全43施設が加盟する沖縄県老人保健施設協議会は、長年利用してきたメーリングリストやグループウェアよりも迅速・確実に情報を伝達するためのツールとして、LINE WORKSを導入しました。上限100名のフリープランを利用しながらも、約400名のスタッフを5つのLINE WORKSに分割して運用するといった独自の工夫によって、組織内のコミュニケーションを活性化。重要な情報を瞬時に共有できる体制を構築するとともに、対面しての意志疎通が困難なコロナ禍で会員どうしの結びつきも深めています。
本事例のポイント
- コストゼロで400名のコミュニケーション基盤を構築
- グループを細分化できないメーリングリストを廃止
- 目的や職種別にグループ分けされ、効率的な連絡や意見聴取が可能に
沖縄県老人保健施設協議会様の活動内容をご紹介ください。
上里さん :
当協議会は、全国の介護老人保健施設によって構成される公益社団法人全国老人保健施設協会の沖縄県支部にあたります。沖縄県にある43の介護老人保健施設が加盟し、看護や介護、リハビリテーションをはじめとする高齢者向けサービスの質の向上を目指し、情報交流や研修等の活動を行っています。
以前はどのような課題を抱えていましたか。
上里さん :
各施設の事務長などが集まっての連絡会を定期的に開いていますが、それだけでは重要な情報をリアルタイムに共有できません。そこで、10年以上前にWebメールを利用したメーリングリストを活用するようになりました。しかしプッシュ通知がなされないWebメールは自らアクセスしなければ受信が確認できず、返信が遅れがちだったり、あらゆる情報が全メンバーに送信されて情報の整理ができませんでした。また、スレッドが日々増えるので、読み返す際に目的の情報を見つけにくいという難点もありました。
神里さん :
その後、無料のグループウェアも導入したのですが、ログインしなければ新着情報を得られない点はメーリングリストと同様でした。やがて個人LINEで連絡を取り合う会員が散見されるようになり、シャドーITの問題を懸念。それまで使ってきたメーリングリストやグループウェアの欠点を補う新たなコミュニケーションツールの導入を検討するようになりました。
課題解決のためにLINE WORKSを選定された理由と、運用開始までの経緯を教えてください。
上里さん :
協議会の予算は潤沢ではなく、コミュニケーション環境の整備にコストをかけることができません。無料で使い勝手の良さそうなツールを探していたところ、会員の多くがプライベートで使い慣れているLINEと操作性が共通し、なおかつ利用料のかからないフリープランが用意されているLINE WORKSに注目しました。プッシュ通知や既読機能によって情報の共有速度がアップすることに期待して、2019年に運用を開始。ICTツールの扱いが苦手な会員もいるので、導入に際しては操作マニュアルを配付したり勉強会を開いたりしてフォローをしました。
利用条件に制約のあるフリープランの活用にあたって特に工夫されたことがあればお聞かせください。
上里さん :
フリープランは100名までしかアカウント登録ができません。当協議会では400あまりのアカウントを必要としたので、フリープランのLINE WORKSを5つ新規開設し「事務局」「看護/介護」「施設ケアマネ/支援相談員」「リハビリ/栄養士」「通所」に分けて運用。それぞれのLINE WORKS間は、外部のLINE WORKSやLINEと連携してやり取りができる外部トーク連携機能でつながり、組織全体がスムーズに情報を共有できるようにしました。
「看護/介護」「施設ケアマネ/支援相談員」「リハビリ/栄養士」「通所」は職種別の連絡会部会として機能しています。ほかにもいくつかの部会があり、それぞれトークグループを構成。部会の1つに、協議会が使うICTツールの運用・管理を担う「IT総務部会」があり、そのメンバーを職種別の4つの連絡会部会に1人ずつ所属させることで、各連絡会部会のメンバーにLINE WORKSの使い方などをアドバイスできるようにしています。
アカウントは基本的に、各施設の職種や協議会の役職に対して発行しています。新しい担当者が就任したときは前任者からアカウントを引き継ぐことで、その都度発行したり削除したりする管理の手間を省けるようにしました。
LINE WORKSの具体的な活用シーンと導入効果をお聞かせください。
【グループ】施設での職種や協議会での役職ごとに情報を交換
【ノート】ストックしておきたい情報を管理
【掲示板】職種別に掲示板を立て、投稿を整理
【アンケート】各施設への意見聴取・集計業務を省力化
神里さん :
LINE WORKSはメーリングリストと違い各自で必要に応じて自由にグループを作成できるので、その情報を必要とするメンバーだけにメッセージを送ることができます。
勤務する施設の事務長でもある私は、当協議会の「事務長会」グループを管理し、老人保健に関して国や県が発信する情報をいち早くキャッチし「事務長会」を通じて各施設に発信する役割を担っています。例えば2022年2月より介護職員の処遇改善を目的とした賃上げが実施されましたが、そうした政策にまつわる情報もあらかじめスピーディに伝達できました。既読機能があり、未読のメンバーだけに別途連絡をすることができるのもLINE WORKSならではのメリットです。
職種別に4つに分けられている連絡会部会のLINE WORKSでは、職務に関する情報だけではなく、各施設における困りごとなどに関する相談も共有され、LINE WORKSに登録されている他の42施設のメンバーからさまざまな助言を得ることができます。そうした相談は以前なら会合時に行われていましたが、2020年以降はコロナ禍で対面する機会が大幅に減少。LINE WORKSはコロナ禍におけるコミュニケーションの溝を埋める役割も果たしてくれています。
沖縄は台風による災害が多いので、地区別に「台風状況・被害報告」というグループも設け、台風襲来時にリアルタイムに状況を報告し合うことでBCP対策の一環としています。
上里さん :
会員間のやり取りは当初トークを主体に行っていましたが、現在はグループのノートを活用するようにしています。
ノートは情報を案件ごとに整理して把握でき、トークのように流れてしまうこともないので、新型コロナ関連のように絶対に見落としてほしくない情報を確実に共有するためにも有効です。
フリープランではトークにアップしたファイルは3年間削除できないという制約があるので、共有したいファイルはノートに添付するルールとしました。必要に応じていつでも削除できるようにすることでストレージが圧迫されるのを回避しています。
ほかにどんな機能を活用されていますか。
上里さん :
協議会からの通達などは、「事務局」「看護/介護」「施設ケアマネ/支援相談員」「リハビリ/栄養士」「通所」に分類した掲示板に投稿することで効率的に周知を図っています。
神里さん :
協議会では職種別の配置人数や賃金など、施設運営にかかわる実態調査を行い、調査結果をフィードバックして施設経営の参考にしてもらっています。メーリングリストを使っていた頃はなかなか回答が得られず、集計作業も煩雑でしたが、アンケート機能を使えばすぐに回答が得られ、結果も自動集計されます。会議等への参加確認も以前よりずっとスムーズに行えるようになり、業務の効率化に役立っています。
LINE WORKSの活用を、今後どのように発展させたいとお考えですか。
神里さん :
もともと沖縄はコミュニケーションが活発な土地柄であることが、当協議会にLINE WORKSが浸透する土台になったのだと思いますが、ICTを活用した情報共有がここまで進んでいる協議会はないのではないかと自負しています。さらに活用レベルを高めていくとともに、全国老人保健施設協会の他の都道府県支部と交流する機会も多いので、LINE WORKSの利用が県外の地域にも広がってくれればと期待しています。
【お話を伺った方】
上里 忠樹さん
医療法人仁会 老人介護保険施設 パークヒル天久 事務長。沖縄県老人保健施設協議会で事務局長を務める。
神里 秀幸さん
社会医療法人友愛会 介護老人保健施設 友愛園 事務長。沖縄県老人保健施設協議会で理事を務める。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2021年12月当時のものです。