“地域に資する大学”をポリシーに、地域医療への貢献に尽力する三重大学医学部様。実習においては、大学内にとどまらず地域の診療所での臨床実習を実践しています。遠隔地での研修の際に課題となっていた、学生と教員とのコミュニケーション不足を打破するためにLINE WORKSを導入。導入までの経緯や導入後の効果について、三重大学 大学院医学系研究科 家庭医療学 教授 竹村洋典 医師、三重大学 医学部附属病院 総合診療科 助教 近藤諭 医師、三重大学 医学部 名張地域医療学講座 講師 谷崎隆太郎 医師、三重大学 医学部医学科 学生の藤井健人さんにお話を伺いました。
三重大学医学部の概要と、みなさんの役割を教えてください。
竹村教授 :
三重大学医学部の家庭医療学において、学生と研修医の教育や研究の推進や、総合診療科の教員となる人間の養成も担当しております。
国立大学は、「世界と戦うための研究ができる大学」「特色のある分野での研究ができる大学」「地域に資する大学」の3つの枠組みのうち、どれか一つを選ぶ必要があります。三重大学は「地域に資する大学」を選択しており、医学部では実習教育においても、大学の中で臨床実習を行うのではなく、地域の病院や診療所に行って臨床実習を行うという点を重要視しています。学生が学んだことを実際に生かすことができるかどうか、また将来どんな医師になりたいのか、といったことを考える上でも、地域の病院や診療所での臨床実習はとても意義があると考えています。各地域の拠点病院等に「地域医療学講座」があり、そこにも教員がいるという点は、他の大学にはない特徴と言えます。
近藤助教 :
以前は地域の診療所で総合診療医・家庭医として診療しておりましたが、現在は大学病院の外来で同様に診療を担当しております。大学教員として、学生が地域の診療所で総合診療や家庭医療を学ぶサポートも行っております。
谷崎講師 :
名張市立病院 総合診療科の医師として、入院患者の主治医と救急当番、外来、透析回診、初期・後期研修医の指導などを担当しております。それに加えて、三重大学医学部における名張地域医療学講座の講師として、医学生の指導、院外での教育活動なども受け持っております。
藤井さん :
三重大学医学部医学科の6年生で、現在は名張市立病院で3か月ほど臨床実習を行っています。
LINE WORKS導入以前に課題となっていたのはどのような点ですか。
近藤助教 :
地域医療へ貢献する人材を輩出するために、我が大学では地域医療機関での長期研修を実践しています。しかし、どうしても学生や研修医、地域の指導医、そして私たち大学教員との間でコミュニケーションが疎遠になるという課題を抱えていました。
学生は実習先に一人で赴くわけですが、場所が離れており日常的に行き来ができないため、実習中は大学にいる教員と連絡が取りづらくなってしまうのです。医学部の教員は大学付属病院の医師として受け持ちの患者さんの診察などを行っているため、学生からすると電話やメールだと「診察中だったら迷惑をかけてしまう」と、遠慮してしまうのでしょう。
1ヶ月間の実習の場合、研修の中盤となる第2週と最終週の第4週に振り返りを実施するのですが、それだけでは問題や課題の発覚が遅れてしまい、解決するために残された時間も限られてしまいます。
また、研修中のスケジュール変更やイベント告知は学生一人ひとりにメールで共有していましたが、スムーズに情報が届かないことも多く、情報共有の漏れが生じることもありました。
谷崎講師 :
学生や研修医から質問を受けたり、意見を求められたりすることがあるのですが、これまではそういった連絡は電話がメインでした。しかし診察で忙しいと電話に出られなかったり、こちらから折り返したりするのも後回しになり、気づいたら一日が終わっているというケースもありました。
LINE WORKS導入の決め手を教えてください。
近藤助教 :
三重大学医学部では、eラーニングシステムを利用して学生にレポートを提出させたり、学生が制作したプレゼンテーションなどの資料をアップロードさせています。そのシステムに、双方向でコミュニケーションがとれるチャットや掲示板などの機能をプラスできないかと検討しておりました。そんなときにLINE WORKSの存在を知り、まさに我々のニーズに最適なツールだと感じたのです。
LINE WORKSはセキュリティ面でも優れていると感じました。学生たちの悩みも共有することになるので、不特定多数の人間が閲覧できる一般的な個人向けのSNSなどでは不安が残ります。LINE WORKSなら、アカウントが付与された特定の人間だけが見るツールですし、アカウント保持者を我々がしっかり管理できるという点も安心でした。
竹村教授 :
私は理想的な教育環境とは、「いつでも教育が受けられること」だと考えています。地域にたくさんの教育現場があり、各所に指導医がいて、専門知識を持つ教員の意見をいつでも聞ける体制が整っていることがベストです。LINE WORKSは、学生が指導医にいつでも気軽に質問できるので、実際の現場で実習を行いながら学びを深めるという医学教育の理論にマッチした、非常に素晴らしいツールだと思いました。
具体的にどのようなシーンで利用していますか?
竹村教授 :
研修中に学生や研修医が患者の疾患名や治療法を自分だけで判断できない場合、LINE WORKSで我々教員がサポートしています。疾患を決定するために必要な診断の根拠や、一般論なども学生や研修医に適宜教えることができます。指導医がそばにいても忙しそうでは遠慮して聞けないこともあるでしょうし、大学にいる我々に電話するのもためらってしまう学生も多いようです。しかしLINE WORKSなら、学生も気軽に連絡することができます。
また、学生や研修医は研修期間中にストレスをためこむことがあります。患者の命を預かる緊張感のある現場にいるわけですから、当然のことです。そのような環境の中で悩んだときに、LINE WORKSで我々に相談をするよう促しています。もちろんこちらからメッセージを送って、元気づけることもあります。教員と学生とはいえ人間同士ですから、コミュニケーションは大切です。最近はこちらがスタンプを使うと、学生もスタンプを返してくれます。
谷崎講師 :
私は主に画像の共有に活用しています。感染症の診断の際に「グラム染色」という手法で微生物を顕微鏡で見ることがあるのですが、LINE WORKSで顕微鏡の画像を共有してもらえば、学生に対して迅速にアドバイスすることができます。
藤井さん :
患者さんの診察をする際、自分なりに症状について判断をするのですが、まだひとりで自信を持って判断をできるという段階には至っておりません。そのような時に、スマートフォンで患者さんの了解を得た上で写真を撮り、LINE WORKSで指導医の先生にすぐに共有し、所見を得られるのがとても心強いです。
以前の実習ではLINE WORKSが無かったため、わざわざ顕微鏡のところまで指導医の先生に来てもらう必要がありました。また、先生はお忙しいので電話をかけるタイミングも難しかったです。
今はLINE WORKSで連絡を取り合っているので、メッセージが既読にならない場合は「今は忙しいのだ」と判断ができますし、先生の都合の良い時に返信がもらえるのですごく便利だなと感じています。
LINE WORKSは勉強時間や患者さんのことを考える時間を確保できる、素晴らしいツールだと思います。
LINE WORKS導入により改善したと思う点を教えてください。
竹村教授 :
LINE WORKSは複数人で会話できるので、一対一の議論ではなく、いろいろな人を巻き込んでディスカッションすることが可能です。これは電話やメールでは実現しない魅力だと思います。自分の意見に第三者から意見が返ってくるというのは、教育において非常に重要なことです。そういう意味でも、LINE WORKSは教育学的な理屈に合ったツールだと思います。
藤井さん :
チャットで指導医の先生からコメントをいただけると、口頭ではなく記録が残るので、後から見返して理解を深めたり、自分でもさらに調べたりと、復習を兼ねて勉強ができるようになりました。
また、三重大学の先生と二週間おきにLINE WORKSのビデオ通話機能を使って振り返りを行っているのですが、お互いの顔を見て話せるのが良いなと感じています。トーク機能でもやりとりをしていて、メールとは違って堅苦しい挨拶文もなく普段の日常茶飯事のこともメッセージで送れるようになり、相談ごともしやすくなりました。
近藤助教 :
以前は実習期間中のコミュニケーションが限られていたため、学生に対して本当に適切なタイミングでフィードバックができませんでした。LINE WORKS導入後は、個々の学生にとって一番必要なタイミングでフィードバックをできるようになりました。これが一番大きな違いだと思います。
これからの教育に求められるのは、受け身ではなく自発的に学ぶアクティブラーニングです。LINE WORKSによって学生に最適なタイミングでフィードバックやサポートをすることが、アクティブラーニングの実践にも役立つはずです。
LINE WORKSで学生、教員、地域の指導医のコミュニケーションが円滑になり、今後はより素晴らしい教育環境が実現できると思います。
※掲載している内容、所属やお役職は取材当時のものです。
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