辛子明太子をはじめとする食品の製造販売や外食事業を展開する、株式会社やまやコミュニケーションズ。同社の外食事業部門では、本部から店舗への情報共有に複数の連絡手段を用いてきましたが、連絡ツールをLINE WORKSに統一。情報共有の窓口を一元化したことで、見落としのリスクを減らすとともに、連絡業務にかかる負担を軽減しました。また、アルバイトスタッフのLINEとセキュアにつながる外部トーク連携機能で、現場の隅々まで大事な情報が届く仕組みを構築。LINE WORKSを全社に拡大展開し、Bot機能なども活用することで、さらなる業務生産性の向上を目指しています。
本事例のポイント
- 複数連絡手段をLINE WORKSに一本化し連絡業務の負担を軽減
- アルバイトのLINEとつながり店舗スタッフ全体への情報周知を徹底
- Bot を活用し、問い合わせ対応業務の負担を軽減
やまやコミュニケーションズの事業概要をご紹介ください。
宮川さん:
辛子明太子メーカーとして1974年に設立された当社は、地元九州の食文化の価値を高めるべく、もつ鍋や出汁、菓子をはじめとするさまざまな食品の製造販売を手がけるとともに外食事業も展開。「博多もつ鍋やまや」「博多天ぷらやまや」など約50店舗を運営しています。
コロナの収束を受けて2024年にはグループ全体で過去最高の売上額を達成しました。しかし、主力商品である辛子明太子の原料価格高騰や、外食事業においては人手不足が深刻なこともあり、生産性向上のためITを活用していかに業務を効率化できるかが経営上の重要なテーマとなっています。
最初は外食事業部にLINE WORKSを導入したと伺いました。以前はどのような課題に直面していたかお聞かせください。
宮川さん:
本部では電話やメール、他社のグループウェア、SMSなど複数の連絡ツールを併用していました。さらに、本部と店舗のコミュニケーション手段として他社のビジネスチャットも導入し、企画や労務、システムなど本部の各担当者が店舗へ速やかに通達事項を発信できる体制を整えていました。しかし、ライセンス料が高価だったので、アカウントは店長以上の役職者に限定していました。そのため、副店長や一般社員、アルバイトスタッフにはメールなど別の連絡ツールを複数併用して伝達していました。
泉さん:
本部では、これまで複数のツールを経由して新商品やキャンペーンなどの情報を店舗に伝達していたため、手間がかかるうえ、情報が抜け漏れるリスクがありました。一方、店舗スタッフも複数のツールを確認する必要があり、業務負担の増加や、情報伝達不足が顧客対応の質の低下につながる可能性がありました。そこで、本部と店舗間の情報共有をスムーズにし、店舗スタッフ全員が同じ情報を確実に確認できる新しいコミュニケーションツールの導入が急務となっていました。
宮川さん:
さらに、一部の店舗では個人LINEでやり取りするケースも見られ、会社で管理できないツールを社員が使用することに対する情報セキュリティ上のリスクも懸案事項となっていました。
外食事業部の課題改善に向けて既存のビジネスチャットをLINE WORKSに切り替えられたのはなぜですか。
宮川さん:
LINE WORKSの利用料金が既存のビジネスチャットよりも低コストだったこともあり、より多くの社員にアカウントを付与できると考えました。しかし、1,000名以上いるアルバイトスタッフまでツールのアカウントを付与するとなると管理の負担やコストが大きくなります。LINE WORKSには、LINEと安全にやり取りできる外部トーク連携機能があります。この機能を活用すれば、本部と店舗の社員にはLINE WORKSのアカウントを付与し、アルバイトスタッフは自身のLINEをそのまま使用できるので、管理の負担やコストの課題を抑えつつ、店舗スタッフ全体への周知も容易になることが期待されました。
泉さん:
LINEと同様の使い勝手のLINE WORKSなら、ITツールが苦手な従業員でも簡単に利用できます。チャットだけではなく掲示板やアンケート、タスクをはじめとする豊富な機能を備えており、業務にあわせて最適な方法でコミュニケーションを取れるのも魅力でした。
LINE WORKSの運用に先立ってどんな準備をされましたか。
宮川さん:
情報セキュリティ対策としては、LINE WORKSの管理権限を持つメンバーをIT戦略推進室と外食部門の業務管理室の2名ずつに限定し、管理・セキュリティ設定の不用意な変更を防ぐようにしました。アルバイトスタッフのLINEとつながる外部トーク連携についても、特定の担当者のみが行える決まりにしています。
また、以前使っていたビジネスチャットは本部の全員が自由にチャットルームを作成できるようにしていたことから、グループが乱立してどの情報がどこにあるかすぐには分からないことがありました。その反省を踏まえ、LINE WORKSで新しいグループを作成する権限は管理者以上のみに付与することとしました。
ほかに、やり取りが煩雑になるのを避けるためにトークの「了解しました」のレスポンスはスタンプで行うことを推奨していますが、細かな運用ルールについては最初から厳密に定めず、実際に活用しながら課題を見つけて改善していくようにしています。
外食事業部でのLINE WORKSの具体的な活用シーンと導入効果をお聞かせください。
・掲示板機能と外部トーク連携で店舗スタッフへの情報伝達を効率化
・本部からアルバイトスタッフまで伝達漏れや確認不足を防止
泉さん:
本部から店舗社員への通達はLINE WORKSの掲示板機能を通じて発信し、店舗社員はその内容をアルバイトスタッフのLINEと外部トーク連携したトークルームで共有することで、本部からの情報を店舗スタッフ全体に周知しています。このように複数の連絡手段をLINE WORKSに一本化したことで、本部は情報伝達の効率化と確実性の向上を図り、さらには店舗から本部への問い合わせの削減にもつながりました。店舗社員にとっても、情報を確認する窓口が1つに集約されたことで、情報を探したり確認したりすることによるストレスが軽減したと感じています。
今後は、立ち仕事の多い店舗社員が本来の接客業務に集中できるように、本部社員も、アルバイトスタッフが所属する店舗連絡用のトークルームに加わり、店舗スタッフにとって重要な情報を直接共有する運用を検討しています。店舗社員の情報共有にかかる業務負担を軽減しつつ、伝達事項が全スタッフに確実に届けることができると期待しています。
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また、アルバイトスタッフのLINEが社員のLINE WORKSと連携したことで両者がいつでもスムーズに連絡し合えるようになり、昼から夜のシフトへの引き継ぎや勤務シフトの伝達なども円滑になりました。
アルバイトスタッフのLINEを含めたトークルームで、新メニューの作り方動画やシフト表の情報周知が格段にスムーズに
ほかに外食事業部ではLINE WORKSのどんな機能をよく活用されていますか。
【アンケート】回答者の匿名設定で社員が意見を述べやすくなった
【タスク】業務の割り振りや期限管理が効率化
泉さん:
例えば、本部が店舗の卓上POPの大きさや数を見直して適正化したい場合など、店舗スタッフの意見をヒアリングするためにアンケート機能を活用しています。店舗のオペレーションをサポートする立場から見ると、新しいシステムの導入時などに現場の意見を吸い上げるのにも有用です。また回答者を匿名に設定することで、対面の会議では発言しづらいと感じていた社員から本音の意見も得やすくなったというメリットがあります。
アンケート機能でヒアリングを効率化
タスク機能も便利で、メンバーへの仕事の割り振りや、提出物の期限管理などに重宝しています。例えば、本部から各店長に「月末までに棚卸し作業を完了してください」とタスクを依頼し、期限を設定し、進捗状況の管理を効率化しています。依頼もしやすくなり、作業の抜け漏れ防止にもなっています。
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外食事業からLINE WORKSの利用がはじまり、現在は全社員に導入されたそうですね。どのような活用効果がありましたか。
宮川さん:
電話とメール、他社のグループウェアの掲示板を主に使用していますが、会社全体の生産性向上のためには、電話やメールよりも気軽に聞けてスムーズにやりとりができるツールが必要だと考え、外食部門でLINE WORKSで培った経験や知見を活かして全社にも利用を拡大していきました。
一方で、さらに連絡手段を増やしてしまうと社員が混乱してしまうと考え、緊急の連絡は電話、緊急とまではいかない急ぎでレスポンスが欲しい場合はLINE WORKSのトーク、急ぎでなく一方的に情報発信を行う場合は既存のグループウェアの掲示板と、伝えたい情報の緊急度や活用度による使い分けのルールを明文化しました。最近はLINE WORKSでやり取りされる情報が大幅に増え、以前よりも情報共有がスピーディになり意思決定も早くなったと感じます。
また、LINE WORKSを使うようになってから、年齢・役職・部門などの垣根を越えてフラットなコミュニケーションが行われるようになったことも成果として挙げられます。本部ではパートなどの準社員が管理職に伝えたいことがあるとき、電話やメールでは直接伝えづらかったそうで、身近な社員を介して伝達していました。しかし普段使い慣れたLINEと似ているトークなら相手との心の距離感が近まり、心理的安全性が高いからか、直接メッセージが発信されるケースが増えているようです。LINE WORKSはこのように、風通しのよい組織づくりにも貢献してくれています。
さらに、以前から業務上の問い合わせに自動回答するチャットボットサービスを使っていますが、期待したほどには利用が進みませんでした。そこで、LINE WORKSのBot機能と連携させたところ、普段づかいのLINE WORKSトークルームから問い合わせができるのが便利だと利用者の数が増加しました。その結果、問い合わせ対応の業務負担が軽減したと感じています。
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LINE WORKSの活用を今後どのように発展させたいとお考えですか。
泉さん:
お客様からの意見や衛生管理データなどは、業務改善プラットフォームのkintoneで管理しています。kintoneからの通知を、誰もが普段づかいのLINE WORKSで受け取れるようにすれば、対応をいっそう迅速化にできるはずです。kintoneに限らず社内で利用する多くのツールと連携させ、「LINE WORKSを開けばたいていの情報にアクセスできる」という業務環境を構築できればさらなる業務効率アップにつながると考えています。
宮川さん:
LINE WORKSが提供しているAI製品にも興味があります。電話対応を自動化するLINE WORKS AiCallを使えば当社のコールセンターの業務負荷を減らせる可能性がありますし、LINE WORKS OCRはFAXで受け取る請求書や発注書などの内容をデータ化するのに有効だと思います。また、近くリリースされるという、LINE WORKSと音声AIを組み合わせたスマートフォン用トランシーバーアプリのLINE WORKSラジャーは、店舗スタッフのインカムとして利用できそうです。社員の業務負担の軽減と効率化、そしてお客様へのサービス品質向上に向け、引き続きIT活用を積極的に行なっていきたいと考えています。
【お話を伺った方】
宮川 貴志さん
執行役員として全社のITを統括。工場と物流も管掌しSCM改革も推進する。
泉 宏和さん
業務管理室で店舗運営にかかわる企画・管理・教育などに携わる。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2024年11月当時のものです。