本記事は、WWDジャパンにて掲載された記事を一部リライト転載したものです。
LINE WORKSは、国内で約8400万人が利用するコミュニケーションアプリLINEのビジネス版だ。LINE利用者にメッセージを送 るのはもちろん、そのやりとりや顧客情報を一括で管理したり外部システムと連携できるなど、企業での利用を想定したさまざまな機能を備える。EC強化が命題のアパレルブランドでの利用も急増している。 2018年9月から同サービスを導入するTOKYO BASEに、LINE WORKSを使うことのメリット、またその成果について聞いた。
本事例のポイント
- 販売員間・顧客とのコミュニケーションが活発化。
- ツールの一元化により、営業支援ツールとしても機能。
- チャットボット活用で、顧客売り上げに貢献。
LINEとつながることができる唯一のビジネスチャットサービス
LINE WORKS最大の特徴は、LINEユーザーとつながることができる唯一のビジネスチャットサービスであることだ。“コミュニケーションならLINEで十分なのでは?”と思われるかもしれないが、販売員が接客で利用するケースなどを考えると、LINEの機能では不十分な場面が存在する。例えば、顧客管理機能だ。LINEの場合ニックネームを使ったり、自身の顔写真以外をアイコンにしていることも多く、それらを頻繁に変更するユーザーもいる。販売員は自分がLINEでやりとりしている相手が、顧客データベース上の誰に当たるのかを常に把握しなくてはならない。
アパレル企業側も、個々の販売員がLINEで顧客とどんなやりとりをしているのかを把握できない問題がある。LINE上の優れた接客で来店や購入につながったケースがあってもそのノウハウを共有できないし、販売員が退職してしまった場合などは顧客とのつながりが失われてしまう可能性がある。また、メッセージの送信は顧客と直接つながっている販売員しかできないため、キャンペーンなどで全顧客にメッセージを送りたい場合などは、メッセージのコピー・ペーストおよび送信を各販売員に依頼する必要がある。
LINE WORKSを使えば、これらの課題を解決できる。チャットボット機能などを使って顧客に本名の入力を促せば顧客データベースとのひも付けが容易だし、販売員-客間のやりとりをシステム上で保存できるため、優れた接客の共有や内容を改善するためのアドバイスもできる。顧客に共通のメッセージを送る場合は、販売員の端末に推奨メッセージを表示できるので、販売員はそれを微調整すればよい。
顧客にとっても、販売員や企業からのメッセージは普段使っているLINEに届き、新たにアプリをインストールする必要がない。ここで生きてくるのが国内約8400万人ユーザーのスケールメリットだ。そもそも客側は相手がLINE WORKSを使っていることにも気付かない。LINE利用者であればストレスは皆無。それでいて企業側の利便性を大きく高めることができる。
グループウエアや営業支援ツールとしても使える
LINE WORKSどうしでもメッセージの交換ができ、またカレンダー機能ではLINE WORKS上でスケジュールの共有や施設予約なども行えるので、グループウエアとしても使える。さらに大きな特徴が外部システムと連携して、より便利に使えることだ。CRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援システム)などの顧客情報管理システムと同期すれば、さまざまな営業施策をLINE WORKS上で実施することができる。
代表的なSFAツールは、顧客が来店した日時や購入履歴、誕生日などを入力することで、営業活動を実施すべき最適なタイミングを分析・通知する機能を備えている。ただし、販売員がデータを入力したり通知を受け取る場合、専用のアプリをインストールする必要がある。SFAツールとLINE WORKSを連携すれば、それらをLINE WORKS上で行うことができる。販売員の中にはITに明るくない者もいるだろう。複数のアプリを使い分けるのではなく、LINE WORKSで一括できれば接客に集中できるはずだ。
セキュリティー面でも企業利用を想定した各種設定がある。LINE WORKSアプリをインストールした端末を紛失した際のデータの消去機能や、情報漏えいや無断アクセスへの措置、ウイルスやマルウエアへの対策などがそれだ。
コロナ禍でも売り上げ3倍の原動力に
セレクトショップのステュディオスやアパレルブランドの「ユナイテッド トウキョウ」などを運営するTOKYO BASEが、LINE WORKSを導入したのは2018年9月のことだ。同社はそれ以前から、販売員に社用スマートフォンを配布し、LINEを通じて顧客とコミュニケーションを図るよう促していた。LINEを使ったパーソナライズ接客は年間売り上げ1億円超のスター販売員を生むなど絶大な成果を上げていたが、いくつかの課題もあったという。ステュディオス事業部の南沙織営業部長兼MDは、「LINE接客は販売力強化に直結していたが、顧客データを一元管理したり、販売員と顧客さまのコミュニケーションをチェックすることはできなかった」と振り返る。
TOKYO BASEではLINE交換済みのユーザーを“顧客”として管理しており、1人の販売員が持つ顧客は平均で200人、多い人で1000人だという。LINE WORKS導入前は、LINE上のニックネームとTOKYO BASEのデータベースの名前の照合作業に大変な手間がかかっていた。またLINEで顧客から来店予約を受けた場合は、予約時間や内容をエクセルに手入力して共有する必要があり、販売員の負担になっていた。
販売員を“解放”したLINE WORKS
新たなコミュニケーションツールの導入は、顧客にアプリのインストールなど手間を強いる。LINEの使い勝手はそのままに、顧客に負担は掛けたくないと考えたとき、「選択肢はLINE WORKSだけだった」。
管理者が販売員のLINE接客の内容を把握して助言することができ、優れたテクニックを他の販売員に共有することもできるようになったわけだが、専売特許ともいえる技を共有されることに抵抗を感じる販売員はいなかったのだろうか。南部長は「そのような販売員はいなかった。当社は個人売り上げを評価する制度を採っているが、一方でチームワークを重視する文化もあり、販売員どうしでアドバイスしたり、困っているスタッフに積極的に手を差し伸べる慣習があった。LINE WORKSの導入によって、そういったコミュニケーションがより向上した印象だ」と話す。
EC売り上げの20%がLINE WORKS由来
コロナ禍でLINE WORKSの重要性はさらに増した。TOKYO BASEは19年9月にLINE WORKSと自社ECの連携を開始。販売員がECのURLをLINE WORKSを通じて顧客に送り、それが購入につながった場合はその販売員の売り上げとしてカウントできるようになった。「緊急事態宣言が出された4月から5月にかけて実店舗は休業を余儀なくされたが、その分EC売り上げは前年同期比で3倍になった。そのうちLINE WORKS由来の売り上げは20%に達する」という。
EC連携は、LINE WORKSの公開APIを利用してTOKYO BASEが構築した。APIとは二つのシステムの連携を可能にする仕組みのこと。南部長は「EC連携開始から2週間ほどは、現場から使い方について簡単な問い合わせがあったが大きな混乱はなかった。誰にでも簡単に利用できるシステムをつくることができた」と話す。
TOKYO BASEによるLINE WORKSのアレンジはまだある。6月には“お客さま情報”と呼ぶ新機能をチャットボットを使って独自に実装。顧客来店時の購入品や金額などをスマホからも簡単に入力できるようにした。“お客さま情報”には過去の購入品や販売員が連絡した日時などの情報も同期されており、管理者がこれをもとに販売員に向けて接客のアドバイスをすることもできる。この効果もあり、6~9月期のステュディオス ウィメンズの顧客売り上げは同2.2倍に。引き続き来店が難しい中で、LINE WORKSが貢献した形だ。
TOKYO BASEではある一定の売り上げを達成した販売員にのみ、LINE WORKSの利用を認めている。これについて南部長は、「基本的な販売スキルがなければ、LINE WORKSを使って適切に顧客さまとコミュニケーションすることはできない」と説明する。
販売員と顧客とのLINE WORKSでの会話例(実際のやりとりではない)
LINE WORKSで顧客とコミュニケーションする権限を持つ販売員が、店頭で新客にLINEの交換をお願いした場合には「8〜9割が応じてくれる」という。新たなデジタルツールを使って大きな効果を出すには、その前提として優秀な販売員の動きと顧客からの信頼獲得が欠かせないことが分かる。
LINE交換がTOKYO BASE流接客の締めくくり。8〜9割が応じてくれるそう
コロナ禍の新店オープンも下支え
TOKYO BASEは20年6月にステュディオス ウィメンズ 表参道店をオープンした。当初4月を予定していたが、コロナの影響で延期した。この難局を乗り切る際にもLINE WORKSが役立った。「5月のプレオープン時、顧客さま(LINE WORKSでつながっている客)のみをアポイント制で招待・接客して、グランドオープンに備えることができた」という。
同社は5月に「ユナイテッド トウキョウ」と「パブリック トウキョウ」を、9月にステュディオスを中国・北京にオープンするなど海外進出を加速させている。「北京の各店舗はラグジュアリーブランドが立ち並ぶエリアにあり、商品単価も日本に比べて高い。中国では新興セレクトショップであるわれわれが実店舗やECで商品を購入してもらうためには、顧客さまとのコミュニケーションが欠かせない。LINE WORKSで培った日本式スキルを活用したい」と話す。
【おさらい】LINE WORKS ここがすごい
1.利用者数の8400万人のLINEが持つ親近感
2.サービス開始から3年で10万社超と契約
3.有償ビジネスチャットで日本シェアNO.1
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した当時のものです。
※本記事は2020年11月23日にて公開されたWWDジャパン作の記事をリライト掲載したものです。