タブレットPCや電子黒板などの最先端ツールを活用したICT教育に力を入れている、福岡県福岡市の博多高等学校。全教職員が100名以上に上る同校では、校務のスピーディな伝達や教職員間の情報共有をスムーズにするため、機能的で安全に使えるコミュニケーションツールとしてLINE WORKSを活用しています。同校総括教頭の檜垣泰史さんと数学科主任の上田伸さんに、導入前の課題や導入後の具体的な利用シーンについてお話しいただきました。
博多高等学校の教育の特色をご紹介ください。
檜垣さん :
普通科には、大学進学を目標とする進学コース「興志館」と、「ITビジネス」「調理・保育」「ワーキングスペシャリスト」の選択制カリキュラムがある普通コース(キャリアデザイン)を設置しています。ほかに看護科があり、看護専攻科と合わせて5年一貫教育を施しています。キャリア教育にも力を入れながら「知」「徳」「体」「夢」をバランスよく育み、「社会で活躍できる人材」を育成するのが本校の教育方針です。
上田さん :
福岡県内の高校として、いち早くタブレットPCを全教員と生徒に配布するなど、ICT教育も積極的に推進しており、生徒が主体的に学ぶアクティブラーニングも活発です。学業だけではなく部活動に打ち込む生徒も多く、空手道部やバトントワリング部など、全国レベルの実績を誇るクラブもあります。
LINE WORKS導入前の課題と、導入に至った経緯を教えてください。
檜垣さん :
本校の教職員は100名を超すことから、いかに迅速に情報を共有するかが以前からの課題となっていました。また、管理職は全職員のメールアドレスを知っていますが、職員同士がお互いの連絡先を知らないケースがあることも課題でした。さらに、生徒に関して教職員同士が緊急に連絡を取る必要が生じた際、電話ではすぐに応答できないこともありました。
そのような中、一部の教職員同士は必要に応じて自発的に個人のLINEで連絡を取り合うようになっていました。本校ではコンプライアンスの観点から、教職員がメールやSNSで生徒と連絡を取り合うことを禁じています。しかし、学校の管理下にない教職員同士のLINEによるチャットのやり取りから、万一にも生徒の個人情報が流出するようなことがあってはなりません。生徒を守るためにも、迅速な情報共有をするためにも、学校として正式にセキュリティ性の高い高機能なコミュニケーションツール導入の必要性を感じていたのです。そこで、本校および系列の幼稚園や専門学校を統括する本学園の法人本部に相談したところ、安全性の高いLINE WORKSを紹介され、2018年6月の導入が決定しました。
学校でのLINE WORKS導入に際し、特別なルールづくりは行われましたか。
檜垣さん :
教育のICT化に意欲的な本校では、本学園の法人本部が「情報セキュリティハンドブック」を作成して教職員に配布するなど、以前から情報セキュリティ対策に力を入れてきました。企業向けのツールであるLINE WORKSは万全のセキュリティ機能を備えているので、学校側ですでに整備しているルールに準拠すれば、特別なルールを設けなくても問題はないはずだと考えました。ただし、「学年」、「生徒指導部」、「教務部」といった学校としての組織体については、学校側でグループトークルームをLINE WORKS上に作成し、各グループに必ず1名以上の管理職(校長、総括教頭、普通科または看護科教頭)を含めることでコンプライアンス対策としています。またLINE WORKSの導入とともに、教職員が校務に関する連絡に個人のLINE利用を控えるように決定しました。こうした配慮は、保護者とのトラブルを未然に防ぐためにも有効だと思います。
全教職員への展開はどのようなプロセスで行われたのですか。
檜垣さん :
学校の正式なコミュニケーションツールとしてLINE WORKSを利用することになった旨を各教職員にメールで通知し、各自がアプリをダウンロードして運用が開始されました。多くの教職員が学校貸与のタブレットPCとは別に、個人のスマートフォンにもLINE WORKSアプリを入れて、校内・校外のどこにいても利用できるようにしています。
普及まではスムーズに進みましたか。
上田さん :
もともと大多数の教職員がLINEユーザーであったため、LINE WORKSの導入に心理的な抵抗感はありませんでした。LINEで親しんでいる機能やデザインはほぼそのままなので操作に戸惑うこともほとんどなく、導入後すぐに全教職員にとって欠かせないコミュニケーションツールとして定着しています。
LINE WORKSがどんなシーンで活用されているのか、実例を教えてください。
上田さん :
私は時間割係を担当しており、出張や年休などで教員が授業をできない際の調整をしています。これまではサポートしてもらいたい教員と連絡を取るのに時間を要することがありましたが、LINE WORKSなら「何曜日の何時間目に授業をして欲しい」といった依頼がスムーズにできるようになりました。また特定のグループだけではなく、全教職員に情報を発信するのも容易で、部活の試合日程やその結果、勉強合宿など課外活動の様子を瞬時に報告できます。
最近、看護科が海外へ修学旅行に行きましたが、引率の教員が現地での模様を写真とともに報告し、私たちもその状況をリアルタイムに把握できるようになりました。さらに、多くの教職員が個人のスマートフォンにもLINE WORKSを入れていることから、週末に突発的に生じた業務連絡を、月曜日を待たずに共有できるようになっています。
全校のコミュニケーション環境が飛躍的に向上したということですね。
檜垣さん :
全教職員が一堂に会するのは朝礼時だけで、始業後は個々の教職員が校内のどこにいるのか把握することが難しくなります。たとえば会議の予定が急遽変更になるなど、全員に伝達したい事項が発生した際、これまでは職員室のホワイトボードに掲示したり、各教職員のデスクにメモを置いたりしていました。しかし、LINE WORKSで情報を一斉に発信できるようになったので、そうした手間が一切なくなりました。
教職員がどこにいようと確実に情報を通知できるので、保護者から生徒への急ぎの連絡が入った場合、以前のように担任や副担任を探し回る必要もありません。また、授業中に体調を崩した生徒がいれば、学年のグループトークでその情報を共有するなど、生徒保護の観点からもよりきめ細かな目配りができるようになったのも成果の一つです。
上田さん :
LINE WORKSが導入されたことで、どの教職員ともコミュニケーションが可能になりました。必要なときに誰とでもすぐに連絡が取れる体制が整えられたことも、生徒や保護者の安心につながると思います。
校務のさらなる効率化に向け、今後LINE WORKSのどのように活用していきたいですか。
檜垣さん :
運用開始から日が浅い現時点ではトークの利用が中心となっていますが、今後は全職員への告知には、より適したホーム機能の活用も検討しています。ほかにも、スケジュール共有、アンケートなどさまざまな機能が用意されているので、うまく活用することで校務のいっそうの省力化・効率化を進めていきたいですね。
上田さん :
私が活用したいと考えているのがビデオ通話機能です。近年では酷暑に対応するため、1学期の終業式と二学期の始業式が、体育館ではなく冷房の効いた各教室で行われるようになりました。その際、校長の声だけが放送されていますが、今後は校長と全教室の担任教師のタブレットPCをビデオ通話でつなぎ、生徒に語りかける校長の映像を各教室に設置されているプロジェクターを通して映し出すことを検討しています。
LINE WORKSは御校のようにもともと情報セキュリティ基盤の整っている学校でなくても、問題なく活用することが可能でしょうか。
檜垣さん :
LINE WORKSは、多くの人が使い慣れているLINEと同様の操作性と多彩な機能を備えながら、セキュリティ面も万全なのが特長です。本校に限らず、あらゆる学校が教職員のコミュニケーションツールとして、安心かつ便利に利用できるのではないかと私は思います。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2018年9月当時のものです。