北海道札幌市清田区にある医療法人社団鈴木内科医院は、介護事業を含む10事業(医院2箇所訪問介護、訪問看護、訪問リハビリ2箇所、リハビリセンター、グループホーム2箇所、定期巡回随時対応型訪問介護看護、医療介護支援住宅、福祉用具事業所、居宅介護支援事業所)を経営し、地域によりそった医療・介護サービスを提供している法人です。事業所内の情報共有だけでなく、介護サービス利用者本人やご家族、他事業所との電話のやりとりをLINE WORKSに置き換え、連絡業務を効率化させています。
本事例のポイント
- 介護サービス利用者やご家族が使っているLINEと連絡の取れるLINE WORKSを導入
- 居宅内や他事業所との情報共有が円滑になりケアマネジメントの質向上に貢献
- ご家族や多職種の連携を高めるため地域へのICTツールの普及活動を牽引
御社の事業内容をご紹介ください。
阿蘇さん:
北海道札幌市清田区にある医療法人社団鈴木医院の居宅介護支援事業所で、ケアマネジャー5人、事務員1人で、190名の介護サービス利用者の方を支援しています。居宅介護支援事業所は、要介護認定を受けている方とそのご家族のサポートを行います。私たちケアマネジャー(介護支援専門員)が、介護サービスを受ける本人やご家族の要望を伺い、適切な介護サービスを組み合わせたケアプランの作成を行ったり、必要なサービスを提供する事業者への連絡や調整、ご家族に代わってサービスを利用するための手続きや申請の代行を行っています。居宅介護支援事業所は、介護サービスを希望する方とサービスを提供する事業者をつなぐ「架け橋」のような役割を担っています。
LINE WORKSの導入以前に抱えていた課題について教えてください。
谷本さん:
ケアマネジャーと事務員、介護サービス利用者のご家族、他事業所の担当者との電話やファクス、メールによるコミュニケーションの取りづらさが課題でした。私たちの事業所では、ケアマネジャー1人あたり35人以上の介護サービス利用者やそのご家族と連絡を取ることに加えて、訪問看護や福祉用具などのサービス事業所、医療機関や区役所とも日々連絡を取ります。電話でのやりとりは、すれ違いやかけ直しが発生しやすく、LINE WORKSの導入前は事業所全体で1日の電話回数は、100回を超えていました。
富田さん:
ご家族や他事業所からの電話の問い合わせに対して、ケアマネジャーの予定がわからず、その場で対応できないことがありました。また問い合わせをいただいた後に、担当のケアマネジャーに電話をしてもつながらないことやご家族に折り返しても不在なことも多く、重要な情報が共有しづらい状況でした。
課題解決のためにLINE WORKSに決めた理由はなんだったのでしょうか。
阿蘇さん:
LINE WORKSに決めた理由は、2つあります。1つ目は、LINEと似ている操作画面で同じように使える点です。私はICTツールが得意ではないので「新たに覚えることがない方法で導入できるんだったらいいな」という思いがありました。2つ目は、LINEとつながってやりとりができる点です。40〜50代の介護サービス利用者のご家族の中にはLINEを使っている方が多いため、LINEとつながればコミュニケーションが取りやすくなると考えました。以上の理由からLINE WORKSを導入しました。
事業所内での具体的な活用方法や導入して良かった点などを教えてください。
谷本さん:
私たちの事業所では、主に3つの機能を活用しています。1つ目は「トーク機能」です。組織や目的別にさまざまなグループを作成しています。全職員が所属するグループのほか、スケジュール管理専用のグループでは急な訪問時間の変更や帰社時刻などを共有しています。
富田さん:
ケアマネジャーに知ってほしいことをトークで一斉に周知できることが便利です。以前は、ショートメッセージなどを送っても返信がない際に、読んでもらえているかの連絡をしていたのですが、LINE WORKSには誰が読んでいるかがわかる既読機能があるので確認の手間が減り非常に助かっています。
谷本さん:
2つ目は「カレンダー機能」です。カレンダーでは、ケアマネジャーの訪問予定を管理・共有するために活用しています。訪問予定を登録すると予定の10分前に自動通知が届くので、訪問漏れの防止にもつながり重宝しています。
富田さん:
介護サービス利用者のご家族や他事業所から「ケアマネジャーの○○さんはいますか?」と、問い合わせがあった際に、カレンダーで担当のケアマネジャーの予定を確認できるので、「◯◯は15時に帰宅予定です」や「◯◯は本日お休みしており明日の9時に出社しております」とその場で対応ができるようになり予定確認のための電話が大幅に減りました。
谷本さん:
3つ目は、「アドレス帳機能」です。アドレス帳に、他事業所の名刺やご家族の情報をまとめて管理しています。以前は、別の名刺管理専用のアプリを使用していたのですが、LINE WORKSに一本化したいという声が多くなってきたので、名刺画像と一緒にLINE WORKSのアドレス帳で管理しています。
名刺をスキャンして登録する機能を活用し、アドレス帳で名刺を管理している
事業所外とのLINE WORKSのやりとりについて、何名くらいのご家族のLINEとつながっていますか。
谷本さん:
現在、70名の介護サービス利用者本人やご家族のLINEと外部トーク連携でつながっています。つながっている方の年齢層も40歳代から最高齢の方は85歳の方までと幅広く、遠方に住んでいるご家族の方もいます。
朝から夕方まで仕事で電話に出られないというご家族の方も多いので、LINE WORKSでつながったことで「都合の良いタイミングでLINEで連絡できるのは本当にありがたい」「ケアマネジャーとの連絡が取りやすくなった」という嬉しい声をいただいています。
ご年配の方を含め70名のご家族とも繋がっているのはとてもすばらしいですね。利用者のご家族とつながる際に、何か工夫している事があれば教えてください。
谷本さん:
工夫している点は、3つあります。1つ目は、自分たちの名刺に自身のLINE WORKSアカウントのQRコードを掲載しています。名刺に掲載することで、契約時や担当者会議などの時に、自然な流れで「今後はLINEでやりとりしませんか?」と提案することができ、多くのご家族とのLINE交換につながっています。
名刺に自身のLINE WORKSアカウントのQRコードを掲載し登録してもらいやすいように工夫している
2つ目は、ご家族に対して、LINEでやりとりする際の留意事項も丁寧に説明しています。つながったご家族には、「24時間いつでもLINEを送っていただいて大丈夫ですが、私たちからの返信は原則勤務時間内にさせていただきます」や「緊急時の際はお電話で、緊急時以外のことは、基本的にLINE WORKSに送ってください」とお伝えしています。このようにする事で、ご家族とケアマネジャー間でのトラブルも避けることができ、お互いに気持ちよく効率的なコミュニケーションをとることができています。
3つ目は、ご家族のLINEの名前をLINE WORKS上で変更しています。LINEに登録されている名前は、本名ではなくニックネームの場合があります。また名前だけでは、利用者との続柄も分からないため、つながったあとにLINEで登録されている名前をLINE WORKS上で「ご家族のお名前+利用者名+続柄(娘/息子または長女/長男)」に変更して管理しています。名前の変更はLINE WORKS上だけで相手には変更したことは伝わらず、メッセージをいただいた際にもどなたからの連絡なのかを瞬時に判断することができます。
他事業所とのLINE WORKSを活用したやりとりについて教えてください。
阿蘇さん:
現在、20箇所の事業所とLINE WORKSどうしでつながっています。福祉用具貸与事業所の担当者とは、利用者さん宅への手すりの設置依頼や設置後の様子などを写真や動画も活用しながらスピーディーにやりとりしています。電話からLINE WORKSに置きかわり、効率よくコミュニケーションが取れるようになりました。
富田さん:
以前は、福祉用具貸与事業所の方は私たちの事業所の固定電話へ電話を掛けてこられる方が多かったのですが、担当のケアマネジャーとLINE WORKSでつながってトークで連絡がとりあえるようになってからは、固定電話へはほぼかかってこなくなりました。1日100件以上あった電話着信回数は全体で20件程度まで減少しています。
福祉用具貸与事業所と介護サービス利用者宅への手すりやマットレス設置をトークで調整
谷本さん:
地域の他事業所と1箇所でも多くLINE WORKSでつながるときの工夫として、LINE WORKSで連絡が取れることを案内する専用のチラシを作成して配布しています。
ご家族のLINEや他事業者とのLINE WORKSとつながることで、連絡調整がとてもスムーズになった結果、心に余裕を持つことができたと感じています。
地域でICTを広げる活動もされているそうですね。どのような活動か教えていただけますでしょうか。
谷本さん:
私たちは、札幌市清田区全体でLINE WORKSなどのICTを普及するために、居宅介護支援事業所やサービス事業所向けに3ヶ月に1度、ICT勉強会を主催しています。自分たちの事業所でICT化を進めていくことも大事ですが、一方で地域としてのICT化も大切だと考えています。将来「清田モデル」と呼ばれるような地域でのICT化の取り組みに発展できたら良いと考えています。以前、開催したICT勉強会では、LINE WORKS活用をテーマアップし、参加者から「研修のお陰で、LINE WORKSで名刺の管理ができるようになりました」や「新たな情報や活用方法を聞けて視野が広がりました。今後ICTはますます必要になるので、もっと勉強し取り入れていきたいです」といった声をいただきました。勉強会を始めた当初は、ICTの普及が難しいと感じる場面が多かったのですが、勉強会の回数を重ねるうちに、他法人の事業所がスマホやLINE WORKSを導入する等、少しずつ清田地域も変わってきていると感じています。今後も地域の事業所と協力をしながら勉強会を実施していきたいと思っています。
事業所の枠を超えて地域活動に積極的な姿勢、すばらしい取り組みですね。最後にLINE WORKSの今後の活用を、どのように展開させたいか教えてください。
谷本さん:
多くの利用者のご家族とつながり、円滑な調整や写真のやりとりを行えるように多くの介護事業所にLINE WORKSを広めて円滑な情報提供ができるように努めたいです。さらに地域にLINE WORKSを普及させてご家族や多職種で効率よくコミュニケーションが取れるようにし、介護サービス利用者本人のQOL向上に貢献していきたいです。
【お話を伺った方】
阿蘇 郁子さん
管理者。主任介護支援専門員。管理者として介護サービス利用者の支援、居宅管理に携わる
谷本 誠二さん
主任ケアマネジャー。LINE WORKSの導入・ICT推進担当であり地域勉強会を企画運用
事業所内外でLINE WORKSの普及活動を行う。
富田 菜美子さん
事務員。事務全般に携わり情報共有や連絡を担当
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2023年7月当時のものです。