広島県福山市に本社を置く宝和ホールディングス株式会社は、社員の公私を明確に分けるため、グループ内の運送会社で個人携帯の業務利用をやめて仕事用のスマホを支給。それを機に、社内の情報共有基盤としてLINE WORKSを導入しました。「給与明細電子化クラウド」とも連携し、毎月の給与明細がクラウド上にアップされるとBotを通じて各社員のトークにリンクを通知、スマホで照会できる環境を構築しました。給与明細を印刷して個々の社員に配布する手間を省き、ペーパーレス化の推進にも役立てています。
本事例のポイント
-幅広い年代が使いやすく奉行クラウドと連携できるLINE WORKSを選択
-写真やテキストで現場の状況を共有できるチャットツールを模索
-気象情報の共有や事故事例を全体に共有し安全意識を高める
-給与計算システムと連携して給与明細のリンクを自動通知
御社の事業内容をご紹介ください。
中岡さん :
当社は広島県を拠点に運送事業を行う宝和運輸株式会社と鋼材の加工・販売を手がける宝和鋼業株式会社、運送と港湾荷役業を行う福山海陸運輸株式会社、グループ内の資産管理などを担う信濃不動産株式会社の持株会社で、4社の経営管理と支援を行っています。
以前はどのような課題を抱えていましたか。
熊谷さん :
グループ全体の社員約190名のうち約120名が所属する宝和運輸には営業所が4ヶ所あります。各営業所と社外にいる乗務員の連絡手段は個人の携帯電話で、運転中は電話に出られないため急ぎの用件を伝えることが困難でした。また、業務中に事故やトラブルが発生した場合は営業所が速やかに対応しなければなりませんが、電話による会話では詳しい状況が把握できないことも少なくありませんでした。
宝和運輸の本社がある福山市には主要な得意先であるJFEグループの拠点があり、当社を含む多数の運送会社が出入りしています。JFEの構内ルールが変更されることがありますので、新しいルールを全乗務員に迅速・確実に周知するために電話以外のコミュニケーションツールを導入したいと考えていました。
ビジネスチャットの選定のポイントは何でしょうか。
來山さん :
乗務員にプライベートと仕事をきちんと分けてもらう必要もあったので、業務用のスマホを貸与し、営業所と乗務員が情報を円滑に共有できるビジネスチャットを運用することにしました。
中岡さん :
給与業務には給与計算システムの「給与奉行」を使っており、最近それをクラウド版に切り替えたので、ビジネスチャットを導入するならシステム連携を行い、毎月の給与明細が発行されたことを社員に自動的に通知したり、スマホから明細を照会できるようにしたいと思いました。以前は、本社で紙の給与明細書を印刷して、1通ずつ封入したものを各営業所の担当者が持ち帰って個々の乗務員に配付していたので、その作業がなくなるだけでもかなりの効率化になることが期待されました。
來山さん :
当社グループには何度も改修を重ねてきたレガシーシステムが多数稼動していることから、抜本的なDXを進めることを計画しています。宝和運輸へのコミュニケーションツール導入や業務のデジタル化を、グループ全体の改革の先駆けにしたいと考えました。
なぜLINE WORKSを選ばれたのですか。
來山さん :
宝和運輸の乗務員は20代~60代までと年齢層が幅広いので、世代を問わずに使いやすいツールであることが条件でした。その観点から、多くの社員がプライベートで利用しているLINEに基本操作が似たLINE WORKSに注目。また、奉行クラウドとも連携できることから導入を決めました。
中岡さん :
「業務用のLINE」と説明すれば、社員が抵抗感を抱かずに受け入れてくれるだろうと思われました。また、運用コストが手頃に感じられたことも選定の決め手となりました。
運用に先立ってどのような導入準備をされましたか。
來山さん :
LINE WORKSの導入後は、まず給与明細書が発行されたことを自動送信するために「給与明細電子化クラウド」とシステム連携させました。そして、社員を煩わせないようあらかじめLINE WORKSアプリをインストールしたスマホを支給。乗務員がスマホを紛失したり盗難されたりした場合の業務データ漏えいを防ぐため、管理者が遠隔操作で画面をロックしたりデータを初期化したりできるMDMも組み込むなどのセキュリティ対策を施しました。操作が簡単なのでLINE WORKSの導入教育は特にせず、簡易マニュアルを作成して配付しただけでスムーズに運用をスタートさせることができました。
LINE WORKSの具体的な活用シーンと導入効果をお聞かせください。
・まずは積極的にトークを送り、見るクセをつけることで運用が定着
・トラブル発生時は電話と併用し写真を共有し、より正確な状況把握
・熱中症や台風予報を全乗務員に周知して対策を喚起
來山さん :
導入後しばらくはLINE WORKSの活用を定着させる目的で、各営業所からトークで乗務員にメッセージをこまめに送り、既読にならない乗務員に電話して確認を促すことを繰り返しました。運用開始から半年ほど経つと乗務員が停車時にLINE WORKSをチェックする習慣がしっかり根づき、トークが長時間未読のままということはほとんどなくなりました。
熊谷さん :
その結果、乗務中の社員への連絡が確実に伝わるようになりました。配送中にトラブルが発生した場合は乗務員が営業所に電話連絡しますが、今は電話に加えてトラブルの様子を示す写真をトークで送信することもできるので、営業所の社員が詳しい状況を把握できます。
グループトークルームを活用することで、乗務員全体への情報周知も簡単にできるようになりました。年間をとおして荷積みなどの作業もする乗務員は、夏場は熱中症になるリスクがあるので、営業所は毎朝その日の予想最高気温をグループに発信し、台風が接近しているときなどは、気象情報にアクセスするURLリンクも送って注意を促しています。
熱中症の予防や安全運転を喚起するため、気温や気象に関する情報を全乗務員に発信
來山さん :
もともと社内には既存のグループウェアがあり、事務担当者どうしはメールで連絡を取り合っていましたが、LINE WORKS導入後は社内のやり取りの多くがトークに置き換わりました。メールのように定型的な挨拶文を入れることなくさっとメッセージを送れ、スタンプ1つで返信できるスピーディさがチャットのメリットです。
現在、会社のホームページをリニューアルしようとしているところですが、制作を依頼している協力会社の担当者のLINE と外部トーク連携でつながることで、より簡単にデータをやり取りできるようになりました。
LINE WORKSの掲示板やアンケートはどのように活用していますか。
熊谷さん :
これまでホワイトボードへの掲示や回覧していた会社からの通達・通知は、既読確認ができる掲示板機能で発信するようになりました。前述したJFEグループの拠点の構内ルール変更なども、掲示板を使えば全乗務員に一斉に知らせられます。運送会社への安全喚起のため、過去にあった重大な労災に関する資料が提供されたときも掲示板にアップ。既読にならない乗務員には営業所の管理者が閲覧を促し安全意識を高めています。
來山さん :
健康診断の胃カメラ検査の希望日を確認するのにアンケート機能を利用しました。各営業所の担当者が乗務員一人ひとりに個別に確かめる必要がなく業務負担の軽減につながったので、今後は社員の意向を確かめたり意見を収集したりするのに積極的に活用していきたいと思っています。
給与明細の電子化や共有はどんなかたちで実現しましたか。
熊谷さん :
LINE WORKSと奉行クラウドをAPI連携させ、毎月の給与計算が完了するとBotを通じて各社員のトークに通知され、スマホから給与明細書を照会できるようにしました。個々の社員に明細書を印刷して配布する手間の軽減や、ペーパーレス化の推進にも貢献してくれています。
LINE WORKSの活用を、今後どのように発展させたいとお考えですか。
來山さん :
運送業務を管理する基幹業務システムは、運行に関する分析データをメールで送信できる機能を備えています。いずれは基幹システムとLINE WORKSを連携させて乗務員にさまざまな運行データをトークで送信できるようにすることを検討中です。業務効率化を図ろうとしてツールの数を増やすとかえって混乱を招くので、情報共有の手段はできるだけLINE WORKSに集約していきたいと思っています。
中岡さん :
当社グループがこれから本腰を入れようとしているDXの推進に際して、LINE WORKSが大きな軸となってくれることに期待しています。
【お話を伺った方】
中岡 与幸さん
宝和ホールディングスの経営管理本部 部長と宝和運輸の取締役総務部長を兼務。
熊谷 隆善さん
宝和運輸の業務部長として購買、労務管理、監督官庁への対応などに携わる。
來山 雅一さん
宝和ホールディングスの経営管理本部でクループ会社のDX推進を主導。
*奉行APIコネクトサービス…奉行クラウドはLINE WORKSと自動連携でき、業務の自動化と生産性向上を促進します。「奉行Edge給与明細電子化クラウド」では、LINE WORKSのトークに給与明細書、保険料改定通知、源泉徴収票など配信を受信できます。
詳細はこちら https://www.obc.co.jp/bugyo-cloud/apiservice/lineworks
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2022年10月当時のものです。