長野県上伊那郡飯島町にある「おひさまハウス」は、2022年5月に開設された病児・病後児の保育施設です。人手不足に対処するため、施設の立ち上げ段階からLINE WORKSのフリープランを活用し、保育スタッフ間の迅速なコミュニケーションを確立しました。また、kintoneと連携させ、施設予約を簡便に行うチャットBotを構築。保育施設の開設後には、保護者にもLINE WORKSのアカウントを配布し、予約から受付までがスムーズに行えるようになり、スタッフと保護者の負担軽減につながっています。
本事例のポイント
- LINE WORKSで円滑な連絡体制を整備し、病児・病後児保育施設の開設まで効率的にやりとり
- 施設利用の仮予約ができるシステムをチャットBotで構築し、保育スタッフ・保護者の負担を軽減
- 掲示板を通じて、イベントや子どもとの活動などを施設の「魅力」として発信
病児・病後児保育室 おひさまハウスの事業内容をご紹介ください。
野々村さん:
子育て支援の一環として、病気中であったり病気の回復期にある子どもを、仕事などの都合で看護できない保護者の代わりに一時的に預かっています。対象は、飯島町を含む近隣の駒ケ根市や宮田村など、1歳から小学校6年生までの子どもたちです。施設の収容定員は1日5名で、1人の子どもに対して1人の保育スタッフが付き、ケアを行います。保育スタッフは、看護師や保育士等の資格を持つ6名です。
なお、2022年5月に私と飯島町教育委員会の下平さんなどが中心となって設立して以来、おひさまハウスの利用者数は、令和4年364名、令和5年8月時点で244名に上ります。
LINE WORKSを導入した経緯を教えてください。
下平さん:
2021年秋頃、人手不足が予想される中で業務の効率化が必要という課題意識から、保育施設開設の準備段階からLINE WORKSのフリープランを導入しました。LINE WORKSは、すでに利用したことがあったため利便性は知っていたこと、LINEに操作感が似ているのでITが不慣れな方でも難なく使えると思っていました。
準備段階ではLINE WORKSを主に保育スタッフどうしのコミュニケーションツールとして使用し、備品の整備や職員会議など、さまざまな項目に関するグループを作成して情報共有や共同作業を行いました。
施設運営にLINE WORKSを取り込むことは最初から決めていたため、スタッフを募集する段階で、応募してきたスタッフに対して「LINE WORKSを使用します」と伝えていました。
LINE WORKSの具体的な活用方法および導入効果を教えてください。
【グループ】目的別にグループを作成し、スピーディに情報をやり取り
【掲示板】施設の満室情報や防災訓練のお知らせなどを全体共有
伊藤さん:
目的ごとに複数のトークグループを作成し、コミュニケーションを取っています。例えば、日々の情報交換には「スタッフ」グループを、SNSで施設の情報を発信する投稿内容を共有するには「SNS関係」グループを、そして併設する「のどかクリニック」と連絡を取り合うためのグループや、町との連絡共有の「町との連絡G」などがあります。
準備段階から、グループトークを通じてコミュニケーションを取っていましたので、グループトークは電話やメールに比べてスタッフ全員から早くレスポンスを得られるという利点があります。とくに準備期間はコロナ禍と重なり、LINE WORKSがなければコミュニケーション面でかなり苦労したことでしょう。
野々村さん:
掲示板には施設の満室情報だけでなく、防災訓練のお知らせや子どもたちの作品の紹介など、さまざまなお知らせをSNSのような感覚でスタッフ自ら自由に発信しています。時折、私自身の病児・病後児保育に対する思いを投稿することもあります。
チャットBotを活用した施設予約システムを構築し、保護者の予約受付を効率化されていると伺いました。背景をお聞かせください。
下平さん:
2023年5月からは、病児・病後児保育室の予約受付業務を効率化させることを目的に、業務改善プラットフォーム「kintone(キントーン)」と連携し、LINE WORKSのチャットBotで施設の仮予約をできるシステムを構築しました。そのため、仮予約を行う保護者にもLINE WORKSアカウントを提供しています。
子どもの体調不良は予期しないものであるため、朝に予約の電話が殺到しがちで、保護者は電話がつながるまで待たなければならないことが挙げられます。一方、保育スタッフは、施設側で当日の受け入れ人数が確定するまで、出勤するかどうか待機しなければなりません。このことが病児・病後児保育室の課題となっていました。
これらの課題を解決するために、保護者と保育スタッフの双方にとって便利でスムーズな予約受付手続きを提供するため、チャットBotを取り入れたいと考えました。
予約から施設を利用するまでは、どのような流れになっているのでしょうか?
下平さん:
流れとしては、まず施設を利用したい保護者が、掲示板の満室情報から希望日時が利用可能か確認し、その後、LINE WORKSの「おひさまハウス予約受付bot」から対話形式で仮予約手続きを進めます。仮予約が完了すると、この情報はkintoneを通じて保育スタッフメンバーが入っているグループに自動送信されます。保育スタッフは仮予約情報を確認し、保護者に電話をかけて予約を確定させます。
LINE WORKSを活用した予約システムの効果や、保護者からの反応を教えてください。
下平さん:
スモールスタートで始めた取り組みのため、保護者に提供したLINE WORKSアカウント数は多くはありませんが、電話でのやり取りを削減するなど、業務の効率化に大きなメリットをもたらしています。
また、仮予約情報の通知は保育スタッフのグループに届くので、出勤の可能性が事前に分かるようになり、当日直前になってスタッフを確保する手間が削減されました。なお、待機スタッフに連絡する際にも、グループトークを活用しています。
伊藤さん:
「手続きが楽で便利ですね」と保護者に好評です。一度チャットBotでの予約手続きを行った保護者の多くが、継続してチャットBotを介して仮予約を行っています。
LINE WORKSの利用にあたり、ルールは設けていますか。
下平さん:
保護者にもアカウントを提供しているため、利用者同士やスタッフに直接トークしないように控えてもらっていますが、掲示板については、内容は限定公開の設定にせず、すべて閲覧できるようにしています。これは、保護者にも施設のことをもっと知っていただきたいという野々村先生の思いに基づいています。
今後の病児・病後児保育室について展望をお聞かせください。
下平さん:
現在、病児・病後児保育室の需要は高まっていますが、施設供給が追いついていない現状があります。一方、単一施設のキャパシティを増やすことは難しい。それで長野県では地域ごとではなく、山梨方式として知られる広域での病児・病後児保育の利用促進を望んでいます。その際にも、各地の施設がLINE WORKSを活用すれば、迅速な情報共有が可能になり、効果的な体制を構築できるでしょう。
【お話を伺った方】
下平 英樹さん
飯島町教育委員会事務局のこども室にて、学校関連の業務に携わる。おひさまハウスの立ち上げに参画。LINE WORKSアンバサダーでもある。
野々村 邦夫さん
のどかクリニック院長。おひさまハウスの代表。
伊藤 智子さん
保育スタッフ6名を抱えるおひさまハウスの室長。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2023年9月当時のものです。