直営牧場と加工工場、生鮮食品スーパーを擁し、肉牛の肥育から精肉・加工品の小売まで手がける高橋畜産食肉株式会社は、電話・FAX・対面を中心に行われていた社内コミュニケーションを改善する目的でLINE WORKSを導入。部門内はもちろん、縦割りだった本社・牧場・加工工場・店舗間の連絡も密になり、全社で情報をタイムリーに共有できる環境が整いました。掲示板を活用してスムーズな稟議承認の仕組みを構築するなど、業務速度を高めるための取り組みも意欲的に推進しています。
本事例のポイント
- 電話やFAXがトークに置き換わり、スピーディで確実な情報伝達が実現
- 掲示板に全部門の情報を集約して会社の動きを見える化
- 迅速に共有できるコミュニケーション基盤を構築しHACCPを取得
御社の事業内容をご紹介ください。
中川さん :
当社は山形県と宮城県に6つの牧場を所有し、米沢牛や山形牛、自社ブランドの蔵王牛などの全国的に有名なブランド牛を生産しています。枝肉の脱骨やスライスなどの加工は自社工場で行い、山形市内には2軒の生鮮食品スーパーも直営しています。当社は肉牛の繁殖・肥育・加工、販売までを一貫して行う数少ない企業の一つです。安心で安全な食肉を提供するため、6つの牧場は畜産現場の飼育衛生管理向上を目指して農場HACCP認証を取得しています。また、加工工場では食品安全マネジメントシステムに関する国際規格であるISO 22000認証を取得するなど、品質管理も厳格な取り組みをしています。
LINE WORKSを導入する前、本社ではどのような課題に直面していましたか。
中川さん :
以前は社内の主なコミュニケーション手段が電話と FAXで、メールアドレスもごく一部の社員しか持っていなかったため、情報の伝達・共有に手間と時間がかかるのが悩みの種でした。
当社の直営牧場で農場HACCP認証のプロジェクトが発足した際は、私は認証のために必要なデータを収集し資料をまとめる役割でした。もちろん社長にも確認する内容が頻繁にあったのですが、都度電話をかけることに心理的な抵抗も感じましたし、牧場にはFAXで要件を伝達するしか手段がなく、迅速に用件を伝えることができませんでした。
安藤さん :
部門長クラス以外の社員は部門横断の会議に参加する機会がほとんどなく、セクション間での情報共有が不足していました。その結果、「他部門のことはよく分からない」という状況が生じていました。
私は加工工場の生産販売課に所属し、カタログ販売会社を通じた商品販売の管理を担当していますが、販売される商品の流れについては関知していませんでした。そのため、お客様から商品に関するお問い合わせがあった際、どの販売チャネルで販売されたものかが分からず、各部署に電話をかけて担当者を特定するのに時間がかかってしまい、迅速な対応ができないことがクレームにつながることもありました。
得意先からの受注品の数量変更など、重要な情報を加工現場にすばやく伝えたくても、電話だと担当者につながらないことがあります。このような状況を改善し、迅速かつ確実に重要な連絡をするため、また社内でのコミュニケーションにおける「言った/言わない」といったトラブルを防ぐために、電話や対面以外のコミュニケーション手段が必要だと考えていました。
直営のスーパーではどんな課題がありましたか。
後藤さん :
私が副店長を務める生鮮食品スーパーmoh’z(モーズ)には、パートタイマーを含めて50名以上の従業員がいます。LINE WORKSが導入される前は、直接対面で伝達する以外の手段がなく、その場にいない従業員には他の従業員を通じて間接的に伝えるしかなく、情報の迅速な伝達と正確性に課題がありました。店舗のスムーズな運営には、業務に関する情報を全従業員に一律に共有することが必要だと感じました。
また、本社との連絡も電話やFAXしか手段がなく、特に承認を必要とする稟議にはかなりの時間がかかったり、それ以外でも急ぎの返答を求められたりと、スピーディなコミュニケーションを実現するツールの導入を望んでいました。
課題解消の手段としてLINE WORKSを選ばれた理由と、運用開始までの経緯をお聞かせください。
中川さん :
農場HACCP認証のプロジェクトにおいて、電話やFAXでの連絡では牛舎で作業中の担当者には牧場の事務所に戻る夕方にならないと情報が届かないため、推進に時間がかかっていました。そこで、牧場の担当者が牛舎にいる状況でもリアルタイムに連絡を取り合えるビジネスチャットを導入することを考えました。その際、ITツールにあまり慣れていない牧場のスタッフでも普段から使い慣れているLINEの操作性に近いLINE WORKSを選びました。対面や電話、FAXをトークに置き換えることで、農場HACCP認証に関わるだけではなく、社内のあらゆる連絡業務を効率化することができると確信し、全社での運用を決定しました。
運用開始に先立ち、総務部主催の社内勉強会を数回開催し、DriveにLINE WORKSの基本的な操作の説明動画をアップしました。また、社員からの操作に関する質問とその回答は掲示板で共有し、利用を促進しました。
積極的な利用を促すためには、自由に活用してもらうことが重要だと考え、運用ルールは「トークの冒頭に『お疲れさまです』などの挨拶を書かない」、「業務時間外に返信を要求するメッセージを書かない」「緊急を要する用件は電話で直接伝える」という3つの項目に絞りました。
LINE WORKSによって、農場HACCP認証取得に向けた牧場とのコミュニケーションはどう改善されましたか。
中川さん :
牧場のスタッフは牛舎で作業をしていてもスマホで確認したらその場ですぐに返信してくれるので、FAXでやり取りしていたときと比べて意思疎通の速度が飛躍的にアップしました。また提供してもらう資料は、手書きのメモを撮影した写真をトークに送ってもらうようにして、年配のスタッフでも簡単に情報発信をできるようにしました。その結果、農場で当初の計画より早くHACCP認証を得ることができました。
生産販売課におけるLINE WORKSの具体的な活用シーンと導入効果をお聞かせください。
・電話・FAXをトークに置き換えタイムリーに情報を伝達
・トークに送信された画像で商品チェックを行い、加工現場へ赴く手間を削減
安藤さん :
関係するメンバーで構成されるトークルームやグループトークルームが多数つくられ、スピーディなコミュニケーションを図っています。商品に関する質問などを受けた場合、各部門長が所属するグループトークに問いかければすぐに誰が担当か分かるので、電話やFAXとは比較にならないほど素早いお客様対応ができるようになりました。
メッセージだけでなく、画像を手軽にやり取りできるため、業務効率化に大きく寄与しています。例えば、生産販売課が新商品をカタログ販売会社に初出荷する際には、指示通りの加工が行われているか、賞味期限ラベルや包装形態に誤りがないかなどを、工場からトークに送られてきた写真をチェックすることで確認できるようになり、課の担当者が加工現場に出向く必要がなくなりました。
スーパーでの活用シーンと導入効果についてお聞かせください。
【トーク】通達事項を店舗の全スタッフに漏らさず周知
【トーク】チラシデザインの確認や食品表示ラベルの作成が効率化
【掲示板】稟議書の承認が掲示板でスムーズになされる仕組みを構築
後藤さん :
「店舗全体」、「店長と店舗内の各部門のチーフ」、「催事にかかわるメンバー」など、さまざまなグループが作成され、以前は口頭や人伝いで伝達していた連絡事項が瞬時に共有されるようになりました。メンバーに指示を出した際には、既読者がわかるので、返信がなくても安心できます。
店舗の販促用のチラシは本社の総務部に制作を依頼していますが、LINE WORKSを使ってデザインデータを共有することで文言の確認が迅速に行えるようになりました。お客様向けのフリーペーパーは外部の協力会社に制作を依頼しており、担当者のLINEと外部トーク連携でつながることで、校正などのやり取りがスムーズに行われています。
当社が運営するスーパーで販売する惣菜には、栄養成分などが明記された食品表示ラベルを貼付しています。各店舗の担当者から惣菜の素材などに関する情報を私が受け取り、データベースに接続した専用のソフトでラベルデータを作成します。そのラベルデータをトークで送信し、各店舗で印刷するというフローを整えました。提供された惣菜に関する情報に疑問がある場合は、トークで即座に確認できたり、ラベルの印刷データを瞬時に送信できるようになったため、食品表示ラベルの作成に要する時間が約3割削減されました。
さらに、あらゆる稟議書が掲示板にアップされ、取締役が掲示板上のコメントを通じて承認する仕組みが整備されました。これにより、決裁までの時間が大幅に短縮されるだけでなく、稟議書を通じて全社員が社内のさまざまな動きを把握できるようになりました。
その他の部門での活用シーンを教えてください。
中川さん :
部署や個人によっては、カレンダーで日程を共有したり、ビデオ通話機能をリモート会議に利用したりしています。総務部では現在、新入社員に肉の捌き方を知ってもらうための動画を制作して、完成後は全社のグループのDriveにアップする予定です。
総務部としてほかにどのような導入効果を実感していますか。
【Bot】問い合わせフォームからのメッセージを自動転送
【Bot】製品価格や売上に関する更新情報を自動通知
【掲示板】社内情報を全社に共有することで一体感を醸成
中川さん :
自社ホームページの問い合わせフォームに入力されたメッセージは、メールで総務部に届きます。以前はそのメールの内容をFAXなどで担当者に送っていましたが、LINE WORKSのAPI連携を使い、そのメールの内容がトークに自動転送される仕組みを独自で構築しました。FAXより手間なく、速やかに各担当者に届くことで、素早い対応ができるようになりました。
当社の基幹システムはオンプレミスで運用しており、製品価格や売上情報などのデータは社内のPCからしか閲覧できません。これでは営業社員が出先から確認することができないので、基幹システムのデータをGoogleスプレッドシートにアップロードし、どこにいてもスマホでアクセスできる環境を整えました。情報が更新されるたびに、自動的にトークで通知されるようになり、営業社員は常に最新の営業データにアクセスできるようになりました。
また稟議書以外にも、総務部からのお知らせやお客様の声、各部門の会議の議事録など、全社で共有すべき情報を積極的に掲示板にアップしています。その結果、各部門が日々の業務内容を把握できるようになり、部門間の垣根がなくなって社内のコミュニケーションがスムーズになったと感じています。
一貫した生産体制を実現するためには、牧場、工場、店舗、卸売事業に携わる全社員が同じプラットフォームで業務を行うことが必要ですが、LINE WORKSはまさにその役割を果たしてくれています。
LINE WORKSの活用を今後どのように発展させたいとお考えですか。
中川さん :
もっと多くの取引先と外部トーク連携でつながれば、連絡や打ち合わせの時間を短縮できるのではないかと思います。まだ活用できていない機能もあるので、各部門や個々の社員に利用を工夫してもらい、業務効率化につながる使い方があれば全社に展開できるようにしたいです。
【お話を伺った方】
中川 賢さん
全社のシステム導入と運用管理を担当。LINE WORKSの運用管理者でもある。
安藤 裕子さん
精肉や加工品の全国へのカタログ販売などを行う生産販売課の業務を管理。
後藤 直樹さん
生鮮食品市場moh’z の副店長。惣菜コーナーのチーフも兼務する。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2023年5月当時のものです。