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トランシーバーの通信距離はどのくらい?種類別の目安
トランシーバーの通信距離は、見通しのよい屋外なら特定小電力は1km前後、デジタル簡易無線は1〜5km程度で、IP無線は回線の届く範囲で話せます。無線機どうしで電波を直接やりとりする方式は、出力の大きいものほど遠くまで届き、出力の上限は電波法令で方式ごとに決まっています。距離は販売各社の案内による目安です。
出力が1Wを超える方式を使うには、登録か免許の手続きが必要です。
| 方式 | 出力の上限 | 免許・手続き | 見通しのよい屋外での目安 |
|---|---|---|---|
| 特定小電力トランシーバー | 10mW以下(一般的な機種) | 不要 | 1km前後。条件がよければ2km程度 |
| デジタル小電力コミュニティ無線 | 1W以下(市販機は0.5W程度) | 不要 | 1〜3km程度 |
| デジタル簡易無線 | 5W | 登録局は登録、免許局は免許が必要。無線従事者の資格は不要 | 1〜5km程度。条件がよければ10km前後 |
| IP無線・スマホのトランシーバーアプリ | 携帯電話の回線やWi-Fiを使うため、無線機の出力とは関係しない | 不要(通信契約は必要) | 回線がつながる範囲 |
表の距離は販売各社の案内に見られる目安で、同じ機種でも使う場所によって大きく変わります。
特定小電力トランシーバーは免許も登録も要らず、買ってすぐに使える方式です。
デジタル小電力コミュニティ無線は、142MHz帯と146MHz帯の電波を使う特定小電力無線局の一種です。出力が大きい分、屋外では特定小電力トランシーバーより遠くまで届きます。
デジタル簡易無線は最大5Wで送信できる無線機で、総合通信局での登録か免許の手続きが要ります。操作に無線従事者の資格は必要ありません。
IP無線やスマホのトランシーバーアプリは、携帯電話の回線やWi-Fiを通して音声を送る仕組みです。回線につながっていれば、別のフロアや離れた拠点の相手とも話せます。圏外の場所では使えません。
使う場所でどれだけ変わる?環境別の通信距離
トランシーバーの届く距離は、市街地や建物の中では見通しのよい屋外より縮み、上下の階や地下では届かないこともあります。販売各社の案内による目安では、市街地での距離は特定小電力で100〜200m程度、デジタル簡易無線で数百m〜1km程度です。
販売各社が案内している目安をまとめると、次のようになります。
| 使う場所 | 特定小電力 | デジタル簡易無線 |
|---|---|---|
| 市街地 | 100〜200m程度 | 数百m〜1km程度 |
| 建物の中の同じフロア | 100〜200m四方程度まで | 特定小電力より広い範囲に届く |
| 上下のフロア間 | 1〜2フロア程度まで。建物の構造によっては届かない | 特定小電力より多くの階に届くが、建物の構造で変わる |
| 地下・エレベーターの中 | 届きにくい | 届きにくい |
| 数km以上離れた拠点どうし | 届かない | 地形や建物しだいで、届かないことが多い |
建物の中では、木造より鉄筋コンクリート造のほうが電波を通しにくく、同じ広さのフロアでも届く範囲は狭くなります。人の多さや棚の配置、端末を身につける高さでも届き方は変わります。
IP無線とスマホのアプリなら、携帯電話の電波かWi-Fiが入る場所である限り、上下の階でも離れた拠点でも会話が可能です。地下や機械室のように携帯電話の電波が入りにくい場所で使うなら、Wi-Fiを整えておく必要があります。
導入や買い替えの前に、実際に使う場所のうち最も条件の悪い地点どうしで試し通話をしておくと安心です。販売店によっては、デモ機やレンタルで事前に試せます。
カタログの距離どおりに届かないのはなぜ?
カタログの距離は障害物のない見通しでの値で、建物や地形、金属、人の体で電波が弱まる分だけ短くなります。コンクリートや鉄筋の壁・床は電波を通しにくく、金属の棚やエレベーターは電波を反射し、人の体や水は電波を吸収するため、要因が重なるほど届く距離は短くなります。
電波を弱める主な要因は次のとおりです。
| 要因 | 届き方への影響 |
|---|---|
| コンクリートや鉄筋の壁・床 | 電波を通しにくい。間に挟む壁や床が多いほど弱まり、上下の階には特に届きにくい |
| 金属の棚・設備・エレベーター | 電波を反射する。近くにいても話せないことがあり、エレベーターの中には外から電波が入りにくい |
| 人の体・水 | 電波を吸収する。人混みの中や、端末を体に密着させた状態では届きにくい |
| 地形・高さ | 丘や建物の陰に入ると届きにくい。高い位置で使うほど届きやすい |
| ほかの無線機・電気機器 | 同じチャンネルを使う無線機との混信や、モーターなどが出すノイズで聞き取りにくくなる |
方式ごとに使う周波数も、届き方に関わります。特定小電力トランシーバーとデジタル簡易無線はUHF帯、デジタル小電力コミュニティ無線はVHF帯の電波を使う方式です。総務省の電波利用ポータル「周波数帯ごとの主な用途と電波の特徴」によると、VHF帯の電波は山や建物の陰にもある程度回り込み、UHF帯の電波はVHF帯より直進する性質が強くなります。
出力にも法令上の上限があり、一般的な特定小電力トランシーバーの出力は、特定小電力無線局の周波数と空中線電力を定めた総務省の告示で10mW以下と決まっています。そのため、一般的な特定小電力トランシーバーのなかで機種を替えても、出力が10mWを超えることはありません。
通信距離を伸ばす方法と限界
トランシーバーの通信距離は、アンテナや持ち方の工夫、中継器、出力の大きい方式への切り替えで広がりますが、建物による遮へいには限界があります。コンクリートの床を何枚も挟む上下階や地下、数km以上離れた拠点との連絡は、機器を強化しても安定しないことがあります。
アンテナと端末を持つ位置を見直す
すぐに試せるのは、使い方の見直しです。アンテナを垂直に立て、端末を腰より高い位置で持つと、電波が届きやすくなります。窓際や廊下のように見通しのよい場所へ移って話すのも一つの方法です。
これから機種を選ぶなら、アンテナの長いモデルも候補になります。無線機のレンタル会社の解説では、アンテナの長い機種は短い機種より通信が安定しやすいとされています。
中継器を置く
中継器は、無線機から受けた電波を別の周波数で送り直す機器です。壁や床で電波が遮られる場所の間に置くと、上下の階や物陰にも電波が届きやすくなります。無線機のレンタル会社の解説では、中継器を使うと届く距離が2倍程度に伸びる場合があるとされています。中継を使うには、中継に対応した無線機と、中継用のチャンネルの設定が必要です。デジタル簡易無線の中継は令和5年度の制度改正で使えるようになり、総務省の案内では免許局だけに認められています。
出力の大きい方式に切り替える
一般的な特定小電力トランシーバー(10mW)からデジタル簡易無線(最大5W)に替えると、出力の上限は500倍になり、屋外で届く範囲が大きく広がります。そのかわり、登録か免許の手続きと、毎年の電波利用料が必要です。方式の違う無線機どうしは使う周波数が違うため、交信できません。切り替えるときは、現場で使う無線機をすべて同じ方式にそろえることになります。
ここまでの方法は、どれも無線機どうしで電波を直接届ける仕組みのなかでの工夫です。上下階や地下、離れた拠点との連絡が多い現場では、回線を使う方式もあわせて比べてみてください。
必要な通信距離から方式を選ぶ
トランシーバーの方式は、カタログの最大距離より、現場で最も条件の悪い2地点の間で届くかどうかで選びます。最大距離の長い機種でも、上下の階や地下で届かなければ連絡は途切れます。目安は、1フロアで完結する現場なら特定小電力、屋外の広い現場ならデジタル簡易無線、複数階や離れた拠点を結ぶならIP無線・アプリです。
必要な距離は、次の順に確かめると見積もりやすくなります。
- 連絡が発生する地点の書き出し(1階のレジと地下の倉庫、地上の詰所と屋上など)
- 地点どうしの距離と、間にある壁・床・金属設備の確認
- 最も条件の悪い組み合わせでも届く方式の選定
現場のタイプ別に、相性のよい方式の目安をまとめました。
| 現場のタイプ | 必要な届き方 | 相性のよい方式 |
|---|---|---|
| 1つのフロアで完結する売場・飲食店・倉庫 | 同じフロアの中で100m前後 | 特定小電力 |
| 屋外の広い現場(建設現場・イベント会場・港湾) | 水平方向に数百m〜数km | デジタル簡易無線 |
| 複数階の施設(介護施設・ホテル・病院) | 上下の階をまたいで届くこと | IP無線・アプリ。無線機を使うなら中継器を併用 |
| 地下や機械室を含む施設 | 外から電波が入りにくい場所まで届くこと | Wi-Fiを整えたうえでIP無線・アプリ |
| 離れた拠点どうし | 数km以上離れた地点を結ぶこと | IP無線・アプリ |
IP無線とアプリは距離の制限を受けない一方で、携帯電話の回線を使う方式です。圏外の場所や通信障害のときは使えず、回線が混み合うと音声が遅れて届くこともあります。無線機は端末どうしで直接話すので、携帯電話の回線が止まっても使えるのが利点です。携帯電話がつながりにくい山間部の現場や災害時の連絡手段として、無線機を残しておく方法もあります。
方式が決まったら、特定小電力なら機種を選ぶときの確認項目を、デジタル簡易無線なら登録の手続きの流れと費用を、IP無線やアプリなら専用機とスマホのアプリの違いを確かめてから、見積もりや試用に進みましょう。
スマートフォンをトランシーバーのように使えるアプリには、LINE WORKSラジャーのようなサービスもあります。ボタンを押して話すPTT(プッシュ・トゥ・トーク)方式でグループに音声が届き、インターネットにつながっていれば距離の制限を受けません。
よくある質問
10km離れた相手と話せるトランシーバーはありますか?
距離に関係なく話したい場合は、携帯電話の回線を使うIP無線やスマホのアプリが候補になります。デジタル簡易無線も、山の上や海の上のように見通しのよい条件なら10km前後届くことがありますが、地形や建物の影響で大きく変わります。全国にエリアを持つ800MHz帯デジタルMCA無線は、2029年5月31日でサービスを終える予定です。いまMCA無線を使っている場合は、終了までに必要な手続きと移行先の選び方を早めに確かめておきましょう。
免許不要で遠くまで届くトランシーバーはありますか?
免許も登録も要らない無線機のうち、特定小電力トランシーバーより遠くまで届く方式には、デジタル小電力コミュニティ無線があります。市販機の出力は0.5W程度で、見通しのよい屋外では1〜3km程度が目安になります。さらに遠くまで届かせたい場合は、デジタル簡易無線の登録局が候補です。無線従事者の資格は要らず、総合通信局への登録と毎年の電波利用料で使えます。
距離を伸ばすためにアンテナを付け替えたり改造したりしてもよいですか?
改造はしないでください。総務省は電波利用ポータル「技適マークのQ&A」で、技適マークの付いた無線機を改造すると技術基準適合証明の効力がなくなり、その無線機を使うと電波法違反になるおそれがあると説明しています。違反した場合は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です。特定小電力トランシーバーは、アンテナを含めて一つの筐体に収め、容易に開けられない構造にすることが無線設備規則の技術基準で決まっています。
まとめ
トランシーバーの通信距離を決めるのは、方式と使う場所の組み合わせです。方式を選ぶ前に押さえておきたい点は次のとおりです。
- 見通しのよい屋外の目安は、特定小電力で1km前後、デジタル簡易無線で1〜5km程度
- 市街地や建物の中、上下の階、地下では届く距離が短くなり、届かないこともある
- アンテナ、中継器、方式の切り替えで範囲は広がるが、建物による遮へいには限界がある
- 上下の階や離れた拠点を結ぶなら、回線を使うIP無線やアプリが候補になる
どの方式を選ぶ場合も、最も条件の悪い地点どうしで試し通話をしてから決めると、導入後に届かない場所が見つかる心配を減らせます。
フロアをまたぐ連絡や拠点間の連絡に困っている場合は、アプリ型も選択肢になります。スマートフォンをトランシーバーのように使えるLINE WORKSラジャーも、その一つです。フリープランは0円で試せます(会話は40分で一度切断)。有償プランは30日間の無償トライアルがあります。