地方都市の利便性を高めるべく、小型ジェット機で地域と地域をダイレクトに結ぶ株式会社フジドリームエアラインズ(通称:FDA)は、各地の空港に分散するスタッフ間の連絡を円滑にする目的でLINE WORKSを導入。客室乗務員、運航管理者、その他の部門のスタッフがフライトに関連する重要な情報を瞬時に共有できるようにして、運航の“安全性”と“定時性”を向上させました。また、客室乗務員どうしが業務改善に関する提案をし合ったり、観光地情報を共有したりすることで、お客様に提供するサービスの質も高めています。
本事例のポイント
- 各空港に分散するスタッフがスピーディに情報共有できる環境を構築
- 全従業員の連携を強化し安全運航への意識がより強固に
- 客室乗務員どうしの提案活動が活性化して接客サービスの質が向上
- 電話の取り次ぎが多いデスクワーカーの負担が軽減
FDAは「地域と地域を結ぶ交流の架け橋となる」を企業理念とする航空会社ですね。
清水さん :
リージョナル航空会社(航空交通需要の少ない小都市間の小型旅客機による航空運送)である当社は、2009年6月に開港した静岡空港で2009年7月から運航を開始しました。現在は、静岡空港、県営名古屋空港、神戸空港、福岡空港を主な拠点として、現在全国16都市に就航。定期便を1日最大23路線・90便運航*するほか、チャーター便事業も展開しています。
*2021年夏ダイヤでの実績
FDAにおけるコミュニケーションの重要性と、これまで抱えていた課題について教えて下さい。
清水さん :
航空会社は、運航部や客室乗員部など運航に関わる直接的な部門のみならず、間接部門も含めた社内のあらゆるセクションがかかわっています。また、多数の拠点に分散するスタッフが即座にタイムリーに情報を共有することが重要です。
しかし、従来の主な連絡手段は電話とメールでした。社内電話を受ける社員は多くの場合、担当者ではありませんので、取り次ぐために自身の業務を中断しなければなりませんし、離席している場合は伝言をメモしてデスクに置く手間がかかります。また、メールは定型的な挨拶文を添えるのが面倒ですし、スピーディなレスポンスも期待できません。社員どうしが即時コミュニケーションを図れるようにすることが、以前からの大きな業務課題となっていました。
若尾さん :
運航部門で運航管理業務に携わる私は、フライト前に航路の気象状況と照らして飛行計画を作成し、離陸後は刻々と変化する天候や運航状況を監視しながら飛行をサポートしています。LINE WORKSが導入される以前は、当社の路線のハブ機能を担う県営名古屋空港に勤務する私のもとに、多数の空港の航務スタッフから運航状況等に関する電話が集中していました。また、他の空港に伝えるべき重要な情報を入手したときは、私がその伝達役となるため、電話による連絡業務に追われがちになることがありました。
戎谷(えびすたに)さん :
当社の141名の客室乗務員は、業務改善のための意見交換や、お客様にご案内する就航地周辺の観光情報などを共有することになっています。共有手段がメールだったため、あまり活発なコミュニケーションが図れていませんでした。
清水さん :
業務の効率化のみならず、旅客運送事業において最も重要な“安全性”と“定時性”を高めるためにも、社員間の情報共有が迅速・確実に行われることが不可欠であることから、電話・メールに替わるコミュニケーションツールの導入を検討するようになりました。
課題解決の手段としてLINE WORKSを選ばれた理由と、運用開始までの経緯をお聞かせください。
清水さん :
複数のビジネスチャットツールを比較し、スマホでの操作性に優れるLINE WORKSに魅力を感じました。難しい操作や慣れるまでに時間がかかるツールは、導入しても使われませんし、迅速さを求めることもできないからです。
全社での運用に先立ち、LINE WORKSアプリのインストールやログインの仕方の簡単な説明資料を作成し、全社員にメールで周知しました。操作方法に関する資料は特に用意せず、不明点はLINE WORKSのサポートガイドで調べてもらうよう案内しただけですが、年齢の高い社員にも抵抗なく受け入れられ、社員から操作に関する問い合わせを受けたことはほとんどありません。このことは大半の社員がプライベートで利用しているLINEとUIが似ているLINE WORKSの使いやすさをよく物語っていると思います。
LINE WORKSによって間接部門のコミュニケーションはどのように変化しましたか。
清水さん :
デスクワークの多い間接部門における社内連絡の大半がトークで行われ、迅速・確実な伝達ができるようになりました。急ぎの用事で連絡したいときは、無料の音声通話を利用します。アドレス帳から個々の相手に直接かけられるので、かつて発生していた内線電話の取り次ぎによる業務中断が減り、さらに電話料金の縮減にもつながりました。
運航管理での活用や導入効果はいかがですか?
若尾さん :
トークによって他の空港やさまざまな部門とリアルタイムに情報をやり取りできるようになりました。業務効率化に特に大きく貢献しているのは、リアルタイムで発生したことを多くの関係者へ同時に伝えたいときに、担当者一人ひとりに電話をかけることなく、一斉に周知できるようになったことです。
例えば、当社の定期便が就航している鹿児島空港の近くには桜島があり、その噴火による噴煙は安全な飛行に支障をきたす恐れがあります。噴煙の高さや現地の風向きなどを鹿児島空港の航務スタッフから聞き、その内容を鹿児島へ向かう便の客室乗務員や他の関係者に伝える作業を電話で行っていました。LINE WORKSが導入されてからは、鹿児島空港のスタッフがトークグループに状況を送信するだけで、瞬時に関係者全員に共有されるようになりました。
また口頭のみの電話と異なり、画像や動画をトークと合わせて一斉に共有できることも確実な情報共有につながっています。気象情報に関するウェブサイトを見ながら特定エリアの天候予測を共有する際、確認してほしい部分のみをトリミング機能で切り取って共有するのもLINE WORKSは容易にできます。
連絡業務の負担が軽減したおかげで、自分の本来業務である「飛行の監視」により集中できるようになりました。
飛行中のパイロットは、激しく揺れた地点や航路上の注意すべき気象状況などを、専用のシステムを通じて運航管理者に報告してきます。LINE WORKS導入後は、そのPIREP(パイロットリポート)を整理して掲示板に投稿することで、その航路を飛行する別便の客室乗務員が乗務前に閲覧できる環境も構築しました。
客室乗務員の皆さんは掲示板の確認やノートの投稿を積極的に行っているようですね。
戎谷さん :
客室乗務員は運航前のブリーフィング時に必ずLINE WORKSの掲示板を閲覧します。事前に航路の情報を得ることでパイロットは気象条件の悪い場所に注意を払えますし、客室乗務員は揺れのない時間帯に機内サービスを提供したり、揺れが発生する前にお手洗いの利用をお客様にお勧めしたりすることができます。重要な情報をしっかり共有できることは、安全で快適な運航に直結しています。
また、客室乗務員どうしではグループ機能も活用しています。メールで行われていた意見や情報交換が、メールからLINE WORKSのトークやグループのノート機能に置き換わりました。各自が就航先で出会った食べ物や観光スポット、地域のイベントなどに関する情報を積極的に発信し合い、お客様へのご案内や機内アナウンスで活かしています。
結果として、より活発に意思疎通が行われるようになり、チームワークも強まりました。客室乗務員間の結束力が高まることも、安全な運航につながる要素の1つだと思います。
他の部門ではどのように活用されていますか。
清水さん:
整備機材を管理する部門では、各地域の空港に勤務する整備士どうしが、機材の取り扱いに関するノウハウなどを画像とともに簡単に伝え合えるようになりました。非定期のチャーター便を運航する場合は、その運航に携わる客室乗務員と整備士のリストや、宿泊先を記した手配表を共有するのにもトークを活用しています。
広報宣伝部では、各メディアに取り上げられた当社に関するニュース記事を掲示板にアップすることで、社員がモチベーションを高めるための手段としています。
また、CS推進室に置かれたSNS担当チームは、客室乗務員からトークで送信される機体や就航先の風景などの写真を取りまとめてSNSに投稿することで、航空ファンの方たちに喜んでいただいています。
LINE WORKSの活用を、今後どのように発展させたいとお考えですか。
清水さん :
航空会社には専門性の高い業務が多く、そのための多数の専用システムが整備されています。そのプラットフォームを統一し、連携機能を使ってLINE WORKSからデータを閲覧したりできるようにすれば、個々の社員が本来業務にさらに集中できる環境づくりや効率化を実現できるのではないかと思っています。
【お話を伺った方】
清水 雅人さん
総務業務全般を担当するほか、社内システムの運用管理や、社員間の親睦を深めるための活動にも携わる。
若尾 真由さん
地上運航従事者として飛行計画の作成や、飛行中の航空機の運航サポートを行っている。
戎谷 麻加さん
客室乗務員として、機内の保安業務や機内サービスの提供などを行う。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2021年12月当時のものです。