大成建設株式会社は、高層ビル、ダム、橋、トンネル、地下鉄など、国内外で大規模な建築・土木工事を行うだけでなく、都市開発やエンジニアリングなども手がける総合建設会社。工事を管理する社員と、多くの協力会社のスタッフを結ぶコミュニケーションツールとして、全国各地の大規模な建設現場にLINE WORKSが導入されています。同社の横浜支店が担当する道路のシールドトンネル建設現場での多様な活用方法について、本社土木本部の佐藤さんと横浜支店の宮地さんにお話しいただきました。
事業内容と皆さんの役割を教えてください。
佐藤さん:
本社土木本部の働き方改革推進室 課長として、全国各地の建設現場の業務効率化や、働き方改革を支援しています。
宮地さん:
私は横浜支店に所属し、作業所長として道路のシールドトンネル工事の現場を管理しています。
工事現場が直面していた課題と、LINE WORKS導入に至った経緯をお聞かせください。
宮地さん:
全長数kmに及ぶシールドトンネルの建設現場では、自社の社員約20名が常駐するほか、協力会社の作業担当者50名ほどが各所で作業しています。作業所長として全体を管理する私は常に各担当者と連絡を取って、現場の進捗状況などを把握しなければなりません。これまでは電話かメールで連絡を取っており、1対1のやりとりで得た情報を、関係する複数のスタッフへ伝達するのに手間取っていたため、安全でよりよいコミュニケーションツールがあれば導入したいと思っていました。
佐藤さん:
人手不足などで作業に従事するスタッフの数が減っていることに加え、近年は残業削減や休日の確保など、建設業界でも働き方改革に向けての取り組みが行われています。そのような状況で以前と同じ成果を出すには、一人ひとりの作業を効率化して、全体の生産性を向上させなければなりません。
そのためには現場でのコミュニケーションをスムーズにし、連絡に要している無駄な時間を省くことが不可欠だと考えました。
特に建設現場では、離れた場所にいる担当者同士が密に連絡を取り合う必要があります。そこで複数のコミュニケーションツールを検討した結果、使いやすさや情報漏洩を防止する仕組みが設定されているセキュリティ性の高さから、LINE WORKSが最適と判断。これまで大成建設の土木分野の作業所200あまりのうち、84作業所でLINE WORKSを導入、活用しています。
宮地さん:
導入に際しては、自社の職員全員と協力会社のスタッフ全員にアカウントを配布し、さまざまなグループを作成して緻密にコミュニケーションを図れる環境を構築。協力会社にはLINE WORKSの活用で多くの業務が効率化することをしっかり説明した上で、利用を依頼しました。
建設現場ならではの利用上の工夫点はありますか。
宮地さん:
建設現場には多数の協力会社が関わるため、トークグループのアイコンには業務内容を想起させるデザインを採用。工程の進捗に伴って担当者の入れ替わりが多い現場では、個々の作業従事者のアドレス帳のアイコンには本人の顔写真を利用するという独自ルールを定め、トークグループやメンバーを一目で判別できるように工夫しました。
佐藤さん:
トンネル内には電波が届きにくいところもあるため、Wi-Fi機器を設置して通信環境を確保しました。また、作業現場でスマホに長文を入力するのは面倒なので、アカウントを入力してログインできる共用のPCを現場内の要所に用意するという配慮もしています。
LINE WORKS活用の具体的な業務シーンを教えてください。
宮地さん:
電話やメールに代わって、各現場スタッフからのさまざまな報告が、トークで迅速に上げられるようになりました。写真や動画を貼付してもらえば、よりリアルな状況把握が可能です。動画なら安全上の不具合も一目瞭然なので、わざわざ現場に行くことなく私や安全管理者が気づいた点を注意喚起でき、“安全パトロール”をするのとほぼ同じ役割を果たしてくれます。
写真とともに素早く正確に行われる
建設現場特有の緊張感を和らげる
グループトークで情報を一斉送信できるので、私が把握した進捗状況を、作業所全体や関係する担当者に伝えるのも、以前と比べて格段にスピードアップしました。そのため、全員が集まる朝礼や夕礼時に、進捗状況を口頭でこと細かに説明する必要がなくなりました。日勤者から夜勤者への引継ぎも、紙の「引継ぎ簿」からLINE WORKSに置き換わりました。ノートに書かれた「引継ぎ簿」より手軽に読め、既読がつくので、引継ぎ事項が確実に伝わるようになっています。任意のメンバーを集めたグループ作成が自在なので、必要な情報を必要とするメンバーだけで共有できるのも大きなメリットです。無関係な担当者に不要な情報を与えないことも、業務効率化に貢献すると思います。
複数の協力会社が作業をする現場では、日々どこでどの会社がどんな作業をするかを示した図面や工程表を共有することが欠かせません。以前は朝礼時に紙で配布していましたが、現在は添付ファイルとして一斉送信できるようになり、朝礼に出られなかった担当者にも確実に情報が伝わります。既読者と未読者も判別できるので、情報の伝達漏れが生じる不安がなくなりました。
LINE WORKS導入によって、現場にどのような変化が生まれましたか。
佐藤さん:
これまで1時間ほど要していた夕礼が、5~10分程度に短縮されました。それも含め、LINE WORKSによるコミュニケーションで、作業者1人1日あたり1時間ほどの業務時間が効率化されていると推測しています。1人1日8時間の勤務時間のうち1時間を作業に回せるようになったことは、工事の速度や品質アップ、残業コスト縮減などを促し、全体として大きな生産性向上に寄与しているはずです。
宮地さん:
さまざまな事情から突発的に作業予定が変更されることがあり、その情報を関係スタッフ全員が速やかにしっかり共有していないと思わぬ事故を招く恐れがあります。LINE WORKSによって作業予定の変更をタイムリーに周知できるようになったことは、安全対策の強化にもつながっていると思います。
トーク以外に活用している機能はありますか。
宮地さん:
安全点検日や会議といった現場全体の予定はこれまでホワイトボードに手書きして周知していましたが、カレンダーを利用することで、全員が手元のスマホでいつでもスケジュールを共有できるようになりました。
安全表彰対象の候補者選びや、親睦会などへの出欠確認にはアンケートを活用しています。70人ほどの現場全体に情報を一斉配信し、迅速にレスポンスを得るのに大変便利な機能だと感じています。
今後の活用についての展望をお聞かせください。
宮地さん:
多様な機能を適宜使いこなしながら現場全体のよりよいコミュニケーションを図り、業務効率と生産性の向上につなげていきたいですね。
佐藤さん:
LINE WORKSをさらに有効活用してもらうために、本社から各作業所へ定期的にアプローチして現場の声や利用事例をヒアリングすることが重要だと思います。それをフィードバックすることで、各現場の規模や特性にマッチするLINE WORKSの活用を促進していきたいと考えています。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2018年12月当時のものです。
【2023.2.9 ASCII掲載】協力会社や発注者も同じテナントで情報共有 大成建設のLINE WORKS活用