2024年9月18日に開催された「LINE WORKS DAY 24 in 大阪」にて、
スーパーマーケット大手の株式会社西友(以下、西友)が、AIを活用した電話応対の取り組みを発表しました。
同社は、LINE WORKS AiCallを導入し、PoC(概念実証)を実施。
その結果、入電応対の効率化だけではなく、新たな顧客体験の創出にも繋がる可能性が見えてきました。
本記事では、西友とLINE WORKSが共同で行ったこのプロジェクトの詳細と、その成果についてご紹介します。
<本事例のポイント>
-西友では入電対応の効率化を目的に「LINE WORKS AiCall」を用いたPoCを実施
-PoCでは問い合わせに対して、AiCallがどの程度対応できるのかを検証
-「営業時間」や「テナント情報」に関する問い合わせはAiCallで十分対応可能なことが判明
-今後はLLMを用いた新機能による「AI回答精度の向上」や西友のビヘイビアデータを活用した「AIによる商品提案」の実現を目指す方針。
<登壇者>
野村 優 氏
株式会社西友 執行役員 最高財務責任者
財務本部長 兼 人事総務本部長
村上 正人
LINE WORKS株式会社
プロダクト営業本部 本部長
田村 佳士
LINE WORKS株式会社
事業企画本部 AIプランニング
月250万件以上の利用実績。LINE CLOVAのAI技術を用いた「AiCall」
2024年9月18日に行われた「LINE WORKS DAY 24 in 大阪」では、LINE WORKSを活用する企業の事例が数多く発表されました。
その中でも特に注目を集めたのが、スーパーマーケット大手の西友による、AIを活用した電話対応の取り組みです。
西友が導入したのは、LINE CLOVAのAI技術をベースにした自動応答システム「LINE WORKS AiCall」で、月間250万件以上の利用実績を誇ります。
事例講演の大トリを飾ったのは、200店舗以上の幅広い店舗網でスーパーマーケットを展開する西友株式会社です。同社は、「西友のリテールテック最前線!入電対応をAIとLINE WORKSで効率化し、接客の充実へ」と題し、AIを活用した電話対応の取り組みを発表しました。
講演の冒頭では、当社の事業企画本部 AIプランニング 田村 佳士(以下、田村)が、西友と共同で導入に取り組んだ入電対応効率化プロジェクトにおいて導入した「LINE WORKS AiCall(以下、AiCall)」について詳しく説明しました。
田村は、「AiCallは、AIが自動で電話に対応するシステムです。スマートスピーカーやスマホのアシスタント機能も同システムの一種で、自然な会話で質問に答えることができます。
LINE CLOVAのAI技術や会話制御の仕組みを組み合わせ、まるで人と話しているような自然な対話応答を実現している点が特長です」と説明しました。
田村の説明の通り、AiCallは、スマートスピーカーでおなじみのLINE CLOVAのAI技術を応用した、自然な会話ができる電話応答システムです。
すでに、ヤマト運輸株式会社やソフトバンク株式会社といった大手企業で導入されており、月間250万件以上の問合せに対応しています。
当社のプロダクト営業本部 本部長の村上 正人(以下、村上)は、AiCall導入状況について、興味深い変化があると話しました。
「以前はコールセンターでのご利用が中心でしたが、最近では飲食店やオフィスなど、さまざまな業種でAiCallが活用されるようになってきました」
AiCallの導入がさまざまな業種に広がっている背景には、深刻な人手不足問題があります。帝国データバンクの調査でも明らかなように、多くの企業が人手不足に悩まされており、特に2030年には、大阪市と横浜市の合計人口に匹敵する644万人の人手不足が予測されています。
このような状況下で、AiCallのようなAIを活用したソリューションへの期待が高まっているのです。
こうした人口減少による構造的な人手不足に対抗する一般的な手段の1つがデジタル戦略の推進です。
西友のデジタル戦略の一環として着目したのは入電対応業務の効率化
プライベートブランド「みなさまのお墨付き」や目利きバイヤーが選び抜いた生鮮食品「食の幸」などで支持を集める大手スーパーマーケットの西友では、小売業は従来の販売業からデジタルマーケティング業化への転換を図ることが今後のビジネスにおける鍵であるとの考えに基づいて、デジタル戦略に注力しています。
本事例講演に登壇した株式会社西友 執行役員 最高財務責任者の野村 優氏(以下、野村氏)は同社のデジタル戦略について次のように語りました。
「オンライン(ネット)でもオフライン(実店舗)でも、お客様の購買行動に寄り添って最適なサービスを提供していくために、データを活用しながら店舗ごとの品揃え、売場づくりなどに反映させていく取り組みを行っています。店舗型ネットスーパーに特化して力を入れていくのも、そうした考えからです。
具体的には、実店舗とネットスーパーでの商品別買い分け分析等を行い、実店舗とネットの併用者の拡大および1顧客当たりの消費額を上げる施策を展開中です」(野村氏)
こうしたデジタル戦略の一環として、西友が着目しているのが「店舗の入電対応の効率化」です。
「労働力人口が減少している中、限られた人員で、接客や品出し、店内加工など、お客様に直接価値を提供する業務に、従業員をもっと集中させたいと考えています。そこで、電話対応と言った事務的な業務を効率化し、従業員が本来の業務に専念できる環境作りを目指しています」(野村氏)
AIで何が解決できた?AiCallを用いた入電対応のPoC(概念実証)を実施
入電対応の合理化を図りたい西友は、入電対応の仕組みの刷新を図るべく、当社とタッグを組んで以下PoC(概念実証)を実施しています。
<PoCの内容>
取り組み:一次受付をAI(AiCall)が対応し、問い合わせ内容に応じて店舗転送やAI回答を行う。併せて「どのような目的の電話がどの程度店舗にかかってくるのか」「その問い合わせをAIでどれくらい対応できるのか」を検証。
目指すゴール:AIで問い合わせ内容毎に対応者を振り分け、店舗の電話対応を効率化する。これにより、より多くのお客様に回答すると同時に、アソシエイト(西友の従業員)の時間を売場改善や接客に注力する。
PoCの結果はどうだったのでしょうか。
まず、店舗にかかってきた問い合わせのうち、AiCallが内容を認識できなかった“判定不可を除いたもの”をカテゴリー別に分けた結果が以下の通りです。
カテゴリー | 割合 | |
1位 | 在庫確認 | 55.0% |
2位 | 忘れ物 | 17.7% |
3位 | テナント情報 | 8.1% |
4位 | 商品不備 | 3.6% |
5位 | 営業時間照会 | 3.2% |
上記の通り、在庫確認が全体の問い合わせの半分以上を占めていることが分かりました。
一方、AIでの要件判定結果については、20.3%が「判定不可」という結果となりました。
判定不可となる内容には例えば、「こんな感じの商品ありまか?」というような曖昧な問い合わせや、発話者以外の発言者の声(例えば、子どもの声)が混じってしまった問い合わせなどが挙げられます。
では、店舗へかかってきた問い合わせに対して、AI(AiCall)はどの程度対応できたのでしょうか。
その結果が上記の図です。
まず、AIで解決できた用件には「営業時間教えてください」というような「営業時間照会」が挙げられます。
野村氏は「PoCを通じて、営業時間についてはAIの方が人間よりもスピーディーなだけでなく、正確に答えられることが分かりました。人間の場合、うっかり間違えた時間を教えてしまうこともありますからね」と入電対応におけるAI活用の新たな発見を説明しました。
また「チョコレートの在庫が知りたい」というような「在庫確認」については、AIが担当者へ転送することで解決できました。一方、「商品の問い合わせ」については発話情報が少なく、AIでは対応できないことが明らかになりました。
「在庫確認」問い合わせにはWeb化とLLM活用で、よりユーザー意図に沿ったAI回答を目指す
PoCの結果から、西友が改善領域でもありまたビジネスチャンスとして期待しているのが「在庫確認」に対する対応です。
まず「在庫確認」に関する現状について、野村氏は「PoCでは問い合わせのうち約4件に1件にあたる24.3%が『在庫確認』でしたが、現状はAIが店舗へ転送して対応する必要があります。またユーザーが要件を正しく発話できていないがために誤振り分けや認識エラーが発生していました」と説明。
これら課題の改善のため、西友と当社では次の2つの取り組みに着手しています。
- ①在庫確認のWeb化:在庫状況を音声案内もしくはSMSで通達する
- ②深堀り新機能:LLM(大規模言語モデル)と既存モデルの組み合わせにより、AI回答の精度を高める
「② 深掘り新機能」では西友と当社が開発した、LLMを用いた新機能が使われています。同新機能を使うことで、例えば「りんご」だけのような曖昧な発話に対してAIが「『在庫確認をしたい』『原材料問い合わせ』のように再度発話してください」と、確信度の高い2つのカテゴリーを再聴取する仕組みを構築しました。これにより、よりユーザーの意図に沿った高精度なAI回答が可能になる可能性があります。
潜在ニーズを引き出して商品提案を行う、攻めのAiCall活用も検討したい
では、西友は「在庫確認」の問い合わせに対して、どのようなビジネスチャンスを見出しているのでしょうか。野村氏は今後の展望を次のように話しました。
「スーパーのお客様は、事前に購入する商品を明確に決めているとは限りません。例えば、『魚料理を作ろうと思っていたけれど、お肉が安いから変更しようかな』といったように、購入意欲は流動的です。このようなお客様が『在庫確認』をしてきた場合、当社が持つお客様のビヘイビアデータと突き合わせて、ユーザーが潜在的に欲しいであろう商品をAI(AiCall)が提案する攻めの仕組みを構築できれば、そこにトップラインを伸ばし得る大きなビジネス機会が生まれると考えます」(野村氏)
さらに野村氏は「何を買おうか曖昧なユーザーに対して『西友に電話したら、欲しいものが分かる』という仕組みをAIで創り出すことができれば、当社の大きな強みになるはずです」とも力強く付言していました。
このように、西友と当社 のPoCでは、当初目標としていた「入電対応の効率化によるアソシエイト(従業員)の売り場改善・接客時間の創出」に留まらず、「AIによる商品提案」という西友の成長戦略にも寄与し得るビジネスチャンスを見出すことができました。
当社は、AiCall活用による入電対応の効率化の精度を高め、AIによる商品提案機能の実装を含め、AiCallの革新に努めていく方針です。これにより、お客様によりきめ細やかなサービスを提供し、西友の成長に貢献したいと考えています。
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