確実に周知させることができるので、電話の連絡網やFAXとメール連絡は廃止されました。
校長会会議を年に6回ほど実施しているのですが、周知する内容を事前にトークルームに流しておくことで、会議の所要時間がおよそ30%短縮され、所定の時間内に終了させることができています。
異動における引き継ぎについて、どのような工夫をされていますか。
太田さん :
教育関係者は異動の機会が多くあります。私が異動になった際にも引継ぎがスムーズにできるように、校長会のLINE WORKS内では個人名ではなく「学校教育課長」という名前でユーザーアカウントをつくり、それとは別に管理者用のアカウントも作成しています。教育課長としての役務を引き継ぐ際には、アカウントを削除せず新任の方にアカウントのログイン情報を引き継ぐだけで過去のやりとりだけでなく、引き継いだあとのコミュニケーションの開始もスムーズです。
さらに教育課内でもLINE WORKSを運用することになったので、別のLINE WORKSも開設しておりますがLINE WORKSは複数のアカウントを持っていても、マルチログイン機能で簡単に切り替えて使うことができるのが便利ですね。ひとつの端末ですべての仕事を進めることができます。
LINE WORKSの活用を、今後どのように発展させたいとお考えですか。
太田さん :
もし市内12校すべての小中学校にLINE WORKSを導入することができれば、外部トーク連携を活用することで「●●小学校の●●先生」というように先生方ともスムーズなコミュニケーションができるようになります。非対面でも情報共有できる場が増えれば会議の回数を減らすことができるので、業務効率が向上し職員の働き方改革が図れるのではないかと期待しています。
【お話を伺った方】
いすみ市教育委員会 学校教育課
課長 太田昇亨さん
学校教育課学校指導班を主軸におき、校長会を統括する。
いすみ市教育委員会 学校教育課 学校指導班
主幹 横山賢治さん
校長会への連絡役を担いながら、教員の人事に関する業務にも携わる。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2023年9月当時のものです。