店舗DXとは|施策・メリットと課題・進め方を解説

店舗DXとは、デジタル技術とデータを使って、接客・在庫・レジ・シフト・連絡など店舗の仕事の進め方を見直す取り組みです。   この記事では、背景と5つの領域の具体的な施策、メリットと課題、進め方の5ステップを解説します。

目次

    店舗DXとは|IT化との違いと2つの方向性

    ツールを入れること自体ではなく、データを使って店舗の仕事の進め方と接客を変えることが店舗DXの中身です。

    経済産業省はデジタルガバナンス・コードの中でDXを定義しています。データとデジタル技術を活用して、製品やサービス、ビジネスモデルに加え、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土まで変革し、競争上の優位性を確立することです。店舗DXは、この考え方を売場・バックヤード・レジといった店舗の現場に当てはめたものです。

    IT化との違いは、どこまで変えるかにあります。セルフレジを入れるのはIT化の段階です。レジに立っていたスタッフの時間を品出しや接客に回し、店舗の人員配置や動き方まで組み替えたときに、DXと呼べる状態になります。

    店舗DXの施策は、ねらいによって大きく2つの方向に分けられます。

    方向性 ねらい 主な施策の例
    店舗運営のDX 作業時間を減らし、少ない人数でも回る店舗にする 自動発注、電子棚札、クラウドのシフト管理、スタッフ間の連絡手段の見直し
    顧客体験のDX 待ち時間を減らし、買い物や来店を便利にする セルフレジ、キャッシュレス決済、モバイルオーダー、会員アプリ

    2つは切り離されたものではありません。レジや発注の作業が減れば、その分だけお客様と話す時間を取れるようになり、体験の向上にもつながります。

    店舗DXが求められる背景

    人の入れ替わりが大きく人手も足りないこと、ECやキャッシュレスの広がりで買い方が変わったことが主な背景です。

    人の入れ替わりが大きく、人手も足りない

    厚生労働省の令和7年雇用動向調査結果の概要によると、2025年の1年間に入職した人が最も多かった主要産業は「宿泊業,飲食サービス業」で、122万600人でした。「卸売業,小売業」は117万8,300人で3番目です。離職者数も「卸売業,小売業」が112万800人で2番目に多く、店舗のある業種は人の出入りが大きいことが分かります。

    中小企業庁の2026年版中小企業白書は、中小企業・小規模事業者の人手不足は依然として深刻だとしています。中小企業の雇用者数は、中位推計で2040年に2018年比で約8%低下する可能性があるとも示されています。

    新しいスタッフが入るたびに、商品の場所や売場のルール、連絡の手順を教える必要があります。人を増やして乗り切るのが難しくなるなか、同じ人数で回せる仕組みと、誰が入っても同じように動ける手順が求められています。

    ECやキャッシュレスの広がりで、買い方が変わった

    経済産業省の令和6年度電子商取引に関する市場調査によると、2024年の国内の消費者向けEC市場は26.1兆円(前年比5.1%増)で、物販のEC化率は9.8%でした。同じく経済産業省が2025年3月に公表した算出結果では、2024年のキャッシュレス決済比率は42.8%でした。

    お客様はネットで在庫や価格を調べてから来店し、支払いも現金以外を選ぶことが増えています。店舗には、在庫や会員の情報をその場で確かめながら接客することや、複数の支払い方法に対応することが求められるようになりました。

    店舗DXで取り組む5つの領域と具体的な施策

    接客・在庫と発注・レジと決済・シフトと教育・スタッフ間の連絡の5つに分けると、手をつける順番を決めやすくなります。

    領域 具体的な施策の例 効果を確かめる指標の例
    接客・販売 手元の端末での在庫・商品情報の確認、会員アプリ、デジタルサイネージ 在庫確認のために売場を離れる回数、接客に使える時間
    在庫・発注 在庫の見える化、販売データにもとづく自動発注、電子棚札 発注作業の時間、欠品や廃棄の量
    レジ・決済 セルフレジ・セミセルフレジ、キャッシュレス決済、モバイルオーダー レジの待ち時間、レジに入る人数
    シフト・教育 クラウドのシフト・勤怠管理、動画のマニュアル シフト作成にかかる時間、新人が独り立ちするまでの期間
    スタッフ間・本部との連絡 インカムやトランシーバーアプリ、ビジネスチャット、本部からのタスク配信 呼び出しや確認のための移動、指示の実施漏れ

    在庫・発注とレジ・決済は、効果を数字で追いやすい

    発注にかかる時間や欠品、レジの待ち時間は、導入の前後で比べやすい指標です。効果を社内に説明しやすく、最初に取り組む領域の候補にしやすい分野です。

    セルフレジやモバイルオーダーで空いた時間を、品出しや接客、売場づくりにどう振り分けるかまで決めておくと、作業時間の削減が店舗の変化につながります。

    接客とシフト・教育は、現場で使われるかどうかで成果が決まる

    接客用の端末は、操作に手間がかかると、忙しい時間帯ほど使われなくなります。画面の操作が少なく、スタッフが迷わず使えるかどうかを、導入前に確かめておくことが大切です。

    シフトの希望をスマートフォンから出せるようにしたり、よく聞かれる作業を動画のマニュアルにしたりするだけでも、店長の作業時間や新人に教える負担は変わります。

    スタッフ間の連絡は、ほかの施策を支える土台になる

    レジ応援の呼び出し、バックヤードへの在庫確認、本部からの売価変更の連絡などは、1日に何度も発生します。スタッフを探して売場を歩いたり、館内放送や口頭の伝言で聞き逃しが起きたりすると、そのたびに接客が止まります。新しい仕組みの使い方や変更点を店舗に伝えるのも、この連絡の役割です。

    売場の連絡手段としては、専用のインカムのほか、スマートフォンを使うアプリも選べます。種類や選び方は店舗・小売のインカムを解説した記事で紹介しています。

    スマートフォンをトランシーバーのように使うアプリには、LINE WORKS ラジャーのようなサービスもあります。ボタンを押して話すとグループに音声が届いて履歴に残り、アドバンストプランでは発話を自動でテキストに変換できます。

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    店舗DXのメリットと課題

    作業時間の削減や接客の質の安定が期待できる一方、費用やスタッフの習熟、情報の管理といった課題もあります。

    主なメリット

    • レジ・発注・連絡の作業が減り、接客や売場づくりに時間を回せる
    • 待ち時間が短くなり、支払い方法の選択肢も増える
    • 経験に頼っていた発注や作業の手順をそろえ、新人でも同じように動ける
    • 店舗ごとの売上や在庫をすぐに確認でき、本部と店舗が同じ数字をもとに話せる

    課題と対策

    課題 起きやすい状況と対策
    導入費用と月々の利用料 店舗数が多いほど、端末や利用料の負担が大きくなります。1店舗で試して効果を確かめてから広げ、補助金の活用も検討します。
    スタッフの習熟 操作が難しいと、忙しい時間帯に使われなくなります。操作の少ないツールを選び、短い練習の時間と困ったときの相談先を用意します。
    導入そのものが目的になる 減らしたい作業が決まっていないと、入れたあとに何も変わりません。導入前に、変える業務と効果を測る指標を決めておきます。
    本部と店舗の温度差 本部だけで決めた仕組みは、店舗の実情に合わないことがあります。計画の段階から店長やスタッフに意見を聞き、試す店舗も相談して決めます。
    ツールどうしがつながらない 領域ごとに別々に入れると、同じ情報を何度も入力することになります。今使っているPOSや勤怠の仕組みと連携できるかを確かめて選びます。
    個人情報と端末の管理 会員情報や業務用のスマートフォンを扱う範囲が広がります。閲覧できる人の範囲や、端末を紛失したときの手順を導入と同時に決めておきます。

    店舗DXの進め方|5つのステップ

    1店舗の業務の棚卸しから始め、試験導入で効果を確かめてから、ほかの店舗へ広げるのが基本の流れです。

    Step1 1日の業務を書き出す

    開店準備から接客、レジ、発注、品出し、閉店後の締め作業まで、1日の流れを時間順に書き出します。それぞれの作業にかかる時間と担当者、頻度もあわせて整理します。本部が考えている手順と実際の店舗の動きが違うことも多いため、スタッフに直接聞きながら進めると、見えていなかった手間が分かります。

    Step2 取り組む業務を絞り、指標を決める

    書き出した業務のなかから、最初に取り組む業務を1〜2つに絞ります。目安は、時間や件数が多いこと、今の業務を止めずに入れられること、効果を測れることの3点です。あわせて、発注にかかる時間やレジの待ち時間、呼び出しの回数など、現場の動きに直結する指標を決めておきます。

    Step3 1〜数店舗で試す

    全店で一斉に切り替えず、協力を得やすく、自社の標準的な店舗に近いところで試します。ツールの使い勝手だけでなく、誰がいつ使うか、困ったときに誰に聞くかといった運用のルールも、この段階で一緒に決めていきます。

    Step4 効果を確かめ、使い方を直す

    試験期間が終わったら、Step2で決めた指標を導入前と比べます。効果が小さい場合は、原因がツールにあるのか、使い方や業務の組み方にあるのかを分けて見直します。「楽になった」「かえって手間が増えた」といったスタッフの声も、ほかの店舗に広げるときの参考になります。

    Step5 ほかの店舗に広げ、定着させる

    立地や規模の近い店舗から順に広げます。マニュアルを配るだけでなく、導入後しばらくは相談を受ける窓口を設けておくと、店舗ごとの事情に合わせて調整できます。うまくいった店舗のやり方をほかの店舗に共有すると、定着も早まります。

    よくある質問

    店舗DXと小売業DXはどう違うのですか?

    店舗DXは、売場やバックヤード、レジなど店舗単位の接客と運営を変える取り組みです。小売業DXは、店舗に加えて物流や本部の経営管理、ECまで含めた事業全体を対象にします。店舗DXは小売業DXの一部と考えると整理しやすくなります。事業全体の進め方は小売業DXを解説した記事で紹介しています。

    小規模な店舗でも店舗DXに取り組めますか?

    取り組めます。店舗数が少ない分、決めてから試すまでが早く、小さく始めやすい面があります。大がかりなシステムを入れ替える必要はなく、月額で使えるクラウドのシフト管理や会計、連絡のツールなど、1つの領域から始めて効果を確かめていく方法が向いています。

    店舗DXに使える補助金はありますか?

    中小企業・小規模事業者であれば、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)や中小企業省力化投資補助金を使える場合があります。デジタル化・AI導入補助金はPOSレジや在庫管理などのITツールの導入に使え、IT導入支援事業者を通じて申請します。枠ごとの補助額や申請の流れはデジタル化・AI導入補助金を解説した記事でまとめています。要件は公募ごとに見直されるため、最新の公募要領を確認してください。

    まとめ

    店舗DXは、データとデジタルの仕組みを使って、店舗の仕事の進め方と接客を変える取り組みです。進めるうえで押さえておきたい点は次のとおりです。

    • 接客・在庫と発注・レジと決済・シフトと教育・スタッフ間の連絡の5領域で、施策と指標を整理する
    • 人の入れ替わりの大きさと、ECやキャッシュレスによる買い方の変化が背景にある
    • 費用・習熟・情報管理の課題は、小さく試すことと運用ルールづくりで備える
    • 1店舗の業務の棚卸しから始め、試験導入で効果を確かめてから広げる

    何から始めるか迷ったときは、1つの店舗で、どの作業に誰がどれだけ時間をかけているかを書き出してみてください。毎日繰り返している発注やレジ、連絡の作業から、最初に取り組む候補が見えてきます。

    売場やバックヤード、本部との連絡を見直す場合は、スマートフォンをトランシーバーのように使える LINE WORKS ラジャーも選択肢の一つです。フリープランは0円で試せます(会話は40分で一度切断)。有償プランは30日間の無償トライアルがあります。

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