再春館製薬所のシステム会社として1985年に設立。ドモホルンリンクル事業の成長の中で培った「リテンションマーケティング」は、一人一人のお客様の満足を追求するコミュニケーションノウハウとして、独自の価値を生み出している。高いリピート率を実現するノウハウ・フレームワーク・システムソリューションを最大限活用したビジネスソリューションとしてサービス化し、ビジネス課題を持つすべての企業へと展開している。
本事例のポイント
-これまでのオペレーションを変えずにペーパーレスできるサービスとしてリリース
-書き手によって癖の異なる手書き文字、名前、長文の読み取り精度が向上
-様々な種類の書類に対応し、手書き文字をリアルタイムにデータ化
9割以上の顧客満足度を支えるオペレーターがメモする手書き文字。1日7,000枚以上の手書きメモをペーパーレス化した仕組みを外部へ提供し、同じ課題を持つ企業の支援をしたい
今回、LINE WORKS OCRを導入していただいた「タブレットお客様カルテSHIORI」について教えてください
荒川さん :
「タブレットお客様カルテSHIORI」は、タブレット端末を活用したDX推進やペーパーレスを支援するサービスです。
元々、再春館製薬所のコールセンターで稼働しているシステムを活用しており、オペレーターがお客様の会話情報を、紙にメモしPCへ手入力するという作業をせずに、業務のデジタル化・ペーパーレス化を推進することができます。
弊社と同じように、コールセンターや店舗での接客、現場の業務などで、手書きしたものをPCへ入力したり、スキャンするという運用が残っている企業で、紙書類のデータ化や情報の再利用(データ活用)に課題を持っている方の課題解決方法として、提供しています。
「タブレットお客様カルテ SHIORI」の全体フロー
佐藤さん :
そもそも、我々がSHIORIを開発した経緯として、グループ会社である再春館製薬所の「手書きの文化」についてご紹介させてください。
再春館製薬所のドモホルンリンクル事業は、売り上げの9割以上がリピートのお客様という高い顧客満足度を誇っています。これを支えているのがコールセンターです。
電話を受けるスタッフ「プリーザー」たちのきめ細やかな電話対応が、顧客化やリピート率に大きく関わっています。
日に7,000件を超えることもあるコールセンターの業務において、活用されていたのが手書きの帳票です。
一般的なコールセンターでは、数多くのお電話を効率的に対応するため、お客様情報をPCに入力して残す方式がとられていますが、我々はキーボードの使用を極力控えています。
なぜなら、タイピングの慣れ不慣れによって、お客様とのお話し以外に意識がいくのを防ぐためです。
我々が目指すのは、一人ひとりのお客様にパーソナライズされた対応。お客様との会話に集中するために、誰もが躊躇なくメモを取れる手書きにこだわってきました。
一方で、ペーパーレス化はかねてよりの至上命題でした。
お客様のご要望によって異なるフォーマットの紙帳票を使いわけるため、プリーザーの机には何十種類もの紙帳票が常にストックされ、お客様対応をするたびに、メモが書かれた紙が増え続けます。
日に7,000件の問い合わせがあるということは7,000枚の紙を使用することですから、紙に書いてある情報のデジタル化と資源の問題に、かねてより向き合わざるをえませんでした。
荒川さん :
SHIORIであれば、プリーザーが1台のタブレット内で、問い合わせ内容に合わせた帳票をワンタッチで選び、直感的に手書きでタブレット上に書き込んでいくことができます。
そこにAI-OCRの機能を追加することで、手書きで書いた情報をボタンひとつでデータ化することができるようになりました。
ペーパーレスによって紙の保管問題を解決し、資源も大切にできる。
さらにデジタル化した情報をデータ活用へと繋げることでビジネスをより活性化し、お客様にとって価値のある対応を可能にし、それに集中することができるようになります。
手書きにこだわり、誰もが簡単にできるペーパーレス化を実現することで、企業・実際に使うスタッフの方々・お客様すべてにとって優しい作業の効率化、DX推進につながる仕組みを作りました。
あれだけ読めなかった手書きで書いた名前がこんなに読める!レスポンスの速さと座標情報も開発担当には有り難かった
LINE WORKS OCR導入に至るまでの経緯を教えていただけますか?
荒川さん :
実は、SHIORIの立ち上げ時には他社のAI-OCRを導入していたのですが、その読み取り精度に満足がいかず、今回LINE WORKS OCRに乗り換えを行いました。
というのも、認識精度に関して大きく3つの課題があり、「手書きであること」「お客様の名前の読み取り」「長文の読み取り」の難しさが挙げられます。
1つ目の手書きであることは、書き手によって文字の形が異なること、さらには電話対応をしながらの記入のため、時には走り書きのような癖の強い手書き文字もきちんと読み取ってもらわねば意味がありません。
また、2つ目の名前についてが一番の課題で、他社のAI-OCRでは韓国語など別の言語で変換されてしまうことが多々ありました。
3つ目の長文に関しても、文章が長ければ長いほど読み取り精度がガクッと下がってしまう…。
このままではサービス化は難しいと考えていました。
阿川さん :
そのようなタイミングでLINE WORKS OCRの認識精度が高いと知り、調査をはじめました。
同時に比較したAI-OCRは15製品。その中から選定するために、まず3つのポイントを挙げました。
1つ目が認識精度。2つ目は、気軽にトライアルができるかどうか。そして3つ目はAPIで提供されており、手書き文字の認識処理の送受信がスムーズであることでした。
他社製品の中には、「夜中にまとめてデータ解析をしてまとめてデータを返す」というバッチ処理のような製品もありましたが、我々が求めていたのは、お客様対応中に手書きでメモをして、完了後にボタンを押せばリアルタイムでデータ化が完了するものでした。
これら3つを満たすものとして、残ったのは4社。
その中からLINE WORKS OCRに決めた理由は、読み取り精度の高さと価格です。
荒川さん :
LINE WORKS OCRは本当に価格が安くて。
他社とは桁が違ったので、「この読み取り精度でこの価格で本当にいいのか?!」と逆に心配したくらいです(笑)。
鈴木さん :
そして、一番の課題であった名前の読み取りも、圧倒的に精度が高かったですね。
阿川さん :
最終的には、旧エンジンとLINE WORKS OCRの2択となり、検証を行いました。
その際は、当システムにプロトタイプとしてOCRを組み込んだのち、人名・数値・電話番号・文章など900項目(10,000文字)以上の手書きデータを作成。
それを旧エンジンとLINE WORKS OCRで読み取り、認識結果の一致率を算出しました。
結果、LINE WORKS OCRの精度がとても高かったので、決め手となりました。
荒川さん :
あれだけ誤認識されていた名前が、LINE WORKS OCRでは次々と正しく認識されていく様子にとても感動し、ワクワクしたことを覚えています。
名前は、お客様を認識する最初の入り口です。
そこが間違っていたら失礼極まりないですし、その後の信頼も育めません。
そういった意味で、一番重要視していた名前の読み取り精度が高かったLINE WORKS OCRの導入を決めました。
開発についてはいかがでしたか?
阿川さん :
LINE WORKS OCRの開発のためのサービスサイトがあるのですが、API仕様が丁寧に説明されているので、実際に試して結果を確認するまで全くといっていいほど時間がかかりませんでした。
開発目線で言うと、API連携自体はどこの製品も大きな差はないと思うのですが、LINE WORKS OCRの場合はリファレンスが充実していることにアドバンテージがあるなと感じています。
また、読み取りの処理時間が短いのも嬉しいポイントでしたし、非定型の帳票を扱うため、レスポンスに座標情報が含まれているかどうかも大切なポイントでした。
帳票を読み込んだときに、読み取りたい情報が1箇所であれば座標情報は必要ないのですが、2箇所以上ある場合には読み取ったデータがどの項目かがわからなくなってしまうので、データの付け合わせが困難になります。
そうすると、1枚の帳票に対して部分ごとに分けてリクエストを投げなければならない。もし1枚から4箇所読み取りたいと思ったら、4回リクエストを投げなくてはならなくなり、それが7,000枚となると…という話ですよね。
LINE WORKS OCRであれば1回リクエストを投げるだけで、座標によって情報を分類・整理してデータ化してくれるので、その後のデータ活用もスムーズに行えます。本当に使いやすいです。
あれだけ読めなかった手書きで書いた名前がこんなに読める!レスポンスの速さと座標情報も開発担当には有り難かった
営業の観点から、AI-OCRを変更したことでお客様からの反応はありましたか?
鈴木さん :
そうですね。
実は、SHIORIをトライアル中の1社が使用中にAI-OCRを切り替えたのですが、途端に「きちんと読み取れるようになった」と連絡をいただきました。潰れやすい太いペンでの手書き文字や癖のある字でもLINE WORKS OCRはバッチリ読み取ってくれたので、お客様も気に入ってくださって。
今は手書き文字を容易にデータ化できたことに満足いただけていますが、今後はデータ化した後の情報を、お客様へのサービス向上やマーケティングに有効活用いただけたら嬉しいです。
これまで担当者の頭の中や紙の帳票にしかなかった情報を検索することや、メンバー間で共有することができるようになったので、それがうまく使えるといいですよね。
荒川さん :
例えば、受付表を使っていたある企業では、その帳票をSHIORIに代替することで、タブレット上で手書きした文字をデータ化し、CSV出力することができるようになります。
現場では変わらず手書きで受付ができるためオペレーションを大きく変えるなどの負担が少ないですし、本部では受付で得た情報をデータ化してCSV出力し、情報を活用することもできます。
我々はただ作業を効率化したいのではなく、あくまでお客様ファーストなので、お客様対応の品質向上と作業効率化を両立したいと思っているんです。
SHIORIに関わるすべての方が、ストレスなく、いつものオペレーションをしながらデータ化できる仕組みなのですね。
荒川さん :
はい。SHIORIでは他にも取り込んだ帳票上に新たなフィールドやチェックボックスを加えるなど、アレンジもできます。
手書きで書くことは変わらないけれど、付加価値をプラスし、より良いサービスを目指しているからです。
データ化した後の活用についても、弊社には顧客満足度を向上するナレッジがありますので、今後はSHIORI導入後のサポートまで併せて行っていけたらと思っています。
再春館システムが目指す「幅広い年齢層のお客様でも満足度の高いDX」
今後の展望を教えてください
鈴木さん :
再春館製薬所が大切に育んできた「手書きの文化」。
それは、幅広い年齢層のお客様と向き合い続けているからこその、変わらない文化です。
それを守りながら、お客様の満足度を落とさずに、ペーパーレスを実現する。そのために生まれたのがSHIORIです。
世間ではDXや作業効率化が進み、例えば手書きが煩わしいと感じやすい住民票の申込書などが、オンライン申請に切り替わりましたよね。
慣れている人にとってはスマホ上で簡単にできるようになりましたが、それを使えない人たちもたくさんいます。
荒川さん :
使えない人を取り残していくDXが進んでいく中でも、SHIORIはおそらくどのような年代の方でも分け隔てなく使っていただけるインターフェイスだと考えています。
DXや業務効率化が届きにくい部分にこそ、広げていきたいと思います。
※掲載している内容(製品名含む)、所属やお役職は取材を実施した2023年6月当時のものです。