山陰地方を拠点に食材の卸事業や自社ブランド品の製造・販売を行う株式会社さんれいフーズ。電話と紙に頼る情報伝達の文化が業務効率化を妨げていると感じ、新たなコミュニケーションツールとしてLINE WORKSを導入しました。松江支店を中心にその活用が広がり、営業社員は朝礼をグループトークで行うなど、多くの画期的な取り組みを実践しています。さらに、事務担当者の電話による取り次ぎ業務の省力化も実現しています。
本事例のポイント
- 連絡業務をデジタル化して電話や紙の文化から脱却
- グループの活用で事務担当者による電話取り次ぎの負担を軽減
- 外部トーク連携機能で得意先のLINE WORKSともタイムリーに情報を共有
御社の事業内容をご紹介ください。
畠山さん :
当社は鳥取県米子市に本社があり、山陰地域と岡山県・兵庫県北部・京都府北部を主な販売エリアとして、業務用食材卸事業を展開しています。外食(レストラン・居酒屋などの飲食店やホテル・旅館)、中食(弁当・仕出し・惣菜)、給食(学校・病院)などの幅広いお客様に対して業務用食材を提供しています。
取り扱う商品は約3万種類で、畜肉・魚・野菜・冷凍調理食品・調味料・米・医療食・飲料・酒類・厨房用品などが含まれます。また、自社ブランド品の製造も行っており、地元である日本海の恵みを活かした水産加工品(カニのむき身など)や調理冷凍食品(カニクリームコロッケなど)を製造し、全国の量販店・問屋・回転寿司店などに販売しています。
以前はどのような課題に直面していましたか。
畠山さん :
お客様との連絡や社内コミュニケーションにおいて、主な手段が電話とFAXであったため、情報のスムーズな伝達と共有が課題となっていました。特に商品の販売や在庫移管に関連する伝票類は社内の部署間でさえFAXでやり取りしていたので、担当者が情報を受け取るまでにタイムラグが生じることがよくありました。情報共有というのは時間や手間がかかるもので、急いで解決しようとすると業務に負荷がかかり時間に追われ、ますます忙しくなります。このような状況が続いていると、小さなエラーが見過ごされる可能性があり、結果的に食品ロスや事故につながるリスクがあると考えました。
田島さん :
松江支店だけでも約550件の得意先があり、日々多数の伝票を処理しなければなりませんが、処理中に不明な点や確認事項が発生するとその都度業務が渋滞します。また外出中の営業担当と連絡を取り合う必要が生じます。
畠山さん :
以前から全社でグループウェアを使用していますが、PCベースのサービスであり、各々にメールアドレスも付与され貸与スマホで確認もできますが、社外での利用には適していません。
廣田さん :
支店の事務担当者は、営業担当者が外出中にお客様からの電話を受けることもよくあります。しかし、用件を取り次ぐために電話をかけても応答がないことがあり、商談中や運転中である可能性を考慮して何度も電話をかけることを控えていました。その結果、お客様への対応が遅れることも悩みの種でした。
畠山さん :
そうした状況に対応するため、一部の社員が個人のLINEを業務で使用するようになりました。社内での連絡だけでなく、営業担当者がお客様のLINEとも個人的に連絡を取るケースも想定され、会社が関知しないところで業務に関する情報がやり取りされるリスクを懸念するようになりました。
LINE WORKSが利用されるようになった経緯を教えてください。
畠山さん :
2017年に、社員の貸与携帯をスマホに切り替えました。その際、社給スマホの管理を担当する総務部のメンバーが、あるベンダーからの勧めでLINE WORKSを導入しました。新しいスマホにアプリをセットして貸与したのですが、当時はまだ会社全体として正式な運用方法を定めていませんでした。公式なアナウンスは行われていませんでしたが、松江支店の営業社員が自主的に活用しはじめ、その後、他の支店や本社などにも活用が広まっていきました。
田島さん :
LINE WORKSは会社がユーザーを管理できるため、タイムリーなやり取りができるのが魅力です。そのことに気づいた多くの営業社員が、個人のLINEに代わって利用するようになりました。
廣田さん :
当初、スマホが貸与されていない事務職員は、LINE WORKSは付与されていませんでした。しかし、外出している営業社員との連絡手段としてLINE WORKSを活用するため、事務職員にもアカウントが付与され、PC版のアプリをインストールしました。現在では、支店全体で営業と事務の両方が積極的に活用しています。
LINE WORKSの具体的な活用シーンと導入成果をお聞かせください。
・朝礼に替わってグループトークで営業社員に伝達事項を周知
・紙文書の多くをトークに置き換えてペーパーレス化を促進
・外部トーク連携の活用で得意先とのコミュニケーションもスムーズに
田島さん :
支店全体、営業部門全体、および支店内の3つの営業チームなど、さまざまなグループを作成しました。以前は電話やFAX、メールなどで伝達されていた情報を、関係者全員が迅速に共有できる環境を整備しました。
以前は、支店の営業社員35名が毎日10分の朝礼でさまざまな伝達事項を共有していました。LINE WORKSが導入された現在は、全員が集まるのは月2〜3回程度で、情報共有は主にグループトークルームで行っています。朝礼時間の10分に営業社員数と日数を掛け合わせると、年間でかなりの時間が効率化されたことになります。
また、以前は紙で回覧文書や報告書などがやり取りされていましたが、その約50%がLINE WORKSを使っての受け渡しに切り替わりました。例えば、配送担当者が毎月会社に提出するトラックの走行距離などが該当します。紙からトークへの置き換えにより、提出側と受け取り側の手間が軽減され、ペーパーレス化も進んでいます。
さらに、営業社員からは、スタンプを使った手軽なコミュニケーションやルート配送を行う社員どうしが渋滞情報を迅速に共有できるなど好評です。
LINEでのやり取りを望まれるお客様とも、外部のLINE WORKSやLINEと連携して安全にやり取りできるようになりました。トークを通じて迅速な意思疎通ができるだけではなく、お客様から問い合わせのあった商品の写真を即座に送信できる利点もあります。また、営業社員が得意先から商品の不備などを指摘された場合、電話だけでは詳細が分かりづらいことがありましたが、現在は画像を送信してもらうことで不備の内容を正確に把握できます。さらに、電話は基本的に1対1のやり取りしかできませんが、グループトークなら複数の担当者が同時に情報を共有できるため、コミュニケーションのスピードが向上しています。
事務担当者として実感されているLINE WORKSの導入効果をお話しください。
・外出中の営業社員との連絡がスピードアップ
・グループを活用することで煩雑だった取り次ぎ業務を省力化
廣田さん :
お客様からの伝言やFAXで届いた注文書の写真などをトークで迅速かつ確実に共有できるため、外出中の営業社員への情報伝達が大幅に改善されました。時にはお客様から、不在の担当者への伝言を依頼された際に「営業担当の方に伝えてくれましたか?」と確認されることがあります。伝言内容を送信したトークが既読になっていれば、改めて担当者に確認する必要もなく、「伝えております」と自信を持ってお答えできるようになりました。
外出中の営業社員からは、商品在庫情報や価格などに関する問い合わせの電話が頻繁にあります。以前は販売管理システムで検索し、口頭で回答していましたが、現在は一度電話を切ってから情報を検索し、該当する画面のスクリーンショットをトークに送信するようにしています。これにより、誤った情報伝達や聞き違いを防ぐことができます。
当社にはお客様のオーダーに基づいて精肉を加工するミートセンターがあります。私は松江支店の営業担当者からの注文をミートセンターに伝える役割を担っています。また、ミートセンターからの仕上がり予定日を営業社員に伝える役割も果たしています。この仕事を効率化するために、「ミートセンター連絡網」というグループを作成しました。ミートセンターから仕上がり予定日を投稿してもらうことで、私を介さずに営業社員に直接情報が届くようになり、業務の効率化が図られました。
畠山さん :
松江支店の積極的な取り組みは、LINE WORKSが情報を伝達する手間を省き、それによって業務負担を大幅に軽減できることを示しています。当社は長期ビジョンで社員の幸福度向上を目指しており、業務効率化の進展がその実現に大いに寄与するだろうと考えています。
LINE WORKS活用を今後どのように発展させたいとお考えですか。
畠山さん :
現時点では、トークとグループのみの利用にとどまっていますが、業務生産性を向上させるための活用方法は他にも考えられます。例えば、営業社員が日々提出するお客様の訪問記録をテンプレートとアンケート機能で置き換えることで、作成の手間が省けるだけでなく、集計も容易になるでしょう。このような取り組みを通じて、業務のコミュニケーション体制を整え、DXを推進していきたいと考えています。
【お話を伺った方】
畠山 広幸さん
専務取締役として全社の業務を統括。複数のグループ会社の食品関連事業も管理する。
田島 一博さん
入社後一貫して営業職に従事し、2019年4月に松江支店の支店長に就任。
廣田 麗子さん
副参事(管理職)として松江支店の事務を管理する。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2023年5月当時のものです。