飲食店のインカムおすすめの選び方|種類、メリット・デメリット、厨房の騒音と水対策

飲食店のインカムは、厨房とホールのスタッフ同士の連絡を声でつなぐ通信機器で、方式によって届く範囲や手続き、防水などの備えが変わります。   この記事では、種類とおすすめの選び方、メリット・デメリット、厨房の騒音と水への対策を解説します。

目次

    飲食店でインカムが役立つ場面と向いている店

    客席と厨房が離れている店や、少人数でピークを回す店ほど、呼びに行く往復を減らせるインカムが役立ちます。

    飲食店の連絡は、厨房とホール、ホールのスタッフ同士、店長とスタッフの間で一日に何度も発生します。声の届く範囲に相手がいなければ、呼びに行くか、手が空くのを待つことになります。

    場面 やりとりする相手 インカムで伝える内容の例
    料理の仕上がり 厨房→ホール どの卓の料理ができたか、誰が運ぶか
    注文の追加・変更 ホール→厨房 追加の注文、提供の順番や取り消し
    案内と片付け 入口・ホールのスタッフ同士 空いた卓、次に案内する組、片付けの応援
    アレルギーや予約の共有 ホール⇔厨房、店長 アレルギーのある卓、予約客の到着、誕生日などの対応
    応援の依頼・店長の呼び出し スタッフ→店長・ほかのスタッフ レジや入口の応援、判断に迷うお客様対応の相談

    向いているのは、厨房から客席が見えない店、2階席や個室、テラス席がある店、ピークの時間帯を少ない人数で回している店です。反対に、カウンター中心で全員の姿が見える小さな店では、声かけだけで足りることも多くあります。インカムを入れるかどうかは、ピーク時にスタッフが連絡のために持ち場を離れている回数で考えると判断しやすくなります。

    飲食店で使われるインカムの種類

    飲食店のインカムは、特定小電力トランシーバー、デジタル簡易無線、回線を使うIP無線・スマホアプリに分かれます。

    大きな違いは、端末同士で電波を直接やりとりするか、Wi-Fiや携帯電話の回線を通すかです。

    方式 届く範囲の目安 免許・手続き 飲食店での向き
    特定小電力トランシーバー 見通しのよい屋外で数百m程度。店内は同じフロアが中心 不要 ワンフロアの店、厨房とホールが近い店
    デジタル簡易無線 見通しのよい屋外で1〜5km程度 登録または免許が必要(資格は不要) 大型店、複数フロア、駐車場や行列の整理までつなぐ店
    IP無線 携帯電話の回線がつながる範囲 不要(回線の契約が必要) 離れた店舗や配達のスタッフとの連絡
    スマホアプリ Wi-Fiや携帯電話の回線がつながる範囲 不要 複数フロアや複数店舗、本部との連絡、人の入れ替わりが多い店

    届く範囲は、メーカーや販売各社の案内に見られる目安です。壁や大型の冷蔵庫などに遮られると、店内でも短くなります。

    特定小電力トランシーバーは、無線局の免許も無線従事者の資格も要らない無線機です(総務省 電波利用ポータル「特定小電力無線局」)。本体を買えば月々の費用はかかりません。交代で話す交互通話が基本ですが、電話のように同時に話せる機種もあります。詳しくは特定小電力トランシーバーの解説で紹介しています。

    デジタル簡易無線は、特定小電力より広い範囲に届く無線機です。資格は要りませんが、無線機ごとに総合通信局への登録か免許が必要です(近畿総合通信局「簡易無線局(免許局・登録局)」)。店内だけで連絡する店では、ここまでの範囲が必要ないこともあります。

    IP無線とスマホアプリは、回線がつながっていれば階や建物に左右されにくく、別の店舗や本部とも話せます。IP無線は専用の端末と1台ごとの通信料が必要で、スマホアプリはスマートフォンを端末として使います。その代わり、Wi-Fiが届かず携帯電話の電波も弱い場所では使えません。

    店のタイプ別のおすすめ

    店の広さと、店の外まで連絡するかどうかで、候補になる方式はおおむね絞れます。

    店のタイプ 連絡の特徴 候補になる方式
    カウンター中心の小さな店 全員の姿が見える範囲で完結する 声かけで足りることが多い。使うなら特定小電力
    ワンフロアのレストラン・居酒屋 厨房とホールのやりとりが多い 特定小電力(同時通話の機種も候補)、スマホアプリ
    2階席・個室・テラス席のある店 壁や階をまたいで連絡する スマホアプリ(Wi-Fiと携帯電話の電波を確認)、デジタル簡易無線
    複数店舗を運営し、本部とも連絡する 店の外の相手ともつながりたい スマホアプリ、IP無線
    催事への出店や繁忙期だけ使う 使う期間が短い レンタルの特定小電力

    建物の構造や店内のWi-Fiによって向く方式は変わるため、表はあくまで目安です。業種を問わない方式ごとの比較は、業務用インカムの種類と選び方にまとめています。

    飲食店のインカムを選ぶ5つのポイント

    店内の端まで届くか、手がふさがっていても話せるか、接客の妨げにならないかを中心に比べると選びやすくなります。

    ①店内のいちばん遠い場所まで届くか

    声が届きにくいのは、厨房の奥や洗い場、バックヤード、2階席や個室、テラス席などです。無線機なら壁や階をまたいで届くか、スマホアプリなら店内のWi-Fiと携帯電話の電波が入るかを確かめます。デモ機やレンタル、アプリの無料プランを使い、客席が埋まって人の声が多いピークの時間帯に、条件の悪い場所同士で試し通話をしておくと確実です。

    ②手がふさがっていても話せるか

    料理やトレーを持ったままでは、本体のボタンを押せません。ボタンを押している間だけ話せるPTT(プッシュ・トゥ・トーク)方式でも、胸元やイヤホンのコードに付いたボタンで送信できれば扱いやすくなります。声を出すと送信が始まるVOX機能や、電話のように双方が同時に話せる同時通話の機種なら、ボタンの操作そのものを減らせます。

    交互通話は誰かが話している間はほかの人が送信できず、厨房とホールの短いやりとりが続くと待ち時間が生まれます。やりとりの多い店では、同時通話を候補に入れて比べてみてください。方式の違いは同時通話ができる無線機の解説で紹介しています。

    ③厨房・ホール・店長でチャンネルを分けられるか

    全員が同じチャンネルで話すと、案内の連絡も料理の連絡も全員に届き、自分に関係のある話を聞き分けにくくなります。厨房とホールのチャンネルを分け、全員に届ける共通のチャンネルを1つ用意するのが基本です。店長やホールの責任者が複数のチャンネルを同時に聞けると、店全体の動きをつかみやすくなります。同時に聞けるチャンネルの数は機種やサービスで異なるため、必要なチャンネルを先に書き出してから比べると確実です。

    ④接客中に目立たず、お客様の声も聞こえるか

    ホールのスタッフはお客様と話しながら使います。耳掛け型の小さなイヤホンマイクや片耳のワイヤレスイヤホンのように、目立ちにくく片方の耳が空くものが向いています。受信した声はイヤホンで聞くようにして、スピーカーから客席に漏れないようにします。一日中着けるので、重さや耳の痛くなりにくさも試しておきたい点です。イヤホンの種類はワイヤレスインカムの選び方で紹介しています。

    ⑤スタッフの入れ替わりや複数店舗に対応できるか

    飲食店はシフトの組み方でその日の人数が変わり、アルバイトの入れ替わりもあります。無線機はその日に働く人数分の本体が必要で、足りない分はレンタルで補う方法があります。スマホアプリはアカウントを追加・削除して人数に合わせられます。ただし、スマートフォンを店で用意するか、私物の端末を使ってもらうかは先に決めておく必要があります。

    複数店舗を運営していて、店舗同士や本部とも同じ手段で連絡したい場合は、回線を使うIP無線やスマホアプリが候補になります。

    スマートフォンをトランシーバーのように使えるアプリには、LINE WORKS ラジャーのようなサービスもあります。インターネットにつながっていれば距離の制限なく話せ、複数人が同時に話せる双方向通話と、背後の騒音を抑えるノイズ抑制はすべてのプランで使えます。手持ちのBluetoothイヤホンや有線イヤホンも使えます。

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    厨房の騒音・水・油と衛生への備え

    厨房では、騒音に負けないマイクとイヤホン、水しぶきに耐える防水の等級、手洗いとイヤホン共用のルールをそろえます。

    騒音の中で聞き取り、伝える

    厨房には換気扇や食器洗浄機、揚げ物や炒め物の音があり、ピーク時にはホールも話し声で騒がしくなります。聞き取りにくさの原因は、聞く側だけでなく話す側のマイクにあることもあります。マイクが口から離れていると、声より先に周りの音を拾うためです。口元にマイクを固定できるヘッドセットや、騒音を抑えるノイズキャンセリング機能のあるマイクを使うと、相手に届く声がはっきりします。

    聞く側は、音量を上げるだけでなく、耳に合ったイヤホンを選ぶことも大切です。厨房のスタッフは遮音性のあるイヤホン、お客様と話すホールのスタッフは片耳、というように持ち場で分ける方法もあります。聞き取りの対策はインカムが聞き取れない原因と対策でも紹介しています。

    水しぶき・油に耐えるか(IPコード)

    端末やイヤホンの防水・防塵の性能は、IP67のようなIPコードで確かめます。1桁目が粉塵、2桁目が水に対する保護の等級で、水に対する等級は次のように決められています(JIS C 0920)。

    表示 水に対する保護 飲食店での目安
    IPX4 あらゆる方向からの水の飛まつに耐える ホール、洗い場から離れた調理台まわり
    IPX5 あらゆる方向からのノズルによる噴流水に耐える 洗い場の近く、水はねの多い厨房
    IPX7 一時的に水に沈めても有害な浸水がない シンクや寸胴に落とすおそれのある場所

    IPX7だけの表示は、水に沈めたときの等級で、噴流水への保護を含むとは限りません。水はねと水没の両方が心配な場所では、IPX5/IPX7のように両方が表示された機種を選ぶと安心です。

    IPコードの試験は真水で行われ、規格は高い圧力や溶剤で洗う場合には保護が不十分なことがあるとしています。油や洗剤がかかる場所で使うなら、メーカーの案内もあわせて確かめてください。粉を多く扱う店では、1桁目の粉塵の等級(5または6)も目安になります。

    スマホアプリを使う場合は、スマートフォン本体の等級がそのまま厨房での耐久性になります。本体はポケットやケースに入れて、調理台の上に置かないようにすると、水や油がかかるのを防げます。

    手洗いとイヤホン共用のルール

    2021年6月1日から、原則としてすべての食品等事業者がHACCPに沿った衛生管理に取り組むことになりました(厚生労働省「HACCP(ハサップ)」)。厚生労働省が内容を確認した小規模な一般飲食店向けの手引書では、手洗いのタイミングとして、盛り付けの前や作業内容を変えたときなどを挙げています。

    調理や盛り付けの途中で本体やスマートフォンに触れると、そのたびに手を洗い直すことになります。厨房のスタッフは、ボタンに触れずに話せる機種や、胸元で押せるボタンを選ぶと作業の流れを止めずに済みます。

    イヤホンマイクをシフト交代で共用する場合は、交代のたびに耳に触れる部分を消毒します。耳の穴に差し込むカナル型より、耳掛け型のほうが手入れしやすく、スタッフごとに個人用のイヤーピースを用意して本体だけを共用する方法もあります。どの手順で誰が消毒するかは、店の衛生管理の決まりごとに書き加えておくと、スタッフが入れ替わっても続けられます。

    インカムのメリットとデメリット

    全員に一度で伝わり移動が減る一方、お客様の声を聞き逃しやすくなる点は、着け方と話し方の決めごとで補えます。

    飲食店でインカムを使うメリットは、主に次の点です。

    • 料理の仕上がりや空いた卓を、呼びに行かずに関係する全員へ一度で伝えられる
    • 応援の依頼や店長への相談が、その場を離れずにできる
    • 新人が判断に迷ったとき、バックヤードまで聞きに行かずに先輩へ確認できる
    • アレルギーや予約の情報を、厨房とホールで同時に共有しやすくなる

    一方で、使い方を決めずに始めると、次のようなことが起きやすくなります。

    起きやすいこと 対策
    インカムの声に気を取られ、お客様の呼びかけに気づきにくい ホールのスタッフは片耳で着ける。お客様と話している間は接客を優先し、後から応答する
    話している内容がお客様に聞こえる 受信はイヤホンで聞く。客席の近くでは、お客様の名前やほかの卓の事情を声に出さない
    連絡が増えて、作業に集中しにくい チャンネルを分ける。呼びかけは相手、自分、用件の順に短く話す
    電池切れや紛失、故障で使えない端末が出る 充電の場所と担当を決め、予備の端末を用意する
    台数や月額が積み上がり、費用が想定を超える 本体代だけでなく、人数と使う年数を掛けた合計で比べる

    導入の進め方と費用の目安

    ピーク時の試し通話、チャンネルと話し方の決めごと、1店舗での試用の順に進めると、使われないまま終わる失敗を防げます。

    1. 使う場所・人数・連絡する相手を書き出し、デモ機やレンタル、アプリの無料プランで、ピークの時間帯に試し通話をする
    2. チャンネルの分け方、呼びかけ方、客席の近くでの話し方、充電と保管の担当を決める
    3. 1店舗や特定の時間帯で試し、スタッフの意見を聞いてから台数やプランを決める

    費用のかかり方は方式によって異なります。特定小電力トランシーバーは本体の購入が中心で、販売各社の目安では1台1万〜3万円程度です。デジタル簡易無線は本体に加えて、1台あたり年数百円の電波利用料がかかります。

    IP無線は本体に加えて1台ごとの通信料が毎月かかり、スマホアプリは手持ちの端末を使えれば、ユーザー数に応じた月額が中心です。無線機はイヤホンマイクや予備の電池、故障したときの買い替えも見込んでおくと、比べるときにずれが出ません。方式ごとの相場は業務用インカムの値段と価格相場で比べています。

    よくある質問

    インカムとトランシーバーは何が違いますか?

    現場ではほぼ同じ意味で使われています。ヘッドセットやイヤホンマイクを着けて話す形をインカム、本体を手に持って話す無線機をトランシーバーと呼ぶことが多くあります。トランシーバーにイヤホンマイクをつなげば、インカムとして使えます。両手を使う場面が多い飲食店では、イヤホンマイクを着ける形が向いています。詳しくはインカムとトランシーバーの違いで解説しています。

    アルバイトの私物のスマートフォンをインカムに使ってもよいですか?

    使えますが、始める前に決めておきたいことがあります。本人の同意を得ること、業務用のアカウントを使い、辞めたときに削除すること、通信量や電池の負担をどう扱うか、紛失したときの連絡先です。私物を使いたくないスタッフのために、店で用意する端末を数台置いておくと運用しやすくなります。私物端末を業務に使うときの考え方はBYODの解説で紹介しています。

    インカムはレンタルと購入のどちらがよいですか?

    使う期間で選ぶのが基本です。催事への出店や繁忙期など短い期間だけ台数を増やすなら、レンタルは初期費用を抑えられ、終わったら返却できます。毎日使う分をレンタルで借り続けると、購入より割高になりやすくなります。人数の増減が多い店では、ユーザー単位で契約できるスマホアプリも比べる候補になります。

    まとめ

    飲食店のインカムを選ぶときに押さえておきたい点は、次のとおりです。

    • 厨房から客席が見えない店、2階席や個室がある店、少人数でピークを回す店ほど役立つ
    • ワンフロアなら特定小電力、複数フロアや複数店舗ならスマホアプリやデジタル簡易無線、IP無線が候補
    • 厨房では口元のマイクとIPコードで防水の等級を確かめ、手洗いとイヤホン共用のルールを決める
    • ホールは片耳で着け、客席の近くでの話し方を決めておく

    候補を2つほどに絞ったら、ランチやディナーのピークに、厨房の奥や2階席など声が届きにくい場所同士で試し通話をしてみてください。インカム以外の店舗運営の見直しもあわせて進める場合は、飲食店のオペレーション改善の方法も参考になります。

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